コロンビア内政・外交等定期報告(1月)

 

 

T.概要

<内政>

2001年に「パラ」と政治家等が秘密会合を開いた際に署名された文書の詳細が明らかになり、本件に関し最高裁判所が国会議員の喚問を行った。

●元「パラ」リーダーのマンクーソの取り調べが進み、70の犯罪に関する自白が行われた。また、元「パラ」の司法手続きをテレビ生中継するか否かが議論された。

●カケタ県、プトゥマヨ県においてFARCによるテロ攻撃があった。

<外交>

●ウリベ大統領が大統領就任式典出席のためにニカラグア、エクアドルを訪問。

●アラウホ外相が西、ポルトガル、英、ベルギー、独、スイスを訪問。

●シャノン米国務省西半球担当次官補他がコロンビアを訪問。

 

U.内政

1.内政一般

(1)自由党の内紛

 23日、自由党元党首のファン・フェルナンド・クリスト上院議員が自由党員の親睦を図るために設けた夕食会において、自由党有力者の間に軋轢が生じた。前自由党大統領候補のオラシオ・セルパは、「パラ」との秘密会合に出席したファン・マヌエル・ロペス上院議員による自身の党員資格の停止表明を巡り、党に諮らず同議員に本件表明を強く求めたロドリゴ・リベラ(前大統領選挙における自由党予備候補者)を非難するとともに、党の指導体制に関してセサル・ガビリア自由党党首(元大統領)と激しく議論を交わした。

(2)大統領の三選の可能性を巡る発言

 16日、コロンビアで最も有力な企業家であるフリオ・マリオ・サントドミンゴは、ボゴタ市で開催されたウリベ派集会において、ウリベ大統領の2回目の再選を提案したため会は紛糾した。また、24日には保守党のシロ・ラミレス上院議員が、ウリベ大統領の2回目の再選を可能とする法案提出の準備が出来ていると述べた。

(3)人事

 16日、コロンビア貿易振興公社(Proexport)総裁のギジェルモ・プラタが、商工観光大臣に就任した。

 

2.非合法武装勢力

(1)パラミリタリー

(イ)「パラ」と政治家等の合意文書

 19日、昨年11月にミゲル・デ・ラ・エスプリエジャ上院議員が暴露した「パラ」と政治家他の秘密合意文書の詳細が明らかになった。署名は2001723日に32人によって行われ、この中には上院議員4人、下院議員7人、知事2人、市長5人が含まれている。合意文書は保守主義色が強い内容となっており、和平についても言及されているとのことである。

(ロ)「パラ」と政治家の癒着

 30日、最高裁判所は「パラ」幹部との会合に関する尋問を行うため、ファン・マヌエル・ロペス上院議員(自由党)、レヒナルド・モンテス上院議員(急進改革党)、ウイリアム・モンテス上院議員(保守党)、ホセ・ネグレテ下院議員(保守党)を召喚するとともに、コロンビア民主党のミゲル・デ・ラ・エスプリエジャ上院議員を再度喚問した。

(ハ)非合法勢力と政治家の関係に関するウリベ大統領の発言

 27日、ウリベ大統領はペレイラ市のタウン・ミーティングにおいて、「パラ」と政治家の癒着問題に関し、「パラ」だけでなく全ての非合法武装組織と政治家の関係を明らかにすべきであり、また、国家(過去の政権)に対しても統治を放棄した責任を追及すべきであると述べた。この発言は、FARCとの和平交渉を進めたパストラーナ政権に対する批判や左派PDA党のカルロス・ガビリア党首とゲリラとの繋がりを仄めかすことを意図していると見られている。

(ニ)社会復帰担当大統領高等補佐官の活動

 2日、フランク・パール社会復帰担当大統領高等補佐官は、57人の元「パラ」リーダーが収監されているイタグイ刑務所を訪れ、元「パラ」の社会復帰に関して6時間の会合を持った。

(ホ)マンクーソの自白

 20061219日に開始した元「パラ」幹部サルバトレ・マンクーソの取り調べ(任意の自白)は1月に入ってからも継続して行われた。この中で、国軍から提供された情報に基づいて19人の市民を殺害したこと(エル・アロ虐殺事件)、1998年の大統領選挙においてはまずオラシオ・セルパ自由党候補、決選投票ではアンドレス・パストラーナ候補に投票するよう圧力をかけたこと等が明らかになった。これまでにマンクーソは4人の市長、2人の市議会議員の暗殺を含む約70の犯罪に関する自白を行った。

