コロンビア月例報告(3月分)
内政・外交状況
2009年4月21日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
〈内政〉
●ギャロップ社が全国の1000名の「コ」国民を対象に実施した世論調査の結果によれば、ウリベ大統領の支持率は74%で、高支持率を維持している。コロンビア国内情勢に関しては、「改善している」が36%に低下した(5日)。
●急進改革党は、大統領の三期大統領選出馬を可能とするための憲法改正に係る国民投票案について2010年にも適用する修正案を支持する方向で一致した(13~14日)。この結果、上院第一委員会では大多数がウリベ大統領の2010年大統領選出馬を支持することとなった。
●ANNACOL通信社は、FARCの市民団体とコルドバ上院議員宛書面を公表し、FARCスポークスマン名及びFARCの和平交渉条件に対する意向を明らかにした(29日)。
〈外交〉
●トリホス・パナマ大統領が、ナバロ・パナマ外相、アルシア内務・司法相等と共に当国を訪問し、ウリベ大統領と首脳会談を行い、麻薬取引や世界経済危機等につき会談した(2日)。
●サントス国防相は、チリで行われた南米諸国連合(UNASUR)・国防評議会に出席した(10日)。同会議で採択された最終宣言では、非合法武装勢力に対する「コ」政府の立場及び「正当防衛」発言に対するエクアドル、ベネズエラ両政府の立場が反映される結果となった。その他、サントス国防相はブラジル(11~12日)、ペルー(20日)を訪問し、国境警備等につき会談を行った。
●ベルムデス外相はベネズエラを訪問し、マドゥーロ外相と会談を行った(18日)。会談後、貿易、鉱物資源、エネルギー及び運輸に関する作業部会がそれぞれ行われた
Ⅱ.内政
1.内政一般
(1)閣僚及び「コ」政府関係者の交代
(イ)9日、ガビリア大統領顧問は、ウリベ大統領の連続三期再選を可能とする国民投票の推進のための活動に専念するため、辞任した。
(ロ)11日、ロサーノ環境・住居・国土開発大臣が、2010年3月に行われる上院議員選挙に出馬するために辞任し、代理としてペニャロサ元ボゴタ市長が就任した(なお、4月にカルロス・コスタ・ポサダ元世界銀行シニアコンサルタントが後任として着任した)。
(ハ)12日、アルファサール大統領顧問(市町村問題担当)が、ピラミッド商法最大手(ネズミ講)DMG社との癒着疑惑により辞任した。
(2)ギャロップ社世論調査結果を発表
5日付「エル・ティエンポ」紙は、2月23日~28日にギャロップ社が全国の1000名の「コ」国民を対象に実施した世論調査の結果を掲載した。ウリベ大統領の支持率は74%で、引き続き高支持率となっている。コロンビア国内情勢に関しては、「改善している」が36%に低下し、2008年7月「王手作戦」以降、低下を続けている。
(3)2010年大統領選に向けた各政党の動向
(イ)2月27日及び28日に開催されたPDA党党大会では、ガビリア党首が続投することを決定すると共に、2010年大統領選に向けて独自候補者を選出する方針を固めた。
(ロ)14日及び15日に急進改革党党大会が開催され、大統領の三選出馬を可能とするための憲法改正に係る国民投票法案について2010年の大統領選挙にも適用可能なものに修正し、ウリベ大統領の出馬を可能とすることで一致した。
(ハ)社会統一党(「U」党)は、27日及び28日に党大会を開催し、レストレポ元和平高等弁務官を党首に選出することで一致した。
(4)FARCの和平交渉に対する意向の公表
29日、ANNACOL通信社は、FARCと書面を通じて対話を行う市民団体(Colombianas y Colombianos por la Paz: CPP)とコルドバ上院議員宛の28日付書面で明らかになった和平交渉に関するFARCの意向を公表した。同書面では、FARCの新たなスポークスマン、「パブロ・カタトゥンボ(通称)」、「カルロス・アントニオ・ロサダ(通称)」、「ファビアン・ラミレス(通称)」の名前を明らかにした他、今まで和平交渉を行う要件としてFARCが提示していた緊張緩和地域に対する要求の撤回、新たな人道的合意の要件等が記載されている。
2.非合法武装勢力関連事件等
(1)ボゴタ首都特別区で脅迫を受けていたとみられる市民2名が3日、チャピネロ区で殺害され、スバ区でも5日、同2名が殺害され、2名が負傷した。犯人は不明。
(2)7日、FARCと見られる武装勢力の爆発物がメタ県ビジャビセンシオ市の水道施設を爆破し、住民の80%にあたる約30万人への飲料水供給が中断した。
(3)17日、FARC第5及び18戦線に2007年から拘束されていた外国人誘拐被害者のスウェーデン人がコルドバ県で解放され、大統領府治安局(DAS)に保護された。
(4)21日、カケタ県でバス及びタクシー会社に対して攻撃が行われ、1名が死亡、5名が負傷した。当局は、FARCによる犯罪とみて捜査を行っている。
