コロンビア内政・外交等定期報告(6月)
T.概要
<内政>
●自由党、左派PDA党は、党の強化と2007年地方選挙に向けて新体制を発足させた。
●2003年に陸軍部隊が発見したFARC埋蔵金の着服に関する裁判が開始された。
●非合法武装勢力関連では、FARCの民兵の大量の武装放棄(公正・和平法の適用を期待)及び逮捕があった他、陸軍がFARC書記局メンバーの一人を殺害した。
●26日、FARCはコミュニケを通じて政府と対話をする用意があると表明。フランスはスペイン、スイスとともに人道的人質交換交渉促進の準備が整っていると繰り返した。
<外交>
●米国議会は5月に発生したコロンビア陸軍部隊による警察官虐殺事件に関連し、3000万ドルの対コロンビア国軍支援の拠出を凍結した。その一方で、麻薬対策については新たに25機のヘリコプター、小型飛行機の支援を承認。
●14日、ウリベ大統領は米国を訪問し、ブッシュ大統領と麻薬問題、FTA等につき会談した。
●3人の米民主党上院議員が米国務省に対し、プラン・コロンビアの有効性を否定する内容の書簡を送付した。
U.内政
1.内政一般
(1)政党の動向
(イ)自由党
21日、党の新執行部が発足し、2006年大統領選挙の自由党予備候補者のラファエル・パルド、ロドリーゴ・リベラ、アンドレス・ゴンサレスなどの他、労働組合連合CUTのカルロス・ロドリゲス委員長らが就任した。執行部はセサル・ガビリア党首とともに党の強化と2007年地方選挙対策に向けて活動を開始した。
(ロ)左派PDA党
20日、PDA党のサムエル・モレノ・ロハスが党首を辞任した。2007年のボゴタ市長選挙の出馬を模索していると見られている。新党首には2006年大統領選挙で健闘したカルロス・ガビリアが就任した。
(2)FARC埋蔵金を巡る裁判
2003年4月、カケタ県サンビセンテ・デル・カグアン近郊で陸軍部隊が約400億ペソのFARC埋蔵金を発見し、それを着服した件に関する裁判が12日、軍事刑罰裁判所において開始された。147人の兵士の出頭が命じられたが、少なくとも20人が国外に逃亡したとされる。裁判の過程において、埋蔵金を取り戻そうとするFARCによって暗殺された兵士がいること、この部隊が2003年以来FARCに捕らわれている3人の米兵士を救出する任務にあったこと、持ち出しのできなかった4つの55ガロンの容器に入っていたドル紙幣を焼却したことなどが明らかになった。
(3)人事異動
8日、政府は、元武装勢力構成員の社会復帰を担当する大統領高等顧問のポストを新設する旨発表し、企業家のフランク・パール氏を任命した(9月就任予定)。また、9日にはウリベ大統領がレストレポ和平高等弁務官の留任を発表するとともに、ファビオ・バレンシア・コッシオ大統領補佐官(前イタリア大使)がレストレポ和平高等弁務官の下でFARCとの和平プロセスの補佐を行うことを決定した。
11日にはウリベ大統領のメディア・アドバイザーを務めてきたハイメ・ベルムデス氏が辞任し、駐アルゼンチン大使に任命されることとなった。
(4)県知事及び市長の連続再選
7日、上下両院の第一委員会は、県知事及び市長の連続再選を可能とする憲法改正法案を廃案とした。
(5)歌手フアネスの和平の訴え
13日、世界的に有名な歌手で対人地雷被害者の救済活動を行っているフアネスは、カリ市の対人地雷被害者のためのリハビリテーションセンター(我が国の草の根・人間の安全保障無償資金協力プロジェクト)除幕式に出席し、ウリベ大統領に対して交渉による和平の模索を求めた。
(6)自白による集団死体埋設場所の発掘
全ての罪の自白等を条件に減刑を定めた公正・和平法の恩恵を受けるために、パラミリタリー及びゲリラの武装放棄者が死者(戦闘員、誘拐被害者を含む)の集団埋設場所を当局に通報しており、この自白に基づき5月下旬からの3週間で40の遺体が発見された。
(7)2006年大統領選挙における活動資金
2006年大統領選挙において支出された選挙活動費が公表され、ウリベ大統領は全ての候補者の中で最大の96億5300万ペソであった。
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリー
15日、マヤ行政監察庁長官は武装放棄及び社会復帰に関する報告を行った際、少年兵の引渡が十分行われていない旨批判した。同長官によると、政府及びNGOは約3万人の「パラ」武装放棄者のうち2200人から5000人が少年兵であると見積もっていたが、現在、わずか212人のみが少年兵としてのケアを受けているに過ぎない由。
(2)ELN
19日、ナリーニョ県及び同県の市町村関係者は、「和平の家」においてELNスポークスマンのフランシスコ・ガランと会合し、ナリーニョ県サマニエゴ市周辺に埋設されている対人地雷の除去をELNに求めた。
(3)FARC
(イ)12日付週刊誌カンビオ(第676号)は、3月に政府情報機関がウリベ大統領に対し、トリマ県知事とFARC関係者が会合を持ち、両者の間で対話を促進すること、トリマ県に平和の実験場を設置することなどが合意されたことを報告していた、と暴露した。
