コロンビア内政・外交等定期報告(3月)
Ⅰ.概要
内政:12日に国会議員選挙が行われ、上下両院ともウリベ派議員が過半数の議席を得た。また、5月28日の大統領選挙に向け自由党、PDA党の大統領候補者が選出された。世論調査によれば、ウリベ大統領は56%の支持を得てこれら候補者に対して優位を維持している。非合法武装勢力については、ELNの「アントニオ・ガルシア」司令官が、国民に対して国会議員選挙に投票に行くよう呼びかけた他、政府との対話プロセスへの貢献として人質1名を解放した。FARCについては、トリマ県で70人が投降した他、人質の警官2名が解放された。
外交:ウリベ大統領はボリビアを訪問してモラレス大統領と会談し、サントス副大統領は
パラグアイを訪れた。エクアドル外務省からのコロンビア空軍機の領空侵犯に関する抗議に対し、コロンビア外務省は領空侵犯を否定し、レーダー監視地点の相違によるものと説明。
Ⅱ.内政
1.選挙
(1)国会議員選挙
(イ)概要
12日、上院、下院の国会議員選挙及び自由党、左派PDA党の大統領候補選出投票が行われた。投票時間中、主に地方部においてFARC等による選挙妨害が一部あったが、特に大きな問題なく実施された。また、棄権率が約59%と高く、無効票が約100万票と多かったことも特徴であった(注:開票率95.41%時点)。
なお、上院102議席中ウリベ派は61議席、下院は166議席中ウリベ派は89議席となった(今後独立派議員がウリベ派にまわる可能性あり)。
(ロ)上院議員選挙結果(102議席。先住民特別区の2議席を含む)
(a)全国統一社会党(ウリベ派):20議席
(b)保守党(ウリベ派):18議席
(c)急進改革党(ウリベ派):15議席
(d)アラス・エキーポ・コロンビア党(ウリベ派):5議席
(e)コロンビア民主党(ウリベ派):3議席
(f)自由党(反ウリベ派):17議席
(g)PDA党(反ウリベ派):11議席
(h)市民集結党(独立派):7議席
(i)コロンビア・ビバ党(独立派):2議席
(j)MIRA党(独立派):2議席
(k)先住民特別区:2議席
(ハ)下院議員選挙結果(166議席。民族集団、政治的マイノリティの5議席を含む)
(a)ウリベ派諸政党の合計:89議席
(b)反ウリベ派諸政党の合計:45議席
(c)独立派合計:32議席
(d)残り1議席は今次選挙において議席を得られなかった政党から選出されるが、現時点では未確定。
(ニ)自由党及び左派PDA党の大統領候補選出投票結果
自由党からは、3回目の大統領選となるオラシオ・セルパ前大統領候補が選出され、PDA党からは有力視されていたナバロ・ウルフ上院議員を僅差で破ったカルロス・ガビリア上院議員が選出された。
(2)大統領選挙関係
1日、ウリベ大統領は国民登録局において、5月28日に投票が予定されている大統領選挙に対し、プリメロ・コロンビア党から出馬する旨登録を行った。
(3)世論調査結果
20日、15日~16日に全国31の市町村の男女1049人を対象に行われた世論調査結果(ナポレオン・フランコ社実施)が当国有力週刊誌「セマナ」1246号に掲載された。興味深い結果は次の通り。なお、( )内数値は2006年1月の結果。
(イ)大統領選挙では誰に投票するか。
(a)ウリベ大統領:56%(57%)
(b)セルパ自由党大統領候補:25%(15%)
(c)モックス前ボゴタ市長:2%(4%)
(d)カルロス・ガビリアPDA党大統領候補:9%(4%)
(e)アルバロ・レイバ元鉱山相:0%(過去のデータなし)
(f)不明:3%(13%)
(g)白票:3%(5%)
(h)棄権:2%(2%)
(ロ)コロンビアは良くなっているか。
(a)良くなっている:52%(44%)
(b)悪くなっている:36%(45%)
(c)不明/未回答:12%(11%)
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリー
