コロンビア内政・外交等定期報告(4月)
Ⅰ.概要
内政:パラミリタリー・リーダーは10万ヘクタールの土地の返還、及び武装放棄者2万人によりコカ伐採を行うことを政府に提案した。ELNについては、「アントニオ・ガルシア」司令官がコロンビアを訪問した他、政府との直接対話の第3回会合がハバナにおいて開催された。FARCは2001年3月に誘拐したドイツ人を解放。
外交:ウリベ大統領はブラジルを訪問し、ルーラ大統領とベネズエラのCAN脱退問題等につき会談した。エクアドルのサカ大統領がコロンビアを訪問し、FTA交渉開始の文書に署名した。
Ⅱ.内政
1.内政一般
(1)ノゲラ前大統領府治安局(DAS)長官(注:在ミラノ領事を務めていたが、5月8日に辞任)を巡る汚職疑惑
汚職の容疑で起訴されているラファエル・ガルシア元DAS情報局長が検察に対し、チャベス大統領暗殺計画等にパラミリタリー幹部及びノゲラ前DAS長官が関与していたと証言したことに端を発し、10日付週刊誌「セマナ」等が本件を報じた。ウリベ大統領は本件に関し、10日に同前長官を擁護するとともに、11日には「セマナ」誌の報道姿勢等を批判した。
12日、疑惑を受け、ノゲラ前DAS長官は領事として勤務していたミラノより帰国し、18日より検察庁による任意の事情聴取に応じた。
(2)コロンビアのコカ栽培に関する報告書
14日、米国麻薬管理政策局がコロンビアのコカ栽培に関する年次報告書(2005年)を発表し、2005年末時点で14万4000ヘクタールのコカ栽培地が探知され、2004年末の11万4000ヘクタールと比べて26%増となっていることが明らかになった。米国政府は、この増加は新たな監視システム(より能力の高いもの)の導入により監視面積が2004年に比べて81%拡大したためとしている。
(3)汚職
8日、行政監察庁は報告書を通じ、政府が農民或いは紛争被害者に提供することになっていた土地が、逮捕命令の出ている人物や隣接する土地の所有者等に不正に渡っていたことを明らかにした。これにより、土地の引渡を行っていた地方開発庁(INCODER)長官が辞任した。
(4)人事
18日、憲法裁判所長官にハイメ・コルドバ・トゥリビーニョが就任した。
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリー
(イ)武装放棄プロセス
(a)11日、「ジャノの英雄」ブロック及び「グアビアーレの英雄」ブロックの合計1765人が武装放棄した。
(b)12日、サンタフェ・デ・ラリートにおける和平プロセスから離脱した「パラ」リーダー「エル・アレマン」が指揮する「エルメル・カルデナス」ブロックの一部、「海岸地域」戦線の309人が武装放棄した。
(c)30日、「エルメル・カルデナス」ブロックの第2グループ484人が武装放棄した。
(ロ)その他
(a)「公正・和平」法
24日、武装放棄者に対する法的枠組みである「公正・和平」法に関し、憲法裁判所は11の審査請求のうち最初の申し立ての審議を終えた(注:5月18日に残りの審議を終え、一部条項の削除、修正を求めつつ承認した)。
(b)対米引渡
1日、「パラ」リーダーはレストレポ和平高等弁務官と会合し、10万ヘクタールの土地の返還提案をすると同時に、米国への引渡に関する懸念を表明した。これに対しプレテル内務・法務大臣は、「パラ」リーダーが違法行為をせず、「公正・和平」法の要件を満たしている限りは引渡が停止されると述べた。
(c)コカ伐採の提案
2日、政府は2000人の武装放棄者によりコルドバ県南部のコカを伐採する考えを示した。これに対し「パラ」リーダーは、2万人の武装放棄者により2年間でコロンビア全土のコカを根絶できると述べた。
(d)「パラ」の虐殺被害者
11日、ノルテ・デ・サンタンデール県のラ・ガバラにおいて、元「パラ」の供述により29体の遺体が発見された。この14ヶ月の間に、12県の集団埋葬地から合計179の遺体が発見されたこととなる。
(e)「公正・和平」法の適用予定者
18日、政府は「パラ」の「公正・和平」法適用者名簿(604人)を内務・法務省に送付した(注:その後、5月20日現在で1781人)。なお、内務・法務省で同リストが精査された後、司法プロセスに入るために検察庁に送られることとなっている。
(2)ELN
(イ)「アントニオ・ガルシア」司令官のコロンビア来訪
17日~22日、ELN書記局の「アントニオ・ガルシア」司令官が市民保証人グループの招待によりハバナからコロンビアを訪問し、メデジン市の「和平の家」に滞在して市民団体、企業家、地方政府首長他と会談した。
