コロンビア月例報告(1月分)

 

内政・外交状況

 

2009年2月27日

在コロンビア日本大使館

 

 

Ⅰ.概要

 

〈内政〉

●ウリベ大統領は、2009年の見通しに関し、昨年の経済危機の影響で、今年は国家予算の節約を強いられるとの見込みを示した(12月31日)。

●ボゴタ北部のレンタルビデオ店において爆発事件が発生し、同店警備員と通行人計2名が死亡した(27日)。国家警察は、FARCの犯行として捜査を行っている。

●サントス国防相は、セサール県国軍兵士10名に対し、昨年11月のソアチャ事件で明らかになった「戦果の偽装(falso positivo)」を行ったとして罷免を言い渡した(22日)。また、2007年3月にも類似事件があったことが判明し、14名の兵士が逮捕された(27日)。

 

〈外交〉

●ブッシュ米大統領は、ブッシュ政権と強固な関係を築いてきたウリベ大統領、ブレア元英国首相及びハワード元オーストラリア首相に対し、大統領自由メダルを授与した(13日)。

●クリントン次期米国国務長官は、オバマ次期米国大統領は「プラン・コロンビア」を支持する意向である旨表明し、また、FARCとの闘い及びパラミリタリー問題の解決に対するコロンビア政府支持も明らかにした。

●チャベス・ベネズエラ大統領は、コロンビアのカルタヘナ市(ボリバル県)を訪問し、ウリベ大統領と首脳会談を行った(24日)。これまで空席となっていた両国大使の就任も決定し、両国関係は正常化にむかっている。

●昨年、コレア・エクアドル大統領がエクアドルに入国しようとするコロンビア人に対して司法証明書の提示を求める旨発表したことに対し、ベルムデス外相は懸念を表明した(21日)。同発表により、エクアドルを訪問するコロンビア人は減少傾向にある。

 

. 内政

1.内政一般

(1)ウリベ大統領は、2009年の見通しに関し、昨年の経済危機の影響で、今年は国家予算の節約を強いられるとの見込みを示した(12月31日)。但し、「民主的治安政策」、社会投資、開発予算等に関しては削減しないとしている。また、2008年の国軍及び国家警察の功績に言及し、非合法武装勢力構成員に対して投降及び誘拐拘束者の解放を求めた。

(2)昨年11月に逮捕されたピラミッド商法最大のDMG社ムルシア社長夫人ジョアナ・イバテ・レオンが、違法取引容疑でウルグアイにおいて逮捕され(13日)、当国に身柄の引き渡しが行われる予定。また、DMG社幹部ウィリアム・スアレスもカルダス県において逮捕された(17日)。

(3)サントス国防相は、セサール県国軍兵士10名に対し、昨年11月のソアチャ事件で明らかになった「戦果の偽装(falso positivo)」を行ったとして罷免を言い渡した(22日)。また、検察庁により、国軍兵士が2007年3月にELN兵士として3名の若者を殺害した事件も「戦果の偽装」であったことが判明し、14名の兵士が逮捕された(27日)。

(4)行政監察庁は、ディエゴ・パラシオ社会保障相、サバス・プレテルト現イタリア大使、エルナンド・アンガリタ元内務・法務省次官及びテオリンド・アベンダーニョ元下院議員に対し、「イディスポリティカ(当館注:イディス元下院議長が、2006年大統領再選のための憲法改正決議の際に、政府から買収を受けていた疑惑で逮捕された)」に関与した疑惑があるとして告訴状を提出した(9日)。

(5)2期連続で行政監督庁長官を務めたマヤ氏の後任として、アレハンドロ・オルドニェス氏が行政監督庁長官に就任した(13日)。

 

2.非合法武装勢力関連

(1)FARC

(イ)ボゴタ北部のレンタルビデオ店において爆発事件が発生し、同店警備員と通行人計2名が死亡した(27日)。恐喝等事件の背景については不明であるが、国家警察は、FARCの犯行として捜査を行っている。

(ロ)FARC構成員「ミリアム(通称)」が投降した(6日)。「ミリアム」は、子供2人との再会を希望している。

(ハ)FARCは、ナリーニョ県ロベルト・パジャン市の3村落を長時間にわたり攻撃し、5名が死亡、2名が負傷した(13日)。当地国連事務所は、卑劣な行為であるとして非難声明を発出した。

(二)昨年12月にFARCに誘拐された10名のメタ県農民が解放された(15日)。

(ホ)ウイラ県ネイバ市の商業施設で40キロの爆発物を搭載した車輌が爆発し、214件の商業施設が延焼した(16日)。国家警察は、FARC「テオフィロ・フォレロ」の師団による犯行として捜査を行っている。

(2)その他

(イ)リサラルダ県ペレイラ市において、非合法武装勢力間の戦闘が発生し、9歳の女児が巻き添えとなり死亡、11名が負傷した(1日)。

(ロ)アンティオキア県ソペトラン市でパトロール中の警官2名が、非合法武装勢力と見られる伏兵に攻撃され、死亡した(9日)。

(ハ)「ラ・ピコタ」及び「コンビタ」刑務所に収監中の元FARC、パラミリタリー構成員の証言により、200名の行方不明者の遺体が5つの共同墓地に埋葬されていることが判明し、遺族に通知された(27日)。

(二)ベネズエラ・カラカス市においてパラミリタリー構成員とみられる31名のコロンビア人がベネズエラ当局に逮捕された(27日)。

 

