コロンビア内政・外交等定期報告(10月)
T.概要
<内政>
● 28日、地方選挙が実施され、ボゴタ市長選は二期連続して左派PDA党が制した。全国レベルではPDA党が伸び悩む一方、自由・保守両伝統政党が地方に強い底力を発揮したほか、所謂「ウリベ派政党」と呼ばれる新興の諸政党も健闘した。
● FARCとの人質交換問題では、ピエダッド・コルドバ上院議員が各地で仲介のための活動を続ける一方、ウリベ大統領は、(FARCの要求である)米国内刑務所に収監中のFARC幹部釈放については、「コ」国内における将来的な米国人誘拐の増加を誘発しかねないとして否定する考えを示した。
<外交>
● 12日、ウリベ大統領は、チャベス・ベネズエラ大統領及びコレア・エクアドル大統領と共に、「ベ」国境に位置するグアヒラ県を横断するガス・パイプラインの完成式に出席した。
● 3日、当国訪問中のゲイツ米国防長官は、ウリベ大統領、サントス国防相、当国国軍関係者等との会談を行った。
● 21日及び22日、アラウッホ外相はキューバを訪問し、同国政府による政府とELNの和平プロセスへの協力に対する謝意を表明した。
U.内政
1.内政一般
(1)2007年地方選の実施
(イ)28日、県知事(32)、県議会議員(418)、市長(1099)、市議会議員(12,030)、区議会議員(4,949)の各ポスト(計18,528ポスト)を対象に計86,449人の候補者が出馬した地方選が行われた(いずれのポストも任期は、2008年1月から4年間)。
(ロ)今次地方選では、(a)最近の当国政治を特徴づけている二大伝統政党(自由党及び保守党)の衰退と「ウリベ派政党」を含む新興諸政党の躍進振り、(b)前回2003年ボゴタ市長選を制した左派PDA党に対する支持状況、(c)選挙当日を含めテロ行為が発生した前回2003年地方選(選挙妨害テロで当日に死者12名発生)を念頭においた政府当局による治安対策の成果等が注目された。
(ハ)選挙の結果、ボゴタ市長選では、元ボゴタ市長(1997-2000)として評価が高くウリベ大統領派政党の強力な支持を受けていたペニャロサ候補が、左派PDA党のモレノ候補に敗北した(得票率は、モレノ候補43.7%、ペニャロサ候補28.15%)。この結果、首都ボゴタ市では二期連続して左派PDA党の市長が誕生することとなった。一方、ボゴタ市を除き全国レベルではPDA党は伸び悩み、全国規模の政治勢力として未だに成長していない弱さを露呈した。
(ニ)「ウリベ派」諸政党については、急進改革党や社会統一党(通称"U"党)などの躍進は目立ったものの、これら政党が県知事選を制した地域は国内的に重要性の低い地域に留まり、全国レベルの総獲得票数や、主要地域を制したという面では、勢力後退が指摘される自由・保守両政党が地方選における強さを示し一定の勢力を維持した。
(ハ)懸念された治安状況については、選挙当日までに候補者計29人が殺害されたものの(前回2003年地方選も同数の候補者が選挙前に殺害)、投票当日については大きなテロ行為は発生せず、政府による治安対策が概ね功を奏した。
(2)政府とFARCの人質交換問題
(イ)政府とFARCの人道的人質交換問題に取り組むピエダッド・コルドバ上院議員は、2日に米国ワシントンを訪問し民主党議員との会合を行った。4日には、FARCが人質交換の対象とすることを要求するFARC構成員通称「ソニア」が収監されているテキサス州内の刑務所を訪問した。
(ロ)3日、ウリベ大統領は、「FARCの人質となっている米国人と、米国に引き渡されたFARC構成員の人質交換を認めた場合、将来的なコロンビア国内での米国人誘拐事件の増加を誘発しかねず、延いては、コロンビアの観光・投資を阻害することになりかねない」との見方を示した。
(ハ)チャベス大統領とFARC幹部の会合が8日にベネズエラ国内で行われる予定とされていたものの、同会合は延期となった。
