コロンビア内政・外交等定期報告(5月)
T.概要
<内政>
●検察庁は、元非合法武装勢力パラミリタリーと政治家の癒着問題(通称「パラポリティカ」)の関連で、14日から16日までに、「パラ」から選挙協力を得た容疑等で政治家計16名の逮捕に踏み切った。更に、18日には、前外相や行政監察長官と親戚関係にあるセサール県のモリーナ知事も、「パラ」から選挙協力を受けた容疑で逮捕された。
●政府は、14日、国家警察情報局局員が許可なく通信傍受を行っていた責任を問い、カストロ警察長官、チャベス警察本部情報局長の更迭を決定した。後任の警察長官には、ナランホ国家警察司法捜査局(SIJIN)局長が抜擢されたため、国家警察次長等を含む先任の主要幹部10名が勇退となった。
●ウリベ大統領は、25日、政府が6月7日迄に服役中のFARC構成員を大規模に釈放する用意がある旨発表した。一方、当地マスコミは、FARCに6年以上に亘り身柄を拘束される仏国籍も有するイングリッド・ベタンクール元大統領候補の解放を目指し、仏政府が特使を派遣する予定である旨報じた。
<外交>
●ウリベ大統領は、米国議会におけるFTA法案批准及び「プラン・コロンビア」支援法案採決を目指し、1日から4日まで米国を訪問し、ブッシュ大統領及びペローシ下院議長との会談を行った。
●ネグロポンテ米国務次官は、8日、当国を訪問し、ウリベ大統領、アラウッホ外相、プラタ商工観光相との会談を行い、FTA、エネルギー問題等について協議を行った。
U.内政
1.内政一般
(1)政治家とパラミリタリーの癒着問題(通称「パラポリティカ」)
(イ)検察庁は、14日から16日までに、2001年7月にパラミリタリーとの合意文書(「ラリート合意」(Acuerdo de Ralito))に署名した政治家計16名について、2002年大統領選及び2003年地方選に際して、選挙基盤の各地域を武力支配するパラミリタリー勢力から武力による威嚇を含め選挙協力を受けた等の容疑により逮捕した。
(ロ)更に18日、検察庁は、セサール県のモリーナ知事を、パラミリタリーとの癒着及び上記地方選に際し「パラ」から選挙協力を得た容疑で逮捕した。なお、モリーナ県知事は、今年2月、兄のアラウッホ上院議員が逮捕されたことを受け辞職したマリア・コンスエロ・アラウッホ前外相の従兄で、エドゥガルド・マヤ行政監察庁長官は伯父に当たる。
(ハ)「パラ」との和平プロセス進展の結果として、当局が押収した元「パラ」司令官「ホルヘ40」のコンピューターに保存されていた情報に端を発し、2006年11月の政治家逮捕につながった政界スキャンダル(「パラポリティカ」)の影響は時の経過と共に更に広がっており、これまでに逮捕された政治家は、現職・前職含め35名に上っている。逮捕された政治家の多くは、従来から「パラ」支配地域と見なされてきた国内北部カリブ海地域各県(セサール県、マグダレーナ県、スクレ県、ボリーバル県、コルドバ県)に集中している。
(2)違法通信傍受の引責等による国家警察幹部の入れ替え
14日、政府は、国家警察本部情報局局員が許可なく通信傍受を行っていた責任を問い、カストロ国家警察長官、チャベス警察本部情報局長の更迭を決定した。同決定の背景には、「セマナ」誌(2007年5月14日−21日号)が、警察本部情報局局員から入手したと見られる収監中の元「パラ」司令官等の電話通信内容(犯罪の指示等)を暴露する記事を掲載する予定であることを察知した政府が、国内スキャンダルのダメージを最小限に食い止めるため先手を打ち大規模な幹部交代の措置をとったと見られている。後任警察長官には、ナランホ国家警察司法捜査局(DIJIN)局長が抜擢された。ナランホ長官就任に伴い、警視監(Brigadier General)の階級を持つ新長官より先任の(国家警察次長、ボゴタ首都区警察本部長含む)主要幹部10名が勇退となった。
(3)サントス国防相に対する解任決議案提出
23日、急進改革党、PDA党及び自由党議員30名により、国家警察情報局による違法通信傍受問題への責任追及、及び、元「パラ」司令官サルバトーレ・マンクーソによる証言で言及された1997年のサンペール元大統領(当時)に対する政権打倒計画への関与の疑いにより、サントス国防相に対する解任決議案が提出された(同解任決議案は6月14日に上下両院で否決)。