(イ)武装放棄プロセス
8日及び10日、セサル県において「パラ」リーダーの「ホルヘ40」及びその配下の北部ブロックの合計4760人が武装放棄した。
(ロ)OASによるコロンビア和平プロセス第6次報告書
1日、OAS常設理事会においてコロンビア和平プロセス第6次報告書が提出され、この中で武装放棄した「パラ」の再武装化、犯罪行為の継続を批判しつつも、全体としては「パラ」との和平プロセスを評価している。
(ハ)「パラ」による土地返還の提案
28日、プレテル内務・法務大臣は、パラミリタリーの主要リーダーが「公正・和平」法の恩恵を受けるために10万ヘクタールの土地を返還することを提案した旨明らかにした。また、同大臣は、この土地が武装放棄者の生産プロジェクトに使われる旨表明した。
(2)ELN
(イ)「アントニオ・ガルシア」司令官による投票の呼びかけ
2日、ELN書記局の「アントニオ・ガルシア」司令官はこれまでの選挙妨害の姿勢を転じ、国民に対して3月12日の国会議員選挙では投票に行くよう呼びかけた。同日、ウリベ大統領は「アントニオ・ガルシア」の表明を祖国に対する貢献と評価し、コロンビア政府の和平政策にとって有意義であると述べた。「アントニオ・ガルシア」司令官に対しては、2月17日から27日までハバナで開催されたコロンビア政府とELNの第2回直接対話においてコロンビア政府から政治的地位が付与され、自由にコロンビア国内外を移動することが可能となっている。
(ロ)ELNによる国軍兵士の解放
23日、ELNはコロンビア政府との対話プロセスへの貢献として、人質としていた国軍兵士1名を解放した。ELNはコミュニケを通じ、国軍兵士の解放は紛争の政治的解決の用意がELNにあることを示しているとした。
(3)FARC
(イ)武装放棄
7日、トリマ県において、FARCのラ・カシーカ・ガイタナ機動部隊の70人が投降し、武装放棄した。陸軍司令官は、この武装放棄が既に収監中のFARCメンバーの協力を得た軍諜報機関の働きかけの成果であるとした。また、武装放棄に際しては、FARCが2002年終わりに全国規模の攻撃を行う目的で購入した20人乗りの小型航空機が引き渡されたが、その後、この小型航空機が2003年から既に当局の管理下にあったことが判明した。
(ロ)人質警察官の解放
昨年10月のプトゥマヨ県におけるFARCの攻撃の際、FARCに拉致された警官2名が、国際赤十字委員会及びFARCとの関係が噂されるアルバロ・レイバ大統領候補の立ち会いにより、18日に解放される予定であったが、FARCは身の安全が保証されていないこと及び天候不順を理由に延期した。その後、25日に国際赤十字委員会メンバーのみの立ち会いの下、プトゥマヨ川沿いの集落で2名は解放された。ウリベ大統領は国際赤十字委員会に感謝するとともに、本件が誘拐被害者を解放するためにFARCの主張するような治安機関の撤退は不要である証しであると述べた。
(ハ)攻撃
(a)4日、FARC第47戦線のゲリラ150人は、カルダス県モンテボニート村を占拠しようとし、4時間にわたってシリンダー爆弾による攻撃を行った。6ヶ月の乳児を含む2人の市民が死亡した他、家屋14棟が破壊された。
(b)8日、アラウカ県の先住民保護区カーニョ・クラロの教師が、5日にFARCによって暗殺された先住民リーダーの夫を埋葬するために同人の遺体を回収していたところ、FARCにより殺害された。
(ニ)米国における司法手続きの開始
22日、米国のゴンザレス司法長官は、10年間に250億ドル以上を米国外に持ち出したとの容疑によりFARC書記局メンバー7人を含む幹部50人に対する司法手続きが開始された旨発表した。同長官は、本件が米国史上最大規模の麻薬関連の司法手続きであると述べた。また、司法省は同FARC幹部の拘束に対して総額7500万ドルの懸賞金を掛けた。
(ホ)FARCの大学への浸透
