コロンビア内政・外交等定期報告(7月)

 

7月の内政・外交等定期報告は次の通り。

 

T.概要

<内政>

●パストラーナ駐米大使(前大統領)は、ウリベ大統領がサンペール元大統領に駐仏大使のポストをオファーしたことに反発して辞任した。

●独立派の2政党がウリベ派に合流し、上下両院におけるウリベ派勢力は更に増加した。

●憲法裁判所は「公正・和平」法に関し、パラミリタリーに宥和的な条項の一部を削除しつつ同法を承認した。

FARCEUに対して「テロ組織リスト」から同組織を除外することを求めたが、8月に拒否された。

<外交>

●アラン・ガルシア・ペルー大統領が次期大統領として訪問した他、トリホス・パナマ大統領がコロンビアを訪れた。

●ウリベ大統領は、パナマ、ベネズエラを訪問した。

●エクアドルとの国境地帯において、コロンビア陸軍は制止を振り切ったトラックを銃撃し、エクアドル人貿易商が死亡した。

 

 

U.内政

1.内政一般

(1)サンペール元大統領の駐仏大使任命を巡る軋轢

 6日、ウリベ大統領はサンペール元大統領に対して駐仏大使のポストをオファーし、サンペール元大統領は受諾した。しかし、11日、パストラーナ駐米大使(当時。前大統領)は、サンペール元大統領の駐仏大使任命は道義的に受け入れ難いとし(当館注:1994年、大統領選挙でサンペール候補(当時)に敗れたパストラーナ候補(当時)は、サンペール元大統領を大統領選挙活動に際して麻薬マフィアから資金提供を受けたと告発し、本件に関する録音テープを裁判の場に提出した)、ウリベ大統領と本件につき会談した後、駐米大使を辞任した。大統領府はコミュニケを発出し、パストラーナ前大統領の駐米大使辞任を発表するとともに、後任の駐米大使にバルコ外相、次期外相にアラウホ前文化相、駐仏大使としてオルギン国連代表部大使の任命を発表した(注:オルギン国連代表部大使はコロンビア帰国を希望していたため、駐仏大使の任命を受諾しなかった)。

(2)国会の動向

 20日、国会が召集され、上院議長に全国統一社会党(U党)のディリアン・フランシスカ・トロ、下院議長に保守党のアルフレド・クエージョ・バウテが選出された。また、独立派であった市民集結党及びコロンビア・ビバ党がウリベ派に参加することとなったため、議席配分は次のようになった。

<上院(102議席)>

ウリベ派:70議席、反ウリベ派:28議席、独立派:4議席

<下院(166議席)>

ウリベ派:99議席、反ウリベ派:43議席、独立派:24議席

(3)人事

(イ)環境大臣

 5日、ウリベ派の急進改革党のファン・フランシスコ・ロサーノ・ラミーレスが環境・住居・国土開発大臣に就任した。

(ロ)国防大臣

 19日、ウリベ派の全国統一社会党(U党)コーディネーターのファン・マヌエル・サントスが国防大臣に就任した。

 

2.非合法武装勢力

(1)パラミリタリー

(イ)「公正・和平」法に関する憲法裁判所の判断

  13日、憲法裁判所が「公正・和平」法の裁決に関する最終文書を発表した。同法については、5月に憲法裁判所が一度発表した見解を訂正するなど混乱が生じていた。

 憲法裁判所の最終文書では、「公正・和平」法以前に刑が確定した犯罪も同法の対象となり、最終的に刑期が5年〜8年となるという「パラ」に宥和的な要素は保持されたが、紛争被害者に対する補償については「パラ」が違法に取得した財産だけでなく、合法的に取得した財産によっても為されることが定められる等、「パラ」リーダーにとって厳しい内容となった。

 この憲法裁判所の判断を受け、19日、「パラ」リーダーは和平プロセスの継続を表明した。また、政府は同法の詳細を規定する政令を新たに策定することとした。

(ロ)集団死体埋葬地の発掘

 検察庁特別捜査局(CTI)は、7月上旬にラ・グアヒーラ県ディブージャ市アルト・サンホルヘ地区の集団死体埋葬地において43の死体を発掘したと発表した。CTIはこれらの死体が「パラ」リーダーの「ホルヘ40」率いる北部ブロックにより殺害された人々のものと見ている。この発掘は住民の情報に基づいて行われており、同情報によれば少なくとも200人の死体が埋葬されているとされる。

(ハ)虐殺事件における国家の責任

 27日、米州人権裁判所が、1996年及び1997年にアンティオキア県イトゥアンゴの2村において発生した合計19人の虐殺事件に関し、国家の責任を認め、遺族に対して35億ペソ以上の賠償を求めた判決を出したことが明らかになった。本件に関しては、「パラ」リーダーのサルバトーレ・マンクーソが懲役40年の判決を受けている。

(2)FARC

(イ)警察署に対する攻撃

 4日、FARCは、バジェ県エル・アレニージョ村に5月に設置された警察署に対してシリンダー爆弾による攻撃を行い、警察官6人が死亡した。同村は、FARCが政府と人道的人質交換交渉を行う条件として治安機関の撤退を求めているバジェ県プラデラ村及びフロリダ村と隣接している。

