コロンビア内政・外交等定期報告(2008年1月)
T. 概要
〈内政〉
●FARCの人質解放問題に関し、解放対象者の一人ロハス元副大統領候補の男児「エマヌエル」が既にコロンビア家族福祉協会(ICBF)に保護されていることがDNA鑑定の結果判明した(4日)。その後、チャベス「べ」大統領等は解放オペレーションを再開し、ロハス元副大統領候補とペルドモ元下院議員が解放された(10日)。
●ギャロップ社による世論調査の結果が発表され、ウリベ大統領は一期目(2002年〜)を含め就任以来最高水準となる80%の支持率を記録した(24日)。
〈外交〉
●ウリベ大統領はチャベス「べ」大統領から「FARCをテロ組織リストから除外する」要請を受けたが、拒否した(11日)。以降、「コ」・「べ」二国間関係は更に冷え込んでいる。
●24日〜25日、ライス米国務長官が9名の米民主党議員とともに当国メデジン市を訪問し、FTA締結に前向きな姿勢を示した。民主党議員はウリベ大統領の真摯な取り組みを評価した。
U. 内政
1.内政一般
(1)「コ」政府とFARCの人質解放問題
(イ)4日、イグアラン検事総長はDNA鑑定の結果、保護されていた男児「エマヌエル」がロハス氏の家族である可能性がきわめて高いと発表した。これにより、解放予定者としてFARCが発表していた「エマヌエル」は既にFARCの手中にないことが判明した。
(ロ)10日、チャベス「べ」大統領の主導により人質のロハス氏及びペルドモ氏)が無条件で解放された。同日、ウリベ大統領は解放を主導したチャベス「べ」大統領、コルドバ上院議員、キューバ政府に対し謝意を表明した。
(2)ウリベ大統領支持率の上昇等
(イ)24日、ギャロップ社は1月に実施した国内世論調査結果を発表した。ウリベ大統領の支持率は前回2007年11月の調査より6%上昇し、80%に達し、2002年の大統領就任(一期目)以来、最高水準に達した。他方、不支持率は14%で前回(17%)より3%減少した。
(ロ)外交政策においても74%と高い支持率を記録し、ウリベ大統領の外交政策が評価された。チャベス「べ」大統領の発言に関しては、「批判的」が76%と「好意的」の10%を大きく引き離した。
(ハ)非合法武装勢力に対する政策については支持が67%と前回(64%)より3%上昇し、引き続き高い評価を得た。国内情勢に関しては、「改善」が48%と前回(51%)から3%減少し、「悪化」は24%と前回(34%)から10%上昇した。また、今回の調査では、とりわけ「治安」・「安全」に対する懸念の高さがうかがわれた。
(3)「FARC反対」・「誘拐反対」デモ開催計画
26日、「FARC反対」・「誘拐反対」のデモが2月4日に開催される旨が報じられた。今回のデモは若者6名がフェイスブック(ソーシャルネットワーキングサービス:SNS)を通じて呼びかけたことに端を発する。国内外190以上の組織が参加する予定とされた。なお、「FARC反対」と明示する大規模デモは初めての由。
(4)麻薬カルテル幹部、遺体で発見
31日、現在当国最大規模の麻薬密売組織ノルテ・デル・バジェ・カルテル幹部ウィルベル・バレラ(通称:「ハボン」)の遺体がベネズエラで発見された。「ハボン」はディエゴ・レオン・モントージャ・サンチェス(通称:「ドン・ディエゴ」)(2007年国軍により逮捕)と2大派閥を築いており、今回「ハボン」が殺害されたことでノルテ・デル・バジェの派閥幹部が不在となった。2007年には「ドン・ディエゴ」の他にフアン・カルロス・ラミレス・アバディア(通称:「チュペタ」)とエウへニオ・モントーヤ・サンチェス(「ドン・ディエゴ」の弟)も逮捕されており、1年間で4名の幹部が逮捕されたことになる。
2.非合法武装勢力関連
(1)FARC幹部に対する求刑
