コロンビア月例報告(11月分)
内政・外交状況
2008年12月19日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
〈内政〉
●「コ」大統領府は、ピラミッド商法による「コ」国内被害の拡大を考慮して30日間の社会的非常事態令を発動した(17日)。ピラミッド商法最大手DMG社グスマン社長は、パナマで国際刑事警察機構により逮捕された(19日)。
●ギャロップ社の世論調査によれば、ウリベ大統領の支持率は77%まで低下したが、引き続き高支持率を維持している(1日)。国内情勢に関しては、「向上している」が42%に低下し、「悪化している」とした41%に拮抗した。
●ウイラ県、カウカ県及びトリマ県の県境に位置するネバダ・デ・ウイラ火山が噴火し、緊急避難勧告が発出された(20日)。
〈外交〉
●中曽根外相は、ウリベ大統領及びベルムデス外相と会談を行い、修好100周年を祝うと共に、二国間関係の更なる強化に向けて意欲を示した(21日)。
●ラヴロフ露外相は、ウリベ大統領及びベルムデス外相と会談を行い、「コ」政府のテロ組織に対する姿勢を支持する旨表明した(18日)。
●ウリベ大統領は、メキシコを訪問しカルデロン・同国大統領と首脳会談を行い、二国間関係の強化を確認した。カルデロン大統領は、米国とのFTA締結に向けて協力姿勢を表明した(10日)。
●ガルビス駐マラカイボ市「コ」総領事とガビリア大統領顧問の電話会談において、ベネズエラ統一地方選挙に関する野党寄りの発言がされたことに関し、チャベス・ベネズエラ大統領は、「コ」政府の同領事召還を要請した。一方、「コ」外務省は、電話の録音は違法として抗議を行った(30日)。
Ⅱ.内政
1.内政一般
(1)ネズミ講(ピラミッド商法)による被害
(イ)「コ」大統領府は、ピラミッド商法による「コ」国内被害の拡大を考慮して30日間の社会的非常事態令(Estado de Emergencia Social)を発動した。また、併せて差し押さえ措置や被害者救済措置等を定めた政令を発令した(17日)。(当館注:同商法は、資金用途の説明のないまま、プリペイドカードと高利回りを掲げ、口コミで広まったもの。)
(ロ)DMG社資金預託者は、ボゴタ首都特別区、プトゥマジョ県等で、同社差し押さえ措置に対する抗議デモを行った(18日)。
(ハ)国際刑事警察機構(インターポール)は、ピラミッド商法最大手DMG社のダビド・ムルシア・グスマン社長をパナマに於いて違法資金洗浄の疑いで逮捕した(19日)。
(2)世論調査
(イ)ギャロップ社は10月23日から26日に実施された世論調査の結果を発表した(1日)。ウリベ大統領の支持率は4ヶ月間の間に77%まで低下したが、引き続き高支持率を維持している。また、ウリベ大統領の2010年大統領選出馬に対しては否定的な見方が増加傾向にある。
(ロ)国内情勢に関しては、「向上している」が42%に低下(前回54%)し、「悪化している」とした41%に拮抗した。
(3)先住民デモ
(イ)10月から「コ」政府に対して先住民の人権及び土地問題解決を要求している先住民団体(MINGA)は、ウリベ大統領とカウカ県ピエンダモ市で会談を行ったが、合意に達しなかった(2日)。
(ロ)不合意を受け、先住民はカウカ県からデモ行進を開始し(3日)、ボゴタ首都特別区に到着した(20日)。7名の「コ」政府閣僚は、ボゴタ首都特別区で先住民と会合を開催し、土地問題解決にむけて努力する旨表明した。表明の後、デモ行進に参加した先住民の多くは帰途についた(22日)。
(4)国軍の不祥事による影響
(イ)モントージャ陸軍総司令官の引責辞任
モントージャ陸軍総司令官が、10月に明らかになったソアチャ事件等国軍不祥事の責任をとって辞任し、後任としてオスカル・ゴンザレス氏が任命された(4日)。
(ロ)米国の軍事援助の一部停止
国軍不祥事を受け、米国政府は、対コロンビア軍事援助を中断させる意向を発表した(6日)が、ブラウンフィールド駐「コ」米大使は、中断は以前軍事援助を行っていた一部の部隊に対する措置であり、全国軍に対する措置でない旨訂正した(7日)。
(ハ)国軍内の人権監察委員会設置
ウリベ大統領は、国軍の活動状況につき、国民から苦情及び情報を直接受け付け、迅速に対応するため、国防参謀本部長直轄の監察委員会(Comisiones de Inspeccion Inmediata:CII)を設立する旨発表した(7日)。
(5)誘拐反対デモ
28日、FARC元人質のベタンクール元大統領候補(7月の国軍「王手」作戦により解放)の呼びかけにより誘拐反対デモが「コ」各地で開催され、ボゴタ首都特別区では約1万人が参加した。なお、参加者数は、以前行われた同趣旨のデモに比してかなり減少した。
(6)国民投票案
