コロンビア内政・外交定期報告(2月)

 

. 概要

 

〈内政〉

●4日、コロンビア国内の45都市、世界各国の125を超える主要都市で「FARC反対、誘拐反対、人質解放」を訴える大規模な抗議集会及びデモ行進が行われた。参加者はボゴタ市内だけでも100万人以上に上ったとみられている。

●23日、イングリッド・ベタンクール元大統領候補のFARCによる拘束から6年が経過し、国内外で解放を求める集会が開催された。

●26日、FARCに拘束されて以降、体調悪化が著しいヘーチェン元上院議員、ポランコ元下院議員、ベルトラン元下院議員、ペレス元上院議員4名が、チャベス・ベネズエラ大統領の仲介により解放された。

 

〈外交〉

●21日、ウリベ大統領は当国訪問中のクシュネール仏外相と会談を行った。会談でクシュネール外相が、人質解放問題についてキューバ、ブラジル、ベネズエラ等の協力を仰ぐ意向を示したが、ウリベ大統領はベネズエラの関与は認めない旨発言した。

●19日、カストロ・キューバ国家評議会議長の引退表明が発表された。コロンビア国内では、ELNとの和平プロセスの停滞を懸念する声があがった。

 

Ⅱ.内政

 

1.内政一般

(1)「FARC反対」の大規模デモ

(イ)4日、コロンビア国内の45都市で「FARC反対、誘拐反対、人質解放」を訴える大規模な抗議集会及びデモ行進が行われた。参加者はボゴタ市内だけでも100万人以上に上ったとみられる。また国外125以上の主要都市でも同様の集会が行われた。この大規模デモは、バランキージャ市出身の若者がソーシャル・ネットワーキング・サービス「フェイスブック」を介してよびかけたことにより実施された。

(ロ)ボゴタ市内の参加者は、「FARC反対、誘拐反対、殺人反対、嘘はもうたくさんだ」とのメッセージが記された、平和の象徴である白いTシャツを着用し、白いハンカチを振りながら中央行政府があるボリバル広場まで行進した。

(ハ)ウリベ大統領はデモには参加しなかったものの、国際的な関心に謝意を表明すると共に、非合法武装勢力と闘う決意を改めて表明した。

 

(2)イングリッド・ベタンクール元大統領候補の6年に及ぶFARC拘束期間

 23日、イングリッド・ベタンクール元大統領候補のFARC拘束から6年が経過し、フランスではベタンクール元大統領候補の家族が「コ」政府とFARC間の人質交換交渉の促進を訴え、テレビやラジオでも特集が組まれた他、パリでは、ベタンクール元大統領候補の写真を掲載した2階建てバスが市内を走った。コロンビアでは、正午にベタンクール元大統領候補の解放を祈るミサが開かれた。

 

(3)FARC人質政治家4名の解放

(イ)26日、ヘーチェン元上院議員、ポランコ元下院議員、ベルトラン元下院議員、ペレス元上院議員の計4名が、チャベス・ベネズエラ大統領の仲介により解放された。今次解放された政治家4名は、FARCが政府との「人質交換対象者」とする中でも、特に体調悪化が著しいため、「人道的扱い」を理由に解放対象者として選ばれた。当初解放対象者ではなかったヘーチェン元上院議員については、身柄引き渡し場所までの歩行が難しいほどに衰弱しているとみられていたものの、解放時には自ら歩行し、他の政治家と共に姿を見せた。解放オペレーションには、チャシン「べ」内務司法大臣、コルドバ「コ」上院議員、国際赤十字社、ベネズエラ人医師、ベネズエラメディア等が加わった。

(ロ)ウリベ大統領は、解放をうけて、「べ」政府に謝意を表明すると共に、FARCに対し、「希望するならば和解の余地はある」旨示唆した。

 

(4)ハムンディ事件公判

 2006年にバジェ・デ・カウカ県ハムンディ市郊外で発生した陸軍山岳隊兵士による国家警察刑事局捜査官10人及び民間人1人の殺害(ハムンディ事件)に関し、18日、陸軍大佐と兵士への有罪判決が下された。判決内容は4月21日に確定する予定であり、大佐に対しては懲役40年から60年、陸軍兵士に対しては懲役25年以上の判決がくだされる見込みである。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)FARC構成員「マルティン・ソンブラ」の逮捕

 35年間FARCで活動し、FARC最高幹部「マヌエル・マランダ」に近いとされるFARC構成員エリ・メヒア・メンドーサ(通称「マルティン・ソンブラ」)が26日、ボジャカ県で逮捕された。「マルティン・ソンブラ」はイングリッド・ベタンクール元大統領候補等の監視を行っていたと供述している。

(2)パラミリタリー元幹部の兄殺害

 17日、パラミリタリー元幹部フレディー・レンドン(通称「エル・アレマン」、2006年に武装解除)とマリオ・レンドン(通称「ドン・マリオ」、指名手配中)の兄ラサロ・レンドンの遺体がカウカシア市(アンティオキア県)のカウカ川で発見された。

 

Ⅲ.治安等

   国家警察統計 (<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2007年2月)の数値)

(1)殺人:1,292件 <94件> ← [1,393件<121件>]

(2)集団殺人:14人<0件> ← [416人<00人>]

(3)脅迫:51件 <10件> ← [63件<10件>]

(4)窃盗・強盗:3,870件 <1,177件> ← [7221件<1726件>]

(5)自動車盗難:1,352件 <238件> ← [1407件<314件>]

(6)誘拐:48件 <5件> ← [20件<6件>]

(7)テロ:31件 <0件> ← [28件<0件>]

 

Ⅳ. 外交

1.ウリベ大統領とクシュネール仏外相の会談

 21日、ウリベ大統領は当国訪問中のクシュネール仏外相と会談を行った。会談でクシュネール外相は、人質解放問題についてキューバ、ブラジル、ベネズエラ等の協力を求める意向を示す一方、ウリベ大統領は、ベネズエラの関与を認めず、キューバとブラジルの2カ国については「支援は受け入れるが、仏・西・スイスと同様の「仲介役」としての役割は認めない」旨発言した。

 

2.カストロ・キューバ国家評議会議長の引退

 19日、カストロ・キューバ国家評議会議長の引退表明が発表された。コロンビア国内では、カストロ議長の功績を報じると共に、これまでキューバ政府が関与してきた「コ」政府とELNの和平プロセスの停滞の可能性やカストロ議長による仲介が期待されていた「コ」・ベネズエラの二国間関係を懸念する声があがった。

 

3.「コ」・「べ」知識人による二国間関係改善の呼びかけ

 チャベス大統領による「FARCをテロ組織リストから除外」要請発言以降の「コ」及び「べ」の緊張状態を懸念した両国知識人が、2日、共同で関係改善を呼びかけた。本アピールに参加をしたのは、ノーベル文学賞受賞作家ガルシア・マルケス氏、女優のファニー・ミッケイ氏、国内最大紙「エル・ティエンポ」紙の総編集長エンリケ・サントス氏など計36名である。