コロンビア内政・外交等定期報告(4月)
T.概要
<内政>
●左派PDA党のグスタボ・ペトロ上院議員が、上院において、パラミリタリーと緊密な関係にあるとしてウリベ大統領を強く批判したが(17日)、アル・ゴア米国元副大統領が右を理由にウリベ大統領との国際フォーラム同席を拒否したことを受け、ウリベ大統領は急遽、全国放送を通じてペトロ上院議員の批判を否定する記者会見を開いた(19日)。
●16日から、ハバナにおいて政府とELNの第6回予備会合が開始し、「停戦案」を含む両者間の協議が行われ、予備会合段階の終了と本会合開始が目指されている。
<外交>
●18日、バチェレ・チリ大統領が当国を訪問し、ウリベ大統領との会談、「国際ブックフェア」(チリは名誉招待国)閉会式への出席等を行った。
●16日から18日まで、EUのFerrero-Waldner外交担当委員が当国を訪問し、アラウッホ外相等との会談を行い、EUによる今後の対「コ」支援等を表明した。
●23日から25日まで、呉官正中国共産党中央政治局常務委員・中央紀律委員会書記を団長とする訪問団約60名が、更に、29日から5月1日まで、王忠禹政協全国委員会副主席を団長とする訪問団15名が当国訪問を行った。
U.内政
1.内政一般
(1)左派PDA党議員によるウリベ大統領批判
(イ)17日、左派PDA党のグスタボ・ペトロ上院議員は上院において、ウリベ大統領とパラミリタリーの関係性を指摘する演説を2時間以上にかけて行った。ペトロ上院議員は、(a)ウリベ大統領の親族が所有する農園(フィンカ)においてゲリラ構成員が殺害された、(b)同農園でパラミリタリーと合法的自衛組織「コンビビール(CONVIVIR)」の会合が行われた、(c)アンティオキア県知事時代(1995-97年)にウリベ大統領が設立許可を付与した「コンビビール」2組織に、後の「パラ」司令官が所属していた、(d)大統領の弟が麻薬密輸グループのオチョア・ファミリーと緊密な関係にある(1985年に撮影された大統領の弟とファビオ・オチョア・バスケス氏の写真を示しつつ)等を指摘し大統領批判を繰り広げた。
(ロ)ペトロ上院議員による激しい批判について、ウリベ大統領は、18日、具体的な名指しは避けつつも、「取るに足らないゲリラ」(注:ペトロ上院議員は元左翼ゲリラM-19構成員)、「見事な中傷、誹謗者である」と断じた。
(ハ)19日夜、パラミリタリーとの関係性疑惑などを理由として、アル・ゴア米元副大統領が20日にマイアミでの開催が予定されていた"PODER"誌主催フォーラムでのウリベ大統領との同席を拒否したこと等を受け、ウリベ大統領は、緊急の記者会見を開き(全国放送テレビで中継(約2時間))、アンティオキア県知事時代のパラミリタリーとの関係性に関する批判は完全に否定する旨表明した。
(2)自由党関連動向
28日及び29日、メデジン市において、党内分裂が指摘されている自由党の党大会が開催され、セサル・ガビリア党首(元大統領、元OAS事務総長)が、賛成780票、反対286票の投票結果をにより、単独党首(Jefe
Unico) としての承認を受けた。
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリー和平プロセスと「公正和平法」の適用
(イ)14日付「エル・ティエンポ」紙は、「公正和平法」に基づく被害者補償を目的とした、被害者による自己申請受付の開始以降6ヶ月間に、アンティオキア県及び太平洋岸地域を中心として、合計4万8千250人が被害者申請を行った旨報じた。特に、武装放棄した元パラミリタリー司令官「ホルヘ40」関連では6千件近い被害届けが出された。
(ロ)26日付「エル・ティエンポ」紙は、武装放棄したサルバトーレ・マンクーソ元「パラ」司令官が、「公正和平法」に基づき、所有資産である農園6ヶ所、レストラン1軒等を、当局に対し自主的に引き渡した旨報じた。マンクーソ元司令官は、レストラン「エノテカ」等も自らの資産に含まれる旨明らかにした。
(2)ELNとの和平プロセス
16日、ハバナにおいて政府とELNの間の第6回予備会合が開始した。同会合は、約6週間に亘り継続される予定で、予備会合段階を終了させるための両者間の「基本合意」策定を目指した作業が行われる。16日、ELNの「パブロ・ベルトラン」は、「ELNとしては、「暫定的かつ実験的停戦」を行う用意がある」旨述べた。
(3)ナリーニョ県における非合法武装勢力4者間の戦闘
