コロンビア内政・外交等定期報告(11月)

 

 

T.概要

<内政>

●ウリベ派国会議員3人に対し、パラミリタリーとの癒着容疑により逮捕命令が出された。

●マリア・コンスエロ・アラウホ外相の兄であるアルバロ・アラウホ上院議員に「パラ」との癒着疑惑が生じ、国会ではアラウホ外相の辞任を求める声が上がった。

●コルドバ県ティエラデントロの警察署がFARCにより襲撃され、警察官17人と市民3人が殺害された。

<外交>

●ウリベ大統領は訪米し、米議会関係者と次期プラン・コロンビア等につき会談した。

●第16回イベロアメリカ・サミット(於:モンテビデオ)において、コロンビアの非合法武装組織構成員の武装放棄を評価するとともに、元構成員の社会復帰支援を表明する内容の特別コミュニケが発出された。

 

 

U.内政

1.内政一般

(1)世論調査

 ギャロップ・コロンビアが1026日〜29日に主要4都市の1000人を対象に行った世論調査結果が発表された。興味深い点は次の通り。

(イ)コロンビアは良くなっているか。

良くなっている:40%(今回)−53%(9月)−57%(6月)

悪くなっている:34%(今回)−30%(9月)−23%(6月)

(ロ)ウリベ大統領のイメージ

良い:66%(今回)−72%(9月)−77%(6月)

悪い:24%(今回)−20%(9月)−19%(6月)

(ハ)ウリベ大統領の手腕

評価する:70%(今回)−75%(9月)−79%(6月)

評価しない:24%(今回)−20%(9月)−17%(6月)

(ニ)失業率に対するウリベ大統領の手腕

評価する:32%(今回)−41%(9月)−46%(6月)

評価しない:63%(今回)−54%(9月)−49%(6月)

(ホ)パラミリタリーの和平プロセスの進展

良い:48%(今回)−65%(9月)−63%(6月)

悪い:40%(今回)−27%(9月)−27%(6月)

不明:12%(今回)−8%(9月)−10%(6月)

(ヘ)議会に対するイメージ

良い:38%(今回)−49%(9月)−54%(6月)

悪い:50%(今回)−40%(9月)−35%(6月)

(2)アヘンの原料ケシの根絶

 19日、国家警察のジャングル部隊がナリーニョ県トゥケレス近郊に残っていた23ヘクタールのケシを伐採したことを受け、ファン・マヌエル・サントス国防相は、1994年以降、15000ヘクタール以上栽培されていたケシを根絶したと述べた。しかしながら、再びケシが栽培される可能性や合法作物の栽培地に混在させたケシ栽培地がある可能性は否定できないと述べた。

(3)コロンビア平和賞

 27日、非合法武装組織に誘拐された被害者家族によって作られたNGO「希望の道・カンデラリアの母たち」協会は、これまでの地道な活動を評価され、UNDP等によりコロンビア平和賞を授与された。

(4)M-19による最高裁判所占拠事件の真相

 1年前に創設された同事件の真相究明委員会は、15日、予備報告書を発表した。報告書によれば、当時、ベリサリオ・ベタンクール大統領は直接の指揮を行っておらず、警察及び国軍から報告を受けていただけであったことが判明した。さらに、治安機関の突入の最中に死亡した判事3人はM-19以外の銃弾を受けており、治安機関の統制がとれていなかった状況が明らかになった。また、同事件は麻薬組織メデジン・カルテルから資金を提供されたM-19が実行したことが確認された。

(5)児童法

 8日、ウリベ大統領は、約20年前に施行された未成年者法に代わる児童法を裁可した。未成年に対する虐待が急増している状況を踏まえた措置であり、NGO及び政府が10年間取り組んできたものである。児童法には、未成年虐待により有罪となった者の名前、写真をテレビ局が公表する義務があるという条項があり、物議を醸していた。

(6)人事

 1日、外務省のアレハンドロ・ボルダ多国間担当次官が駐韓国大使に任命された。

 

2.非合法武装勢力

(1)パラミリタリー

(イ)「パラ」と政治家の癒着問題

(a)「パラ」との癒着容疑による国会議員に対する逮捕命令

 9日、最高裁判所はスクレ県出身の3人のウリベ派国会議員に対し逮捕令状を発出し、その後、3人は当局に出頭した。アルバロ・ガルシア上院議員(コロンビア民主党)に対しては15人の虐殺の首謀容疑、ハイロ・エンリケ・メルラノ上院議員(全国統一社会等(U党))に対しては「パラ」所属の容疑、エリック・モリス下院議員(コロンビア民主党)に対しては「パラ」への資金提供容疑がそれぞれかけられている。14日、U党及びコロンビア民主党はそれぞれの議員の党員資格を一時停止した。

