コロンビア内政・外交等定期報告(5月)

 

 

T.概要

内政:28日に実施された大統領選挙では、ウリベ大統領が62.35%の得票により再選を果たした。憲法裁判所は、武装放棄者の処遇、紛争被害者補償を定めた公正・和平法に関し、一部条項を削除・修正した上で承認したが、パラミリタリー・リーダーは削除・修正に関して不満を表明し、和平プロセス崩壊の危機に直面した。バジェ県ハムンディにおいて国軍兵士が警察官10人を殺害する事件が発生した。

外交: 米国議会はパラミリタリーの武装放棄プロセス支援のために1540万ドルの支出を承認。ウリベ大統領はアリアス・コスタリカ大統領の就任式に出席するために、コスタリカを訪問した。

 

 

U.内政

1.内政一般

(1)大統領選挙

 28日、大統領選挙が実施され、現職のウリベ大統領候補が62.35%の得票率により再選を果たした。また、破れはしたが、左派PDA党のカルロス・ガビリア候補が歴史上初めて自由党候補を超える2位の得票(得票率は22.02%)を得たことが注目を集めた。

 なお、FARCとの関係が噂されていたアルバロ・レイバ大統領候補は、14日、大統領選挙において他候補との間で公平性が保証されていないことを理由に大統領候補を辞退していた。

(2)県知事、市長の再選法案の行方

 3日、県知事、市長の再選を可能とする憲法改正法案の審議が上院第一委員会で行われたが、自由党、PDA党に続き、保守党も反対に回ったため、同法案は廃案となった。同法案は大統領の再選を可能とする憲法改正(0510月)が行われた後、自由党と保守党のイニシアティブにより進められていた。

(3)路線バスのストライキ

 2日、トランスミレニオ(注:専用レーンを用いる連結式バスによる首都新交通システム)の路線拡張の機会に合わせ、公共バス組合は老朽化バスの廃棄、往来制限等に抗議するストライキを行った。この結果、ボゴタ市内の公共交通の95%が麻痺した他、トランスミレニオに対する投石等により合計71台のトランスミレニオ公社のバスが被害を受け、60人が逮捕され、18人が負傷した。

(4)中絶に関する憲法裁判所の判断

 10日、憲法裁判所は、次の3つの特別な場合については中絶を行う女性を処罰しないと定めた。(イ)妊娠が母子の生命を危険に晒す場合、(ロ)胎児に生命に関する深刻な奇形がある場合、(ハ)暴行等による妊娠の場合である。この判断に対し、医療関係機関は例外の適用範囲が曖昧であることを疑問視し、また、カトリック教会のルビアーノ司教は中絶が破門に値し、同判断を下した5人の憲法裁判所判事の破門を示唆した。

(5)国勢調査の暫定結果

 19日、国家統計庁(DANE)は2005年に実施した国勢調査の暫定結果を発表した。それによると、コロンビアに居住しているコロンビア人の人口は41242948人で、外国に定住しているコロンビア人は3331107人とのこと。出生率は減少しており、人口増加率は1%となっている。また、80歳以上の人口は全体の1.16%となっている。

 

2.非合法武装勢力

(1)パラミリタリーの武装放棄者を主たる対象とした公正・和平法

(イ)憲法裁判所の承認

 18日、憲法裁判所は、武装放棄者の処遇、被害者補償等を定めた公正・和平法に関し、一部条項を削除及び修正した上で賛成6、反対3の採決を以て承認した旨発表した。しかし、憲法裁判所長官は、「パラ」に対する優遇措置を定める主要な条項が修正される旨明らかにし、特に和平プロセス前に確定した刑期については減刑されないと説明したことから、「パラ」リーダーは和平プロセスに不信感を表明し、プロセス崩壊が危ぶまれた。

(ロ)解釈の訂正

 19日、憲法裁判所は、18日に発表した公正・和平法の承認に関して解釈上の混乱があったとして、同内容を訂正するコミュニケを発した。同コミュニケによれば、武装放棄前に科せられた刑期は、公正・和平法の下で科せられる新たな刑期に加算されたのちに減刑され、最終的には5年〜8年の代替刑が宣告されるとのことである。

 他方、「パラ」リーダーはレストレポ和平高等弁務官、プレテル内務・法務大臣と会合を持ち、617日、和平プロセスを継続することで合意した。なお、公正・和平法に関する憲法裁判所の正式な判決文は、710日現在、公表されていない。

