コロンビア内政・外交等定期報告(11月)

 

T.概要

 <内政>

政府とFARCの人質交換問題については、初旬にカラカスでチャベス大統領とFARC幹部の会合が行われ、20日にはパリでサルコジ大統領とチャベス大統領の間で会談が行われたものの、期待されていた人質の生存証拠が届けられなかったことで失望感が生じた。21日にコロンビア政府が「チャベス大統領及びコルドバ上院議員の仲介停止」を宣言したことで、両国間関係に緊張が高まり、25日にはチャベス大統領が両国関係凍結を表明した。そのような中で、29日夕方、ボゴタ市内で、イングリッド・ベタンクール元大統領候補、米国人3名等FARC人質17名の生存証拠を携行したFARCシンパが逮捕され新しい局面を迎えた。

11月実施の世論調査で、ウリベ大統領に対する支持率は前回調査から更に上昇し74%に達した。

 <外交>

9日及び10日、ウリベ大統領はチリで開催された第17回イベロアメリカサミットに出席、9日にはチャベス大統領との会談も行われた。

29日及び30日、第3回コロンビア支援ボゴタ会合が開催され、G24(コロンビア支援国グループ)各国代表団、コロンビア政府及び市民社会の対話が行われた。

 

U.内政

1.内政一般

(1)政府とFARCの人質交換問題

(イ)4日、チャベス・ベネズエラ大統領は、FARC書記局3名及びサルコジ仏大統領の特使1名が、人質交換問題でカラカスに到着している旨発言した。仏政府は同日、仏・「コ」両国籍を有するイングリッド・ベタンクール元大統領の「間接的生存証拠」を受け取った旨明らかにした。8日、カラカスにおいて、FARC幹部「イバン・マルケス」、チャベス大統領及びコルドバ当国上院議員が会談を行い、「イバン・マルケス」はチャベス大統領に対し、「コ」国内メタ県とカケタ県境のヤリ平原での会合を提案した。「コ」政府は、「同会合について報道を通じて知った」とし「ベ」政府に対する不快感を表明した。

(ロ)13日、ウリベ大統領は国家警察創設116周年記念式典において、「カラカスから外国メディアを欺いている犯罪者(FARCを示唆)に我慢を重ねている」、「「マヌエル・マルランダ」がチャベス大統領との会合に出られないのは殺されることを警戒しているためであり、これは実に正しい直感だ」等FARCに対する厳しい姿勢を示す演説を行った。

(ハ)20日、パリでサルコジ大統領とチャベス大統領が「コ」政府とFARCの人質交換問題等に関する会談を行ったものの、期待されていた人質の生存証拠は、同日までにチャベス大統領へ届けられなかった。21日深夜、コロンビア政府は、FARCとの人質交換問題について、チャベス大統領が直接モントヤ「コ」陸軍司令官に電話で話をしようとしたことを理由にチャベス大統領とコルドバ当国上院議員による仲介を停止する旨発表した。22日、チャベス大統領及びコルドバ議員共に、「「コ」政府の決定を尊重する」との表明を行った。

(ニ)24日午前2時、チャベス大統領は、「ウリベ大統領は(仲介停止)決定の前に、自分(チャベス大統領)に対し事実関係をきちんと確認すべきであった。善意に基づきFARCとの仲介を行ってきたため、裏切られた思いがする」旨表明。これに対し「コ」政府はチャベス大統領に対し、同日、「テロリスト(=FARC)は両国関係に亀裂を引き起こすことを企んでいるのでありその罠に嵌らないよう注意して欲しい」等とするコミュニケを発出した。25日、チャベス大統領は、「ウリベ大統領は嘘つき」、「両国関係は凍結する」等更に厳しい姿勢を示した。

