コロンビア内政・外交等定期報告(2月)
T.概要
<内政>
●2007年から2013年の6年間で総額438億3660万ペソの次期プラン・コロンビアが公表された。重点分野は社会開発、人権問題、国内避難民対策へとシフト。
●パラミリタリーとの癒着容疑により、アラウホ外相(当時)の弟を含む6人の国会議員に逮捕命令が発出された。
●アラウホ外相が弟及び父親に対する逮捕命令を受けて外相を辞任し、後任にはFARCに6年間捕らえられていたフェルナンド・アラウホ元開発相が28日に就任した。
●FARCはホームページを通じて初めて政府とELNの対話プロセスに不快感を表明した。
<外交>
●ブッシュ政権は議会に対し、2008年の対コロンビア支援としてこれまでと同水準の7億500万ドルを要請した。
●ファン・マヌエル・サントス国防相、フランシスコ・サントス副大統領はそれぞれ米国を訪問した。
U.内政
1.内政一般
(1)次期プラン・コロンビア
1日、コロンビア政府が次期プラン・コロンビアとして、「民主主義と社会開発の強化のための戦略」を策定したことが報じられた。同戦略は2007年から2013年の6年間にプラン・コロンビアの6倍となる総額438億3660万ペソの支出が計画されており、そのうち30%を国際社会の支援から得る予定としている。また、重点分野はプラン・コロンビアの麻薬・テロ対策から社会開発、人権、国内避難民対策にシフトされるとの由。
(2)パラミリタリーと政治家の癒着スキャンダル(「パラポリティカ」)
(イ)ウリベ大統領の発言
3日、コルドバ県モンテリバノにおけるタウンミーティングにおいて、ウリベ大統領は「パラポリティカ」批判の急先鋒である左派PDA党のグスタボ・ペトロ上院議員(元M-19メンバー)を「市民の格好をしたテロリスト」と呼び物議を醸した。これは、2日にペトロ上院議員が新聞紙上のインタビューにおいて、ウリベ大統領を「パラ」を増長させた張本人であると批判するとともに、ウリベ大統領の兄弟に対しても「パラ」との繋がりがあると批判したことに対する発言と考えられている。
(ロ)国会議員の逮捕
15日、最高裁判所は「パラ」との癒着容疑により国会議員6人に対する逮捕命令を発出した。6人の国会議員の中には、マリア・コンスエロ・アラウホ外相(当時)の兄アルバロ・アラウホ上院議員も含まれている。このうち、国外に逃亡したホルヘ・ルイス・カバジェロ下院議員を除く5人の国会議員の身柄が拘束された。
アルバロ・アラウホ上院議員に対しては、選挙戦を有利に戦うために対抗候補を「パラ」に誘拐させた容疑がかけられている。また、同容疑によりアルバロ・アラウホ上院議員の父親アルバロ・アラウホ・ノゲラに対しても3月2日に逮捕命令が出された。
(3)サンペール元大統領(自由党)に対する告発
13日、サンペール元大統領の選挙運動を行っていたフェルナンド・ボテロ・セア(元国防相、画家ボテロの息子)は、RCNテレビ局のインタビューにおいて、1994年に麻薬組織カリ・カルテルがサンペール元大統領の大統領選挙活動のために献金を行っていたことを、サンペール元大統領、セルパ元大統領候補、選挙資金会計担当の故サンティアゴ・メディナが承知していたと述べて物議を醸した。なお、ボテロ元国防相に対しては、1月24日、最高裁判所が選挙資金を横領した罪により懲役2年6ヶ月を宣告している(現在、メキシコに居住)。
14日、ボテロ元国防相の発言に対し、サンペール元大統領はボテロ元国防相の発言には矛盾があると指摘し、また、刑に服するために同人はコロンビアに引き渡されるべきであると述べた。本年10月の地方選挙においてサンタンデール県知事選挙に出馬するとされるセルパ自由党元大統領候補は、ボテロ元国防相が同元候補の政治生命を絶つために嘘の証言を行っていると述べた。ボテロ元国防相の発言に対し、16日、自由党のガビリア党首(元大統領)は自由党としてはサンペール及びセルパを擁護しない旨表明した。これにより、両人はこれを激しく批判し、軋轢が生じている。
(4)人事
19日、マリア・コンスエロ・アラウホ外相は、父アルバロ・アラウホ・ノゲラ、兄アルバロ・アラウホ・カストロ上院議員に対する逮捕命令を受け、これらの司法プロセスの障害とならないよう外相を辞任することをコミュニケを通じて発表した。ウリベ大統領はこれを受諾し、後任にフェルナンド・アラウホ元開発相(2000年12月にFARCによって誘拐されて6年間人質となった後、2006年12月31日、国軍による救出作戦に乗じてFARCキャンプを脱出し、2007年1月5日、海軍に保護された)を指名した。28日、外相に就任した。
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリーの財産凍結
コルドバ県の「パラ」による被害者(国内避難民)のリーダー、ヨランダ・イスキエルドが1月31日に暗殺されたことを受け、2月1日、ウリベ大統領は「パラ」の財産を即時凍結するよう国家警察及び検察庁に命じた。「公正・和平」法では司法手続きにおける財産の凍結が定められているが、ウリベ大統領は「パラ」による財産の隠匿を防ぐためにこれを命じたとされる。なお、13日、イタグイ最高警備刑務所に収監されている元「パラ」リーダーは、紛争被害者に対する補償のために自らの財産を提出する旨表明した。
