コロンビア月例報告(10月分)

 

内政・外交状況

 

2008年11月27日

在コロンビア日本大使館

Ⅰ.概要

〈内政〉

●チョコ県タマナ川岸の軍検問所で、国軍第14移動部隊が、FARCの拘束から脱出したリスカノ元下院議員と、脱出の助力をしたFARC構成員「イササ(通称)」を保護した(26日)。

●司法機関労組(ASONAL)のストライキに関し、ウリベ大統領は、国内非常事態令を発動し(9日)、ストライキは開始から43日後に終了した(16日)。

●カウカ県のパンアメリカンハイウェーにおいて、先住民グループ約6千人が先住民活動家殺害への抗議及び土地引き渡しを要求し、道路封鎖を行った。治安当局との衝突により、22名の負傷者が生じた(14日)。

●ソアチャ事件に関し、ウリベ大統領は、遺体発見地域を管轄する陸軍幹部計27名(将官級3名、大佐4名等含む)を退役させる旨決定した(29日)。

●ボゴタ首都特別区7地点で同時爆弾テロが発生し、一般市民18名が負傷した。実行犯、背景は捜査中(23日)。

〈外交〉

●セラヤ・ホンジュラス大統領は、二国間関係協議及び犯罪対策への署名を行うために当国を訪問し、ウリベ大統領と首脳会談を行った(8~9日)。

●ピレー国連人権高等弁務官は、人権状況視察のために当国を訪問し、ウリベ大統領及びベルムデス外相と会談を行った。ピレー代表はその他市民社会やモレノ・ボゴタ市長等と会談を行った。(27日~11月1日)

 

Ⅱ.内政

1.内政一般

(1)デモ及びストライキ

(イ)司法機関労組(ASONAL)ストライキ

 「コ」政府は、給与水準改善を要求しているASONALストライキ(9月3日開始)に対し、ASONAL側の要求を踏まえた政令を発令した(4日)。一部は通常業務に復帰したが、ストライキ継続組が司法機関入り口封鎖等の妨害行為を行ったため、ウリベ大統領は、憲法第213条に基づき司法手続き停止・遅滞の事態に対応した国内非常事態(Conmocion Interior)令を発動し(9日)、ストライキは開始から43日後に終了した(16日)。

(ロ)カウカ県先住民デモ

 カウカ県ピエンダモ市郊外のパンアメリカンハイウェーにおいて、先住民グループ約6千人が先住民活動家殺害への抗議及び土地引き渡しを要求し、道路封鎖を行い、治安当局との衝突により、22名の負傷者が生じた(14日)。バレンシア内務・法務大臣、パラシオ社会保障大臣、アリアス農業大臣及び友好国5ヶ国の大使館員が現地訪問するも、先住民グループはウリベ大統領との直接交渉を求め、バジェ・デル・カウカ県カリ市へ向けた抗議デモを開始した(18日)。ウリベ大統領と先住民グループの話し合いは、ウリベ大統領がFARC人質リスカノ元下院議員脱出成功への対応により、会合予定時刻に遅れて到着した結果、延期となった(26日)。

(ハ)全国一斉デモ(23日)

 労働者統一本部(CUT)の呼びかけにより、公立学校教員労組(FECODE)、医療社会保障労組(DINDESS)、全国病院職員労組(ANTHOC)、公証人・国民登録局、税関国税局(DIAN)、トラック協会(ACC)が賃金引き上げ等を求め、全国一斉スト及びデモ行進を行い、約1万5千人が参加した。各地で展開されたデモ行進は平和的なものであり同日中に終了した。なお、DIAN及び登録所は17日からストライキを開始し、DIANは同日、登録所は11月6日に終了した。

(2)国軍幹部及び兵士の退役処分

(イ)ボゴタ首都特別区にソアチャ区居住の若者等がノルテ・デル・サンタンデール県で遺体となって発見された事件(ソアチャ事件)の責任により、陸軍大佐が3名退役処分にされた(24日)。

(ロ)ウリベ大統領は、サントス国防相、パディージャ国軍最高司令官、モントージャ陸軍司令官等と共に記者会見を行い、遺体発見地域を管轄する陸軍幹部計27名(将官級3名、大佐4名等含む)を更に退役処分にする旨決定した(29日)。

(3)ウルタード大統領府治安局(DAS)局長の辞任

 ウルタードDAS長官(2007年8月長官就任)は、DAS諜報局長により発出されたPDA党ペドロ上院議員及び他のPDA党員の身辺調査指示が不適切だったとして、引責辞職した(23日)。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)FARC人質、リスカノ元議員脱出成功(26日)

(イ)チョコ県タマナ川岸の軍検問所で、国軍第14移動部隊が、リスカノ元下院議員とFARC構成員「イササ(通称)」を保護した。リスカノ元下院議員及び「イササ」は24日にFARCキャンプ地を脱出、チョコ県内のジャングル地帯及び山地を歩き続け検問所に辿り着いた。リスカノ元下院議員は、著しく悪化している体調によりカリ市内の病院に搬送された。