(ヘ)司法手続きのテレビ中継問題

 17日、元「パラ」の司法手続きに参加している紛争被害者が、旅費等の点から直接同手続きに参加することが困難であり、また、「パラ」の犯罪は社会全体に関わるため、元「パラ」の司法手続きは広く公開されるべきであると主張していることが報じられた。

 18日、これを受けて政府、最高裁判所、検察庁は、元「パラ」武装放棄者の司法手続きには被害者の他にマスメディアも参加することができるとの判断を示した。

 しかし、24日、マンクーソと15人の元「パラ」リーダーはコミュニケを通じ、任意の自白をテレビ中継することは和平プロセスの原則の変更であり、また、家族を危険に晒すものであるという理由から、最高裁判所等の決定を拒否した。

 25日、検察庁長官、行政監察庁長官、国防相、内務・法務相及び全国紛争被害者補償・和解委員会(CNRR)委員長は、捜査の妨げとならないように放送は生放送ではなく編集され、放送部分の選択は検察官が行うとの決定を下したが、ウリベ大統領は27日にペレイラ市のタウン・ミーティングにおいて、テレビ中継は編集なしの生中継とすべきと発言した。

(2)FARC

(イ)フェルナンド・アラウホ元開発相の脱出

 200012月にFARCによって誘拐されて6年間人質となっていたアラウホ元開発相は、20061231日、国軍による救出作戦に乗じてFARCキャンプを脱出し、200715日、海軍に保護された(注:219日、辞任を表明したマリア・コンスエロ・アラウホ外相の後任に任命された)。

(ロ)2007年最初の虐殺事件

 1日、FARCがアンティオキア県ヤルマル市において市民4人を殺害した。麻薬ビジネス絡みの虐殺又は国軍に協力的な市民に対する警告と見られている。

(ハ)治安機関に対する攻撃

 14日、プトゥマヨ県プエルト・アシスにおいてパトロールを行っていた警察官20人は、FARC48戦線が仕掛けた50キロのアンフォ爆薬の爆発を受け、5人が死亡、1人が負傷した。この他にもう一つの爆弾が仕掛けられていたが不発であった。なお、事件後、戦闘によりゲリラ2名が死亡した。

(ニ)人道的人質交換交渉の行方

 28日、ロペス・ミケルセン元大統領及びエルネスト・サンペール元大統領はウリベ大統領に対し、FARCに捕らえられている57人の人質(注:身代金目的の人質ではなく政治目的の誘拐被害者)を解放するために人道的人質交換交渉を促進するよう求めた。また、サンペール元大統領は、FARCが治安機関の撤退を求めているバジェ県フロリダ、プラデラ両村においてウリベ大統領が兵力の増強をしていることが、同交渉実現の障害になると批判した。

(3)ELN

 ELNコミッショナーの「フランシスコ・ガラン」は、イタグイ刑務所に収監されて14年と1ヶ月19日後の23日、服役態度などが評価されたことにより条件付きの釈放(仮釈放)が許可された。今後11年間は出国の許可申請や移転について報告の義務がある。

 

 

V.治安等

1.統計(<>内はボゴタ市。国家警察統計。)

(1)殺人:1506件<84件>

(2)集団殺人:14人<00人>

(3)脅迫:34件<6件>

(4)窃盗・強盗:6918件<1817件>

(5)自動車盗難:1395件<347件>

(6)誘拐:23件<1件>

(7)テロ:18件<0件>

 

2.主な事件・事故

(1)テレスールTV局特派員のFARCとの関係疑惑

 11月にFARCのテロ活動に関与したとの容疑で大統領府治安局(DAS)に身柄を拘束されたテレスールTV局特派員フレディ・ムニョスが、9日、証拠不十分により釈放された。ムニョスにはFARC民兵との繋がりの他、送電塔に対する攻撃の容疑がかけられていた。

