コロンビア内政・外交等定期報告(10月)

 

 

T.概要

<内政>

●国軍大学構内においてFARCの自動車爆弾テロが発生したことにより、ウリベ大統領は人道的人質交換交渉に関するコンタクトを停止した。

●政府とELNの第4回会合がハバナで開催された。基本合意の軸が確認されたが、本格的和平プロセスの開始には至らなかった。

●元「パラ」リーダー「ホルヘ40」の部下から押収されたコンピュータのデータ解読により、「パラ」と政治家の癒着問題が表面化した。

<外交>

●ウリベ大統領はエクアドル領内にFARCのコカ栽培地があることを指摘。

●カルデロン次期(当時)墨大統領がコロンビアを訪問。

●バーンズ米国務次官がコロンビアを訪問。

 

 

U.内政

1.内政一般

(1)保守党

 11日、カルロス・オルギン内務・法務相は保守党の会合において、地方交付金改革の国会審議において保守党議員の立場が分かれていることに関し、保守党が本改革を支持しない場合は大臣を辞職すると述べた。党内の話し合いの結果、上院及び下院の保守党議員は改革法案に賛成することで合意した。

(2)警察庁長官の告発

 24日、ウリベ派のルイス・エルメル・アレナス上院議員(全国統一社会党(U党))は、国家警察のペドロ・レオン・バレンスエラ大佐の証言も得て、ホルヘ・ダニエル・カストロ国家警察長官をメキシコへのコカイン密輸の疑いで告発した。しかし、カストロ国家警察長官が見逃したとされるコカインは、対米コカイン輸出を行う国際的麻薬密輸組織の壊滅のための「泳がせ捜査」の一部であったことが判明し、これにより2トンのコカイン押収とマフィア10人(うち2人は対米引渡要請が出ていた)を逮捕するという成果を挙げた。また、カストロ長官によれば、レオン・バレンスエラ大佐は自らの人事異動に不満を持っていたとされる。アレナス上院議員は、不十分な調査及び、党に事前の連絡なく長官を告発をしたことにより、U党議員、ファン・マヌエル・サントス国防相(U党)及びウリベ大統領から厳しい批判を受けた。

(3)人事

 18日、ウリベ派のカルロス・モレノ・デ・カロ元上院議員が駐南ア大使に任命された。

 

2.非合法武装勢力

(1)パラミリタリー

(イ)「パラ」と政治家の癒着問題

 2日、最高裁判所はコミュニケを通じ、同裁判所刑事局の判事9人及びこれを補佐する特別チームが「パラ」と政治家の癒着問題に関する調査を行う旨発表した。

(ロ)政治的地位

 政府は、「公正・和平」法及びこれに関する政令において「パラ」の犯罪を政治犯罪と認める条項を盛り込むことに失敗してきた。3日、上院・下院の第一委員会で行われていた「治安」法(2002年法律第782号)の延長審議において再びこれを試みたが、自由党及び左派PDA党の強い反対により再度失敗した。

(ハ)「ホルヘ40」のコンピュータ

 3月に元「パラ」リーダー「ホルヘ40」の部下から押収したコンピュータのデータ解読により、虐殺等「パラ」の犯罪に関する多くの情報が発見されたことが報じられた。これにより、左派PDA党のグスタボ・ペトロ上院議員は、上院本会議において国会議員と「パラ」の癒着を厳しく追及した。

(ニ)「パラ」の提出武器

 5日、政府は、「パラ」の武装放棄により提出された武器に関し、年内に破壊が開始される旨決定した。「パラ」が引き渡した約18000丁の銃器、200万発以上の弾薬を始めとする武器については、検察庁、大統領府治安局(DAS)、国家警察が弾道等のデータをとった上で倉庫で保管されているが、政府は犯罪組織への横流し等の危険性を指摘していた。また、全国紛争被害者補償・和解委員会(CNRR)、OAS対コロンビア支援ミッション(MAPP-OEA)も廃棄を求めていた。他方、武器廃棄が「パラ」の犯罪捜査の障害になる可能性を懸念するNGOもある。

