コロンビア月例報告(6月分)

 

内政・外交状況

 

T.概要

〈内政〉

●最高裁判所が2006年大統領連続二期再選法案可決時の憲法改正の合法性に疑問を呈したことに対し、ウリベ大統領は現政権の正当性を国民に問うとして国民投票を行う意向を発表した(26日)。

●2002年に発生したFARCによる「バジェ」県議員集団誘拐被害者の唯一の生存者シギフレッド・ロペス県議の生存証拠ビデオが公開された(22日)。

〈外交〉

●1日から3日にかけて当国メデジン市で第38回OAS年次総会が開催された。「コ」政府と「エ」政府の緊張関係は緩和せず、またFARC等テロリストに対する姿勢を巡り米国政府と「べ」政府が対立した。

●「エ」との外交問題について、米国カーター・センターは、「コ」・「エ」両国政府が外交関係再開に合意した旨発表した(6日)。しかしながら、22日にコレア「エ」大統領が「コ」国軍に対する批判的発言をしたことをきっかけに、外交再開は再度凍結し、カーター・センターが再度正常化にむけて両国首脳と会談を行ったものの、コレア大統領と合意に至らず、調整は不調に終わった(25日)。

●モラティノス西外相が当国を訪問し、ウリベ大統領及びアラウッホ外相と会談を行った。会談ではEUとアンデス諸国間の経済協力や、外交問題等に関し協議が行われ、モラティノス外相は当国と「べ」及び「エ」間外交問題解決のための協力を表明した(18日)。

 

U. 内政

1.内政一般

(1)国民投票の発表

 2006年大統領連続二期再選法案可決時のイディス元下院議員(自宅禁固47ヶ月の有罪判決)による買収問題について、最高裁判所が当時の憲法改正の合法性に疑問を呈したことに対し、26日、ウリベ大統領は憲法改正により成立した現政権の正当性を国民に問うとし、国民投票を行う意向を発表した。

(2)オルギン内務・法務大臣の辞任

 19日、オルギン内務・法務大臣が辞任を表明し、26日、バレンシオ・コッシオ氏(オルギン前大臣と同様保守党出身)が就任した。オルギン前内務・法務相は以前より辞任の意向を有していると見られていたが、「被害者救済法案」制定を巡る「コ」政府と議会の軋轢(武装勢力等による被害者が国から補償を受けられるようにするための法案で、「コ」政府は財政的な負担が大きく、また「公正・和平」の補償と重複するとして抵抗している)により、辞任を決断したと見られている。

(3)FARC誘拐被害者の生存証拠ビデオ公開

 22日、2002年に発生したFARCによる「バジェ」県議員集団誘拐被害者の唯一の生存者(身柄拘束中の2007年6月、FARCにより12名の内11名が殺害されている)であるシギフレッド・ロペス県議の生存証拠ビデオが公開された。ビデオは本年3月30日に録画されたもので、21日にFARC構成員がカリ市内のカトリック教会に届けた。

(4)アンティオキア県大型貨物運転手によるストライキ

 15日、政府による大型貨物輸送規制対策を不満として、145,000人以上のトラック運転手がストライキを行った。ストライキは22時間続いたが、政府が規制価格遵守対策を強化すると共に、車輌買い換えのためにソフトローンを組み合わせた計画を策定することについて合意し、16日ストライキを中止した。

2.非合法武装勢力関連

(1)10日、ボゴタ首都特別区スバ地区警察署内のオートバイに積載された爆発物が爆発し、15名の警察官が負傷した。13日、本事件への関与が疑われるFARC第26戦線構成員4名が逮捕された。

(2)30日、アンティオキア県オラジャ市ネメシオ・モンターニャ市議が殺害された。国家警察はFARCの犯行と見て捜査を開始した。

 

V. 治安等

 国家警察統計(<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2007年6月)の数値)

(1)殺人:1,260件<110件> ←[ 1,416件<109件>]

(2)集団殺人:00人<00人> ←[419人<00人>]

(3)脅迫:40件<13件> ←[34件<9件>]

(4)窃盗・強盗:3,255件<777件> ←[4,912件<1,587件>]

(5)自動車盗難:1,223件<27件> ←[1,372件<279件>]