(3)パラミリタリー問題に関わるウリベ大統領と司法府の軋轢
(イ)8日夜、大統領府は、「最高裁判事補が、国内刑務所収監中の元パラミリタリー幹部通称「タスマニア」と接触した際、司法上の恩恵付与を取引材料として、2003年に発生した「パラ」の「アルシデス・ドゥランゴ」通称「レネ」襲撃未遂について、ウリベ大統領他が首謀者であったと告発するよう依頼した」とし、検察庁に対し右真相解明を要求するとのコミュニケを発出した。翌9日、ウリベ大統領は予定されていた日程の大半をキャンセルし、記者会見の開催や各種メディアへ登場し、自らが根拠無き誹謗中傷の対象となっていると訴え、司法府、関連記事を報じた当国有力全国紙の「エル・ティエンポ」紙等を強く非難した。
(ロ)これに対し、バレンシア最高裁長官は、独立が保証されている司法府に対し政府が介入を行っていると批判した。更に司法府内部では、「パラ・ポリティカ」スキャンダル(政治家とパラミリタリーの癒着問題)でこれまでに多くの政治家を逮捕に導いた判事補を擁護する声が高まった。
(ハ)9日夜、バレンシア最高裁長官は、判事補による「タスマニア」への尋問において、ウリベ大統領への直接的言及はなかったとすると共に、ウリベ大統領により問題視された判事補に対する支持を改めて表明し、大統領との対立問題は沈静した。
2.非合法武装勢力関連
○ FARCカリブ・ブロック司令官「マルティン・カバジェロ」の死亡
24日、FARCカリブ・ブロックの司令官通称「マルティン・カバジェロ」(本名:グスタボ・ルエダ・ディアス)が、シンセレッホ市(スクレ県)郊外で展開された国軍合同抑止活動部隊(FUCAD)の作戦により死亡した。当国北部のマリア山地(ボリーバル県及びスクレ県)で活動するFARCカリブ・ブロックについては、今年1月、脱出に成功したフェルナンド・アラウッホ現外相に対する誘拐(2000年12月)容疑も掛けられている。
V.治安等
国家警察統計 (<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2006年10月)の数値)
(1)殺人:1,186件 <83件> ← [1,489件<116件>]
(2)集団殺人:2件14人<0件> ← [2件10人<0件>]
(3)脅迫:30件 <7件> ← [134件<19件>]
(4)窃盗・強盗:5,712件 <1,540件> ← [8,286件<1,851件>]
(5)自動車盗難:1,167件 <251件> ← [1,564件<406件>]
(6)誘拐:22件 <2件> ← [56件<7件>]
(7)テロ:51件 <0件> ← [49件<1件>]
W.外交
1.「グアヒラ県横断ガス・パイプライン」完成式典へのチャベス「ベ」大統領等の出席
12日、ウリベ大統領及びベネズエラのチャベス大統領は、両国国境に位置する当国北部グアヒラ県プンラ・バジェナス市で開催された「グアヒラ県横断ガス・パイプライン」完成式典へ出席した。同式典には、将来的に同パイプラインが延長される予定のエクアドルのコレア大統領も出席し、三ヶ国の大統領は約5時間に亘り会合を行った。
2.ゲイツ米国防長官の当国訪問
2日夜にエル・サルバドルから当国へ到着したゲイツ米国防長官は、3日、大統領官邸で、ウリベ大統領、サントス国防相、アラウッホ外相、国軍統合幕僚長等との会談を行った。ゲイツ国防長官は更に、サントス国防相と共にトリマ県トレマイダ軍事基地を訪問し、7年前に米国の軍事援助を受け創設された麻薬及びテロ対策特別部隊の活動状況を視察した。当国での日程を終えたゲイツ国防長官は、3日夕、次の訪問地チリへ向け出発した。
3.アラウッホ外相のキューバ訪問
21日及び22日、アラウッホ外相はキューバを訪問し、アラルコン人民権力全国議会議長等と会談を行い、「コ」政府とELNの予備会合(2005年12月開始)に際して同国政府がこれまでに行ってきた協力に対する感謝の意を表明した