(2)犯罪による隠し財産の発見

 12日〜17日の間にカリ市内で合計約5400万ドルの現金、650万ドル相当の金塊が発見された件に関し、当局は麻薬マフィアの「チュペタ」が数軒の家屋の壁や床に隠した違法財産であったとした。

(3)多国籍企業ネスレに対するテロ

 17日、カケタ県北部のエル・ドンセージョに位置する多国籍企業ネスレの工場が、300キロのアンフォ爆薬を積んだ自動車爆弾により攻撃を受けた。同企業は15日にもサンビセンテ・デル・カグアンにある2つの貯蔵タンクが破壊されたばかりであった。ネスレは治安状況の悪いカケタ県に進出している数少ない巨大企業の一つであり、1265000リットルの牛乳を地域住民から購入していたという。FARCによる犯行と見られている。

(4)コカインの押収

 19日、2006年にコロンビア海軍は76トンのコカインを押収したことが発表された。

(5)ブエナベントゥーラにおけるテロ

 21日、バジェ県ブエナベントゥーラにおいて警察のトラックに対するテロ攻撃があり、14才の少年を含む市民4人と警察官2人が死亡した。太平洋岸のコカイン密輸拠点となっているブエナベントゥーラでは、FARC民兵、元「パラ」、麻薬マフィアの抗争が絶えず、3ヶ月前から警察官1057人が陸軍、海軍とともに治安強化にあたっていた。

(5)国軍による先住民の殺害

 23日夜、バジェ県フロリダにおいて、先住民を乗せて移動中のトラックから爆発音が生じ、これに反応した陸軍の2部隊が銃撃を行い先住民の運転手が死亡した。フロリダのマテグアドゥア先住民保護区の先住民は、12人の陸軍兵士を人質にとってこれに抗議した。その後、陸軍とバジェ県庁が仲介し、陸軍兵士は解放された。

(6)ボテロ元国防相に対する2回目の有罪判決

 24日、最高裁判所は、1994年にサンペール元大統領の大統領選挙活動を率いていたフェルナンド・ボテロ・セア元国防相に対し、サンペール陣営に供与された選挙資金を横領した罪により、懲役26ヶ月を宣告した。

 ボテロ元国防相は、1996年、サンペール元大統領の大統領選挙活動において違法財産を受領したとして懲役53ヶ月を言い渡され、30ヶ月の服役後に減刑され釈放された。今回、最高裁判所は条件付きの執行停止や自宅軟禁などの特別措置を認めなかった。これに対し、ボテロ元国防相はOASの米州人権委員会及び国連人権委員会に対して訴えを起こすと表明した。

 

 

W.外交

1.対エクアドル関係

 9日、エクアドル外務省はOAS常設理事会に対し、コロンビアの除草剤散布停止を求める訴えを起こした。また、除草剤の有害性に関する国連の報告書を精査する二国間委員会の設置をコロンビアに呼びかけた。

 10日、オルテガ・ニカラグア大統領の就任式典に出席するためにマナグアを訪問していたウリベ大統領とコレア・エクアドル次期(当時)大統領は、非公開の二国間会合を持った後、コロンビアがエクアドルとの国境地帯における除草剤散布を継続するものの、エクアドル側に除草剤が散布されないよう検査官を派遣することで合意した旨発表した。

 

2.要人往来

(1)アラウホ外相の欧州外遊

 アラウホ外相は、7日〜12日に西、ポルトガル、英国、31日から21日にベルギー、独、スイスを訪問し、CANEU間のFTA交渉、麻薬対策、武装放棄者の社会復帰等について会談を行った。

(2)オルテガ・ニカラグア大統領就任式典

 10日、ウリベ大統領はマナグアを訪問し、オルテガ・ニカラグア大統領の就任式典に出席した。

(3)ウリベ大統領のエクアドル訪問

 15日、ウリベ大統領は、コレア・エクアドル大統領の就任式典に出席するためエクアドルを訪問した。

(4)米国政府代表団のコロンビア訪問

 29日、シャノン国務省西半球担当次官補、アン・パターソン国務省国際麻薬・法執行担当次官補(前駐「コ」米大使)他によって構成される米政府代表団はコロンビアを訪問し、ウリベ大統領、主要閣僚、検察庁長官等と次期プラン・コロンビア等につき会談した。