コロンビア月例報告(8月分)
内政・外交状況
2008年9月30日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
〈内政〉
●ウリベ大統領の2010年大統領選連続三期再選を推進する憲法改正グループは、5月に開始した憲法改正のための国民投票実施を要請する502万人の署名を国民登録所に提出した(11日)。
●ナンシー・パトリシア・グティエレス元上院議員は、パラポリティカに係る裁判を主に担当していたイバン・ベラスケス判事による証人聴取等の越権行動があったことを明らかにした(11日)。
●検察庁は4月にパラポリティカ疑惑で逮捕されたマリオ・ウリベ元上院議員(ウリベ大統領従兄弟)を証拠不十分として釈放した(20日)。
●アンティオキア県イトゥアンゴ市において爆発事件が発生し、7名が死亡、53名が負傷した。同市住民が違法作物伐採計画反対デモに参加をしなかったことに対するFARC第18戦線の報復とみられている(14日)。
〈外交〉
●ウリベ大統領は米国を訪問し、カーター米元大統領と会談し、「米州競争力フォーラム」で演説を行う等、米・「コ」FTA条約成立に向けた活動を行った(16~18日)。
●カルタヘナ市において「第1回麻薬、治安及び国際協力に関する地域首脳拡大会合」が開催され、参加した中米6カ国首脳及びウリベ大統領等は、麻薬対策に関する地域協力を謳ったカルタヘナ宣言を採択した。(1日)。
●コロン・グアテマラ大統領は、「第1回麻薬、治安及び国際協力に関する地域首脳拡大会合」の後、ウリベ大統領と共にチョコ県キブドー市のタウンミーティングに参加した(2日)。
Ⅱ. 内政
1.内政一般
(1)2010年大統領選にむけた動向
11日、ウリベ大統領連続三期再選を推進するウリベ派政党等憲法改正グループは、5月に開始した憲法改正のための国民投票実施を要請する502万人の署名を国民登録所に提出した。
(2)パラミリタリーと政治家の癒着問題(パラポリティカ問題)
(イ)11日、ナンシー・パトリシア・グティエレス元上院議員は、検察庁特別捜査局(CTI)により聴取を受けた際の録音内容を公開し、パラポリティカに係る裁判を主に担当していたイバン・ベラスケス判事による証人聴取等越権行動を明らかにした。
(ロ)12日、検察庁は、1月にパラポリティカ問題で逮捕されたゴメス・ガージョ元上院議員を証拠不十分として釈放した。ガージョ氏はパラミリタリー・トリマ県戦線と政治協定を結んでいた疑惑が持たれていた。
(ハ)20日、検察庁は、4月にパラポリティカ問題で逮捕されたマリオ・ウリベ元上院議員(ウリベ大統領従兄弟)を証拠不十分として釈放した。ウリベ氏は元パラミリタリー構成員と不動産や選挙等に関する会合を行っていた疑惑が持たれていた。
(二)25日、リカウテ最高裁判所長官が元パラミリタリー幹部「ドン・ベルナ(通称)」の部下「ジョブ(通称)」他1名が大統領府を訪問していた旨発表し、大統領府の一部がパラポリティカに関与している旨見解を述べた。同日、ウリベ大統領は、最高裁判所は虚偽の証言を基に裁判をすすめている等として、パラポリティカ疑惑を否定すると共に最高裁判所を強く非難した。
(3)FARCと農協の癒着問題(ファルクポリティカ問題)
8日、検察庁は、FARCとの癒着疑惑によりリリアナ・パトリシア・オバンド「フェンスアグロ(ウラバで20年前に設立された農協)」代表を逮捕した。FARC幹部「ラウル・レジェス(通称)」(3月に「コ」国軍の攻撃により死亡)のPC情報から、オバンド氏がFARCの活動及び資金ほう助を行っていた旨明らかとなった。ファルクポリティカで初の逮捕者となった。
2.非合法武装勢力関連
(1)1日、バジェ・デル・カウカ県ブエナベントゥーラ市において午前1回、午後2回、計3回の爆発事件が発生し、8名が負傷した。警察当局はFARCによる犯行として捜査を行っている。
(2)9日、ボゴタ首都特別区北部精肉販売店において爆発事件が発生し、8名が負傷した。数週間前から同店がFARCより脅迫を受けていたとの証言から、警察当局はFARCによる犯行として捜査を行っている。
(3)9日、カウカ県エル・タンボ市で農民が9名殺害された。警察当局はELNによる犯行として捜査を行っている。
(4)6日、「ハビエル・カルデロン(通称)」等FARC構成員が逮捕され、ボゴタ首都特別区内の保育園建物内で、「コ」国軍医療機関、RCNテレビ、サントス国防相等に対するテロを計画し、爆発物を製造していたことが判明した。
(5)14日、アンティオキア県イトゥアンゴ市において爆発事件が発生し、7名が死亡、53名が負傷した。警察当局は同市住民が違法作物伐採計画反対デモに参加をしなかったことに対する、FARC第18戦線の報復として捜査を行っている。15日、ウリベ大統領は、サントス国防相と共に同地を訪問し、被害者を見舞った。
(6)15日、チョコ県を中心に脅迫や誘拐等を行っていた非合法武装勢力ゲバラ主義革命軍(ERG)幹部を含む48名の構成員が武装解除を行った。