(5)22日、カウカ県トルビオ市でパトロール中の警官が殺害され、パンアメリカーナ道路上でシリンダー爆弾が爆発した。同日、サンタンデール県では、国家刑務所機関(INPEC)の車輌が攻撃され、職員2名が死亡、1名が負傷した。当局は、FARCによる犯罪とみて捜査を行っている。
(6)24日、ボリバル県サンタ・ロサ市警察施設がFARCにより攻撃され、警官3名が死亡、7名が負傷した。
(7)25日、カウカ県コリント市でFARCが警察官舎に対して攻撃し、同市で一部電気の供給が中断した。攻撃は、昨年3月に病死したFARC元最高幹部「マヌエル・マランダ(通称)」の追悼によるものと見られている。同日、シルビア市でもFARCから攻撃があり、1名の警官が死亡した。
(8)26日、カウカ県トリビオ市及びナリーニョ県イピアレス市で、FARCによる攻撃があり、42軒の家屋及び市庁舎の一部などが破壊された他、電気の供給が中断した。
Ⅲ.外交
1.要人の当国訪問
(1)トリホス・パナマ大統領
2日、トリホス大統領は、ナバロ・パナマ外相、アルシア内務・司法相等と共に当国を訪問し、ウリベ大統領と首脳会談を行った。同会談には「コ」政府側から、ベルムデス外相、サントス国防相等が会合に同席し、主に、麻薬取引や世界経済危機等につき会談した。ネズミ講(ピラミッド商法)最大手DMG社ムルシア社長がパナマで逮捕されたことに対しトリホス大統領は、「司法協力協定が効果的に作用した」として、今後も協力を継続する意向を示した。
(2)アスナール元西首相(22日~24日)
アスナール元西首相が当国を訪問し、サントス国防相(23日)、ウリベ大統領(24日)等とそれぞれ会談を行った。会談でアスナール元首相は、「ゲリラ組織を庇護すべきではない」としてFARC構成員保護を批判すると共に、ゲリラ組織との交渉は必要ではないとして、強硬な姿勢を示した。
2.閣僚等の対外関係に関する発言
(1)対米関係
(イ)13日、最高裁判所は、米国が送還を要求しているテロ行為、誘拐行為、麻薬取引に関与した容疑で逮捕されたFARCのメンバー5名及びELNのメンバー3名の引き渡しを拒否した。これに対し、米国政府は21日、「コ」政府に抗議書簡を提出した。本件は、25日、ウリベ大統領及びバレンシア内務・法務相との会談においてサパタ最高裁長官代行が、拒否の理由として二重処罰になるためであり、引き渡しを妨害するつもりはない旨回答したため、「コ」政府側から米国政府に同回答を伝え、米国側の理解を得たことで決着した。
(ロ)サントス副大統領は、「エル・ティエンポ」紙(15日付)のインタビューに応じ、「プラン・コロンビア」はその役割をすでに果たしており、必ずしも必要なものではなくなった旨発言した。なお、翌16日付「エル・ティエンポ」紙は「プラン・コロンビア」は引き続き継続すべきである旨ベルムデス外相の発言を掲載している。
(2)対南米諸国
コロンビア国軍によるエクアドル領内のFARCキャンプ攻撃から1年を迎えた1日、サントス国防相は、「エル・ティエンポ」紙(1日付)のインタビューに応じ、「ある国の国民に対して、組織的にテロ活動を行うテロリストを攻撃することは、たとえ同テロリストがその国内にいなくても、正当防衛に関わる行為である」旨発言した。これに対し、コレア・エクアドル大統領及びチャベス・ベネズエラ大統領が痛烈な批判を行った。
3.閣僚の外遊
(1)16日、ホンジュラスのミチェレッティ国会議長は、ウリベ大統領がコロンビアの政治体制を立て直し、揺るぎない権威を築いたとして大十字勲章を授与した。ウリベ大統領は、勲章受章にあたり、麻薬組織及びテロ組織との闘いに最も必要なのは、資金や兵站ではなく、意欲と決意であると述べ、改めて国際社会の協力を呼びかけた。
(2)2日、サントス副大統領はスイス・ジュネーブで開催された国連人権理事会に出席し、当国における人権状況についての発表を行った。
(3)10日、サントス国防相は、チリで行われた南米諸国連合(UNASUR)・国防評議会に出席した。同会議で採択された最終宣言では、非合法武装勢力に対する「コ」政府の立場及び「正当防衛」発言に対するエクアドル、ベネズエラ両政府の立場が反映される結果となった。
(4)11~12日、サントス国防相は伯を訪問し、ジョビン伯国防相(11日)と、またアモリン外相(12日)と会談を行い、両国の国境地域における監視を強化することで合意した。
(5)18日、ベルムデス外相はベネズエラを訪問し、マドゥーロ外相と会談を行った。会談後、貿易、鉱物資源、エネルギー及び運輸に関する作業部会がそれぞれ行われた。
(6)20日、ベルムデス外相とサントス国防相はペルーを訪問し、フロレス・ペルー国防相及びガルシア・ベラウンデ・ペルー外相と会談を行った。会談後、フロレス長官は、「コ」との国境警備協力は完璧であると友好関係を強調し、両国閣僚は、アンデス共同体及び地域の国々に統合の精神を維持するよう呼びかける共同声明を発表した。なお、同地で二国間関係強化に寄与したとして、ベルムデス外相はペルー太陽勲章大十字章を、サントス国防相はアヤクチョ軍事勲章大十字章を受章した。