コロンビア内政・外交等定期報告(2007年12月)

 

T.概要

 <内政>

 ● 政府とFARCの人質交換問題については、ウリベ大統領が、FARCとの協議のための地域150kuを国内に設定することを受け入れる旨表明した一方(7)FARCは、クララ・ロハス元副大統領候補と身柄拘束中に誕生した息子、及びコンスエロ・ゴンサレス元下院議員を解放するとのコミュニケを発表した(18)。その後、チャベス大統領が、国際赤十字の小型飛行機等による援助部隊が人質解放作戦を行うなどの計画を発表した(26)(亜等六ヶ国の代表者が同行)。しかしながら、「コ」軍の軍事作戦のため人質解放が困難となったとするFARC書簡が発出され(31)、年内の人質解放は実現しなかった。

 ● 年末に任期を終えるガルソン・ボゴタ市長は当地紙インタビュー(9)において、「(所属する)左派PDA党からは理解を得られていないと感じてきた」、「何についても「NO」とするPDA党と共に政治を行うことは不可能で、PDA党が自分を追放するのであれば、2010年大統領選に際しては新たな政党を設立する準備がある」等表明した。

 <外交>

 ● ウリベ大統領は10日に開催されたアルゼンチンの大統領就任式に出席した。大統領就任式後の11日にはペルーを訪問し、ガルシア同国大統領との首脳会談を行った。

 ● 12日及び13日、サントス副大統領が米国を訪問し、OAS常設理事会に出席したほか、シンクタンク「インターアメリカン・ダイアローグ」での講演を行った。

 

U.内政

1.内政一般

(1)政府とFARCの人質交換問題

(イ)11月末にボゴタ市内において、仏国籍も有するイングリッド・ベタンクール元大統領候補を含むFARC人質の生存証拠が押収されたことを受け、5日、仏のサルコジ大統領は、FARC最高幹部「マヌエル・マルランダ」及びFARC人質へ宛てた書簡を発表し、「仏政府はFARCの人質を見捨てることはしない」、「(「マルランダ」に対し)クリスマスにイングリッド・ベタンクールに会うことが夢である」等とし、人質解放実現に向け、仏政府が引き続き積極的に関与する姿勢を示した。

(ロ)7日、ウリベ大統領は国家警察式典において、カトリック教会等の要請を受け、FARCとの間で人質交換問題の協議を行うことを目的として150kuの地域を国内に設定することを受け入れた旨表明した。

(ハ)10日、アルゼンチンの大統領就任式において、フェルナンデス新大統領他各国首脳から、当国の誘拐被害者解放実現へ向けての期待感が表明された(下記W.1.参照)

(ニ)18日、FARCは、クララ・ロハス元副大統領候補(20022月拉致)及び身柄拘束中に誕生した息子エマニュエル、コンスエロ・ゴンサレス元下院議員(20019月拉致)を解放する予定とのコミュニケを発表した。

(ホ)22日、コルドバ上院議員はカラカスにおいて、コロンビア国軍による軍事作戦の影響でFARCによる人質解放が遅れる可能性がある旨表明した。コルドバ上院議員の発言について、23日、レストレポ和平高等弁務官は、政府はFARCによる人質引き渡しを妨げてはいないと反論した。26日、チャベス大統領は、人質解放オペレーション(「トランスパレンシー作戦」)の詳細を発表した(「ベ」領内4ヶ所に待機中の国際赤十字の小型飛行機・ヘリコプターからなる援助部隊(6ヶ国の元首が任命する代表者が同行)が、「コ」領内メタ県ビジャビセンシオ市の空港へ赴き、同地からFARC指定地域に移動し人質を引き取り、その後ベネズエラ領へ移送)

(ヘ)同日、アラウッホ外相は、チャベス大統領の人質解放オペレーション提案について、「コ」政府側が緊急協議を行い了承した旨発表した。国際赤十字の援助部隊には、亜のキルチネル前大統領を団長に、伯、エクアドル、ボリビア等各国代表者が同行した。また米国の映画監督オリバー・ストーン氏も現地入りし、人質解放活動に参加したいとの意向を表明していた。

(ト)31日、チャベス大統領は、「人質解放を行う場所で「コ」軍が軍事作戦を行っているため人質解放が困難となっている」とするFARCの書簡を発表した。ウリベ大統領は、「FARCが人質解放を行わなかったのは、解放対象とした人質の男児が実際にはFARC側ではなくコロンビア国内で家族福祉庁(ICBF)に保護されているため」とした。

(2)ガルソン・ボゴタ市長と左派PDA党の関係等

(イ)年末に任期を終えるガルソン・ボゴタ市長は9日付「エル・ティエンポ」紙インタビューにおいて、「(所属する)左派PDA党からは理解を得られていないと感じてきた」、「カルロス・ガビリアPDA党首はガルソン市長によるボゴタ市政に無関心であった」等述べたほか、「何についても「NO」とするPDA党と共に政治を行うことは不可能で、PDA党が自分を追放するのであれば、次回の2010年大統領選に際して新たな政党を設立する準備がある」と表明した。これに対し、PDA党幹部は、ガルソン市長は将来の大統領選を視野に収めて、これまでの支持層を批判しているとの反発を示した。

