コロンビア月例報告(2009年12月分)
内政・外交状況
2010年 1月15日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
【内政】
●12~13日、サントス前国防相が与党・国民統一党党首に、また、15日、パルド元上院議員が野党・自由党党首に選出された。
●16日、第4地裁は、ピラミッド商法最大手DMG社のムルシア元社長に対し、ピラミッド商法を通じて行った多額の違法取引及び麻薬資金洗浄の罪で30年9ヶ月の有罪判決を下した。
●12月9~13日にギャラップ社が行った世論調査結果によれば、ウリベ大統領の業績を評価するとの回答が73%、ウリベ大統領の好感度が68%であり、11月の前回調査時より、それぞれ4ポイント上昇した。
●FARC書記局とELN中央司令部は、11月付共同コミュニケを発表し、両者間の対立を止め、米国帝国主義及びその手下であるウリベ政権と戦うために共闘する旨表明した。
●21日、カケタ県フロレンシア市の私邸にいたクエジャル・カケタ県知事が、FARCによって誘拐され、翌22日、同市郊外において、首を切られ、殺害される事件が起きた。
【外交】
●11月29~12月1日、ウリベ大統領は、ベルムデス外相等とともに、ポルトガルを訪問し、第19回イベロアメリカ・サミットに出席した。
●11月29日~12月4日、コロンビアのカルタヘナ市において対人地雷禁止条約第2回運用会議が127カ国の参加を得て開催され、最終報告書が採択された。
●15~18日、ウリベ大統領は、COP15に出席するためにデンマークのコペンハーゲンを訪問した。
●シルバ国防相がベネズエラに対するアグレッシブな発言を行ったことを踏まえ、29日、ウリベ大統領は、そうした発言を認めない旨の発言を行った。
2.内政
(1)自由党党大会の開催等
12~13日、ボゴタ市内のコンベンション・センターで野党・自由党の党大会が開催された。同党大会では、9月の党内選挙で次期大統領候補に選出されたパルド元上院議員が、ガビリア党首の後任として、新たな党首に選出され、党役員の任命、次期大統領選挙に向けた他党との連立の模索、党綱領の改正等について一任されることになった。
なお、同党大会に先立つ1日、ロハス元副大統領候補(元FARC誘拐被害者)は、3月14日に行われる上院議員選挙に自由党から立候補することを決定した。
(2)サントス前国防相の国民統一党党首選出
15日、与党・国民統一党(通称「U」党)の国会議員会合が開催され、レストレポ党首の後任として、サントス前国防相が、満場一致で「U」党の党首に選出された。サントス新党首は、ウリベ大統領の連続三選を可能にする憲法改正国民投票を推進する旨述べたが、他方で、ウリベ大統領が次期大統領選挙に出馬しない場合は、同党首が出馬する旨述べた。
なお、サントス前国防相は、2010年1月21日に正式に党首に就任すると見られている。
(3)ムルシア・ピラミッド商法DMG社元社長に対する有罪判決
16日、第4地裁は、ピラミッド商法最大手DMG社のムルシア元社長に対し、ピラミッド商法を通じて行った多額の違法取引及び麻薬資金洗浄の罪で30年9ヶ月の有罪判決を下した。
なお、米国においても3,000万ドルに及ぶ麻薬資金洗浄に関与していた疑いが持たれており、米国による要請に基づき、最高裁が、同判決に先立つ同10月14日、ムルシア元社長の米国への引渡しを認める判断を示したことから、ムルシア元社長は、近くコロンビア当局から米国当局に引渡される予定。
(4)世論調査
17日付当地「エル・ティエンポ」紙は、12月9~13日にギャラップ社が全国の18歳以上の男女1,000人を対象に行った世論調査の結果を報じているところ、概要以下の通り。