(b)アルバロ・アラウホ上院議員を巡る「パラ」との癒着疑惑

 マリア・コンスエロ・アラウホ外相の兄で、ウリベ派のアラス・エキーポ・コロンビア党のアルバロ・アラウホ上院議員は、いわゆる「「ホルヘ40」のコンピュータ」のデータに名前があったことにより、「パラ」との癒着疑惑が持たれた。

 18日、アルバロ・アラウホ上院議員はラジオ番組を通じ、2004年末に当時下院議員であったエレオノラ・ピネダの誕生パーティーにおいて元「パラ」の「ホルヘ40」とマンクーソと同じテーブルにいたことを認めた。また、19日に掲載されたインタビュー記事において、法的問題は個人に帰すものの、同議員に捜査が及ぶことはウリベ大統領、アラウホ外相らに悪影響を及ぼすのではないかと懸念していると語った。

 本件に関し、22日、アラウホ外相はイグアラン検察庁長官、アルバロ・アラウホ上院議員と会合を持った事実を認めつつも、同検察庁長官がアラウホ家のメンバーに対して捜査を行っていないと発言したことを明らかにした。また、噂される外相辞任を否定した。

 しかし、28日、最高裁判所は、「パラ」への資金供与等の疑惑に関し、アルバロ・アラウホ上院議員を含む国会議員6人を125日〜7日に喚問することを発表。29日の上院の審議においては、自由党のセシリア・ロペス議員、左派PDA党のホルヘ・ロブレド議員らがアラウホ外相の辞任を求める一幕もあったが、アラウホ外相は外相としての自らの働きぶりをアピールして職務の継続に意欲を見せ、また、検察庁長官との面談についても繰り返し説明をして疑惑を晴らした。

(c)ウリベ大統領の反応

 18日、ウリベ大統領は、政治家と非合法武装組織の癒着問題に関し、真相の究明を求めると同時に犯罪組織と結びついた政治家に対する厳格な処罰を求めた。また、名前を出さなかったものの、本件に関する最も強力な批判者の一人であるガビリア元大統領に関し、同政権が麻薬組織と手を結んで他の麻薬組織を壊滅させたことを暗に批判した。

(d)「パラ」と政治家の秘密会合

 25日、ミゲル・デ・ラ・エスプリエジャ上院議員(コロンビア民主党)は新聞のインタビュー記事において、コルドバ県の政治家と「パラ」の繋がり、「パラ」の影響力などについて話すとともに、2001年末にカルロス・カスターニョとマンクーソがサンタフェ・デ・ラリートで開催した「パラ」の政治運動化に関する秘密会合には国会議員を始め、県知事、市長、市会議員などが集まり、会合の後には出席者が秘密文書に署名をしたと語った。この文書の存在についてはエレオノラ・ピネダ元下院議員、フリオ・マンスール保守党党首も認め、非合法武装組織との秘密文書合意が問題視された。

(ロ)ビセンテ・カスターニョに対する懸賞金

 これまで、元「パラ」リーダーで弟のカルロス・カスターニョ殺害を命じた容疑がもたれているビセンテ・カスターニョに対しては1億ペソの懸賞金がかけられていたが、10日、コロンビア政府と米国政府は同人を最も捜索されるコロンビア人麻薬マフィアのリストに加え、懸賞金を500万ドルに増やした。

(ハ)「パラ」による被害者の死体発掘

 20日、検察庁の公正・和平チームはこれまに80カ所の死体集団埋葬地を発掘し、197の死体を発見したと発表した。しかしながら、更に2916体の死体を捜索していることが報じられた。検察庁はこれら死体のDNAデータベースの構築を開始した。

(2)FARC

(イ)警察署に対する攻撃

 1日、コルドバ県ティエラデントロの警察署がFARCに襲撃され、警察官17人と民間人3人が死亡した。この攻撃には、FARC5、第18、第58戦線から約500人が参加していたとされる。なお、フレディ・パディージャ・デ・レオン陸軍総司令官は新聞のインタビューにおいて、FARCは(ティエラデントロの)小さい町を占拠するという目的すら達成できず、また、FARCにはライフルAK-47の弾薬が不足していること、兵員も2002年の17000人から現在は11000人へと減少していることを挙げつつ、FARCが弱体化していると評した。

(ロ)FARC幹部「シモン・トリニダッド」の裁判

 1010日、ワシントンの連邦裁判所においてFARC幹部「シモン・トリニダッド」の裁判が開始したが、1117日、20日、21日のいずれも12人の陪審員は合意に達せず、裁判は無効となった。検察は同じ容疑による新たな裁判を求めた(同裁判は2007326日に開始することとなった)。なお、20075月には米国へのコカイン密輸の容疑に関する裁判が予定されている。