(ロ)10日、ガルソン市長による4年間のボゴタ市政に対する最後の世論調査結果が発表され、教育普及率、食糧問題、医療補助金、妊婦及び乳幼児の死亡率低下の各分野については高く評価された一方、青年・成人層の識字率向上、首都圏諸大学の学生受け入れ規模拡大等に対する評価は低かった。治安面については、ボゴタ市内での殺害発生件数が目標を達成し減少した一方で、街中での強盗発生率は引き続き課題とされ、治安が悪い地域での犯罪撲滅を目指した総合的戦略も欠如しているとされた。

(3)ELNとの和平プロセス

 17日、ELNが、停戦方法を含む政府案を検討していることが明らかとなった。同政府案では、停戦の際に、集結地の設定や構成員の身分を明らかにすることを条件としないことが内容とされていると見られる。元左翼ゲリラM-19構成員で政治評論家のレオン・バレンシア氏は、同政府案では、停戦に際しての検証方法についてもかなり細かい内容が盛り込まれているとした。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)FARCによるウリベ大統領家族誘拐未遂

 13日、国家警察はFARC都市構成員10名を逮捕し、ボゴタ市内繁華街(Zona Rosa)におけるウリベ大統領の息子誘拐計画及びサン・ビセンテ・デル・カグアン市(カケタ県)内の牧畜フェアにおける爆破が計画されていた旨明らかにした。

(2)FARCによる米国人標的爆弾未遂事件の報告

 14日、ボゴタ訪問中の米国FBI関係者は、20076月に観光地のメルガル市(トリマ県)で米国人旅行者をターゲットとした爆弾未遂事件につき、FARCのテオフィロ・フォレロ機動部隊メンバー3名が自動車爆弾を仕掛けたとする証拠が示された報告書を受け取った。今後、米国は同3名の米国への引き渡しを求めると見られる。

 

 

V.治安等

 国家警察統計(<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(200612)の数値)

(1) 殺人:1,429 131件> ←[1,537件<137件>]

(2) 集団殺人:211人<0件> ←[14人<0件>]

(3) 脅迫:31 6件> ←[69件<5件>]

(4) 窃盗・強盗:5,368 1,417件> ←[7,376件<2,082件>]

(5) 自動車盗難:1,309 287件> ←[1,359件<328件>]

(6) 誘拐:7 0件> ←[30件<3件>]

(7) テロ:29 0件> ←[32件<1件>]

 

W.外交

1.ウリベ大統領のアルゼンチン大統領就任式出席

(1)10日、ウリベ大統領はアルゼンチンの大統領就任式へ出席した。大統領就任式においてフェルナンデス新亜大統領は、コロンビアにおける人質問題解決のため可能な限り支援を行うとの意欲を示した。フィヨン仏首相は、サルコジ同国大統領による中南米諸国元首に向けたメッセージとして、FARCへの圧力を強め人道的解決を目指すよう呼びかけるとした。

(2)11日、ウリベ大統領はフェルナンデス新大統領と、誘拐問題を中心に一時間に亘る首脳会談を行った。なお、ピエダッド・コルドバ「コ」上院議員及びイングリッド・ベタンクール元大統領候補の母親も誘拐問題についてフェルナンデス新大統領との会談を行った。

 

2.ウリベ大統領のペルー訪問

 11日、ウリベ大統領はプラタ商工観光相等を伴いペルーを訪問し、ガルシア同国大統領と両国間の貿易・投資促進を中心とする二国間関係について首脳会談を行った。

 

3.サントス副大統領の米国訪問

 10日及び11日、サントス副大統領は米国を訪問し、OAS常設理事会への出席、FARCによる人質問題に関心を有する米国議会関係者との会合を行った。また、シンクタンク「インターアメリカン・ダイアローグ」では、FARCを政治的に封じ込めるため、国際社会に対し協力を求めるとする講演を行った。

 

4.ニカラグアとのサン・アンドレス島等の管轄権問題

 13日、国際司法裁判所(ICJ)は、当国とニカラグアの間で争われているカリブ海諸島の領土及び海洋紛争問題について、「サン・アンドレス島、プロビデンシア島及びサンタ・カタリーナ島の3島をコロンビア領とする1928年条約は有効」、「ロンカドール礁、キタスエニョ礁及びセラーナ礁の主権については領有国や領海線は未定」との判断を示した。ロンカドール礁等については、今後、双方の主張を検討した上で、国際司法裁判所が最終判断を下す予定となっている(本件について専門家は、ICJの最終判断まで34年かかると予想している)