(7)16日、ボゴタ首都特別区スーパー2軒の「カレフール」において引火した爆発物が発見された。死亡者、負傷者は共になし。防犯カメラに犯人と思われる4名の映像が残っていた。警察当局はFARCの犯行として捜査を行っている。
Ⅲ. 治安等
1.国家警察統計(<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2007年8月)の数値)
(1)殺人:1,287件<111件> ←[1,281件 <107件>]
(2)集団殺人:3件19人<0件0人> ←[5件29人<0件>]
(3)脅迫:32件<1件> ←[55件 <14件>]
(4)窃盗・強盗:3,447件<917件> ←[5,167件 <1,551件>]
(5)自動車盗難:1,253件<233件> ←[1,151件 <264件>]
(6)誘拐:13件<0件> ←[23件 <2件>]
(7)テロ:30件<4件> ←[26件 <0件>]
2.主な事件・事故
(1)爆弾事件
21日、ボゴタ首都特別区のエンガティバ区で手榴弾が爆発し、市民3名が負傷した。犯人は捕まっておらず、テロ、脅迫によるものか不明。
(2)炭坑爆発
1日、クンディナマルカ県ククヌバ市の炭坑でメタンガス蓄積による爆発が発生し、炭坑労働者8名が死亡した。2名の労働者が救出され、病院に搬送された。同炭坑は合法であるが、バレラ市長は炭坑代表に対し監視強化を要請した。
(3)フェリー事故
30日、セサール県とボリバール県にまたがるマグダレーナ川でフェリー事故が発生し、シアンを含蓄した96容器が流出した。9月1日までに95容器が回収された。
Ⅳ. 外交
1.ウリベ大統領の米国訪問(16日~18日)
(1)17日、ウリベ大統領は、カーター元米大統領と会談を行い、労働者の権利等に関して協議を行うと共に、FTA条約成立に向けた協力を要請した。
(2)18日、ウリベ大統領は、「米州競争力フォーラム」において食糧や石油価格の高騰や不況への懸念を表明しつつ、海外投資誘致に対する意欲及び米・「コ」FTA条約成立の重要性を改めて表明した。
2.要人の当国訪問
(1)コロン・グアテマラ大統領(1日~2日)
(イ)「第1回麻薬、治安及び国際協力に関する地域首脳拡大会合」に参加したコロン・グアテマラ大統領は、2日、ウリベ大統領と共にチョコ県キブドー市のタウンミーティングに参加した。
(ロ)交通施設不備問題や「コ」家族福祉機構(ICBF)の運営等をめぐり紛糾した議論を終始傍聴したコロン大統領は、同会合は経済及び社会開発推進のために有意義である旨感想を述べた。
(2)カルミ=レ・スイス外相(10日~11日)
(イ)11日、カルミ=レ・スイス外相はウリベ大統領及びベルムデス外相と今年100周年を迎えた二国間関係、ゴンタード・スイス(FARCと「コ」政府の仲介)交渉団及びFARC人質救出策戦時における「コ」国軍の国際赤十字社マーク不正使用等に関し、協議を行った。
(ロ)カルミ=レ外相とベルムデス「コ」外相は共同記者会見で、外相会談で経済・司法等の関係強化について協議を行った旨明らかにし、良好なスイス・「コ」友好関係をアピールした。
(3)ルイス・モレノ・オカンポ国際刑事裁判所(ICC)検事(25日~27日)
(イ)25日、ルイス・モレノ・オカンポ国際刑事裁判所(ICC)検事は、元パラミリタリー幹部の米国送還等非合法武装勢力に関する調査を行うため、当国を訪問し、コッシオ内務・法務相、イグアラン検事総長、ベルムデス外相等と会談を行い、非合法武装勢力との癒着問題や被害者問題等の解決のためには国際的司法協力が必要である旨表明した。
(ロ)26日、オカンポ検事は、FARCに関する調査を行うことを明らかにし、エクアドル、ベネズエラ、ニカラグア等に対してFARCの国際ネットワークに関する情報を提供するよう要請する書面を発出した旨表明した。
3.第1回麻薬、治安及び国際協力に関する地域首脳拡大会合
(1)1日、当国カルタヘナ市において「第1回麻薬、治安及び国際協力に関する地域首脳拡大会合」が開催され、麻薬対策に関する地域協力を謳ったカルタヘナ宣言が採択されるとともに、参加国間の情報共有や監視強化、麻薬対策機関の能力強化等を含む麻薬対策行動計画が発表された。
(2)同会議には、カルデロン墨大統領、フェルナンデス・ドミニカ共和国大統領、トリーホス・パナマ大統領、コロン・グアテマラ大統領、サカ・エルサルバドール大統領及びウリベ「コ」大統領を含め合計25カ国の中米カリブ諸国及びベネズエラが参加した。
4.新たなFARC関係者の亡命(ニカラグア)
(1)17日、オルテガ・ニカラグア大統領は、旧内務相・軍関係者との会合において、「コ」国軍の攻撃により負傷した「コ」人FARC関係者ヌビア・カルデロン(通称「エスペランサ」)が「二」国内に亡命滞在している旨発言した。「二」政府によるFARC関係者保護はこれで3名となる。
(2)18日、ウリベ大統領は、テロリストの亡命ほう助を行ったとして「二」政府を強く非難する一方で、同FARC関係者が武装解除を行うならば「コ」政府として亡命を承認する旨発言した。