コロンビア月例報告(7月分)

 

内政・外交状況

 

2009年8月19日

在コロンビア日本大使館

 

Ⅰ.概要

〈内政〉

●ギャロップ社の世論調査結果が発表され、ウリベ大統領は、高支持率を維持する一方、汚職対策、経済対策及び雇用政策不満等の不安要素も浮上していることが明らかになった。また、ウリベ大統領が2010年大統領選に出馬しない場合、大統領候補の支持率について、サントス前国防相とファハルド元メデジン市長が有力候補であるとの結果が明らかになった。(11日)

●ウリベ大統領は、カウカ県ポパジャン市を訪問し、紛争被害者に対して初の国家補償を行うと同時に、紛争被害者に対し、「謝罪を表明する(Pedir Perdon)」と述べた。ウリベ大統領が紛争被害者に対し、謝罪の意を表明するのは初めて。(5日)

 

〈外交〉

●ベルムデス外相等は、米軍関係者が当国の三基地を使用することについて双方の了解がある旨明らかにした(15日)。チャベス「べ」大統領及びコレア「エ」大統領は、南米における脅威になるとして、米・「コ」軍事協力協定を強く批判した(22日)。ルーラ伯大統領及びバチェレ・チリ大統領は、ウリベ大統領に対して説明を求めるために、南米諸国連合・国防評議会の開催を提案した(30日)。

AP通信は、2008327日に撮影されたFARC幹部の映像を公開した(17日)。映像では、FARC書記局「モノ・ホホイ」が、コレア大統領の大統領選挙キャンペーンの資金援助等に触れている。コレア大統領は、「でっち上げ」として、強く否定した(18日)。

●ウリベ大統領は、FARCによる長距離ロケット砲入手を可能にしている国に対して抗議文を発出した旨明らかにした(27日)。チャベス大統領は、抗議文に対抗する形で、「コ」との関係を凍結する旨表明した(28日)。

 

Ⅱ.内政

1.内政一般

(1)ギャロップ社世論調査の発表(11日)

 ギャロップ社は、747日に行った世論調査結果を発表した。ウリベ大統領の業績に対する評価及び好感度は、71%が「評価する」及び68%が「好感を持っている」と回答しており、引き続き高支持率を維持している。しかし、51%が汚職問題に関する大統領の姿勢を批判的に捉えており、58%が経済が悪化しているとの見方を示し、また、81%が雇用政策に不満を抱いている等の不安要素も浮上している。ウリベ大統領が2010年大統領選に出馬しない場合の大統領候補の支持率については、サントス前国防相が36%、ファハルド元メデジン市長が31%であり、両候補が拮抗した。

(2)紛争被害者への補償開始(5日)

 ウリベ大統領は、カウカ県ポパジャン市を訪問し、紛争被害者に対して初の国家補償を行うと同時に、紛争被害者に対し、「自分は、大統領としての責任において、また、コロンビア国民の寛大な支持により今日国家元首として存在する立場として、魂の命ずるまま、記憶、苦痛、ノスタルジーに基づき、全てのコロンビア人に対して謝罪を表明する(Pedir Perdon)」と述べた。ピサロ全国和解補償委員会(CNRR)委員長によれば、今までにサントス副大統領やサントス前国防相が謝罪をしているが、ウリベ大統領が謝罪の意を表明するのは初めてである。

(3)国会の開会(20日)

 今期国会が開会し、新たな上院議長としてカセレス上院議員(与党、急進改革党)、下院議長としてゴメス下院議員(与党、市民統合党)が選出された。

(4)新型インフルエンザ問題(28日)

 社会保障省は、新型インフルエンザにより新たに4名の死亡が確認され、また国内における新型インフルエンザ感染が259件(死亡者13名を含む)となった旨発表した。28日現在、感染の疑いは7,838件、感染疑い濃厚は311件となっている。

(5)治安対策局(DAS)盗聴問題

 イグアラン検事総長は、任期終了前日、DASによる政治家、企業家、司法関係者の通信盗聴の容疑で、タバレス元局長、ナルバエス元副局長等11名への、逮捕礼状が発出された旨発表した。

(6)シルバ新国防相の任命(27日)

 ウリベ大統領は、シルバ全国コーヒー生産者連盟(FNC)総裁を新たな国防相として任命した。87日に正式に新国防相に就任する。同氏はFNC総裁として、FNCの財政を建て直した経営者としての手腕が高く評価されている。

(7)国内避難民への退去勧告(31日)

 ロペス・ボゴタ首都特別区事務局長は、4ヶ月間以上ボゴタ首都特別区のテルセル・ミレニオ公園で避難生活を送っていた国内避難民に対し、平均945千ペソ(約475米ドル)を生活費として供与し、同公園からの退去を要請した。

 

2.非合法武装勢力関連

 チョコ県メディオ・サン・ホセ市で違法作物伐採活動を行っていた農民及び国軍に対し、FARCが攻撃し、5名が死亡、1名が負傷した(28日)。

 