Ⅲ.治安等

 国家警察統計(〈 〉内はボゴタ市。右[ ]内は昨年同時期(2008年1月)の数値)

(1)殺人:1260件 <104件> ← [1,506件<84件>]

(2)集団殺人:418人<00人> ← [14人<0件>]

(3)脅迫:34件<6件> ← [34件<6件>]

(4)窃盗・強盗:6,711件 <1,881件> ← [6,918件<1.817件>]

(5)自動車盗難:1,468件 <342件> ← [1,395件<347件>]

(6)誘拐:14件 <1件> ← [23件<1件>]

(7)テロ:21件 <2件> ← [18件<0件>]

 

2.事件・事故等

(1)マグダレーナ県サンタマルタ市の先住民地区で開催されていた新年祝賀会場において爆発があり、5名が死亡、65人が負傷した(31日)。

(2)セサール県バジェドゥパール市で新年祝賀会場において榴弾が爆発し、5名が死亡、65名が負傷した(1日)。

(3)クンディナマルカ県エル・ロサル市の農地で昨年8月から行方不明になっている親子及びその恋人3名の遺体を検察庁特別捜査局(CTI)が発見した(6日)。事故、事件によるものかは不明。

(4)ボゴタ首都特別区バス会社トランスペンシルバニア社所有のバス3台が炎上した(8日)。脅迫か内部犯行によるものかは不明。なお同社のバスは昨年8台炎上している。

(5)エンリケ・ヒル・ボテロ国家司法審議長の兄弟ルシアノ・ヒル・ボテロ氏がアンティオキア県メデジン市において遺体で発見された(10日)。事故、事件によるものかは不明。

(6)バジェ・デル・カウカ県ブガ市で水牛管理業を営むクルス・ロドリゲス一家5名の遺体が発見された(24日)。事故、事件によるものかは不明。

 

Ⅳ. 外交

1.ウリベ大統領への勲章授与

(1)ブッシュ米大統領は、ブッシュ政権と強固な関係を築いてきたウリベ大統領、ブレア元英国首相及びハワード元オーストラリア首相に対し、大統領自由メダルを授与した(13日)。

(2)スペイン国王は、ウリベ大統領に対して昨年7月に人質解放を可能とした「王手作戦」及びテロとの闘いの功績を称えてカディス宮廷自由勲章を授与した(9日)。

 

2.ベルムデス外相のドミニカ共和国訪問(12日)

 ベルムデス外相は、ドミニカ共和国を訪問し、フェルナンデス大統領と会談を行った。会談においてベルムデス外相は、コロンビア貿易銀行からの8千万ドルの低所得者住宅建築融資及び2千万ドルのコロンビア産石炭購入融資につき発表した。

 

3.対米関係

(1)クリントン次期米国国務長官は、ジョン・ケリー米国上院外交委員長の書面質問に対し、回答した(16日)。クリントン次期長官は、オバマ次期米国政権は現状を鑑みながら見直す必要はあるものの、基本的には「プラン・コロンビア」を支持する意向を示した。また、クリントン次期国務長官によれば、オバマ次期米国大統領は、FARCとの闘い及びパラミリタリー問題の解決に対する支持も明らかにしている。

(2)オバマ大統領は、ウリベ大統領に電話をし、10分間電話会談を行った(27日)。会談内容の詳細は明らかにされていないが、ベラスケス大統領府報道官によれば、「二国の国益を念頭においた建設的な会談」となった。今回の電話会談は、オバマ大統領就任後初めての首脳会談となる。一方、クリントン国務長官秘書からもベルムデス外相に電話がかけられた(27日)。

 

4.対ベネズエラ関係

(1)チャベス・ベネズエラ大統領の当国訪問(24日)

 チャベス・ベネズエラ大統領は、コロンビアのカルタヘナ市(ボリバル県)を訪問し、ウリベ大統領と首脳会談を行った。両首脳は、両国の貿易関係の強化、両国の零細企業を支援するための基金の創設、国境地域におけるインフラ整備、国際金融危機に対応するための二国間経済委員会の創設、両国間の政治的信頼関係の強化等について話し合った。

(2)同訪問後、これまで空席となっていた在ベネズエラ・コロンビア大使には、マリア・ルイサ・チアペ・コロンビア・ベネズエラ商工会議所会頭が、また同様に空席となっていた在コロンビア・ベネズエラ大使には、グスターボ・マルケス元通商大臣が就任することとなり、これにより、名実ともに両国関係は正常化することになる。

 

5.対エクアドル関係

(1)昨年、コレア・エクアドル大統領がエクアドルに入国するコロンビア人に対して司法証明書の提示を求める旨発表したことに対し、ベルムデス外相は「コロンビアに対する嫌悪感の表明である」と懸念を表明した(21日)。コロンビア旅行観光協会(ANATO)によれば、本措置が適用された12月にエクアドルを訪問するコロンビア人数は、30%減少した。

(2)ウリベ大統領は、FARC対策のため、エクアドルと国境を接するナリーニョ県及びプトゥマジョ県の国軍部隊を増強する意向を表明した(26日)。これに対し、エクアドル外務省は不快感を表明し、2国間外交関係回復のためには、(イ)エクアドルとFARCとの関係の否認、(ロ)昨年3月のFARC幹部「ラウル・レジェス(通称)」殺害時の作戦情報の提供、(ハ)「ラウル・レジェス」の死後、回収されたコンピューター情報の提供、(二)コロンビア人避難民の対応の4つの条件を述べた。