19日、警察と国軍はボゴタ市当局との治安協議会において、全国15の大学とボゴタ市の2高校におけるFARCの浸透を警告した。また、国立大学、ボゴタ首都大学、教育大学の学長は公共施設に対する破壊活動とゲリラ活動の増加を訴えた。
3.その他
(1)大統領治安局(DAS)再建特別委員会
8日、ペニャテDAS長官は、汚職スキャンダルに対して設置されたDAS再建特別委員会による報告を公表した。組織の再建案には、DASによる要人警護を大統領、副大統領、大臣及びその家族に限定すること、DASをDAI(大統領府情報局)と改称すること、能力主義を導入すること等が含まれている。
(2)麻薬関係
(イ)麻薬輸送
15日、陸軍の特殊チームは、コロンビア内陸部のメタ県を出発したコカインの積荷を追跡し、積荷が途中で摘発されることなく7県を通過して太平洋岸のバランキージャに到着したとの報告を行った。コカインはバジェ県の麻薬マフィアと取引しているパラミリタリーのものであり、最終的にはバランキージャで押収された。
(ロ)コカ伐採
1月19日に開始されたメタ県のマカレナ国立自然公園における手作業によるコカ伐採が、18日、1001ヘクタールに達した。マカレナ国立自然公園には約4600ヘクタールのコカが栽培されていると見られている。
Ⅲ.治安等
1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(1)殺人:1294件<111件>/1241件<94件>
(2)集団殺人:2件9人<0件0人>/5件34人<1件6人>
(3)脅迫:65件<7件>/46件<3件>
(4)窃盗・強盗:5725件<1731件>/5532件<1374件>
(5)自動車盗難:1397件<394件>/1482件<362件>
(6)誘拐:28件<2件>/29件<0件>
(7)テロ:86件<6件>/79件<0件>
2.主な事件・事故
(1)2月24日にボゴタ市内で押収されたウランの分析結果
2月24日、コロンビア陸軍及び検察庁はボゴタ市内で13.5キロのウランを押収した。3月2日、同ウランの分析を行ったコロンビア地質・鉱物研究所(INGEOMINAS)は、押収されたウランが劣化ウランであり、核兵器として用いられる可能性は否定したものの、銃弾として用いられる可能性を指摘した。また、旧ソ連に由来するものとの見方を示した。
(2)ハンタウイルス
9日、当局は、アンティオキア県カレパにおいて病死した国軍兵士3人と市民1人の死因が野ネズミ等を感染源とするハンタウイルスであることを発表し、注意を呼びかけた。
Ⅳ.外交
1.要人往来
(1)ウリベ大統領
14日、ウリベ大統領はボリビアを訪問し、エボ・モラレス大統領とコロンビアの対米FTA及びコロンビア・ボリビアの二国間貿易につき会談した。
(2)サントス副大統領
2日~3日、サントス副大統領はパラグアイを訪問し、ドゥアルテ大統領及びカスティグリオーニ副大統領、ラチド外相と誘拐、テロ、麻薬対策等につき協議した。
2.エクアドルとの軋轢
17日、エクアドル外務省はコロンビア政府に対し、11日にコロンビア空軍機がエクアドル領空を侵犯したとの抗議文書を発出した。これに対し、17日、コロンビア外務省は領空侵犯を否定し、両国のレーダー監視地点の相違によって生じただけであるとした。
3.その他
(1)キューバ大使のスパイ疑惑報道
20日発売の週刊誌「カンビオ」は、駐コロンビア米国大使が、駐コロンビア・キューバ大使のスパイ疑惑、及びコロンビアにおいてチャベス・ベネズエラ大統領のために働く要員の養成疑惑を示すために、3月上旬にバルコ外相に対して会見を要請していたと報じた。
これに対しバルコ外相は、20日、コロンビアにおけるキューバ大使の活動に関する報告書を米国大使から受け取ったとの報道を否定した。
(2)対米関係
20日、米国の民主党議員グループは、米国に不法滞在しているコロンビア人に対して一時的な滞在保証を与えるとの法案を下院に提出した。この法案は、コロンビアにおける「紛争状況」に配慮したものとされる。