コロンビア内政・外交等定期報告(9月)
T.概要
<内政>
●政府とFARCの人質交換問題については、13日〜14日、コルドバ上院議員が国内においてFARCスポークスマン「ラウル・レジェス」と会合した。「ラウル・レジェス」は、10月8日にFARC関係者がカラカスでチャベス大統領との会合を行いたいとの希望を表明した。
●8日までに、ナリーニョ県で行われていたFARCの元人質「バジェ」県元県議会議員11名の遺体回収作業が終了した。14日、検死作業の調整を行ったOASは、各遺体が致命傷(頭部、胸部)を受けており複数の銃痕があった旨発表した。
●8日、ギャロップ社は9月の世論調査結果を発表し、前回調査時の7月に一旦低下したウリベ大統領に対する支持率(66%)が回復し、71%に達したとした。
<外交>
●24日〜27日、ウリベ大統領は米国を訪問し、第62回国連総会において一般討論演説を行ったほか、サルコジ仏大統領、ライス国務長官、各国首脳等との会談を行った。
●3日〜8日、アラウッホ外相は、FARCとの人質交換問題を支援する友好国グループ(西、仏、スイス)を含む欧州各国を訪問した。
U.内政
1.内政一般
(1)政府とFARCの人道的人質交換問題(クロノロジー資料別添)
(イ)チャベス「ベ」大統領による人質交換問題への関与については、8月31日のボゴタでの会談でウリベ大統領が同大統領に対し「ベ」国内でFARC代表者と話し合うことに同意した経緯の後、7日、チャベス大統領はカラカスにおいてレストレポ和平高等弁務官と会談を行った。同会合でチャベス大統領は、数日前に受け取ったFARC最高幹部「マヌエル・マルランダ」からの書簡について通報すると共に、両者の間で本件に関する協議が行われた。9日、チャベス大統領は、「マルランダ」からの書簡では、ベネズエラへは行けないがコロンビアのジャングルでならばチャベス大統領との会合が可能とされていたことを明らかにした。
(ロ)13日から14日、コルドバ上院議員は当国内ジャングル地帯へ赴き、FARCスポークスマンを務める「ラウル・レジェス」と会談を行った。「ラウル・レジェス」は、最高幹部の「マルランダ」とチャベス大統領の会合を準備するためとして、FARC幹部が10月8日にカラカスでチャベス大統領と事前会合を行いたいとの希望を表明した。18日、コルドバ上院議員はカラカスにおいて、チャベス大統領と会合を行った。
(2)FARC人質被害者「バジェ」県元県議の遺体収容
(イ)8日、政府は、ナリーニョ県パティア川沿いで行われていた「バジェ」県元県議会議員11名(2002年4月11日、県議会開会中にFARCが大量誘拐)の全遺体引き渡し作業を終了した。これら遺体は、9日に「バジェ」県のカリ空軍基地へ移送された後、検死のためカリ市内の法医学所へ運ばれた。12日、検死作業が終了し遺族への遺体引き渡しが行われた。
(ロ)14日、遺体の検死作業を調整したOASは、銃痕は一人当たり複数確認され(11体に計92発の銃弾。一番多い遺体で15発)、いずれの遺体も、頭部、胸部などの致命傷であったとする検死結果を事務総長を通じて発表した。OASは断定を避けたものの、当地メディアは、検死結果からは、FARCが主張してきた「正体不明の軍隊攻撃による流れ弾による死亡」の可能性は低いとの見方を示した。
(3)ウリベ大統領の支持率回復
8日、ギャロップ社は世論調査結果を公表し今年7月に低下傾向を示したウリベ大統領に対する支持率(66%、なお不支持率27%)が、9月の調査で回復した(支持率71%、不支持率20%)とした。
(4)麻薬カルテル首領「ドン・ディエゴ」の逮捕
10日早朝、当国国軍は、当国最大の麻薬組織ノルテ・デル・バジェ・カルテルの首領ディエゴ・レオン・モントージャ・サンチェス(通称「ドン・ディエゴ」)がバジェ・デル・カウカ県北部農村地域に潜んでいるところを発見、逮捕した。「ドン・ディエゴ」は、コカイン密輸及び資金洗浄等により米国から引き渡し要求を受けており、7年を超えた当国警察・軍、米国麻薬取締局(DEA)等による「ドン・ディエゴ」追跡作戦が終止符を打った。
2.非合法武装勢力関連
(1)ERPの武装解除終了
(イ)15日、トリマ県において、ELNから分派した左翼ゲリラERP(Ejercito Revolucionario
del Pueblo)の司令官「カルロス」指揮下で、同組織最後の武装グループとなっていた14名(成人男性12名、同女性1名、未成年1名)が武装解除を行った。
(ロ)ERPは、22年前にELNから分離し形成された左翼ゲリラグループであり、1996年8月、ELN書記局の方針に反対したELN構成員100名以上が構成したグループとして、公にその存在を表明した。当初は左翼イデオロギー集団として活動していたものの、次第に、誘拐、強盗などの犯罪活動を行うグループとして知られるようになった。ERPは、最大時には構成員150名規模に達したと見られている。
(ハ)「カルロス」によると、今年1月末のトリマ県Vanadillo市郊外の戦闘でERP設立者の一人「ゴンサロ」司令官(本名エドガル・カステジャーノス)が死亡して以降、ERPは武装解除へ方針を転換した。「カルロス」は、「FARCから「軍事標的とする」宣言を受け、特に過去3ヶ月の間は、FARCから武器強奪対象とされるなど厳しい状況が続いた。従来敵であった国軍に加え、FARCからも狙われるようになり、移動範囲が以前のように取れなくなった。」として、ERPが武装解除へ踏み切った背景を説明した。
V.治安等
国家警察統計 (<>内はボゴタ市。)
(1)殺人:1,330件 <116件>
(2)集団殺人:1件4人<0件>
(3)脅迫:34件 <8件>
(4)窃盗・強盗:4,896件 <1,491件>
(5)自動車盗難:1,128件 <277件>
(6)誘拐:10件 <3件>
(7)テロ:24件 <0件>
W.外交
1.ウリベ大統領の国連総会出席
ウリベ大統領は24日から27日まで米国を訪問し、第62回国連総会一般討論演説(27日)、サルコジ仏大統領、ライス国務長官、ゼーリック世銀総裁との会談、クリントン米元大統領との会合、その他各国(スイス、チェコ、トルコ)首脳との会談を行った。
2.アラウッホ外相の欧州訪問
3日から8日、アラウッホ外相は、欧州諸国を歴訪した。アラウッホ外相は、FARCとの人質交換問題を支援する友好国グループを構成するスイス、スペイン、フランスに加え、ベルギー及びスウェーデンも訪問した。