(ハ)米国左派系知識人等に充てた書簡

 9日、FARCが米国の左派系知識人及び著名人に充てた書簡の存在が明らかになった。書簡では、ブッシュ大統領に人質交換をするための圧力をかけるよう求めている。なお、書簡の宛先は、ノーム・チョムスキー、ジェームズ・ペトラス、ジェシー・ジャクソン、アンジェラ・デービス、マイケル・ムーア、デンゼル・ワシントンであった。

(ニ)6年間の人質生活

 1日、1998年にバウペス県の県都ミトゥ市でFARCに誘拐された6人の警察官が人質となって8年が過ぎた。1998111日、FARCはミトゥ市の警察署を襲撃し、警察官16人を殺害、61人を誘拐した。その後、20016月にはこのうち54人が解放された。

(ホ)次期「愛国プラン」

 15日、ファン・マヌエル・サントス国防相は、FARC幹部の拘束を主目的とした軍事作戦「愛国プラン」に替わる新たな軍事作戦を実施する旨発表した。次期「愛国プラン」ではFARC幹部の拘束よりも麻薬組織の解体に重点を置くとのこと。

(ヘ)FARCの対外交渉役の逮捕

 19日、FARCメンバーで対外交渉行っていたオラシオ・カストロ(「フェルナンド・カイセド」)がボゴタ市南部において陸軍に身柄拘束された。

 

 

V.治安等

1.統計(<>内はボゴタ市。国家警察統計。)

(1)殺人:1487件<108件>

(2)集団殺人:28人<00人>

(3)脅迫:104件<16件>

(4)窃盗・強盗:7908件<1827件>

(5)自動車盗難:1600件<359件>

(6)誘拐:47件<6件>

(7)テロ:45件<1件>

 

2.主な事件・事故

(1)ブエナベントゥーラの治安

 バジェ県ブエナベントゥーラ市では幾つかの地域で夜間外出禁止令を出すなどの治安対策がとられているにも拘わらず、2006年は11月までに麻薬密輸を巡る縄張り争いを原因とする殺人事件が299件発生し、2000年から2005年には2644人が殺害されていることが8日報じられた。これら殺人事件の多くには麻薬マフィア、元「パラ」、左翼ゲリラ民兵が関与しているとされる。この地域の失業率が60%に達していることも治安悪化の要因と考えられている。

(2)「やらせ」テロ事件

 21日、マリオ・イグアラン検察庁長官は、5月の大統領選挙前後にボゴタ市内で発生したテロ事件のやらせ疑惑に関し、少なくとも5件のうち1件は既に逮捕されている軍人2名が功績をでっち上げるために仕組まれたものであったと述べた。自由党と左派PDA党の上院議員グループはやらせテロ事件の責任によりファン・マヌエル・サントス国防相に辞任を求めたが、同国防相はこれを拒否した。

(3)自動車爆弾

 2日、クンディナマルカ県フサガスカ市郊外の路上で自動車爆弾が爆発し、3人が死亡した。犯人は特定されていない。

(4)コカインの海上押収

 18日〜19日、海軍と国家警察による共同作戦により、合計5.2トンのコカインが海上で押収された。このコカインはブエナベントゥーラ及びサンアンドレスの港から密輸されたことが判明した。

 

 

W.外交

1.第16回イベロアメリカ・サミット

 3日〜5日にモンテビデオで開催された第16回イベロアメリカ・サミットにおいて、コロンビアの非合法武装組織構成員の武装放棄を評価するとともに、元構成員の社会復帰支援を表明する内容の特別コミュニケが発出された。

 

2.要人往来

(1)ウリベ大統領の訪米

 ウリベ大統領は13日〜14日の日程で米国を訪問し、米議会関係者とATPDEA延長問題、FTA、次期プラン・コロンビア等について会談した。

(2)コロンビア・ペルー国防相会談

 26日、ペルーのイキトスで開催されたコロンビアとペルーの国防相会談において、バグネル・ペルー国防相はファン・マヌエル・サントス国防相に対し、FARCメンバーがペルー領内に侵入していることを認めたが、民間人を装っているために発見が困難であると述べた。

(3)ドナート・ディ・サント伊外務次官のコロンビア訪問

 9日、ドナート・ディ・サント外務次官がロー・キーでコロンビアを訪問し、アラウホ外相他と会談した。同次官は今回の訪問でマッシモ・ダレマ伊外相の指示により、コロンビア政府とFARCの来るべき歩み寄りに際し、伊が交渉促進の役目を果たす用意があると述べた。