(ロ)FARC幹部の出所

 12日、FARC幹部のジェシド・アルテタは1014日の刑期を終えて出所した。今後は外国から和平のために活動するとしている。なお、ジェシド・アルテタは、ベネズエラで逮捕されたFARC幹部「ロドリーゴ・グランダ」と共に、FARCにとって人質交換の最も重要な交換要員とされていた。

(ハ)チョコ県における大規模誘拐

 12日、チョコ県リオスシオ市近郊の森林地帯において、木材の伐採を行っていた住民のうち、10人がFARC57戦線によって殺害され、多数が拉致された。また、15日には更に4人が殺害された。当初、170人が拉致されたとの情報もあったが、その後、57人が解放されたことにより、全ての人質が解放されたと報道された。この地域は「パラ」のエルメル・カルデナス・ブロックの影響地域であったが、事件の8日前に同ブロックの戦闘員は武装放棄のためにこの地を引き払っていた。FARCによる今回の殺害及び誘拐事件は、「パラ」に対する報復との見方がなされた。

(ニ)FARCのテロ組織リストからの除外要請

 20日、FARCEU議長国のフィンランドに対して「テロ組織リスト」から同組織を除外するよう要請する書簡を送付していたことが報じられた。しかし、コロンビア政府の同意がなければ実現困難であるため、FARCは将来の和平プロセスに対してEUがどの程度仲介する用意があるのかを確かめるために本件を要請したとの見方が報じられた(注:87日、ジョセップ・ボレル欧州議会議長はFARCの要請を却下した)。

(ホ)迷彩服の押収

 メタ県とカケタ県の県境を為すグアジャベロ川流域において、対FARC軍事作戦「愛国プラン」の作戦を遂行していた陸軍の緊急展開部隊がFARCの巨大物資貯蔵庫を発見し、1700着のFARCの迷彩服を押収した件に関し、27日、視察したファン・マヌエル・サントス国防相は、今後は多くのゲリラがジャージで戦闘を行うこととなり、戦意喪失を招くだろうと述べた。

 

 

V.治安等

1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)

(1)殺人:1436件<126件>/1299件<104件>

(2)集団殺人:322人<00人>/532人<00人>

(3)脅迫:35件<1件>/32件<0件>

(4)窃盗・強盗:5371件<1558件>/5241件<1513件>

(5)自動車盗難:1504件<399件>/1339件<396件>

(6)誘拐:19件<1件>/26件<0件>

(7)テロ:43件<1件>/28件<0件>

 

2.主な事件・事故

(1)国軍の汚職疑惑

 5日、エルナン・サニン国防次官は、アンティオキア県における一般市民の殺害容疑で士官2人を含む18人の国軍兵士の身柄を拘束し、捜査が行われている旨明らかにした。殺害された合計29人の市民は戦闘に巻き込まれて死亡したとされていた。

(2)ガレラス山の噴火

 12日、コロンビア地質・鉱物研究所(INGEOMINAS)は、コロンビア南西部ナリーニョ県に位置するガレラス山の火山活動が活発になったとして警戒レベルを2から最高警戒レベルの1に引き上げた。これにより、付近の住民2200人に対して避難が勧告された。

()医療チームの誘拐事件

 21日、コロンビア南部のプトゥマヨ県において、遠隔地の医療活動を行っていた医療チームの13人がFARCによって誘拐された。その後、25日、12人が解放されたが、1人は誘拐されたままとなっている。

 ()誘拐されていたリスカーノ元下院議員子息の解放

 22日、リスカーノ元下院議員(20008月、FARCにより誘拐)の息子で、428日に左翼ゲリラEPLによって誘拐されたフアン・カルロスが、武装放棄を決意した4人のゲリラにより解放された。ファン・カルロスを誘拐したEPLグループは、リサラルダ県キンチア市周辺において17年間活動してきたが、リーダーの「レイトン」が本年7月に戦闘において死亡して以来、同組織は混乱状態にあったとされる。

 

 

W.外交

1.要人往来

(1)アラン・ガルシア・ペルー大統領のコロンビア訪問

 5日、アラン・ガルシア・ペルー大統領が大統領就任式を前に次期大統領としてコロンビアを訪問し、経済活動の強化等、二国間関係促進につきウリベ大統領、バルコ外相他、当国要人と会談した。

(2)トリホス・パナマ大統領のコロンビア訪問

 7日、トリホス・パナマ大統領がコロンビアを訪問し、ウリベ大統領とパナマ運河拡張計画等につき会談した。

(3)ウリベ大統領のベネズエラ訪問

 8日、ウリベ大統領はベネズエラを訪問し、チャベス・ベネズエラ大統領と共に、コロンビアの天然ガスをベネズエラ西部に輸送するガスパイプライン(バジェナ−マラカイボ湖)建設の着工式に出席した。なお、トリホス・パナマ大統領も同式典に出席した。

(4)ウリベ大統領のパナマ訪問

 11日、ウリベ大統領はパナマを訪問し、プエブラ・パナマ計画首脳会談に出席した。

 

2.コロンビア軍によるエクアドル人貿易商殺害

 19日、コロンビアとエクアドルの国境地帯のナリーニョ県イピアレス市において、貿易商のビクトル・ウーゴ・エンリケスがコロンビア軍の停止命令に従わなかったため兵士の発砲を受けて死亡した件に関し、20日、コロンビア、エクアドル両国外相は本件の調査結果を待って対応する旨発表した。なお、ビクトル・ウーゴ・エンリケスはエクアドル国軍統合参謀本部長の弟であった。