コロンビア内政・外交等定期報告(6月)
T.概要
<内政>
●政府はFARCによる身柄拘束被害者の解放に結びつけることを目指し、1日、全国各地の刑務所に服役していたFARC構成員121名を釈放した。4日までにFARC構成員計193名が釈放され、暫定的にボヤカ県チキンキラ市の刑務所に収容された上で、FARC離脱の宣誓書へ署名した。4日には政府が仏政府の要請を受ける形で、FARC幹部「ロドリゴ・グランダ」の釈放も決定した。「グランダ」は同日、ボゴタ市内のカトリック司教会議本部へ移送されたが、18日にキューバへ出国した。
●28日、FARCはコミュニケを通じて、「6月18日、2002年4月に拉致して以降、5年以上に亘り身柄を拘束してきたバジェ・デ・カウカ県の県議会議員12名の内11名が、正体不明の軍隊の攻撃を受けた際に死亡した」旨発表した。仏政府の働きかけもあり、期待が高まりつつあった政府とFARCの「人道的人質交換合意」交渉への道は、「バジェ」県元県議会議員11名の死亡という痛ましい結果で困難な局面を迎えた。
<外交>
●6日から8日、ウリベ大統領は米国を訪問し、同国の対「コ」支援及びFTA法案成立を目指し、議会関係者、在住コロンビア人との会合をもった。
●5月31日から6月4日、米国下院軍事委員会の議員団が、また、6月1日から4日、米国民主党議員団が当国を訪問した。
●6日から8日に開催されたG8ハイリゲンダム・サミットにおいて、仏のサルコジ大統領がG8各国首脳に対し、FARCによる誘拐問題解決への支援を呼びかけた。
U.内政
1.内政一般
(1)政府による服役中のFARC構成員大規模釈放
(イ)1日、全国各地の刑務所で服役中のFARC構成員121名が釈放された。4日までに釈放された合計193名のFARC構成員は暫定的にチキンキラ市(ボヤカ県)の刑務所に収容され、「FARCからの離脱」を内容とする宣誓書へ署名した。5日には、57名がチキンキラ市の刑務所からトリマ県チコラル市のコムカッハ保養施設へ収容され、翌6日には更に54名が同保養施設へ収容された。同保養施設へ収容された111名は社会復帰を目指した矯正教育、職業訓練を受けている。(なお、一旦釈放措置を受けながらも最終的にトリマ県のコムカッハ保養施設へ収容されなかったFARC構成員は、心理分析、前歴調査の結果等から、再び犯罪を犯す可能性が高いなどの理由で釈放対象となり得ないと判断された。)
(ロ)4日、政府は、FARC幹部「ロドリゴ・グランダ」の釈放を決定し、「グランダ」をカルダス県の刑務所からボゴタ市内のカトリック司教会議本部へ移送、暫定的に収容した。同日夜、ウリベ大統領は全国放送を通じ、フランスのサルコジ大統領の要請を受け、「コ」政府としては「グランダ」が和平への役割を担うことを期待し、釈放に踏み切った等説明した。18日、「グランダ」はキューバへ出国した。
(2)国会閉会
20日、国会が終了した。今国会は、「パラポリティカ」と称される政界スキャンダルにより現職議員の逮捕が続出したことで波紋があった。一方、今国会では、米国とのFTA法案が成立したほか、教育・医療等の交付税法案も成立を見た。(なお、新国会は7月20日に開会)
2.非合法武装勢力
(1)FARC誘拐人質「バジェ」県議会元議員11名の死亡
(イ)28日、FARC西部総司令部はコミュニケ(6月23日付)を通じ、「6月18日、5年以上に亘り身柄を拘束してきたバジェ・デ・カウカ県の県議会議員12名の内11名が、正体不明の軍隊の攻撃を受けた際、死亡した」旨発表した。
(ロ)「バジェ」県議会議員12名は、2002年4月11日、同県カリ市の県議会において議会開会中、警察の爆弾処理班を装ったFARC実行グループの指示を受け建物から避難し、準備されていた小型バスに乗り込み、その後FARC部隊に連れ去られていた。仏政府の働きかけもあり期待が高まりつつあった「人道的人質交換合意」交渉への道は、「バジェ」県元県議会議員11名が5年以上にも亘る身柄拘束の末に殺害されるという痛ましい結果により、困難な局面を迎えた。
(2)ELNとの和平プロセス
(イ)13日付当地紙は、4月中旬にキューバで開始した政府とELNの第6回予備会合につき、双方の内部協議を経た後、13日にキューバで両者間の会合が再開される予定である旨報じた。
(ロ)28日付当地各紙は、政府との第6回予備会合においてELN側代表を務める「パブロ・ベルトラン」が27日にハバナで記者会見を開き、7月にも政府との間で停戦合意が成立する可能性があると示唆しつつ、「政府と同合意が成立した暁には、ELNは身柄を拘束する人質を解放する予定である」旨発言したと報じた。
V.治安等
1.国家警察統計 (<>内はボゴタ市。)
(1) 殺人: 1,416件 <109件>
(2) 集団殺人: 4件19人<0件>
(3) 脅迫: 34件 <9件>
(4) 窃盗・強盗: 4,912件 <1,587件>
(5) 自動車盗難: 1,372件 <279件>
(6) 誘拐: 22件 <2件>
(7) テロ: 48件 <1件>
2.主な事件・事故
(1)ブエナベントゥラにおける爆弾事件の続発
22日午後7時半頃、ブエナベントゥラ市(バジェ・デ・カウカ県)の7ヶ所でほぼ同時に爆弾事件が発生し、負傷者23名が生じた。市当局が外出禁止令等の措置をとったほか、政府も同地で臨時の治安対策会議を開いた。爆弾事件の背景には、太平洋岸を通じた麻薬取引に関する犯罪組織間の支配権争いがあると見られている。
W.外交
1. ウリベ大統領の米国訪問
ウリベ大統領は「プラン・コロンビア」に対する支援及び米国とのFTA成立を目指し、6日夜から8日朝までワシントンを、8日から9日までニューヨークを訪問し、米国議会関係者との会合、ニューヨーク在住コロンビア人との会合、クリントン元大統領も参加したイベント等へ出席した。
2.米国議会関係者の当国訪問
(1)5月31日から6月4日まで、米国下院軍事委員会の議員団が当国を訪問し、麻薬対策軍事基地視察等を行った。
(2)6月1日から4日まで、米国民主党議員団が訪問し、ウリベ大統領が出席したカリ市におけるタウン・ミーティングへの出席等を行った。
3.G8ハイリゲンダム・サミットにおける当国誘拐問題解決支援表明
6日から8日に開催されたG8ハイリゲンダム・サミットにおいて、サルコジ仏大統領はG8各国首脳に対し、FARCによる誘拐問題の解決を目指す支援を呼びかけた。右を受け、同サミットの議長総括においては、当国における誘拐問題に言及しつつFARCによる人質解放等が呼びかけられた。ウリベ大統領は、「当国が抱える状況について、G8各国が理解してくれたと受け止める」旨述べた。
4.サン・アンドレス島領有権問題
4日から6日及び8日、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)において、当国とニカラグアが主張するサン・アンドレス島の領有権の先決的抗弁に関する口頭陳述が行われた。