コロンビア内政・外交等定期報告(3月)

 

T.概要

<内政>

●世論調査結果が公表され、パラミリタリーと政治家の癒着スキャンダルにも拘わらず、ウリベ大統領は65%という高い支持率を維持した。

●コロンビアでバナナ生産を行っている「チキータ・ブランズ・インターナショナル」社は、テロ組織と認定されている「パラ」に警護料を支払っていたことにより、米国政府より2500万ドルの罰金の支払いを命じられ、これを受け入れた。

●スルアガ大統領補佐官が蔵相に就任した。

<外交>

●ブッシュ米大統領がコロンビアを訪問した。米国大統領のボゴタ市訪問は25年ぶり。

●ケーラー独大統領がコロンビアを訪問した。独大統領のコロンビア訪問は36年ぶり。

●ファン・カルロス西国王がコロンビアを訪問し、第4回スペイン語国際会議に出席した。

 

 

U.内政

1.内政一般

(1)世論調査結果

 8日、ギャロップ・コロンビア社が227日〜31日に主要4都市の1000人を対象に実施した世論調査結果が公表されたところ、概要次の通り。

 なお、昨年11月以降露呈したパラミリタリーと政治家の癒着スキャンダルにも拘わらず、ウリベ大統領は高支持率を維持している。

(イ)ウリベ大統領の政策遂行能力への評価

(a)認める:72%(200612月:70%、200610月:70%)

(b)認めない:22%(上記各々24%、24%)

(ロ)ウリベ大統領に対する支持

(a)支持:65%(200612月:65%、200610月:66%)

(b)不支持:23%(上記各々24%、24%)

(ハ)現在の国内情勢について

(a)改善している:39%(200612月:43%、200610月:40%)

(b)悪化している:38%(上記各々36%、34%)

(2)パラミリタリーと政治家の癒着スキャンダル(「パラポリティカ」)

(イ)地方首長の逮捕

 12日、イグアラン検察庁長官はルナ・マグダレナ県知事に対する逮捕命令を発出した他、スニガ・サンタマルタ市長に対する捜査を命じた。ルナ県知事に対しては、元「パラ」リーダーの「ホルヘ40」及び「エルナン・ヒラルド」との癒着容疑がかけられている。また、同じく「ホルヘ40」との癒着容疑で2月に捜査が開始されたモリーナ・セサル県知事については、12日、同知事が検察庁に出頭し、容疑を否定した。

(ロ)「パラ」との密約に関する国会議員の召喚

 21日、最高裁判所は「パラ」と密約に署名した件に関し、署名をした5人の国会議員を召喚した。5人の国会議員のうち、2人が保守党(ウリベ派)、1人がコロンビア民主党(ウリベ派)、1人が急進改革党(ウリベ派)であったが、残りの1人がウリベ派に対抗している自由党の有力議員であったため、自由党はセサル・ガビリア党首(元大統領)を筆頭にその擁護に追われた。

 なお、これにより「パラ」との癒着疑惑が取りざたされた国会議員は合計14人となった。

(ハ)アルバロ・アラウホ上院議員の議員辞職戦略

 27日、「パラ」との癒着容疑がかけられているアラウホ上院議員は、最高裁判所ではなく検察による捜査を受けるために国会議員を辞職する旨表明した。これにより、アラウホ上院議員に対しては検察庁が捜査を行うこととなり、より時間をかけて裁判対策を行うことができる(最高裁判所が国会議員を裁く場合、捜査と裁判を同じ機関が行うために裁判が迅速に行われる)。また、判決が出た後も上訴することが可能となる(注:国会議員の場合、最高裁判所が裁判を行うために上訴ができない)。

(3)自由党の動向

 3月上旬、メキシコのセミナーにおいて自由党の左派のピエダ・コルドバ上院議員がウリベ政権の正当性に疑問を呈し、アメリカ大陸の諸政府にコロンビアとの外交関係断絶を求めた。これに関し、自由党はコミュニケを発出し、ピエダ・コルドバの発言を自由党の公式見解でないとし、自由党がウリベ政権の正当性は問題としてないことを確認した。

(4)人事

 8日、オスカル・イバン・スルアガ大統領補佐官が大蔵大臣に就任した。

 