(ホ)29日夕方、ボゴタ市内でFARCシンパに対する合同作戦を展開していた検察・国軍チームは容疑者3名を逮捕し、イングリッド・ベタンクール元大統領候補(20022月拉致)、米国人3(20032月拉致)、ルイス・エラディオ・ペレス元上院議員(20016月誘拐)、国軍・警察要員(多くが1998年から身柄拘束)等17名の生存証拠(ビデオ(1023日及び24日の日付)、写真、本人達が書いた手紙)を発見・押収した。30日午前には生存証拠となったビデオが国内TV局を通じて放映され、生存が確認されつつもやつれ果てた人質の姿が衝撃をもって受け止められた。ウリベ大統領は、同日開催されたG24対コロンビア支援ボゴタ会合において、ベタンクール氏及びペレス上院議員には拷問の跡が認められるとしてナチスの強制収容所にたとえ、FARCを強く糾弾しつつ、生存が確認された人質の即時解放を訴えた。仏政府は同日、「チャベス大統領による人質交換合意のための尽力は既に過去のものとなった」、「ベタンクール氏の生存が確認され今後は解放実現に務める」等表明した。

(2)ELNとの和平プロセス

(イ)14日、チャベス大統領は、「コ」政府との和平を模索するELN幹部と会合する予定である旨発表した。

(ロ)18日、ELNスポークスマンの「アントニオ・ガルシア」は、12月中旬にこれまでの和平プロセスの評価や作業方針見直しを行う会合が行われる予定である旨述べた。同発表の前には、チャベス大統領と「アントニオ・ガルシア」及び「ガビーノ」による会合、更に、レストレポ和平高等弁務官と「アントニオ・ガルシア」による会合が行われていた。

(3)ウリベ大統領支持率

 22日、世論調査会社ギャロップ社は、ウリベ大統領に対する支持率は更に上昇し74%に達した(9月:71%7月:66%)と発表した。同社は大統領支持率の上昇について、多くの家計での経済状況の改善及び政府によるゲリラ戦略が評価されたと分析した。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)FARC構成員の国軍潜入問題

 20061019日に発生したボゴタ市内北部のヌエバ・グラナダ国軍大学駐車場での自動車爆弾爆発事件に関し、11日付「セマナ」誌は、FARC構成員のマリル・ラミレス・バケロ(女性、本年1025日に反乱・テロ・殺人首謀等で告訴)が国軍職員として潜入し、爆弾事件を準備した旨報じた。ラミレスはパストラーナ政権期の2005年に国軍大学の学生として入学していた。

 

 

V.治安等 (治安統計未発表のためこの部分追電)

 

 

W.外交

1.ウリベ大統領の第17回イベロアメリカ・サミット出席関連

(1)9日及び10日、ウリベ大統領はチリで開催された第17回イベロアメリカサミットに出席した。9日、ウリベ大統領は同地でチャベス大統領と会談し、FARCとの人質交換問題に対する尽力への謝意を表明した。

213日、当国訪問中のアスナール前スペイン首相は、イベロアメリカ・サミット最終日セッションでチャベス大統領から「ファシスト」と名指して批判された問題について、「このような中傷を煽るつもりはない」としつつ、「家の中で問題が起きると外の敵が必要になる人々はいるものである」と述べた。アスナール前首相は著書発表のため12日から14日まで当国を訪問していた。

 

2.       第3回コロンビア支援ボゴタ会合開催

 29日及び30日、第3回コロンビア支援ボゴタ会合が開催され、G24(対コロンビア支援国グループ)各国代表団、コロンビア政府関係者及び市民社会がコロンビア支援について協議を行い、「ボゴタ宣言」が採択された。

 

3.ウォルターズ米国麻薬取締局長及びタンディー米司法省薬物取締局(DEA)局長の訪問

 9日、ジョン・ウォルターズ米国麻薬取締局長及びカレン・タンディー米司法省麻薬取締局(DEA)局長が当国を訪問した。ウォルターズ麻薬取締局長は、米国は麻薬取引に関与した元「パラ」司令官複数の証拠収集を行っていると述べると共に、米国内では過去9ヶ月間にわたり、コカインのストリートプライスの上昇、純度の低下、消費量の低下(1992年レベル)が起きており、この傾向が維持されるべきとの見方を示した。