コロンビア月例報告(4月分)
内政・外交状況
2009年6月3日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
〈内政〉
●ウリベ大統領は、FARCとの和平交渉に関し、FARCが4ヶ月間活動を停止することが条件である旨表明した(4日)。
●非合法武装勢力パラミリタリーの指導者で、コロンビアの麻薬マフィアの中でも最も影響力のある一人として指名手配されていたダニエル・レンドン・エレラ(通称「ドン・マリオ」)がアンティオキア県で国家警察刑事局(DIJIN)により逮捕された(15日)。
●パラシオ社会保障大臣は、新型インフルエンザ発症に対応する3ヶ月間の災害事態宣言(la Situacion de Desastre)を発表した(27日)。
〈外交〉
●ホイアー米国民主党下院議員、レターマン米国共和党下院議員等10名が、当国を訪問し、ウリベ大統領と会談を行った。ホイアー議員は、FTA及び「プラン・コロンビア」に関し、支持する意向を示した(7日)。
●ウリベ大統領は、ベネズエラを訪問し、チャベス大統領と会談を行った。同会談では、自動車輸出に関する協定等5つの経済関連の文書への署名が行われた(14日)。
●ウリベ大統領は、スペイン、イタリア及びバチカン市国を訪問した。サパテロ西首相及びベルルスコーニ伊首相との会談では各々二国間関係、アンデス諸国とEUのFTA交渉、投資等について意見交換が行われ、ローマ法王ベネディクト16世との会談では貧困や和平交渉についての話し合いが行われた(28~30日)。
Ⅱ.内政
1.内政一般
(1)新型インフルエンザ問題
パラシオ社会保障大臣は、新型インフルエンザ発症に対応する3ヶ月間の災害事態宣言(la Situacion de Desastre)を発表した(27日)。今回の発表により、監視強化、情報システム強化、国民への周知等にかかる予算確保及びその他緊急事態を回避するための措置が可能となった。
(2)「ドン・マリオ(通称)」の逮捕(15日)
非合法武装勢力パラミリタリーの指導者で、コロンビアの麻薬マフィアの中でも最も影響力のある一人として指名手配されていたダニエル・レンドン・エレラ(通称「ドン・マリオ」)がアンティオキア県エル・ジョキー地帯で国家警察刑事局(DIJIN)により逮捕された。
(3)FARCとの和平交渉
ウリベ大統領は、FARCとの和平交渉に関し、FARCが4ヶ月間活動を停止することが条件である旨表明した(4日)。一方、FARCは、拘束されている誘拐被害者の解放を行う旨コミュニケを発出したが(16日)、ウリベ大統領は、国際赤十字及びカトリック教会のみの仲介を許可する旨表明し(25日)、コルドバ上院議員(野党・自由党)等の仲介を求めるFARCとの合意に至っていない。
(4)大統領府治安局(DAS)の不正(20日)
ムニョス大統領府治安局(DAS)局長は、麻薬取引関係者への情報漏洩、不適切な暗号の取り扱い、武器の紛失等を理由に22名の職員を退職処分にした旨発表した。
(5)2010年大統領選にむけた動向
(イ)ウリベ大統領の三選を可能とするための憲法改正国民投票法案で争点となっていた文言の書き振りに関し、上院第一委員会で大統領の三選が可能であるとする明確な修文が行われ、可決された(16日)。今後同法案は、上院本会議で審議が行われる予定。
(ロ)自由党は、2010年大統領選にむけた党内の候補者登録を締め切った(30日)。セシリア・ロペス上院議員、アルフォンソ・ゴメス元検察庁長官、イバン・マルランダ元上院議員、ラファエル・パルド元国防相、エクトール・ロハス上院議員、ア二バル・ガビリア元アンティオキア県知事、アルフォンソ・ロペス元駐英大使、ルビエル・エスピノサ・トリマ県自由党地方局長の8名が登録した。党内の候補者は、9月27日開催予定の公開投票で決定される予定。
(6)パラポリティカ
マルティネス上院議員が元パラミリタリー幹部「HH(通称)」から2006年国政選挙で便宜供与を受けていたとして、検察庁特別捜査局(CTI)により逮捕された(23日)。
(7)「戦果の偽装」による逮捕者