2.非合法武装勢力

(1)パラミリタリー

(イ)「パラ」に対する警護料支払い

 14日、コロンビアでバナナの生産と輸出を行っている米国の「チキータ・ブランズ・インターナショナル」社は、2001年以降、米国政府がテロ組織と認定しているAUC(「パラ」の最大グループ)に対して警護料を支払っていたとして米国政府より科せられた2500万ドルの罰金の支払いに応じた。

 「チキータ・ブランズ・インターナショナル」社の子会社「バナデックス」社はFARCの攻撃が激しかった1997年に「パラ」リーダーのカルロス・カスターニョと会合をもち、警備料の支払いに合意したとされる。同年から2004年までの支払総額は170万ドルに達する由。さらに、同様の支払いをFARCに対しても行っていたことが判明した。

 パストラーナ元大統領は、コロンビアの司法プロセスにより真相を究明するために同社幹部の引渡が為されるべきであるとした書簡を検察庁に送付した。

(ロ)元「パラ」スポークスマンの司法手続き

 22日、元AUCの政治的指導者とされ、また、和平プロセスではスポークスマンであった「エルネスト・バエス」の任意の自白が開始された。現時点で12人の殺害容疑がかけられている。

(2)FARC

(イ)ウイラ県おけるテロ

 1日、ウイラ県ネイバ市のシエロ・ゴンサレス市長を狙った自動車爆弾テロが町の中心部で発生し、9人の負傷者を出したほか、近くのバスが炎上するなどしてパニックとなった。同市長は事なきを得たが、FARCの機動部隊である「テオフィロ・フォレロ」戦線の活動地域内の市長であるにも拘わらず、ウリベ派であることを公然と表明しいるためにFARCから命を狙われていた。

 3日にも同じ場所で爆弾テロがあり、不発処理をしていた国家警察の爆発物処理班の3人と国家警察司法捜査官(SIJIN)1人、及び市民3人が死亡した。

 ウイラ県では、このほか、6日にもカンポアレグレ市の市議会議員を狙った「テオフィロ・フォレロ」戦線によるテロがあり、同議員の恋人が死亡した。

(ロ)チョコ県での誘拐事件

 13日、チョコ県で地下資源開発を行っていた企業の地質学者9人がFARC34戦線に誘拐された。同地域ではこの1年間に、石油開発、金、銀の採掘を行う企業の社員2人が誘拐または殺害されている。その後、28日にFARC34戦線はこのうち4人の身柄を国際赤十字委員会に引き渡した。

(ハ)ウリベ大統領に対するテロ未遂

 3日、ペニャテ大統領府治安局(DAS)長官は、222日にウリベ大統領がFARCの活動が活発なカケタ県サンビセンテ・デル・カグアン市において治安対策会議を開催した際、会場から僅か600m離れた場所でガスシリンダー爆弾が発見されたことを公表した。

(ニ)特殊部隊に対する待ち伏せ攻撃

 3日未明、メタ県プエルトリコ市郊外のジャングル地帯でFARC東部戦線に対する急襲作戦を行っていた国軍の特殊部隊オメガ・タスクフォースのメンバー7人が、FARCの待ち伏せ攻撃により死亡した。同部隊はFARCの武器、弾薬等の物資貯蔵キャンプの殲滅を行っており、ヘリコプターから降下中に銃撃を受けた。その後、1時間に及ぶ交戦の後、11人のゲリラを殺害し、キャンプを制圧した。

(ホ)人道的人質交換交渉に対する米国の立場

 7日、シャノン米国務次官補(西半球担当)はブッシュ米大統領のコロンビア訪問を前に開かれた記者会見において、米国は(FARCとコロンビア政府の)人道的人質交換交渉の行く手を阻むものではなく、寧ろこれが人質の解放に繋がるのであれば我々としても喜ばしいことであると述べた。FARC20032月以降、3人の米国人を人質としており、米国はこれまで即時且つ無条件の解放を求めていた。

 また、16日、米国の民主党議員7人は、将来のコロンビア政府とFARCの人道的人質交換に際して保証人として関与することを申し出た。

(3)ELN

 14日、サントス副大統領は、左派PDA党のカルロス・ガビリア党首がELNに対して政府と交渉しないよう進言したと同党首を批判したことに関し謝罪した。

 

