コロンビア内政・外交等定期報告(8月)

 

T.概要

<内政>

1日、居住地の南部ナリーニョ県から40日間以上に亘る誘拐反対アピールの行脚を展開したグスタボ・モンカヨ氏がボゴタに到着した。2日、モンカヨ氏は、ボリーバル広場において、FARCによる人質解放問題を巡りウリベ大統領と論戦を交わした。15日、自由党ピエダッド・コルドバ上院議員は、ウリベ大統領より、政府とFARCの人質交換問題担当役を任じられる。16日、コルドバ上院議員はベネズエラへ赴きチャベス大統領との会合を行った。チャベス大統領は、翌17日、「コ」政府とFARCの人質交換問題について最善を尽くす旨表明した。

8日、10月地方選の候補者登録が締め切られた。伝統的二大政党の自由党及び保守党、「ウリベ派」と称される新興の諸政党間で様々な選挙協力が組まれる一方、左派PDA党については、他政党との選挙協力を組まないことが特徴。

<外交>

31日、チャベス大統領がボゴタを訪問した。ウリベ大統領との長時間に亘る会談では、「コ」政府とFARCの人質交換問題に対するベネズエラ政府の協力、ベネズエラのアンデス共同体(CAN)再加盟問題、両国間のガスパイプライン・プロジェクトなど多岐の分野について協議が行われた。

19日、ウリベ大統領はアラウッホ外相と共にペルーを訪れ、15日夜に発生したペルー大地震被害への当国の連帯を表明した。

22日〜23日、アラウッホ外相は、ブラジルのブラジリアで開催された「第3回東アジア・ラテンアメリカフォーラム(FEALAC)外相会合」へ出席した。

 

U.内政

1.内政一般

(1)政府とFARCの人道的人質交換問題

(イ)社会科教師グスタボ・モンカヨ氏の誘拐被害者解放アピール行脚

a619日に居住するナリーニョ県を出発し、FARCによる誘拐被害者解放をアピールしながら、1000キロ近い行程を歩き続けた社会科教師のグスタボ・モンカヨ氏が、1日、ボゴタに到着した。グスタボ・モンカヨ氏の息子(警察官パブロ・アミリオ・モンカヨ氏)は、19971221日からFARCに身柄を拘束されている。モンカヨ氏は、誘拐被害者解放をアピールし国内を歩き続ける過程で、一市民が息子の解放に向けて立ち上がり行動する姿に心を打たれた賛同者を増やし、誘拐被害者解放を訴える家族の象徴的存在となっていた。ボゴタに到着したモンカヨ氏は多数の市民により喝采をもって迎えられた。

b2日、ウリベ大統領は、大統領官邸に隣接するボリーバル広場に設けられたテント内で、約2時間に亘り、モンカヨ氏と当国誘拐問題の解決策に関する意見交換を行った。同会合後、ウリベ大統領とモンカヨ氏は、引き続きボリーバル広場内のステージ上で、誘拐被害者支援団体や多数の支持者を前に演説を行った。ウリベ大統領が、「FARCがまず人質を解放すれば、その後、和平交渉のための地域を国内に設定することは可能である」と述べたのに対し、モンカヨ氏は、「(息子が誘拐されて)10年経過したが、誘拐被害者の状況に何の変化もない。大統領もFARCも相変わらず同じ演説を続けているだけで、成果は何もない」と述べるなど、激しい応酬が約2時間交わされた。

(ロ)ピエダッド・コルドバ上院議員の人質交換問題担当任命

 15日、自由党のピエダッド・コルドバ上院議員は、ウリベ大統領よりFARCとの人道的人質交換問題担当役に任じられる。コルドバ上院議員は、ウリベ大統領を官邸に訪問し、FARCによる誘拐人質解放へ向けより一層尽力すべきと訴えてきていた。

(ハ)チャベス・ベネズエラ大統領の関与

a16日、自由党のピエダッド・コルドバ上院議員はベネズエラを訪問し、チャベス同国大統領に対しFARCによる人質解放へ向けた支援を要請した。17日、チャベス大統領はコルドバ上院議員に対し、FARCによる人質と収監中のFARC構成員の人質交換実現のため最善を尽くす旨表明した。

b20日、チャベス・ベネズエラ大統領は、大統領官邸でFARCの誘拐人質13家族(イングリッド・ベタンクールの母親、グスタボ・モンカヨ氏含む)と会合を行った。同会合でチャベス大統領は、FARC最高幹部の「マヌエル・マルランダ」に対し「何らかの反応(una senal)を示して欲しい」旨、ウリベ大統領に対しては、「FARCとの人質交換への尽力を継続してもらえるよう」メッセージを送った。

c26日、FARCスポークスマン「ラウル・レジェス」がアルゼンチンの「クラリン」紙インタビューにおいて、「(政府との人質交換のために)フロリダとバジェからの治安維持部隊撤退を求めるとする、FARCの従来の主張に変更は無い」と述べた。