(ホ)一部「パラ」幹部の移送

 18日、アンティオキア県ラ・セハ市の収容施設に収監されていた「パラ」幹部のディエゴ・ホセ・マルティネスとマヌエル・ピラバン(「ホルヘ・ピラタ」)は、身の安全確保を理由にボゴタ市のラ・ピコタ刑務所に移送された。ディエゴ・ホセ・マルティネスは、元AUC最高幹部のカルロス・カスターニョが行方不明となった際、最初に同人の妻を匿ったためにカルロス・カスターニョ殺害に加わった「パラ」リーダーから恨みを買っているとされ、「ホルヘ・ピラタ」も他の「パラ」リーダーとの争いを抱えているとされる。

(ヘ)「パラ」幹部の弁護士の暗殺

 27日、マグダレナ川中流域で活動していた元「パラ」幹部「ラモン・イササ」の弁護士がメデジン市において暗殺された。

(2)FARC

(イ)自動車爆弾テロ

(a)19日、ボゴタ市北部に位置するヌエバ・グラナダ国軍大学の駐車場において自動車爆弾が爆発し、25名が負傷した。自動車爆弾は偽の身分証を持った海軍の制服を身につけた者によって仕掛けられたと見られている。当局の通信傍受により、本テロ事件はFARCによるものと断定された。

(b)29日、メタ県ビジャビセンシオ市の陸軍施設前における自動車爆弾テロにより、市民1人、兵士1人が死亡し、2人が負傷した。使用された爆薬の種類により、FARCによる犯行と見られている。

(ロ)人道的人質交換交渉

 2日、FARCがウリベ大統領、上下両院議長等に人道的人質交換交渉に関する書簡を送付したと報じられた。FARCは書簡の中で、同交渉のためにはバジェ・デル・カウカ県のプラデラ、フロリダ両村から45日間にわたって治安機関を撤退させる必要があり、また、人質交換が終了した際の和平プロセスの開始を仄めかす内容であったとされる。同日、大統領府はコミュニケを発出し、和平高等弁務官に本件につき合意を模索するよう求めつつ、200512月に西、スイス、フランスが提案した際の条件が保証されなければならないとした。また、和平プロセスが終了した際には憲法制定議会の招集の可能性があると言及した。

 しかしながら、19日にボゴタ市の国軍大学でFARCによる自動車爆弾テロが発生したことを受けて、ウリベ大統領はFARCのテロ行為を厳しく糾弾するとともに政府の交渉促進者に対しては交渉に関するコンタクトの停止を求め、人質救出は軍事作戦により遂行する旨表明した。

 なお、24日にダテクスコ社が13都市で実施した世論調査によれば、49.9%が軍事作戦による人質救出を支持し、38.2%が不支持であった。

 他方、FARC27日付コミュニケを通じ、国軍大学におけるテロとは無関係であるとし、人道的人質交換交渉への意欲を示した。

(ハ)FARC幹部「シモン・トリニダッド」の裁判

 10日、20041月にエクアドルにおいて逮捕され、同年12月に米国へと引き渡されたFARC幹部「シモン・トリニダッド」の裁判がワシントンの連邦裁判所で開始した。「シモン・トリニダッド」には、麻薬取引の他、2003年にカケタ県に墜落した小型飛行機に乗っていた米国人3人の誘拐に関与したとの容疑がかけられている。

(ニ)都市民兵の活動

 11日、FARCが民兵を居住させる目的でボゴタ市内の貧困地区シウダッド・ボリバルの土地(9万平方メートル)を購入し、ここを拠点にテロ活動を実行しようとしていたことが報じられた。

(ホ)FARC幹部の逮捕

 15日、グアビアレ県のジャングル地帯で実施された陸軍、海軍及び警察の合同作戦により、FARC「アルマンド・リオス」第一戦線のロジ担当幹部「チェペ・ボジャコ」が逮捕された。「チェペ・ボジャコ」はFARC最大の武器商人の一人であり、2004年にベネズエラで逮捕されたが、その8ヶ月後に脱獄していた。麻薬密輸容疑により米国から引渡要請が為されている。

(3)ELNと政府の第4回直接対話

(イ)政府によるELNに対する資金提供

 コロンビア政府とELNの第4回直接対話(於:ハバナ)を直前に控えた12日、ウリベ大統領は、ELNが誘拐を停止するのであれば政府はELNに資金援助を行う用意があると発言した。これに対し、ELNの「アントニオ・ガルシア」司令官は、和平プロセスは金銭問題ではないと不快感を表明した。