(2)ELNによる農民虐殺疑惑

 13日、サンタンデール県の県都ブカラマンガ市から2時間の距離にあるサバナ・デ・トーレス市近郊において、農民6人が虐殺された。当局は、ELNの「マヌエル・グスタボ・チャコン」戦線のナンバー2が死亡した国軍の作戦を、農民が事前にELNに知らさなかったことに対する報復との見方を示した。

(3)FARC

(イ)大統領選挙での投票呼びかけ

 12日、FARC書記局の「ラウル・レジェス」は左派系通信社ANNCOLのホームページ(インタビュー記事)を通じ、コロンビア国民に対して28日の大統領選挙での投票を呼びかけた。これに関し政治評論家は、当局の治安対策強化により攻撃が困難であること、攻撃が十分な政治的影響を及ぼさないことが明白であることにより、FARCが戦略を変えたとの見方を示した。

(ロ)リリアナ・ガビリアの殺害事件の続報

 427日にリサラルダ県ペレイラ市においてセサル・ガビリア元大統領の妹リリアナ・ガビリアが誘拐された後、殺害された件に関し、55日、警察及び検察は、FARCのテオフィロ・フォレロ機動部隊の5人が本件に関与していたと発表した。警察によると、FARCは人道的人質交換を有利に進めるために同人の誘拐を企てたが、都市部での経験が浅い農村部で活動するメンバーを配置したために失敗に終わったとのことである。

(ハ)FARCの通信傍受

 10日付マイアミ・ヘラルド紙によると、米国連邦麻薬取締局(DEA)は、収監中の麻薬マフィアを利用して2001年から2004年の間に8台の衛星電話をFARCに提供して盗聴を行い、盗聴した会話はFARC幹部50人の告訴のための証拠として用いられたとのことである。現在もこれらの衛星電話はFARCの末端において使用されているとも報じている。

(ニ)ブエナベントゥーラ港におけるテロ

 19日までの数日間にバジェ県ブエナベントゥーラ港においてFARCによる爆弾テロが相次ぎ、合計24人が負傷した。ブエナベントゥーラ港は太平洋岸のコロンビア最大の輸出港として重要であり、経済、社会に及ぼす影響が懸念された。

 

 

V.治安等

1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)

(1)殺人:1236件<103件>/1370件<114件>

(2)集団殺人:523人<00人>/28人<00人>

(3)脅迫:19件<2件>/33件<1件>

(4)窃盗・強盗:5990件<1869件>/5803件<1794件>

(5)自動車盗難:1457件<392件>/1481件<387件>

(6)誘拐:21件<1件>/35件<0件>

(7)テロ:70件<1件>/54件<4件>

 

2.主な事件・事故

(1)ハムンディにおける警察官虐殺事件

 22日、バジェ県ハムンディ市郊外において、麻薬捜査を行っていた国家警察司法捜査局(DIJIN)の捜査官10人と民間人(情報提供者)1人が陸軍部隊の攻撃により殺害された。

 当初、陸軍と警察の間で交戦があったと伝えられたが、通話傍受記録、携帯電話に残されていたメッセージ等の証拠により、61日、検察庁特別捜査局(CTI)は攻撃を行った陸軍山岳大隊に所属する兵士8人を逮捕した(注:その後、616日に更に7人が逮捕された)。

(2)先住民によるデモ

 16日、カウカ県ラ・マリア市付近のパンアメリカン・ハイウェイにおいて、対米FTA、大統領の再選及び違法作物に対する除草剤の空中散布に反対する先住民集団と警察が衝突した。多くの負傷者が出た他、発砲により先住民の一人が死亡したが、この発砲が誰によるものかは不明とのこと。この先住民蜂起は近隣のナリーニョ県、バジェ県にまで拡大し、3日間に渡ってエクアドルに通じるパンアメリカン・ハイウェイが封鎖された。先住民の中には、ゲリラ及びパラミリタリーによってデモを起こすよう圧力をかけられたと証言する者もいた。

(3)ガス管の事故

 16日、クンディナマルカ県のシパキラ市周辺における土砂崩れによりガス管が破損し、2日間に渡ってボゴタ市の約75万世帯に対するガスの供給が停止された。

 

 

W.外交

(1)米国の対コロンビア支援

 3日、米国議会は、パラミリタリーの武装放棄プロセス支援ために1540万ドルの支出を承認した。本予算は2005年度予算として承認されていたが、その支出のために議会の承認が必要とされていた。

(2)ウリベ大統領のコスタリカ訪問

 8日、ウリベ大統領は、アリアス・コスタリカ大統領の就任式に出席するため、コスタリカを訪問した。

(3)ダライ・ラマのコロンビア訪問

 10日、ダライ・ラマがコロンビアを訪問し、ボゴタ市内で非暴力を訴える講演を行った。