(ロ)FARC民兵の武装放棄及び逮捕
12日、クンディナマルカ県のビオタ、パンディ、シルバニア、アナポイマを活動範囲とするFARC第42戦線の民兵を再編する任務を負っていたFARCの民兵35人が武装放棄した。この武装放棄は、公正・和平法を適用するとの政府の方針に応じたものとのこと。
また、17日、警察はウイラ県のアイペ、イキラ、ネイバ、サンタ・マリア、パレルモ、リベラにおいて29人のFARC民兵を逮捕した。警察によると、この中には市議会議員一人と地元で知られた企業家が複数含まれているとの由
(ハ)人道的人質交換交渉の行方
26日にFARCがコミュニケを通じ、大統領選挙結果を踏まえて政府と対話をする用意があると表明したことを受け、同日、フランスはスペイン、スイスとともに、政府とFARCの人道的人質交換交渉の促進を行う準備は整っていると繰り返した。
(ホ)FARC書記局メンバーの殺害
27日未明、サンタンデール県でFARC書記局メンバー25人の1人「ファン・カルロス」が、当局に提供された情報に基づく攻撃により死亡した。これまでに逮捕されたFARC幹部シモン・トリニダッド、ソニアより大物であった。「ファン・カルロス」は第11、12、23、46戦線の統括の他、パラミリタリーの旧影響地域への侵入の任務を負っていた。
V.治安等
1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(1)殺人:1299件<104件>/1236件<103件>
(2)集団殺人:5件32人<0件0人>/5件23人<0件0人>
(3)脅迫:32件<0件>/19件<2件>
(4)窃盗・強盗:5241件<1513件>/5990件<1869件>
(5)自動車盗難:1339件<396件>/1457件<392件>
(6)誘拐:26件<0件>/21件<1件>
(7)テロ:28件<0件>/70件<1件>
2.主な事件・事故
(1)ヘルマン・バルガス上院議員暗殺未遂事件の続報
昨年10月に発生した自動車爆弾による同議員暗殺未遂事件に関し、6月5日までに40を超える情報提供者が現れた。情報提供の数ではこれまでの事件の中でも最大のものの一つであるが、FARC犯行説、パラミリタリー犯行説、あるいはその混成グループの犯行説と情報が錯綜している。
(2)5月にバジェ県ハムンディにおいて発生した陸軍兵士による警察官虐殺事件の続報
同事件への関与が疑われている麻薬組織ノルテ・デル・バジェ・カルテルのリーダーの一人「ドン・ディエゴ」は、本件とは無関係であることを証言するために裁判所に出頭する用意がある旨、大統領、検察庁長官、行政監察庁長官等に書簡を送付したことが7日、明らかになった。
(3)コカ栽培農民の虐殺
13日、ナリーニョ県のオラヤ・エレラ市郊外において、コカ栽培農民が正体不明の一団に銃撃され、10人が死亡、4人が負傷した。コカ栽培農民の虐殺はこの2年間で6件発生し、96人の死者を出したことになる。
(4)未成年者殺害犯の刑期
19日、エル・ティエンポ紙は、エクアドルとコロンビアにおいて140人以上の未成年者を殺害したとされる服役中のルイス・アルフレド・ガラビートが、服役中の労働及び学習態度によっては4年以内で釈放される可能性があると報じた。これに対し精神科医の中には、同囚人の更正は不可能であり、釈放後の再犯の可能性を指摘する者もある。この状況の中で、次期下院議員のシモン・ガビリア及びダビッド・ルナは、未成年に対する暴行、殺害等に対して終身刑が適用されるための法改正を行う用意があると表明した。
(5)ヘロイン密輸組織の摘発
21日、コロンビア当局は、コロンビアと米国にまたがるヘロイン密輸組織を摘発し、9人の対米引渡要請のされている者を含む合計29人が逮捕された。
W.外交
1.米国の対コロンビア支援
(1)プラン・コロンビア批判
5日、3人の米民主党上院議員(パトリック・リーヒー、バラック・オバマ、クリス・ドッド)が米国務省に対して、プラン・コロンビアの有効性を否定する内容の書簡を送付していたことが報じられた。
(2)コロンビア国軍に対する支援凍結
7日、米上院歳出予算委員会は、5月にバジェ県ハムンディで発生したコロンビア陸軍兵士による警察官虐殺事件に関連し、コロンビア国軍に対する3000万ドルの供与を凍結した。また、米下院では、民主党下院議員がコロンビア国軍が信頼に値しないとして、更に3000万ドルの予算の削減を求めるとしている。
(3)麻薬対策強化
19日、米下院議会は、コロンビアにおける麻薬問題に対処するため、25機以上のコカ栽培対策用のヘリコプター、小型飛行機の購入を承認し、2007年度の外国における作戦のための予算に組み込まれることとなった。
2.ウリベ大統領の米国訪問
14日、ウリベ大統領はCAN臨時首脳国会合(キト)に出席した後、直接米国を訪問し、ブッシュ大統領と麻薬対策、FTA等につき会談したほか、ライス国務長官、国会議員、プレスとも会合を持った。