2008年10月にボゴタ首都特別区ソアチャ地区の青年が行方不明になり、ノルテ・デ・サンタンデール県で遺体となって見つかった事件で、大佐2名及びラファエル・レジェス師団及びフランシスコ・デ・パウラ・サンタンデール師団の司令官2名が「戦果の偽装(falsos positivos)」により逮捕された(30日)。今回の逮捕で、合計18名の国軍関係者が逮捕されたこととなる。
(8)閣僚等の就任
(イ)3月に辞任したロサーノ環境・住居・国土開発大臣の後任として、カルロス・コスタ・ポサダ元世界銀行シニアコンサルタントが就任した(7日)。また、レンテリア国家企画庁(DNP)長官の後任として、エステバン・ピエドライータ・ウリベ元IDB総裁顧問が就任した(同日)。
(ロ)リカウテ前最高裁判所長官の後任として、アウグスト・ホセ・イバニェス・グスマン最高裁判事が選出された(27日)。
2.自然災害
(1)ボゴタ首都特別区で1分間に73ミリメートルの豪雨が降り、トゥンフエリート地区、フォンティボン地区、ケネディ地区が浸水、885家族が被災した(1~2日)。
(2)ナリーニョ県ガレラス火山が噴火し、約7000名に対し避難勧告が発出された(24日)。
Ⅲ. 外交
1.ウリベ大統領の外遊
(1)パナマ訪問(1日)
ウリベ大統領は、二国間関係強化のためパナマを訪問し、トリホス・パナマ大統領と首脳会談を行った。両大統領は、その後「コ」企業ISA社とパナマ企業Etesa社によるコロンビア-パナマ電力接続プロジェクトの開会式に出席した。
(2)ベネズエラ訪問(14日)
ウリベ大統領は、ベネズエラを訪問し、チャベス大統領と会談を行った。同会談では、自動車輸出に関する協定等5つの経済関連の文書への署名が行われた。FARCについてはチャベス大統領は、「自分は、FARCの同盟者でもなければ、支持者でもないが、敵ではない」旨述べた上で、ウリベ大統領がFARCとの和平交渉開始のために挙げている違法活動停止条件に同意した。
(3)ブラジル訪問(15日)
ウリベ大統領は、ラ米経済フォーラム・ラ米地域会合に出席するため、リオデジャネイロを訪問し、同地でルーラ大統領やブラジル企業関係者と会談を行った。同会談で両首脳は、二国間関係、キューバのOAS復帰問題を含む米州サミットへの対応、リオデジャネイロへの2016年オリンピック誘致、コロンビアへの2015年パンアメリカン競技大会誘致等について意見交換を行った。
(4)トリニダード・アンド・トバゴ訪問(17~19日)
ウリベ大統領は、第5回米州首脳会議に出席するため、トリニダード・トバゴを訪問した。会期中の昼食会場でウリベ大統領とオバマ大統領は同席し、オバマ大統領は次回ラ米訪問の際にはコロンビアを訪問する旨約束した。
(5)スペイン訪問(28~29日)
ウリベ大統領は、スペインを訪問し、サパテロ首相との会談、ボノ国会議長との会談等を行った他(28日)、スペイン企業家との懇談、カルロス国王謁見等を行った(29日)。ウリベ大統領とサパテロ首相の会談では、二国間関係、アンデス諸国とEUのFTA交渉、国際金融危機、地域統合、第5回米州首脳会議、オバマ米国政権とラ米諸国の関係、豚インフルエンザによる影響等について意見交換が行われた。
(6)バチカン市国訪問(30日)
ウリベ大統領は、バチカン市国を訪問し、ローマ法王ベネディクト16世謁見を行った。同謁見では、麻薬取引、最貧困層の生活向上、平和に向けた教会と政府の協力等に関し、話し合いが行われた。
(7)イタリア訪問(30日)
ウリベ大統領は、イタリアを訪問し、ベルルスコーニ首相と会談を行い、両国間の経済関係等につき意見交換を行った。ウリベ大統領は、ベルルスコーニ首相に対し、投資関係者にとりコロンビアは信頼できる国である旨述べ、投資推進の協力を要請した。
2.米国議員の当国訪問(7日)
ホイアー米国下院民主党多数党院内総務を含む7名の民主党下院議員と、レターマン米国下院共和党少数党院内総務を含む3名の共和党下院議員は、カルタヘナ市及びメデジン市を訪問し、ウリベ大統領と会談を行った。会談の主なテーマとなったFTAに関し、ホイアー議員は支持を表明し、また「プラン・コロンビア」に関しても、成果が出ているとして支持する意向を示した。