(ロ)第4回会合

 20日〜25日の日程でハバナにおいてコロンビア政府とELNとの第4回直接対話が開催された。本会合の前後期間も含め、市民グループ、国際社会も交えた多くの会合が実施され、26日の閉幕式においては成果文書が発表された。本会合においては、和平プロセス開始のための基本合意を構成する2つの軸(和平のための環境作り及び市民社会の参加)が確認されるなど前進があった反面、期待されていた本格的和平プロセスの開始には至らなかった。

 なお、我が国はアラウホ外相からの招待状を受けて、オブザーバー国として本会合に参加した。

(ハ)対人地雷除去の表明

 29日、政府とELNの第4回直接対話が開催されたハバナにおいて、ELNの「アントニオ・ガルシア」司令官はナリーニョ県サマニエゴ市周辺に埋設した対人地雷の除去に便宜を図る旨表明した。サマニエゴ市周辺では2006年に入り16人が対人地雷の被害を受けている(うち2人が死亡)。

(4)麻薬組織

 15日、米国連邦麻薬取締局(DEA)と国家警察司法捜査局(DIJIN)が、コロンビアから1年間に密輸される推定700トンのコカインの大部分を取り仕切っているとされる16人の麻薬マフィア・リストを作成したことが報じられた。同リストには、コロンビア最大の麻薬組織ノルテ・デル・バジェ・カルテルの幹部、FARC幹部が含まれている他、今回初めて女性が加えられた。なお、ウリベ政権は既に400人の麻薬マフィアの対米引渡を承認している。

 

 

V.治安等

1.統計(<>内はボゴタ市。国家警察統計。)

(1)殺人:1489件<116件>

(2)集団殺人:210人<00人>

(3)脅迫:134件<19件>

(4)窃盗・強盗:8286件<1851件>

(5)自動車盗難:1564件<406件>

(6)誘拐:56件<7件>

(7)テロ:49件<1件>

 

2.主な事件・事故

(1)検事の暗殺未遂

 1日、検察庁の資金洗浄担当検事、差押え財産担当検事及び麻薬問題担当検事を同日の昼食会において暗殺する計画があったことが判明した。これら検事はそれぞれの都合により昼食会出席を取り止めたため難を逃れた。当局は収監中の複数の麻薬マフィアによる計画との見方を示している。

(2)海賊版DVD押収を巡る警察官逮捕

 5日、検察庁は、昨年7月にボゴタ市内の商業地区で押収された457000枚の海賊版DVDが所在不明となった事件に関し、警察官35人の逮捕命令を出した。

(3)先住民ヌカク・マクーのリーダーの自殺

 200511月及び20063月、グアビアレ県の森林地帯に居住する先住民ヌカク・マクーの集団が、紛争による暴力的状況から逃れるためにサンホセ・デ・グアビアレ市に避難した。その後、スペイン語を話すことができる若者モウ・ベがリーダーとなり、国内諸機関に対し200人以上のヌカク・マクーが村に戻るための援助を要請していた。しかしながら、帰還のための支援が得られなかったため、モウ・ベは責任を感じ、また、同先住民からは嘘つき呼ばわりされたことを苦にし、18日、メタ県ビジャビセンシオ市において自殺した。

 

 

W.外交

1.対エクアドル関係

 7日、ウリベ大統領は、プトゥマヨ県プエルト・アシス市のタウンミーティングにおいて、国境地帯のエクアドル領に8000ヘクタールのコカ栽培地があると述べた。また、コレア大統領候補(当時)が大統領選挙活動中にFARCはテロリストではないと発言したことを受けて、FARCは麻薬を資金源とする民主主義に挑戦するテロリストであると述べた。

2.要人往来

(1)カルデロン次期(当時)墨大統領のコロンビア訪問

 3日、カルデロン次期墨大統領はエルサルバドルからコロンビアを訪れ、4日にウリベ大統領と治安、貿易等について会談した。

(2)ニコラス・バーンズ米国務次官のコロンビア訪問

 24日〜26日、ニコラス・バーンズ米国務次官がシャノン国務省西半球担当次官補、アン・パターソン国務省国際麻薬・法執行担当次官補(前駐「コ」米大使)及び15人の米国政府関係者とともにコロンビアを訪問し、ウリベ大統領他政府要人と会合を持った。バーンズ国務次官は、米国議会選挙(200611月)の結果に拘わらず対「コ」支援が継続される見通しを表明した。