(イ)ウリベ大統領の業績を評価するとの回答が73%、ウリベ大統領の好感度が68%であり、11月の前回調査時より、それぞれ4ポイント上昇した。
(注)2009年のウリベ大統領の業績の評価及び好感度の推移
【ウリベ大統領の業績の評価】
2月 5月 7月 9月 11月 12月
74% 71% 71% 74% 69% 73%
【ウリベ大統領の好感度】
2月 5月 7月 9月 11月 12月
69% 68% 68% 70% 64% 68%
(ロ)ウリベ大統領の連続三選を可能とするための憲法改正の是非を問う国民投票に関しては、投票に行くとの回答が52%であり、このうち、憲法改正に賛成との回答が83%、憲法改正に反対との回答が17%であった。
(ハ)ウリベ大統領が次期大統領選挙に出馬しない場合の以下の4つのシナリオにおける各大統領候補及び大統領候補になる可能性がある有力政治家の支持率は以下のとおり(括弧内の数字は前回調査時の支持率)。
①シナリオ1
・サントス前国防相:29%(25%)
・ファハルド元メデジン市長:23%(25%)
・サニン前駐英大使:15%(14%)
・ペトロPDA党幹部:8%(11%)
・パルド自由党党首:9%(8%)
②シナリオ2
・サントス前国防相:31%(26%)
・ファハルド元メデジン市長:25%(26%)
・ペトロPDA党幹部:10%(11%)
・アリアス前農業相:8%(9%)
・パルド自由党党首:9%(8%)
③シナリオ3
・サントス前国防相:30%(27%)
・ファハルド元メデジン市長:25%(30%)
・サニン前駐英大使:14%(10%)
・バルガス急進改革党党首:11%(6%)
・ペトロPDA党幹部:9%(11%)
④シナリオ4
・サントス前国防相:31%(28%)
・ファハルド元メデジン市長:27%(28%)
・ペトロPDA党幹部:13%(11%)
・バルガス急進改革党党首:9%(7%)
・アリアス前農業相:6%(7%)
(5)FARCとELNによる共同コミュニケの発出
17日付当地各紙によれば、FARC書記局とELN中央司令部は、11月付共同コミュニケを発出し、両者間の対立を止め、米国帝国主義及びその手下であるウリベ政権と戦うために共闘する旨表明した。
なお、同コミュニケの骨子は、(イ)お互いの対立をやめ、共闘すること、(ロ)軍と共謀を図るのをやめること、(ハ)住民へ危害を加えないこと、及び(ニ)お互いが使用する隠語を統一することである。
(6)国防次官の交代
22日、ウリベ大統領は、ハラミージョ国防次官(国際問題担当)の後任として、イーストマン大統領補佐官(広報担当)を任命する旨発表した。イーストマン新国防次官は、インテリジェンス、ゲリラの武装解除、人権、国際協力等の戦略分野における民主的治安対策の強化を担当することになる。
(7)次期大統領選挙に向けた主要政党の動向
次期大統領選挙に向けて野党・自由党との連携を模索していたバルガス・ジェラス与党・急進改革党党首は、18日、自由党が左派政党である野党・PDA党と連立に向けた話し合いを行うことに合意したとして、自由党と連携する可能性を否定する発言を行った。
他方、21日、パルド自由党党首は、PDA党との間には、対米自由貿易協定及び米国との軍事協力協定について見解の相違があるとして、PDA党との連携は難しい旨の発言を行った。
(8)クエジャル・カケタ県知事の誘拐・殺害
21日、カケタ県フロレンシア市の私邸にいたクエジャル・カケタ県知事が、FARCの「テオフィロ・フォレーロ」縦隊のグループによって誘拐される事件が起きた。ウリベ大統領の指示に基づき、陸軍の特殊部隊及び100人規模の警察部隊が、クエジャル県知事の捜索に当たったが、翌22日午後、同市郊外において、首を切られ、殺害された後、焼かれたクエジャル県知事の遺体が発見された。
