コロンビア内政・外交定期報告(5月)

 

Ⅰ.概要

 

〈内政〉

●サントス国防相は、記者会見においてFARC最高幹部「ティロ・フィッホ」(もしくは「マヌエル・マランダ」)が、本年3月26日に死亡していた事実が明らかになった旨発表した(25日)。同日FARCは、ベネズエラテレビ局「テレスール」に提供したビデオを通じて「ティロ・フィッホ」死亡の事実を認め、新たに「アルフォンソ・カノ」が最高幹部となる旨発表した。

●コロンビア政府は、元パラミリタリー幹部15名を米国政府に引き渡した(13日)。今回の大量米国引き渡しにより、当国で受刑する元パラミリタリー幹部は9名のみとなり、パラミリタリー被害者は、補償に対する懸念を表明している。

●ギャラップ社による世論調査結果が発表され(2日)、パラミリタリーとの癒着問題(パラポリティカ)により議員の召喚及び逮捕が続く議会に対する評価が前回調査時(2008年3月)から21%下落した。ウリベ大統領に対する支持率は、83%で高支持率を維持した。

●自然災害が国内各地で発生した。M55の地震がメタ県で発生し(24日14時21分)、震源地付近の約40%の家屋が倒壊、主要道路が通行止めとなった。また、冬期の大雨により国内27県で深刻な被害が生じている。

 

〈外交〉

●南米共同体会議がブラジルで開催され、チャベス「べ」大統領は、ウリベ「コ」大統領に対してFARCへの資金供与を直接否定した(24日)。

●ペルーで開催された欧州・南米サミットの後、メルケル独首相は、当国を訪問しウリベ大統領と首脳会談を行った(17日)。メルケル首相は、テロとの戦い及び麻薬対策に関しコロンビアへの支援を表明した。

 

. 内政

 

1.内政一般

(1)FARC関連

(イ)FARC最高幹部「ティロ・フィッホ」死亡の発表

 24日、当地「セマーナ」紙のインタビューにおいてサントス国防相は、FARC最高幹部ペドロ・アントニオ・マリン(通称「ティロ・フィッホ」もしくは「マヌエル・マランダ」)の死亡に言及した。サントス国防相は、25日記者会見で「ティロ・フィッホ」が本年3月26日に死亡していた事実が明らかになった旨正式に発表し、FARCに対して武装放棄をよびかけた。FARCは同日、ベネズエラのテレビ局「テレスール」に提供したビデオを通じて「ティロ・フィッホ」死亡の事実を認め、新たに「アルフォンソ・カノ」が最高幹部となった旨発表した。

(ロ)FARC幹部「カリーナ」の自首

 18日、FARC幹部ネリー・アビラ・モレノ(通称「カリーナ」)がアンティオキア県アルへリア市の大統領府治安局(DAS)に自首し、逮捕された。逮捕前にはDAS局長と電話を通じて交信を行っており、「カリーナ」の子供の将来に関する助言を受けていた。「カリーナ」は、ウラバにおける大量殺人等に関与しており「最も危険でどう猛な人物の一人」とされている。

(ハ)FARCとの癒着疑惑を調査

 22日、イグアラン検察庁長官はFARCとの癒着疑惑により、コルドバ上院議員及び2名の記者に対する調査を最高裁判所に求める旨発表した。癒着疑惑は、本年3月に国軍の攻撃により死亡したFARC幹部「ラウル・レジェス」のパソコンに含まれる情報から発覚した。

 

(2)元パラミリタリー幹部の米国政府への引き渡し

(イ)6日、コロンビア政府は、当国で最も厳重な警備下にあるコンビタ刑務所で受刑していた元パラミリタリー幹部カルロス・マリオ・ヒメネス(通称「マカコ」)を米国に引き渡した。

(ロ)更に13日、コロンビア政府は、元パラミリタリー幹部14名を米国に引き渡した。引き渡された元パラミリタリー幹部は、サルバトーレ・マンクーソ、ロドリゴ・トバール(通称「ホルヘ40」)、ディエゴ・ベハラノ(通称「ドン・ベルナ」)、ラミロ・バノイ(通称「クコ」)、エドゥアルド・ベンゴエチェア(通称「エル・フラコ」)、フアン・カルロス・シエラ(通称「エル・トゥソ」)、エドウィン・ゴメス(通称「ポブレ・メジョ」)、ディエゴ・ルイス(通称「エル・プリモ」)、フシスコ・スルアガ(通称「ゴルドリンド」)、マルティン・ペニャランダ、マヌエル・トレグロサ、エルナン・ヒラルド、ギジェルモ・ペレス・アルサテ、ノディエル・ヒラルド・ヒラルドの14名で、当国で受刑を継続する元パラミリタリー幹部は9名のみとなり、パラミリタリー被害者は被害補償に対する懸念を表明している。

 

(3)ギャラップ社による世論調査

(イ)2日、ギャラップ社は4月に実施した世論調査結果を発表した。パラミリタリーとの癒着疑惑(パラポリティカ)により議員の召喚及び逮捕が相次いでいる議会に対する信頼度が前回(2008年3月)から21%下落し、近年の調査の中で最も厳しい結果となった。