 

V.治安等

1.統計(国家警察統計。<>内はボゴタ市。)

(1)殺人:1382件<118件>

(2)集団殺人:14人<00人>

(3)脅迫:25件<2件>

(4)窃盗・強盗:5497件<1556件>

(5)自動車盗難:1221件<302件>

(6)誘拐:27件<8件>

(7)テロ:38件<0件>

 

2.主な事件・事故

(1)ブエナベントゥーラにおけるテロ

 太平洋への麻薬の出荷基地としてFARC民兵、再武装化した元「パラ」、麻薬組織による抗争が絶えないとされるブエナベントゥーラにおいて、16日、爆弾テロがあり6人が死亡、15人が負傷した。

(2)チョコ県の貧困問題

 26日、チョコ件のアトラト川下流域において、貧困、公共サービス及び医療の欠如などを原因とする深刻な栄養失調により17人の子供と2人の大人が死亡したことが報じられた。

 

W.外交

1.対ベネズエラ関係

 4日、RCNテレビ局は、当国駐在のパベル・ロンドン・ベネズエラ大使が、23日にアルメニア市で行われた左派PDA党の集会においてウリベ大統領を強く批判し、また、別の会合では自由党が消滅する可能性に言及したことを報じ、こうした発言が内政干渉ではないかという批判が生じた。アラウホ外相が同大使を外務省に招致し事実関係を確認する事態に至ったが、結局、アラウホ外相はロンドン「ベ」大使の説明に納得し、事態は沈静化した。

 

2.対米関係

 15日、ブッシュ米大統領は駐ベネズエラ米国大使のウィリアム・ブラウンフィールドを次期駐コロンビア大使に任命した。なお、ウッド駐コロンビア米国大使は駐アフガニスタン大使に任命された。

 

3.対エクアドル関係

 19日、ウリベ大統領はカルタヘナで開催された米州プレス会議において、エクアドルとの国境地帯で散布している違法作物根絶のための除草剤グリフォサートがもし何らかの過ちにより被害を及ぼしている場合は、即時に補償をする用意があると発言。これに対し、エクアドル外務省はコミュニケを通じ、国境地帯の除草剤散布の影響を検証するために設置された二国間科学委員会の成果であるとウリベ大統領の提案を歓迎した。

 

4.要人往来

(1)ブッシュ米大統領のコロンビア訪問

 11日、ブッシュ米国大統領はローラ夫人とともに、ライス国務長官、ハドリー国家安全保障担当両補佐官、シャノン国務次官補(西半球担当)等を伴い、コロンビアを訪問した。米国大統領のボゴタ市訪問は1982年のレーガン大統領の訪問以来25年ぶりであった。会談では、米国移民法、FTA、次期プラン・コロンビアへの支援、バイオ燃料等について話し合われた。

(2)ケーラー独大統領のコロンビア訪問

 12日〜14日の日程でケーラー独大統領夫妻がコロンビアを訪問し、コロンビアの和平プロセス、麻薬対策、二国間関係(二重課税防止協定等)、CANEUの通商協定、対コロンビア支援等について会談した。なお、独大統領のコロンビア訪問は36年ぶりの由。

(3)ファン・カルロス西国王のコロンビア訪問

 23日〜26日の日程でスペインのファン・カルロス国王及びソフィア王妃がモラティノス西外相他とともにコロンビアを公式訪問した。滞在中、メデジン市では第13回スペイン語アカデミー協会会議に出席した他、同市北部の貧困地区を訪れた。また、カルタヘナ市では第4回スペイン語国際会議に出席した。

(4)アラン・ガルシア・ペルー大統領のコロンビア訪問

 28日、ガルシア・ペルー大統領が当国を訪問し、ウリベ大統領と中南米における太平洋岸地域構想、二国間の国境開発プロジェクト等について会談を行った。

(5)フェルナンド・アラウホ外相の米国訪問

 20日、米国を訪問したアラウホ外相はワシントンにおける講演後の質疑応答において、チャベス・ベネズエラ大統領がFARCの政治的リーダーであると発言したことで物議を醸した。その後、アラウホ外相はこれを訂正し、バルコ駐米コロンビア大使もコミュニケを発出してチャベス「ベ」大統領を批判するものでない旨確認した。