(ロ)第3回会合
25日~28日、ハバナにおいてコロンビア政府とELNの直接対話の第3回会合が開催され、これまでの合意が再確認された。また、「アントニオ・ガルシア」を始めELN代表者に付与されている政治的地位はコロンビア政府との対話が継続される限り維持されることとなった旨報道された。
(3)FARC
(イ)ドイツ人の解放
4日、2001年3月にFARCにより誘拐され人質となっていたドイツ人ローター・ヒンツェがトリマ県において解放された。同人の妻によれば、少なくとも2回、身代金を支払ったとのことである。
(ロ)FARC誘拐被害者に関する暴露本
4日、これまでFARCの下にある人質に関する報道を行ってきたジャーナリストのホルヘ・エンリケ・ボテロは、2002年2月にイングリッド・ベタンクール元大統領候補と共にFARCに誘拐されたクララ・ロハスとFARCゲリラの間に2歳の子供がいるとの内容の本を出版した。ボテロによれば、FARC書記局の「ラウル・レジェス」はこの情報を認めた。
Ⅲ.治安等
1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(1)殺人:1370件<114件>/1294件<111件>
(2)集団殺人:2件8人<0件0人>/2件9人<0件0人>
(3)脅迫:33件<1件>/65件<7件>
(4)窃盗・強盗:5803件<1794件>/5725件<1731件>
(5)自動車盗難:1481件<387件>/1397件<394件>
(6)誘拐:35件<0件>/28件<2件>
(7)テロ:54件<4件>/86件<6件>
2.主な事件・事故
(1)ガビリア元大統領の妹の誘拐・殺害
27日、リサラルダ県ペレイラ市において、リリアナ・ガビリア氏が誘拐され、その後、銃痕の残る遺体が発見された。
(2)DAS及び陸軍兵士の殺害
20日、ノルテ・デ・サンタンデール県アカリにおいて、EPLのゲリラで同地域の麻薬を取り仕切っていた「メガテオ」の逮捕に向かっていたDASと国軍の合同チームが地雷埋設地帯に入ったところを銃撃され、DAS捜査員10人と国軍兵士7人が死亡した。
(3)トランスミレニオ(首都新交通システム)に対するテロ
6日、ボゴタ市南部においてトランスミレニオ(ボゴタ市公営バス)に対する爆発物を用いたテロが発生し、7日及び8日にそれぞれ火傷を負った子供が死亡した。その後の報道では、FARCのシンパがFARCに加わるための「度胸試し」として行った可能性が指摘された。
(4)建物爆発
16日、ボゴタ市サンペール・メンドサ地区において古い建物の爆発があり、建物が半壊し、5人が死亡した。当初、ガス爆発と報じられたが、その後の調査から爆発物による疑いが浮上し、FARC民兵による誤爆の可能性も報じられた。
(5)FARCに捕らえられているリスカーノ元下院議員子息の誘拐
2000年8月にFARCによって誘拐された元下院議員(カルダス県選出)のオスカル・トゥリオ・リスカーノの末男ファン・カルロス・リスカーノが、28日午後9時にマニサレス-メデジン間の街道上のリサラルダ県イラにおいて左翼ゲリラEPLに誘拐された。
(6)市議会議員の暗殺
13日、ウイラ県バラヤ市の市議会議員が暗殺され、2006年に入って暗殺された市議会議員は16人となった。同市議会議員はFARCと思しきグループから脅迫を受けていた。
(7)水害
3月下旬から雨期により降水量が増加していたが、12日、バジェ・デル・カウカ県の県都カリ市と太平洋岸の主要港が位置する同県ブエナベントゥーラ市を結ぶ幹線道路上の数カ所において土砂崩れが発生し、30人以上が死亡した。この他、クンディナマルカ県、ノルテ・デ・サンタンデール県等において河川氾濫による被害が生じた。
Ⅳ.外交
1.ウリベ大統領のブラジル訪問
25日、ブラジルを訪問したウリベ大統領は、ルーラ・ブラジル大統領と治安問題及び二国間協力について会談した他、CAN脱退問題に関し、チャベス・ベネズエラ大統領との仲介を行うよう要請した。
2.サカ・エルサルバドル大統領のコロンビア訪問
3日、エルサルバドルのサカ大統領がコロンビアを訪問し、ウリベ大統領とFTA交渉開始の文書に署名した。
3.バルコ外相のトリニダード・トバゴ及びバルバドス訪問
4日、バルコ外相はトリニダード・トバゴを公式訪問し、ギフト外相と二国間関係の強化及びテロ・組織犯罪対策等につき会談した。
その後、4日及び5日の日程でバルバドスを公式訪問し、ミラー外相と技術協力等について会談した他、両国外相は核物質及び汚染廃棄物輸送のためのカリブ海使用を強く拒否した。