(ロ)ウリベ大統領に対する支持率は83%、不支持率は14%で引き続き高支持率を記録した。ギャラップ社ロンドーニョ社長は、議会への不信感はウリベ大統領の支持率に影響を及ぼすことなく、好況が続く経済を背景に楽観的見方が維持されているとの見方を示した。

 

(4)メディナ元下院議員等の買収疑惑問題

 8日、最高裁判所は、ジディス・メディナ元下院議員(4月27日逮捕)が2004年の大統領連続再選を可能とするための憲法改正を行うための法案可決に際して買収を行ったとの判断を下した。メディナ元下院議員の証言により、保守党テオリンド・アベンドーニョ元下院議員(16日)及びイバン・ディアス・マテウス元下院議員(20日)による同様の買収疑惑が明らかになり、両氏も逮捕された。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)3日、ノルテ・デル・サンタンデール県でFARC幹部「ティモチェンコ」の捜索を行っていた国軍兵士6名がFARCにより殺害され、11名が負傷した。「ティモチェンコ」は本年初から同地に潜伏しているとみられ、4月から捜索が行われていた。

(2)4日、カウカ県コリント市中心部で爆発があり、3名が死亡、1名が負傷した。犯行はFARCによるものとみられている。

 

Ⅲ. 治安等

1.国家警察統計(<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2007年5月)の数値)

(1)殺人:1,233件<113件> ←[1,455件<125件>]

(2)集団殺人:313人<00人> ←[314人<00人>]

(3)脅迫:48件<9件> ←[19件<5件>]

(4)窃盗・強盗:3,203件<866件> ←[4,942件<1552件>]

(5)自動車盗難:1,134件<224件> ←[1,330件<266件>]

(6)誘拐:19件<4件> ←[27件<1件>]

(7)テロ:33件<1件> ←[39件<1件>]

2.主な事件・事故

(1)地震

 24日午後2時41分、メタ県エル・カルバリオ地区(ボゴタ首都特別区から南西53キロメートルに位置)を震源地とするマグネチュード5.5の地震が発生した。同地震により、11名が死亡、54名が負傷、約5,000人が被災した。また、震源地付近の約40%の家屋が倒壊し、ボゴタ首都特別区からビジャビセンシオに続く道路をはじめとする複数の道路が通行止めとなった。ボゴタ市中心部では通信及びエネルギー供給に支障をきたした。

(2)大雨

 雨期の影響により、当国27県217市町村(特に被害が深刻であったのは、アンティオキア県、バジェ・デル・カウカ県、ナリーニョ県、ボリバール県、サンタンデール県、カウカ県及びボジャカ県)において140,000人以上が被災している(6月1日時点)。31日、アンティオキア県メデジン市で土砂崩れが発生し、約20世帯が押しつぶされ、28名が死亡し、数名が行方不明となっている(6月2日時点)。また、マグダレーナ川をはじめとする各地の河川の増水により近隣地区が浸水し、住民が避難している。

 

Ⅳ. 外交

1.対エクアドル関係

(1)21日、パナマ米州機構(OAS)事務所において、パディージャ「コ」国軍司令官とバレラ「エ」国軍司令官が会合を行い、3月の「コ」国軍による越境攻撃以来中断していた「二国間安全保障合意」交渉を暫定的に再開する旨合意した。

(2)27日、パナマOAS事務所において、レジェス「コ」外務次官とバレンシア「エ」外務次官が会合を行い、二国間外交関係正常化にむけた協議を行った。

2.メルケル独首相の当国訪問

(1)18日の首脳会談においてウリベ大統領は、テロへの戦いに対するメルケル首相の支持表明に感謝の意を表明し、独の投資機会拡大及びアンデス諸国とEUの連携に関する協議等を行った。

(2)同日、メルケル首相は、イグアラン検事総長と会談を行い、武装放棄プロセスへの支持を表明すると共に、専門家派遣や機材供与等を通じた司法協力を発表した。その他メルケル首相は、紛争被害者のNGO関係者等と面談し、人道的合意及びパラミリタリー問題に関し理解を深めた。また、駐ボゴタ独企業関係者等と面会した。

3.コロンビア・日本外交関係樹立百周年記念式典の開催

 22日、コロンビアと日本の外交関係樹立百周年記念式典(於:当国外務省ボリバールの間)が開催された。同記念式典出席のため当国を訪問した安倍前総理夫妻、中川昭一日・「コ」友好議連会長、木村外務副大臣等は、ウリベ大統領、アラウッホ外相、プラタ商工観光相、グティエレス上院議長(「コ」側友好議連会長)等との会談を行い、二国間関係の更なる強化の必要性を確認した。

4.ウリベ大統領の地域レベル会合への出席

(1)中南米EUサミット

 16日、ウリベ大統領は、ペルー・リマで開催された中南米EUサミットに参加した。チャベス「べ」大統領は記者会見で「南米における唯一の問題はウリベ大統領である」と批判したものの、両大統領はサミット中の軋轢を避けた。一方、サパテロ西首相は、同会合においてウリベ大統領のテロへの戦いに対して支持を表明した。

(2)南米共同体会議

 23日、ウリベ大統領は、ブラジルで開催された南米共同体会議に参加した。チャベス大統領は、ウリベ大統領に対して直接FARCへの資金供与の疑いを否定し、両大統領は会議終了後に握手を交わした。