9日付「エル・ティエンポ」紙は、南西部のエクアドル国境に位置するナリーニョ県内の太平洋岸へ向かって流れる川において、戦闘の結果と見られる新しい遺体(四肢切断死体含め)が発見されている旨報じると共に、それら遺体は、同県で繰り広げられているFARC、ELN、麻薬組織「ラストロッホス」(ウィルベル・バレラが首領)に加え、新しい非合法武装組織「Organizacion Nueva Generacion」も加わっての権益争いが激化する状況を反映したものとしている。
V.治安等
1.国家警察統計 (<>内はボゴタ市。)
(1) 殺人: 1248件 <116件>
(2) 集団殺人: 0件0人
(3) 脅迫: 46件 <12件>
(4) 窃盗・強盗: 4636件 <1393件>
(5) 自動車盗難: 1090件 <271件>
(6) 誘拐: 19件 <1件>
(7) テロ: 13件 <0件>
2.主な事件・事故
(1)22年振りの大規模停電
26日午前10時頃大規模な停電が発生し、約4時間半に亘り全土98%の電力供給が停止した。政府は、22年振りとも言えるこの大規模停電の原因について、ボゴタ市北部にあるトルカ電力施設で機械の故障が起きたためとした。
(2)バジェ県及びカリ市警察関連施設爆弾事件
(イ)9日、バジェ・デ・カウカ県及びカリ市(同県県庁所在地)の警察本部庁舎において爆弾事件が発生し、建物が損壊したほか、タクシー運転手1名が死亡、負傷者42名が発生した。当局は、FARCが麻薬密輸関係者と結託して起こしたとの見方を示した。
(ロ)23日、ウリベ大統領はカリ市へ赴き、同市の治安回復を目指し大統領自ら陣頭指揮をとるため28日までの一週間同市において執務を行う旨明らかにした。
(3)ウイラ県での火山爆発
18日未明、当国南西部のウイラ県のネバド・デ・ウイラ火山が爆発した。同火山は休火山であったが、本年2月18日から地震波が観測され始めていた。地震観測所等により爆発の予測が通報されていたため、付近住民は17日までに避難を終了し、火山爆発による被害者は発生しなかった。
W.外交
1.ウリベ大統領の「第1回南米エネルギーサミット」出席
17日、ウリベ大統領は、ベネズエラのマルガリータ島において開催された「第1回南米エネルギー・サミット」へ出席した。
2. ウリベ大統領の「プエブラ・パナマ計画」(PPP)関係国首脳会合出席
(1)ウリベ大統領は、9日及び10日にメキシコのカンペチェで開催された「プエブラ・パナマ計画」(PPP)関係国首脳会合に出席した。
(2)10日、ウリベ大統領は、PPP関係国首脳会合開催の機会を利用して、カルデロン同国大統領との首脳会談を行った。
(3)なお、本会合を前に、ニカラグアのオルテガ大統領はPPP首脳会合へのウリベ大統領出席について、「コロンビアはニカラグアの領土を奪うためにホンジュラス、コスタリカの大統領と同盟を結んでいる」として懸念を示し、更に、「コロンビアは、メソアメリカ地域には属さない」、「PPP計画は、プエブラ・ボゴタ計画と呼ぶべきではないか」とコロンビアの本会合参加を揶揄する発言を行った。
3.要人往来
(1)イグアラン検事総長の米国訪問
30日から5月1日、イグアラン検事総長はワシントンを訪問し、当国検察庁に対する資金及び捜査面での支援要請、米国政府がテロ組織認定するAUC(パラミリタリー最大勢力)に対し2001年以降警護料を支払ってきていたとして米国政府より罰金支払いが命じられたバナナ生産と輸出を行う「チキータ・ブランズ・インターナショナル」社関連情報収集等を行った。
(2)バチェレ・チリ大統領の当国訪問
18日夜、当国に到着したチリのバチェレ大統領は、19日、ウリベ大統領との首脳会談、トロ上院議長等当国国会関係者との会談、大統領官邸での昼食会、第20回国際ブック・フェア(チリは名誉招待国)開会式への出席等を行った。
(3)Ferrero-Waldner EU外交担当委員の当国訪問
16日から18日まで、EUのFerrero-Waldner 外交担当委員が当国を公式訪問し、アラウッホ外相等との会談を行い、同会談後の記者会見で、「EUは2007年から2013年までの間に総額1億6千万ユーロの支援を行う予定」、「EUは今後、「平和の実験場」第三段階を開始する予定で、ボリーバル県及びメタ県において2,420万ユーロの資金供与を行う」等発表した。
(4)中国共産党中央政治局常務委員等の当国訪問
(イ)23日から25日まで、呉官正中共中央政治局常務委員・中央紀律委員会書記を団長とする訪問団約60名(医師、記者等を含む。政府関係者は約40名)が当国を訪問し、治安情勢への懸念からカリ市で陣頭指揮をとっていた(上記V.2.(2)(ロ)参照)ウリベ大統領との会談の他、行政監察庁長官、検察庁長官等と会談した。
(ロ)29日から5月1日まで、王忠禹政協全国委員会副主席を団長とする15名の訪問団が当国を訪問し、当国上下両院副議長との会談等を行った。