(2)10月地方選関連

(イ)8日、1028日に実施される地方選挙の候補者登録が締め切られた。12日付当地「エル・ティエンポ」紙は、自由・保守の二大政党、「ウリベ派」と称される新興の小規模諸政党共に、選挙勝利を重視し様々な形態の選挙協力が組まれていることを今次選挙の特徴として挙げた。この中で、左派PDA党のみ、他政党との選挙協力を組まない唯一の政党とされている。

(ロ)ボゴタ市長選は、現ガルソン市長(PDA党)の後継者となる左派PDA党のサムエル・モレノ候補と、自由党及びウリベ派諸政党の支持を得ており、市長時代のボゴタ市政が高く評価されているエンリケ・ペニャロサの実質的な一騎打ちとなっている。

(3)麻薬組織首領「チュペタ」のサンパウロにおける逮捕

 7日、ブラジルのサンパウロにおいて、同国逃亡中の当国麻薬組織首領フアン・カルロス・ラミレス・アバディア(通称「チュペタ」)が、逮捕された。「チュペタ」は、当国の麻薬組織「カリ・カルテル」の首領であったロドリゲス兄弟(ミゲル・ロドリゲス及びヒルベルト・ロドリゲス)が米国に引き渡されて以降、ロドリゲス兄弟の組織の後継者として、麻薬ビジネスを広く支配下に置くようになっていた。同日、米国麻薬取締局(DEA)及びブラジル警察当局が、米国から引き渡し要求が出されている「チュペタ」の居所を確認し逮捕した。「チュペタ」逮捕に際しては、約6回行われたと見られる美容整形手術により、容貌が全く別人のものとなっていたため、当局は、指紋によってのみ本人確認を行うことが出来たとされる。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)ELNとの和平プロセス

(イ)17日、ELN書記局(COCE)は、ベネズエラ国内(タチラ州)で犯したとされるELNによる子供3名、成人1名の誘拐事件を否定し、ELNが同誘拐を実行したとの告発は、和平対話におけるELNの立場を難しくしようとするレストレポ和平高等弁務官の狙いによるとした。

(ロ)22日、キューバにおいて、政府とELNの予備会合が全国和平審議会の参加も得て行われた。同会合について、ELN代表の「パブロ・ベルトラン」は、「「停戦・敵対行為の停止」に関する合意が得られないままに本会合が終了する可能性がある」と悲観的な見方を示した。一方、政府側代表者のレストレポ和平高等弁務官は、本会合に関する発表を行わなかった。

 

 

V.治安等

 

1.国家警察統計 (<>内はボゴタ市。)

(1) 殺人: 1,281 107件>

(2) 集団殺人: 529人<0件>

(3) 脅迫: 55 14件>

(4) 窃盗・強盗: 5,167 1,551件>

(5) 自動車盗難: 1,151 264件>

(6) 誘拐: 23 2件>

(7) テロ: 26 0件>

2.主な事件・事故

 15日夜発生した隣国ペルーの大地震発生後、当国太平洋岸地域では津波発生への警戒から住民が自主的に避難を開始した。その後、津波発生の可能性がないと判断され、住民は居住地へ戻った。

 

 

W.外交

1.チャベス大統領の当国訪問

 31日、ベネズエラのチャベス大統領が当国を訪問し、ボゴタ市北部の大統領別荘において、ウリベ大統領と長時間に及ぶ会談を行った。両国首脳会談では、既にチャベス大統領が表明してきた当国政府とFARCの人質交換交渉へ向けてのベネズエラの協力の議題に加え、両国間「ガス・パイプライン」プロジェクトの開通式、ベネズエラのアンデス共同体(CAN)復帰問題、両国間の農業分野協力協定締結など、多岐に亘る分野での協議及び合意があった。同日夕方の両大統領による共同記者会見では、お互いへの賞賛を示したり、冗談を言い合うなど、終始和やかな雰囲気を醸し出しつつ、親密な関係をアピールするものとなった。なお、チャベス大統領の当国訪問は20028月(第一次ウリベ政権発足時の大統領就任式出席の際)以来のもの。

 

2.ウリベ大統領他のペルー訪問

 19日、ウリベ大統領及びアラウッホ外相はペルーを訪問し、ペルー地震支援への連帯を表明すると共に、支援物資を提供した。パラシオス社会保障大臣は、16日から同国に滞在し、支援活動を行った。

 

3.アラウッホ外相他ペルー・ブラジル訪問

(1)20日、アラウッホ外相及びプラタ商工観光大臣はペルーのリマで開催された「太平洋岸地域構想(Iniciativa de la Cuenca del Pacifico)」へ出席した。

221日、アラウッホ外相はブラジルのブラジリアを訪問し、アモリン同国外相との間で「両国領土内における両国民の入国及び移動促進二国間協定」への署名を行った。

322日及び23日、アラウッホ外相は、ブラジリアで開催された「第3回東アジア・ラテンアメリカフォーラム(FEALAC)外相会合」へ出席した。