下院第1委員会は、大統領三期再選のための国民投票法案に関し、2010年ではなく、2014年大統領選に修正を行った(26日)。ウリベ派政党議員は、大統領連続三期再選の可能性は未だに残っているとして、修正案の検討を継続する。
2.非合法武装勢力関連
(1)国家警察刑事局(DIJIN)は、大学及び学校校内で活動を行っていたFARC構成員8名を逮捕した(14日)。そのうち一名は、ボゴタ首都特別区の地区大学(Universidad Distrital)において人権科目で、教鞭を執っていた。
(2)プトゥマジョ県プエルト・アシス市で行われていたDMG社閉鎖反対のデモ行進がFARCの襲撃に遭い、警察官1名、市民1名が死亡、12名が負傷、2名が誘拐された(29日)。
(3)カウカ県トリビオ市のFARCが埋設したとみられる地雷原で国軍兵士2名が死亡した(10日)。
Ⅲ.治安等
1.国家警察統計(治安統計未発表のためこの部分追電)
2.主な事件・事故
(1)冬期の大雨被害
2ヶ月間続いた大雨の影響により、カルダス県マニサレス市及びラ・ドラダ市において最高レベルの避難勧告が発出された(18日)。その他スクレ県グアランダ市では、カウカ河堤防の崩壊により市街地の70%が浸水(21日)、「コ」全国で約735,000名の被害者が確認されている(28日)。
(2)ネバド・デ・ウイラ火山の噴火
ウイラ県、カウカ県及びトリマ県の県境に位置するネバド・デ・ウイラ火山が噴火し(20日)、緊急避難勧告が発出され、ウリベ大統領は上空から被害地域を視察した(21日)。コッシオ内務相は、噴火により10名の死亡を確認した旨発表したが(23日)、約200名が孤立地域に残されており、被害者数は更に増加するものとみられている。
Ⅳ.外交
1.要人の当国訪問
(1)中曽根外相の当国訪問(20日~21日)
中曽根外相は、ウリベ大統領及びベルムデス外相と会談を行った。会談では、投資保護協定締結に向けた交渉の開始につき合意すると共に、二国間関係の更なる強化に意欲を示した(21日)。
(2)ラヴロフ・ロシア外相の当国訪問(18日)
ラヴロフ露外相は、ウリベ大統領及びベルムデス外相と会談を行い、「コ」政府のテロ組織に対する姿勢を支持する旨表明した。ベルムデス外相との共同記者会見では、露・「コ」政府連盟の早急な設立に意欲を示した。
(3)アロヨ・フィリピン大統領の当国訪問(24日)
アロヨ・フィリピン大統領は、ボリバル県カルタヘナ市でウリベ大統領と二国間関係及び相互経済発展の強化に関し、会談を行った。
2.大統領及び閣僚の外遊等
(1)ウリベ大統領のメキシコ訪問(8日~10日)
(イ)ウリベ大統領は、カルデロン同国大統領と首脳会談を行い、二国間関係の強化を確認した。カルデロン大統領は、米国・「コ」FTA条約の承認に対する協力姿勢を表明し、ウリベ大統領はワシントンで開催予定のG20会合に出席するカルデロン大統領に対し、効果的な金融対策を要請した(10日)。
(ロ)ウリベ大統領は、国際民主主義会合に出席した他、コロンビア人コミュニティー、作家のガルシア・マルケス氏やメキシコ企業との会合を行った。
(2)米国次期政府関係者とウリベ大統領の電話会談
(イ)ウリベ大統領は、オバマ次期米国大統領と10分間にわたる電話会談を行った。会談では主に米・「コ」FTA条約に関し協議が行われ、ウリベ大統領は、右会談は「建設的なものであった」旨表明した(19日)。
(ロ)ウリベ大統領は、バイデン次期米国副大統領と電話会談を行い、米・「コ」FTA条約の承認を要請した(17日)。大統領府関係者によれば、合意には至らなかったものの、お互いに意見交換のできた会談となった由。
(3)ベルムデス外相の欧州訪問(11日)
ベルムデス外相は、ベルギーを訪問し、欧州連合(EU)とFTAに関する協議を行った。EUは、アンデス共同体(CAN)とのFTA締結を志向していたが、「コ」及びペルーとの個別のFTA条約締結に対して前向きな姿勢を示した。
(4)ベタンクール元大統領候補の南米諸国訪問
(イ)FARC元人質のベタンクール元大統領候補は、FARC人質の解放に対する南米諸国の協力を求めるために、エクアドル、ペルー、チリ、アルゼンチン、ブラジル、ボリビア、ベネズエラを歴訪する。
(ロ)歴訪1か国目として、ボゴタ首都特別区でウリベ大統領と会談を行い、民主主義に向けた取組強化を要請すると共に、サルコジ仏大統領による協力表明の親書を手交した(29日)。
3.ベネズエラ政府との軋轢
ガルビス駐マラカイボ市(ベネズエラ)「コ」総領事とガビリア大統領顧問の電話会談で言及された、ベネズエラ統一地方選挙に関する野党寄りの発言の録音が、ベネズエラのテレビ局で放送された。チャベス・ベネズエラ大統領は、「コ」政府の同領事召還を要請し、召還しない場合には国外追放する旨発表した。「コ」外務省は、同領事を解任すると共に電話の録音は違法として抗議を行った(30日)。