コロンビア内政・外交等定期報告(7月)
T.概要
<内政>
●7月初旬に実施された世論調査で、ウリベ大統領を「支持しない」とした回答者は、2002年のウリベ政権発足以来最高水準の27%となった。他方、「支持する」との回答は、先回(4月実施)調査結果から9ポイント低下したものの依然として66%の高水準を維持した。
●FARCにより5年以上に亘り身柄を拘束されていた「バジェ」県元県議11名の死亡(6/28発表)は、誘拐被害関係者のみならず全国民に衝撃を与え、5日、全主要都市含め全国各地で一斉に「誘拐反対・人質解放」を唱える大規模な抗議活動が展開された。
●20日、新国会が成立し、ウリベ派政党に所属するグティエレス上院議長及びアルボレダ下院議長が就任した。
<外交>
●22日、ウリベ大統領は、ニュージャージー及びニューヨーク在住コロンビア人と共に当国独立記念日(7月20日)を祝した。
●16日及び17日、カナダのハーパー首相が当国を訪問し、ウリベ大統領との間で両国FTA等について協議を行った。
●23日から26日、サントス国防相は米国を訪問し、民主・共和両党議員と、プラン・コロンビアの麻薬対策等について話し合いを行った。
U.内政
1.内政一般
(1)ウリベ大統領の支持率低下
6日及び7日に実施された世論調査の結果(Gallup
Colombia社実施)、ウリベ大統領に対する支持率は、前回調査(本年4月実施)に比較し9ポイント低下(66%)する一方、「支持しない」との回答者は同9ポイント上昇し27%となった。「支持しない」とした回答率は2002年のウリベ政権発足以来最高水準に達したものの、支持率については、先回調査結果の75%が2002年以来最高水準であったことから、今回の調査結果もウリベ大統領支持率の本格的低下を示すものではないとの見方が多い。
(2)FARC人質「バジェ」県元県議11名死亡関連その後の動向
(イ)5日午前11時過ぎから、国内各地(ボゴタ首都特別区、カリ市、メデジン市他)において、「誘拐反対・人質解放」を訴える抗議集会及びデモ行進が、平和を象徴する白いシャツを着用した多数の市民により展開された。誘拐反対を表明するこの抗議活動は、一週間前に明らかになったFARC誘拐被害者の「バジェ」県元県議11名死亡を受けて実行されたもので、「バジェ」県知事、ボゴタ首都特別区長等各地の地方自治体首長及び、当国の誘拐問題解決に尽力するカトリック教会が主導する中、誘拐被害者支援団体のみならず一般市民多数が参加する大規模なものとなった。
(ロ)28日、ピニャテDAS(大統領府治安局)長官は、「「バジェ」県元県議11名の死亡は、FARCの第60戦線と第29戦線の相討ちの結果であった可能性が高い」との見方を発表した。ピニャテ長官は、FARCの通信傍受及びFARC離脱者の関連証言に基づく分析結果として、死亡した元県議の担当であった第60戦線が、第29戦線が接近した際に国軍部隊の追跡を受けたものと勘違いし、議員殺害を命じたと見られるとした。
(3)新国会の成立
(イ)20日午後、新国会が成立した(会期は2007年7月〜2008年6月)。上院議長には、ナンシー・グティエレス氏(女性、急進改革党)が、下院議長には、オスカル・アルボレダ氏(アラス・エキポ・コロンビア党)が就任した(両党共に、所謂「ウリベ派政党」)。
(ロ)ウリベ大統領は新国会において、「麻薬対策については、除草剤の空中散布による方法から麻薬作物伐採の方法重視へ変更する」、「経済面では経済成長重視よりは投資環境への信頼回復を重視する政策をとる」等の内容の演説を行った。
(4)サン・アンドレス島における独立記念祝賀行進の開催
独立記念日である20日午前、従来ボゴタ市内で行われてきた独立記念祝賀行進が、ウリベ大統領も赴きサン・アンドレス島で初めて開催され、国際司法裁判所(ICJ)においてニカラグアとの間で管轄権が争われている同島の領有権をアピールするものとなった。
2.非合法武装勢力関連
(1)ELNとの和平プロセス
27日、レストレポ和平高等弁務官は、ハバナで続けられていたELNとの「停戦」に関する協議は双方の合意を得ないまま終了し、8月20日から24日にハバナで両者の会合を再開する予定となっている旨発表した。
V.治安等
1.国家警察統計 (<>内はボゴタ市。)
(1) 殺人: 1,437件 <112件>
(2) 集団殺人: 3件14人<0件>
(3) 脅迫: 45件 <12件>
(4) 窃盗・強盗: 5,137件 <1,580件>
(5) 自動車盗難: 1,354件 <257件>
(6) 誘拐: 30件 <1件>
(7) テロ: 24件 <0件>
2.主な事件・事故
(1)ボゴタ市におけるタクシー業者の大規模スト
27日早朝から、ボゴタ市のタクシー業者は、タクシー運転手が強盗や殺害の被害に遭っており治安当局による十分な安全対策が採られていないとして、ボゴタ市当局に対し治安対策強化を要求し、大規模スト及び道路封鎖を決行した。タクシー業者側代表と、ボゴタ市及び警察関係者との話し合いにより、安全対策強化を図ることで合意が達成し、当日午後0時までに市内の約80%で通常の交通量に回復した。
W.外交
1.ハーパー加首相の当国訪問
16日及び17日、カナダのスティーブン・ハーパー首相が当国を訪問し、両国FTA等についてウリベ大統領と会談を行った。ハーパー首相は、労働分野及び人権問題を同国は極めて重視している旨表明した。
2.ウリベ大統領の米国訪問
21日、ウリベ大統領は米国へ赴き、22日、ニュージャージー及びニューヨークにおいて、在住コロンビア人との間で当国の独立を祝する会合を催した。
3.サントス国防相の米国訪問
23日から26日まで、サントス国防大臣は米国を訪問し、民主、共和党両党関係者との会合をもった。28日付「エル・ティエンポ」紙掲載インタビュー記事において、サントス国防相は、議会関係者からは、プラン・コロンビアにおける麻薬対策について重点分野を除草剤の空中散布による方法から麻薬作物伐採の方法へ重点分野を変更したことに賛同が示された、今後は、欧州からの協力にも期待したい等述べた。