Ⅲ.外交

1.米国・「コ」軍事協力協定を巡る問題

(1)15日、ベルムデス外相、バレンシア内務・法務相、パデージャ国軍最高指令官は、米国の軍用機、軍人、麻薬取締局の関係者がパランケロ基地(クンディナマルカ県)、アピアイ基地(メタ県)及びマランボ基地(アトランティコ県)を使用することについて双方の了解がある旨明らかにした。

(2)チャベス「べ」大統領は、米国は「コ」を通じて、「ベ」への侵略を目論んでいると述べ、米国は左派におびえていると揶揄した。また、テレビ番組「アロー・プレジデンテ」では、「べ」国軍の増強を発表し、ブラジルやエクアドル等「コ」に代わる輸入代替先を模索すると述べた(22日)。

(3)コレア「エ」大統領は、「コ」における米軍基地は大変な脅威となるとして、これは「コ」と米国によるラ米諸国の左派政権に対する共謀、軍事活動であると述べた(22日)。

(4)ルーラ伯大統領及びバチェレ・チリ大統領は、ブラジルで会談を行い、ウリベ大統領に対して、米軍による「コ」の軍事基地使用に関する軍事協力協定について説明を求めるために、南米諸国連合・国防評議会の開催を提案した(30日)。

 

2.対エクアドル:コレア大統領に対するFARCの資金援助問題

(1)AP通信は、2008327日に撮影されたFARC幹部の映像を公開した(17日)。映像では、FARC書記局メンバーの「モノ・ホホイ」が、3月に死亡したFARC元最高幹部「マヌエル・マランダ」の書簡を読み上げ、FARCとの連帯の証としてオルテガ・ニカラグア大統領にも物的支援を行ったこと、コレア大統領の大統領選挙キャンペーンの資金援助と、その為のコレア大統領の密使との協議や合意に触れ、それらがFARCの友人としての関係を強化すると述べている。同映像は、今年530日、国家警察刑事局(DIJIN)に逮捕されたアデラ・ペレス・アギレ容疑者所有のパソコンから発見された。

(2)コレア大統領は、今回の公表は「露骨なでっち上げ」であるとして強く否定すると共に、虚言を述べているのは自分(コレア大統領)かウリベ大統領か判明させようとして、ウリベ大統領に挑む姿勢を見せた(18日)。

(3)ベラスケス「コ」大統領府スポークスマンは、米州機構(OAS)及び国際警察機構(インターポール)にこの映像を提供した旨発表した(19日)。

(4)FARCANNCOL社を通じ、コレア大統領への資金提供を否定するコミュニケを発出した(28日)。

 

3.対ベネズエラ:FARCのスウェーデン製武器保有を巡る問題

 ウリベ大統領は、FARCによる長距離ロケット砲入手を可能にしている国に対して抗議文を発出した旨明らかにした(27日)。チャベス大統領は、ウリベ大統領の同抗議に対抗する形で、「コ」との関係を凍結する旨表明し(28日)、これに対して、「コ」政府は、「ベ」政府は対話に応じようとしないと批判する旨コミュニケを発出した(29日)。

 

4.ウリベ大統領の中米訪問

(1)マルティネリ・パナマ大統領就任式出席(1日)

 ウリベ大統領はパナマを訪問し、マルティネリ・パナマ大統領の就任式に出席した。就任式では、マルティネリ大統領及びカルデロン墨大統領と会談を行い、麻薬取引対策で協力を行う旨表明した。

(2)第11回トゥストラ対話と協調メカニズム首脳会合出席(2829日)

 ウリベ大統領は、コスタリカで開催された第11回トゥストラ対話と協調メカニズム首脳会合に出席し。ペニャロサ大統領上級顧問は、トゥストラ対話協調メカニズム首脳会合に、今般「コ」が正式なメンバーとなったこと、メソアメリカ・プロジェクトを批准したこと、また20106月に開催予定の次期首脳会合が「コ」で行われる見通しとなった旨発表した。

 

5.ベルムデス外相のペルー及びパラグアイ訪問

 ベルムデス外相は、アンデス共同体(CAN)外相会議のため、リマ市を訪問し(22日)、続いて、メルコスール首脳会合出席のため、アスンシオン市を訪問した(23日)。

 

6.要人の当国訪問

(1)アナヤ国連先住民人権状況特別報告官(2327日)

 アナヤ国連先住民人権状況特別報告官は当国を訪問し、ウリベ大統領等と会談を行ったほか、行政監察庁長官、検察庁長官等と会談を行い、ナリーニョ県及びカウカ県を視察した。

(2)リーベルマン・イスラエル外相(2829日)

 リーベルマン外相は、南米諸国歴訪の一環として、企業関係者とともに、当国を訪問し、ベルムデス外相と会談を行い、経済・貿易等について意見交換を行った他、早期に観光促進に関する補完協定に署名することに合意した。リーベルマン外相は、ベルムデス外相との会談後、チャベス大統領が、米国は、「コ」をラ米のイスラエルにしようとしている旨述べたことについて、イスラエル政府は、南米の問題に介入する意向は有していないと前置きしつつ、チャベス大統領は、イスラエル及びその他の国との関係について、その対処の仕方や使用する言葉が特殊なことで非常に有名である旨コメントした(28日)。