(2)FARC
(イ)武装放棄
2日、1月24日にブエナベントゥーラにおいて逮捕されたFARCのウィリアム・リアスコス・リアスコスの配下の民兵30人が武装放棄した。
(ロ)送電塔に対するテロ
2日、カウカ県北部の送電塔に対するFARC第6戦線によるとされるテロ攻撃があり、カウカ県、ナリーニョ県、プトゥマヨ県、ウイラ県、カケタ県の60近い市町村で大規模停電があった。
(ハ)政府とELNの対話に対する批判
11日にFARC及び左派系通信社ANNCOLのホームページに掲載されたFARCのコミュニケによると、ELNには国軍情報部員が浸透しており、ELN書記局は地方戦線のコントロールを失っているとした。また、FARCは初めて政府とELNの対話に不快感を表明した。ELNとFARCはアラウカ県、アンティオキア県、コロンビア南西部において戦闘を継続しており、多数の死者が出ているとされる。
(ニ)FARCによる地方選挙妨害
カケタ県カルタヘナ・デル・チャイラ市の市長選(10月)出馬を表明していた医師ファビオ・デ・ヘスス・バルデラマルが6日に殺害された事件に関し、当局は2月初めより同人がFARCによって選挙に出馬しないよう脅迫されていたことからFARCによる犯行と断定した。
(ホ)資金獲得目標
21日、1月に海軍が発見したFARCの内部文書の内容が公表された。これによると、FARCは資金不足の問題を解決するために、通常の年間資金に加えて2億3000万ドルを2010年までに集めることを目標としているとのこと。
(ヘ)人道的人質交換交渉の行方
23日にイングリッド・ベタンクール(元大統領候補、仏国籍も有す)の誘拐から5年が経過し、パリを始め世界各地でイベントが開催される中、ウリベ大統領は誘拐被害者家族に対しFARCとの直接的なコンタクトをとることを承認する旨表明した。また、政府が仲介者なしでFARCと直接接触する用意があるとも発言した。
他方、ウリベ大統領は同日、かつて政府とFARCの仲介を行っていた共産党機関誌VOZ編集長のカルロス・ロサーノをFARCの共犯者と批判した。これまでにも、NGO「アルコ・イリス」のレオン・バレンシア、左派PDA党のグスタボ・ペトロ上院議員を同様に批判するなどしている。
(3)ELN分派による誘拐被害者の救出
8日、バジェ県とチョコ県の県境のジャングル地帯で作戦を行っていた国軍兵士は、2003年5月に行方不明となり既に死亡したとされていた警察官を発見した。同警察官は鎖で木につながれた状態であった。この警察官はELNの分派であるゲバラ派革命軍によって誘拐されていたことが判明した。
V.治安等
1.統計(国家警察統計。<>内はボゴタ市。)
(1)殺人:1393件<121件>
(2)集団殺人:4件16人<0件0人>
(3)脅迫:63件<10件>
(4)窃盗・強盗:7221件<1726件>
(5)自動車盗難:1407件<314件>
(6)誘拐:20件<6件>
(7)テロ:28件<0件>
2.主な事件・事故
(1)鉱山事故
3日、ノルテ・デ・サンタンデール県の炭鉱で爆発が起こり、32人が死亡した。これは2001年11月のカルダス県フィラデルフィアの鉱山の事故(47人死亡)に次いで、2番目の規模の惨事であった。
(2)テロの巻き添え
10日、ブエナベントゥーラにおいて、FARC民兵によると思しき海軍のパトロールに対する爆弾攻撃の巻き添えにより、妊婦の胎児が死亡した他、未成年2人が負傷した。
(3)ウイラ山の噴火
ウイラ山において17日〜18日に700回以上の地震が観測された後、19日には2回の爆発を伴う噴火が起きた。ウイラ山は少なくとも500年間は噴火していなかったとされる。
W.外交
1.対米関係
5日、ブッシュ政権は議会に対し、2008年の国務省の予算として5億8596万8000ドル、国防省の予算として1億2000万ドル、合計では過去5年間と同水準の7億500万ドルの対コロンビア支援を要請した。内訳で見ると、海外軍事財政支援プログラムによる対コロンビア国軍支援が1100万ドル減額され、社会プログラム支援が1000万ドル増額となる程度の差しかない。
2.要人往来
(1)ファン・マヌエル・サントス国防相の訪米
1日、ファン・マヌエル・サントス国防相は訪問先のワシントンにおいて、治安機関が道路建設などの社会開発にも貢献できるよう米国の支援により医療大隊及び工兵大隊を創設する予定であることを発表した。米国滞在中にはゲーツ米国防長官、タンディ米麻薬取締局(DEA)長官、議会関係者等と会談し、次期プラン・コロンビアに対する支援を求めた。
(2)フランシスコ・サントス副大統領の訪米
13日、サントス副大統領は民主党議員と会合し、FTAの承認と次期プラン・コロンビアに対する支援を求めた。
(3)新旧外相のリマ訪問
22日、マリア・コンスエロ・アラウホ外相(19日に辞任表明)及びフェルナンド・アラウホ次期外相(28日、就任)は、エレルス・アンデス共同体(CAN)事務総長の就任式典出席のためリマを訪問した。