22日夜、ウリベ大統領は、全国向けテレビ演説において、22日、テロリストは、無惨にもクエジャル・カケタ県知事の首を刎ね、殺害した旨述べるとともに、政府は、モンカージョ元伍長等の誘拐被害者の解放のためにあらゆる保障を与えていたにもかかわらず、FARCは、これらの誘拐被害者を解放する代わりに、クエジャル県知事を誘拐し、殺害した旨述べた。なお、ウリベ大統領は、クエジャル県知事の誘拐、殺害の責任者を逮捕するための情報に10億ペソまでの報奨金を支払う旨述べた。
今般のクエジャル県知事の誘拐、殺害事件について、22日、米国政府は、同事件を強く非難するコミュニケを発出し、また、23日、G24は、同事件を強く非難するとともに、非合法武装勢力に対し、早期、且つ、無条件で、全ての誘拐被害者を解放するよう呼びかける内容のコミュニケを発出した。
(9)有権者登録数の発表
23日、国家国民身上登録所は、2010年3月14日の国会議員選挙に参加できる有権者登録数を29,882,147人と発表した。
3.外交
(1)ウリベ大統領の第19回イベロアメリカ・サミット出席
11月29~12月1日、ウリベ大統領は、ベルムデス外相等とともに、ポルトガルを訪問し、第19回イベロアメリカ・サミットに出席した。同サミットのマージンで、ウリベ大統領は、サパテロ・スペイン首相、カルデロン・メキシコ大統領、フェルナンデス・ドミニカ共和国大統領、ロドリゲス・キューバ外相等とそれぞれ会談した。12月1日に行われたサパテロ首相との会談において、両首脳は、二国間関係、ラ米情勢等について意見交換を行い、険悪化しているコロンビアとベネズエラの関係の修復に向けたスペインの仲介についても話し合いが行われた由。
また、ウリベ大統領は、コロンビア出身の歌手シャキーラが主宰するNGO・アラス基金とイベロアメリカ・サミット事務局の間で行われたラ米諸国における児童教育支援に関する協定の署名式に出席した。
(2)対人地雷禁止条約第2回運用会議の開催
11月29日~12月4日、コロンビアのカルタヘナ市において対人地雷禁止条約第2回運用会議が開催された。同会議には127カ国が参加し、日本からは須田軍縮代表部大使を団長とする代表団が出席した。同会議最終日に「履行状況報告書」、「2009カルタヘナ行動計画」、「2009カルタヘナ宣言」等からなる最終報告書が採択され、第3回運用会議は2014年末に開催されることとなった。なお、同会議では、米国が初めて対人地雷禁止条約会合に参加したことが注目されたが、条約署名については検討中である旨述べるに止まった。
(3)ベルムデス外相のベルギー訪問
1~2日、ベルムデス外相は、ブリュッセルを訪問し、フェレロー=ヴァルドナー委員と会談した。ベルムデス外相とフェレロー=ヴァルドナー委員は、コロンビアとEUの関係について意見交換を行った他、コロンビアとEUの間の政策協議実施に関する合意議事録に署名した。
(4)対ベネズエラ関係
(イ)7~9日にベネズエラのカラカスで開催されたボリーバル大陸運動設立会議に際し、アルフォンソ・カノFARC司令官がビデオレターを寄せ、米帝国がコロンビアで軍事力を展開し、ラ米・カリブ諸国の国民に対する戦争及び恐怖の軍事力を有することになった今、ボリーバルの精神に基づいた大陸政治運動を結成することは、歴史的な必要性であるだけではなく、喫緊の義務である旨表明した。
これに対し、パディージャ国軍司令官は、FARCは、暗殺、誘拐、テロ行為等の責任者であり、ボリーバル大陸運動のメンバーに対し、カノ司令官のメッセージを拒否するよう求めた。
(ロ)ベネズエラ政府が、11月23日付マドゥーロ外相発安保理議長宛書簡において、安保理議長に対し、コロンビアにおける武力紛争を安保理の作業アジェンダに含めることを要請したことについて、コロンビア政府は、マドゥーロ外相の書簡の中で言及されているコロンビア情勢に関する情報は、不正確、不完全、かつ歪められたものであり、同情報を修正する必要がある旨指摘する10日付ベルムデス外相発安保理議長宛書簡を発出した。