28日、米国ワシントンにて2003年2月に米国人3名を誘拐した罪に問われている元FARC幹部「シモン・トリニダッド」に対する裁判が行われた。ロイス・ランバース裁判官は「(トリニダッド被告の犯罪は)残虐なテロ行為であり、全文明社会の法を侵す行動である。本判決が、これら犯罪行為に対する明確なメッセージである」として、コロンビア人に対する求刑としては最も重い米国における60年の求刑を言い渡した。
V. 治安等
国家警察統計 (<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2007年1月)の数値)
(1)殺人:1,486件 <98件> ← [1506件<84件>]
(2)集団殺人:1件4人<0件> ← [1件4人<0件>]
(3)脅迫:40件 <9件> ← [34件<6件>]
(4)窃盗・強盗:7,555件 <2,084件> ← [6918件<1817件>]
(5)自動車盗難:1,469件 <307件> ← [1395件<347件>]
(6)誘拐:48件 <1件> ← [23件<1件>]
(7)テロ:24件 <1件> ← [18件<0件>]
W. 外交
1.「コ」・「べ」二国間関係
(1)11日、チャベス「べ」大統領は「FARCの活動は政治目的を有する」ことを理由に「FARC及びELNをテロ組織リストから除外すべき」旨発言した。
(2)同日、本件に関し、「コ」政府は「「コ」においては、民主主義を脅かす武装手段こそテロであり、「コ」の非合法武装勢力は、誘拐、爆弾攻撃、市民殺害、対人地雷使用などを行っている。」としてリストからの除外を拒否した。
(3)16日、「コ」政府はチャベス「べ」大統領に対する抗議文書を発出し、FARC人質解放問題に関しチャベス大統領がFARCを支持している旨を批判し、コロンビアに対する攻撃の中止と両国政府の対話を要請した。
2.ウリベ大統領の欧州歴訪
24日にスイスで開催予定のダボス会議出席にあわせ、ウリベ大統領は21日から4日間にわたり、人質解放問題に協力の意向を示している3カ国(仏、西、スイス)とベルギーを歴訪し、支持を訴えた。
(1)21日、ウリベ大統領はパリにてサルコジ仏大統領と会談し、誘拐被害者の無事と解放のために国際社会の支援を要請した。サルコジ仏大統領は「FARCをテロ組織リストから除外しない」旨発言し、ウリベ大統領を支持した。
(2)22日、ウリベ大統領と会談したソラナEU共通外交安全保障上級代表はウリベ大統領を支持するとともに、非合法武装勢力に対し、無条件かつ即時の人質解放を要請した。
(3)23日、ウリベ大統領はスペインを訪問し、サパテロ西首相はウリベ大統領の非合法武装勢力に対する政策を支持した。また、フアン・カルロス国王はウリベ大統領の訪西を歓迎した。
(4)24日、人質解放問題の仲介役を務めるスイスではカルミ=レ外相から「人質解放問題の仲介に関しては担当国(仏・西・スイス)に一任してほしい」旨要請があった。
(5)ウリベ大統領は同日ダボス会議に出席し、米国とのFTA締結を要請した。
3.アラウッホ外相の西訪問
22日、FARC元人質のロハス氏とアラウッホ「コ」外相(2000年12月FARCにより拉致、2007年1月自力脱出)はスペインで開催されたフェリペ皇太子臨席の第6回テロ対策会議開会式に出席し、歓迎をうけた。
4.ライス米国務長官及び米民主党議員の「コ」訪問
24日から25日にかけてライス米国務長官がコロンビア・メデジン市(アンティオキア県)を訪問した。
(1)24日、ライス国務長官はメデジン市に到着し、労働組合関係者と会談した。続いて花き、工業、コーヒー、繊維民間企業関係者との会合に参加をした。
(2)25日、ウリベ大統領と会談を行い、非合法武装勢力に対するウリベ大統領の政策を支持するとともに、FTA締結に向けた米国議会の承認を早急に得られるよう要請を受けた。
(3)ライス国務長官に同行した米民主党議員の代表エンゲル氏は、「コ」国の治安の回復と発展に関し賛辞を述べ、良好な両国関係の維持に意欲を示した。
(4)今回「コ」を訪問した米民主党議員9人のうち、7名はFTA締結に賛成の姿勢に転じており、今回の訪問は一定の成果を残した。