(6)誘拐:21件<4件> ←[22件<2件>]

(7)テロ:36件<4件> ←[48件<1件>]

 

W. 外交

1.第38回OAS総会の開催

(1)1日から3日にかけて当国メデジン市で第38回米州機構(OAS)年次総会が開催された。

(2)対「エ」関係について、総会の合間に開催された外相協議会で、OASが引き続き調停に尽力すると共に、外交関係回復のために両国外相会合が行われることで合意した。

(3)対「べ」関係については、アラウッホ「コ」外相とマドゥーロ「べ」外相が会談を行い、両国貿易及び外交関係に関して協議を行った。貿易関係については両国商工観光大臣会談を開催することで一致したが、外交関係に関しては大きな進展はみられなかった。一方、ネグロポンテ米国務副長官は「べ」政府のFARC等テロリストに対する姿勢を批判し、「べ」政府は強い反発を示した。

2.中南米外交

(1)対エクアドル関係

(イ)6日、米国カーター・センターは、カーター元米大統領の仲介により、「コ」・「エ」両国政府が外交関係再開に合意した旨発表した。

(ロ)22日、コレア「エ」大統領が「コ」国軍に対する批判的発言を行ったことをきっかけに、23日、アラウッホ外相は「エ」政府との外交関係を再度凍結する旨表明した。

(ハ)再び緊張が高まった両国関係について、カーター・センターは国連開発計画(UNDP)と共に対話グループを結成し、正常化にむけて両国首脳と会談を行ったが、コレア大統領と合意に至らず、25日までに両国間調整は不調のまま終わった。

(2)対ベネズエラ関係

(イ)3日、アラウッホ外相は、ベネズエラ通信情報庁の機関誌が「コ」政府を批判する記事を掲載したとし抗議を表明した。これに対し、マドゥーロ「べ」外相は、「べ」政府には関心事項に関する出版物を発行する権利がある旨反論した。

(ロ)8日、チャベス大統領はテレビ番組「アロー・プレジデンテ」で、FARC最高幹部「アルフォンソ・カノ」に対し全ての人質を解放するよう呼びかけた。14日、ウリベ大統領は1ヶ月以内にベネズエラを訪問し、チャベス大統領と首脳会談を行う意向を示した。

(3)対ニカラグア関係

(イ)19日、オルテガ・ニカラグア大統領は、「コ」国軍によるFARC幹部「ラウル・レジェス」攻撃後、野営地で生存が確認されたコロンビア人2名(現在「二」政府の保護下にある)について、「コ」政府が殺害を目論んでいる旨発言した。

(ロ)オルテガ大統領の発言に対し、ウリベ大統領は21日、「二」政府はテロリストを匿っていると非難すると共に、上記「コ」人移送のため「コ」領空を利用する際、「二」政府が虚偽の申請を行ったと発言した。

3.モラティノス西外相の当国訪問

 18日、モラティノス西外相は当国を訪問し、ウリベ大統領及びアラウッホ外相と会談を行った。会談ではEUとアンデス諸国間の経済協力や、当国と「エ」及び「べ」間の外交問題などに関し協議が行われ、モラティノス外相は外交問題解決のための協力を表明した。

4.仏及びスイスのFARC人質解放交渉

(1)30日、「コ」大統領府は、仏及びスイス政府関係者により構成される交渉団に対し、FARCとの人道的合意及び人質解放交渉を目的としてFARC幹部との連絡をとることを許可した旨発表した。

(2)交渉団はノエル・サエス仏代表及びジャン・ピエール・ゴンタール・スイス代表が中心となり、人質交換を行うために当国南部に交渉地域を設定するよう提案したとみられている。

5.コロンビアに関する国連の報告書

(1)17日、国連人権高等弁務官事務所が難民に関する報告書を発表し、コロンビアは580万人の難民を抱えるスーダンに続き2番目に難民が多く、300万人である旨発表された。

(2)20日、国連麻薬・犯罪事務所(UNODC)麻薬原料植物栽培監視統合班(SIMCI)が違法作物栽培に関する報告書において、2007年のコロンビアにおける違法作物栽培面積が27%増加した旨が発表され、「コ」政府は統計に相違があるとして異を唱えた。