(ハ)シルバ国防相が、ベネズエラによる拡張主義的な傾向が見られ、地域において戦略的環境が変化しているとした上で、コロンビアは、これまで以上に国家主権の保護が必要である旨述べる等、ベネズエラに対するアグレッシブな発言を行ったことを踏まえ、29日、ウリベ大統領は、概要以下の発言を行った。
①自分が大統領である間、コロンビアは、国際社会に対するアグレッシブな発言を認めない。
②我々は、国内の暴力という歴史的な問題を抱えている。我々は、同問題を解決しなければならないが、国際社会、特に兄弟国に対してアグレッシブであってはならないというコロンビアの伝統を維持している。
③例えば、ベネズエラとの関係で我々が行わなければならない唯一のことは、ベネズエラ国民との兄弟関係を発展させることである。我々のメッセージは、ベネズエラの国民に対する親愛のメッセージでなければならない。
(5)サントス副大統領の第38回メルコスール首脳会合出席
7~8日、サントス副大統領は、第38回メルコスール首脳会合に出席するためウルグアイを訪問した。同会合において、サントス副大統領は、ベネズエラによる恣意的な貿易制限措置は、WTOの原則に反するものであるとして、同措置を非難するとともに、ベネズエラとの国境地域では、同措置による失業問題が顕在化している旨述べた。
これに対し、チャベス・ベネズエラ大統領は、同大統領の就任後、両国の貿易額は約10億ドルから約60億ドルに拡大しているとした上で、ベネズエラは、輸入先を決める権利を有している旨述べ、反論した。また、チャベス大統領は、米国がコロンビアに米軍基地の所有を可能にするものであるとして、10月30日に署名された米・コロンビア軍事協力補完取極を改めて批判した。
(6)ベルムデス外相のカリコム4カ国訪問
7~8日、ベルムデス外相は、コロンビアのカリコムに対する協力戦略の一環として、また、カリブ諸国連合との関係について話し合うために、スリナム、ガイアナ、アンティグア・バーブーダ及びバルバドス4カ国を訪問した。ベルムデス外相は、7日、クラーグ・スリナム外相及びロドリゲス・ガイアナ外相とそれぞれ会談を行い、また、8日、スペンサー・アンティグア・バーブーダ外相及びマックリーン・バルバドス外相とそれぞれ会談した。
(7)ウリベ大統領のCOP15出席
15~18日、ウリベ大統領は、COP15に出席するために、デンマークのコペンハーゲンを訪問した。帰国直後に行われたインタビューの中で、ウリベ大統領は、コペンハーゲン合意について、概要以下のとおり述べた。
(イ)残念ながら当初案を弱めた形での合意となった。2050年までに全世界の温室効果ガス排出量を50%削減する約束や、欧州が提案した80%の自発的削減といった内容が除かれた。
(ロ)同合意は、検証義務は先進国に対するのみとされ、他の諸国は不明確な自己検証の制度となり、また制裁規定は盛り込まれず、真に合意といえるかについては疑問が生じる。
(ハ)上記問題はあるが、とにかく一定の合意が得られた。気温上昇を2度以内に抑制する合意、及び、セルバ(ジャングル)保護及び森林保護プロジェクトへの資金援助という我々の提案に応える森林基金設立である。コロンビアは、森林保護についてはパイオニアであり、わずかな予算しかないが、アマゾン地域は人類の肺となっている。また、この合意テキストを国内法化し、定期的に再検討し、1年後にメキシコで会議を開くことに賛成である。
(8)ベルムデス外相の英国訪問
17日、ベルムデス外相は、英国を訪問し、ミリバンド外相と会談した。両外相は、二国間関係について意見交換を行った他、コロンビアとEUのFTA交渉、国際場裡における協力等について話し合った。