2.非合法武装勢力
(1)政府による服役中のFARC構成員大規模釈放提案
(イ)11日、政府は、収監中のFARC構成員多数を釈放する予定である旨発表した。政府発表についてFARCは、「政府提案は、内外から批判を受けるパラポリティカ・スキャンダルからの関心を逸らすためごまかしの提案を行っているに過ぎない」とし拒絶を表明した。
(ロ)25日、ウリベ大統領は、FARCによる身柄拘束被害者の解放に結びつけることを目指し、政府は、服役中のFARC構成員を6月7日までに大規模に釈放する用意がある旨発表した。更に、当地紙は25日付仏「ル・モンド」紙の報道として、仏国籍も有するイングリッド・ベタンクール元大統領の身柄解放を目指した交渉のため、フランスから特使が派遣される予定である旨報じた。
(2)FARC人質警察官の自力脱出成功
(イ)16日、1998年11月に発生した国内南西部バウペス県ミトゥ市でのFARCによる大規模襲撃後、8年以上に亘り身柄を拘束されていた警察官ジョン・フランク・ピンチャオが自力脱出に成功し、国家警察部隊により救出された。今年1月に同様に自力脱出に成功したアラウッホ現外相(FARCによる身柄拘束期間6年間)に次ぐ今回の警察官のFARCからの脱出成功は、家族のみならず政府も歓迎した。
(ロ)また、同警察官の証言から、最近の生存証拠が得られていなかったイングリッド・ベタンクール元大統領候補(2002年2月に身柄拘束)や、カケタ県での麻薬対策作戦展開中(2003年2月)にFARCに身柄を拘束された米国人3名等FARCに身柄を拘束されている他の被害者の最近の状況が明らかにされ、内外から大きく注目を受けた。
V.治安等
1.国家警察統計 (<>内はボゴタ市。)
(1) 殺人: 1455件 <125件>
(2) 集団殺人: 3件14人<0件>
(3) 脅迫: 19件 <5件>
(4) 窃盗・強盗: 4942件 <1552件>
(5) 自動車盗難: 1330件 <266件>
(6) 誘拐: 27件 <1件>
(7) テロ: 39件 <1件>
2.教職員連盟等による大規模デモの展開
23日及び30日、コロンビア教職員連盟(FECODE: Federacion Colombiana
de Educadores)、コロンビア中央統一労組(CUT: Central Unitaria de Trabajadores de Colombia)及び学生組合(ADE: Asociacion de Estudiantes)は、政府による教育予算削減への反対を表明するため、ボゴタ市において、各地から集結した教職員及び学生多数も参加するデモ行進及び抗議集会を展開した。
W.外交
1.ウリベ大統領等の米国訪問
(1)ウリベ大統領は、1日から4日まで、経済関係者等を伴い米国を訪問し、FTA批准及び「プラン・コロンビア」支援法案の米国議会での採決に向けた環境作り、米国内で疑問視される「公正和平法」に関する説明のため、ブッシュ大統領、ペローシ下院議長等との会談を行った。更に、講演やマスコミとのインタビュー等行い精力的な日程をこなした。一方、ペローシ議長等に対するロビー活動では、ウリベ大統領に対し多くの注文が付けられたとされ、「コ」関係者は米民主党関係者の対応について、「丁寧ながら厳しいものであった」と評価した。
(2)サントス副大統領は、22日及び23日、パール政府社会復帰担当高等弁務官、ペニャテ大統領府治安局(DAS)長官、国会関係者、当国労組関係者を伴いワシントンを訪問し、民主党関係者との会合したほか、シンクタンクとの意見交換を行った。
2.ネグロポンテ米国務次官の当国訪問
8日、米国のネグロポンテ国務次官がシャノン国務次官補等を伴い当国を訪問し、ウリベ大統領、アラウッホ外相、プラタ商工観光相等との会談を行い、FTA、エネルギー問題、教育・医療等社会分野における協力等を協議した。9日付「エル・ティエンポ」紙一面では、ネグロポンテ次官及びシャノン次官補が、当国民が好むブーツに履き替えソンブレロ(帽子)をかぶる姿で当国との緊密な関係をアピールする写真を掲載した。