(ハ)ウリベ大統領はバジェ・デル・カウカ県カリ市において、「イササ」、サントス国防相、バレンシア内務・法務大臣、モントージャ陸軍司令官等と共に、記者会見を行った。ウリベ大統領は、「イササ」に対して、政府が約束していた報償金を支払い、更に、仏政府が申し入れているFARC離脱者の同国受け入れに基づき、「イササ」とその恋人を仏に出国させる用意がある旨述べた(26日)。

(2)ウイラ県爆弾テロ事件(12日)

 ネイバ市のホテル2軒において、放置された爆発物が爆発し、宿泊の一般市民1名が死亡、11名が負傷した。警察では、いずれの事件もFARC「テオフィロ・フォレロ」機動後方支援隊によるものとみて、被疑者1名を逮捕した(15日)。他の被疑者、背景等は捜査中。

 

Ⅲ.治安等

1.国家警察統計(<>内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2007年10月)の数値)

 

(1)殺人:1,265件<110件> ←[1,186件<83件>]

(2)集団殺人:2件10人<0件0人> ←[2件14人<0件>]

(3)脅迫:48件<7件> ←[30件<7件>]

(4)窃盗・強盗:6,145件<2,088件> ←[5,712件<1,540件>]

(5)自動車盗難:1,281件<79件> ←[1,167件<251件>]

(6)誘拐:13件<0件> ←[22件<2件>]

(7)テロ:32件<8件> ←[51件<0件>]

 

2.主な事件・事故

(1)爆発事件

(イ)ボゴタ首都特別区スバ区ビル爆破事件(3日)

 エストリル町のビル5階トイレ内に放置された爆発物5kgが爆発し、同階で勤務していた女性会社員1名が死亡、一般市民3名が負傷した。実行犯、背景等は捜査中。

(ロ)ボゴタ首都特別区同時爆弾テロ事件(23日)

 ウサケン区セドリート町のショッピング・センター付近、同区サンタ・バルバラ・セントラル町の路上に設置されたゴミ箱内、同区サンタ・ビビアナ町の路上、チャピネロ区ロス・ロサレス町の路上、同区チコ・ノルテ・セクトールⅡ町の路上、テウサキージョ区シウダッド・サリトレ・スール・オリエンタル町のショッピング・センター付近、フォンティボン区アエロプエルト・エル・ドラド町のプエンテ・アエレオ空港駐車中のバスの7地点で同時爆弾テロが発生し、一般市民18名が負傷した。実行犯、背景は捜査中。

(2)ゴヤ作品の帰還(12日)

 9月12日に窃盗されたスペインの画家フランシスコ・ゴヤの作品「悲しみの予感」(1810年、版画)が、ボゴタ首都特別区内ホテルで発見された。実行犯、背景は捜査中。

 

Ⅳ.外交

1.要人の当国訪問

(1)セラヤ・ホンジュラス大統領(8~9日)

 二国間関係協議及び犯罪対策への署名を行うために当国を訪問したセラヤ大統領は、ウリベ大統領と首脳会談を行った(9日)。

(2)ピレー国連人権高等弁務官(27日~11月1日)

 人権状況視察のために当国を訪問しているピレー高等弁務官は、ウリベ大統領及びベルムデス外相と会談を行った(27日)。ピレー代表はその他市民社会やモレノ・ボゴタ市長等と会談を行った。

(3)アマード・ポルトガル外相(6~7日)

 二国間関係協議のために当国を訪問しているアマード外相は、ベルムデス外相と会談を行い、FARCに対する「コ」政府の闘いを支持する旨表明した。

 

2.大統領及び閣僚の外遊

(1)ウリベ大統領のイベロアメリカサミット出席(30~31日)

 ウリベ大統領は、エル・サルバドルで開催されたイベロアメリカサミットに出席した。同サミット出席者は、国連及びG20に対し、世界的な経済危機対策を要請した。

(2)ベルムデス外相のベネズエラ訪問(17日)

 ベルムデス外相は、ベネズエラを訪問し、マドゥーロ・ベネズエラ外相と二国間関係改善に関し協議を行った。両外相は、建設的に改善を行う方向性及び二重課税防止のための委員会設置等に関し合意に至ったものの、駐コロンビア・ベネズエラ大使の任命には言及しなかった。

(3)サントス国防相のロシア訪問(6日~10日)

 国際刑事警察機構(インターポール)総会出席のためにロシアを訪問したサントス国防相は、セルジュコフ・ロシア国防相と会談を行った(6日)。両国防相は、テロ活動及び麻薬取引撲滅に対する協力及び対コ軍事技術協力等に署名した。

 

3.エクアドルとの緊張関係

(1)ウリベ大統領は、コレア・エクアドル大統領がブラジル紙インタビューで3月の国境侵犯問題を再度批判した(2日)ことに抗議し、14日にエクアドルで開催予定のアンデス共同体(CAN)会議欠席を表明した(4日)。コレア大統領は、ウリベ大統領は「不作法で無礼」であるとして、エクアドル訪問を拒否する旨発言した(4日)。

(2)「コ」大統領府は、「コ」国内でエクアドル人がFARCに拘束されている場所を「コ」政府に通報したが、侵入不可地域のために拒否されたとするコレア大統領の発言を、事実と異なるとして否定し、右に関する情報の提供を要請した(10日)。