コロンビア月例報告(2月分)

 

内政・外交状況

 

2010年 3月26日

在コロンビア日本大使館

 

Ⅰ.概要

【内政】

●2日、14日に行われる国会議員選挙への立候補の全国選挙委員会身上登録庁に対する登録期限が終了し、上院議員選挙には19の政党乃至政治団体から842名が、また、下院議員選挙には361の政党乃至政治団体から1,634名が候補者として登録した。

●昨年12月に開催された与党・国民統一党の会合において、レストレポ党首の後任として党首に選出されたサントス前国防相が、3日、正式に「U」党党首に就任した。

●26日、憲法裁判所は、大統領三選を違憲とする判決を下した。この結果、この結果、ウリベ大統領は、次期大統領選挙のみならず、2014年以降の大統領選挙にも出馬できないこととなった。

●ロペス・グアビアレ県知事が、パラポリティカとの関連で逮捕され、2009年6月に辞任したことを受けて、28日、グアビアレ県知事選挙が行われ、国家統合党(PIN)のスアレス候補が勝利した。

 

【外交】

●8日、コロンビアを訪問したハイチのAntoine内相は、大統領府においてウリベ大統領を表敬し、1月12日のハイチ地震災害に対するコロンビアの迅速な援助に謝意を表明した。

●9日、ウリベ大統領はエクアドルのキトを訪問し、ハイチ地震災害への支援に関する南米諸国連合臨時首脳会合に出席した。同会合において、ハイチにおけるインフラ、農業、医療及びエネルギーの4分野への支援を行い、そのために南米諸国連合加盟国が出資する1億ドルの基金を創設することが決定された。

●15日、ホンジュラスのアルバレス治安相は、コロンビアを訪問し、ベルムデス外相と会談した。両大臣は、同会談において、両国における麻薬、テロ及び暴力と戦うための治安強化に関する協定に署名した。

●19日、ペルーのガルシア外相及びレイ国防相は、コロンビアを訪問し、ベルムデス外相及びシルバ国防相と2+2会合を行った。同会合において、両国間で行われている安全保障面での協力メカニズムのフォローアップ及び今後の方針等について意見交換が行われた。

●22~23日、ウリベ大統領は、リオ・グループ首脳会合に出席するためメキシコのカンクンを訪問した。同首脳会合において、各国首脳は、ラ米・カリブ共同体を創設することで合意した。また、同首脳会合において、ウリベ大統領とチャベス・ベネズエラ大統領の間で非難の応酬があったが、両首脳は、両国間の相異の克服を支援する友好国グループによる仲介を受け入れた。

 

2.内政

(1)国会議員選挙候補者の登録

連続三選に関する意見書の提出

 3日、大統領連続三選を可能にする憲法改正の是非を問う国民投票法を担当している憲法裁判所のシエラ判事は、国民投票法案の国会提出に先立って行われた同国民投票への国民の支持を求める署名集めに使われた予算が法律で定められている額を上回ったこと、右に関して全国選挙委員会が見解を表明する前に、国民投票法案に関する審議が国会で開始され、可決されたこと等の手続き的な問題を指摘し、同法は違憲であるとの意見書を憲法裁判所において提出した。

 

(3)サントス国民統一党党首の就任

 昨年12月に開催された与党・国民統一党(「U」党)の国会議員会合において、レストレポ党首の後任として党首に選出されたサントス前国防相が、3日、正式に「U」党党首に就任した。

 

(4)憲法裁判所による大統領三選違憲判決

 ウリベ大統領の連続三選を可能にする憲法改正の是非を問う国民投票法を巡っては、本件を担当するシエラ判事が、ウリベ支持者による国民投票法案への国民の支持を求める署名運動に手続き上の問題があったこと、署名時に支持を得た国民投票法案の文言が国会審議の過程で修正されたこと等の理由で、約3週間前に国民投票法を違憲とする意見書を提出し、その後、同意見書に関して議論が行われてきたが、26日、一連の議論を踏まえた上で、国民投票法に関する評決が行われ、賛成7、反対2の賛成多数で、国民投票法を違憲とする決定がなされた。右を受けて、同日夕刻、憲法裁判所は、概要以下の理由により、国民投票法を違憲とする判決の内容を発表した。この結果、ウリベ大統領は、次期大統領選挙のみならず、2014年以降の大統領選挙にも出馬できないこととなった。

 

(イ)民主主義の原則には、国民参加のメカニズムのための手続きへの尊重があるが、こうして手続きは、民主主義の原則の基本的ルールを保障するためのものである。

 

(ロ)憲法に規定されている権限は、憲法を改正するためのものであり、憲法を代替するためのものではない。従って、1991年憲法の基本的な原則を否定する憲法改正を行うことはできない。

 

(ハ)国民投票法案への国民の支持を求める署名運動を推進したグループは、全国選挙委員会によって認められている額を6倍以上上回る資金を使用し、また、同委員会によって認められている額を30倍近く上回る個人献金を使用した。こうした行為は、透明性という憲法の基本的原則に違反するものである。

 

(ニ)全国選挙委員会身上登録庁長官は、署名運動を巡る問題について、事前に審査を行わなければならず、右を待たずに国会で可決された国民投票法は無効である。

 また、署名時の国民投票法案の文言は、一期間を置いた大統領三選を想定していたが、国会で文言修正を経て、可決された国民投票法は、大統領の連続三選を提案するものであり、同修正は参加型民主主義の原則に反するものである。

 

(ホ)急進改革党の5名の下院議員は、党議拘束に反する形で、同国民投票法案に賛成票を投じたが、同賛成票は無効であり、右を考慮すれば、同法案は、国会で過半数の賛成票を得たことにはならず、無効である。

 

(5)グアビアレ県知事選挙

 2007年のグアビアレ県知事選挙で選出されたロペス県知事が、パラポリティカとの関連で逮捕され、2009年6月に辞任したことを受けて、28日、グアビアレ県知事選挙が行われ、国家統合党(PIN)のスアレス候補が勝利した。

 

3.外交

(1)アンデス共同体(CAN)外務・通商大臣会合の開催

5日、ペルーにおいてアンデス共同体(CAN)外務・通商大臣会合が開催され、拡大外相理事会には、ペルーのガルシア・ベラウンデ外相による議長の下、コロンビアからベルムデス外相、プラタ商工観光相、エクアドルからパティーニョ外相、ボリビアからグスマン通商・統合省次官及びエレルスCAN事務総長等が参加した。

 同会合における主な合意事項は以下のとおり。

(イ)アンデス統合プロセス及びCAN加盟国が共に前進するための12の柱からなる戦略的アジェンダの指針を採択した。

(ロ)メルコスール諸国のCANへの参加を促進にするための規則を承認し、CAN-メルコスールの混合委員会の設立で一致した。

(ハ)CANとEUの関係、具体的には、政治対話の強化等について検討するために、3月5日にブルュセルで開催されるCAN-EU混合委員会の準備について議論した。

(ニ)アンデス・アマゾン地域における生物多様性地域計画(BioCAN)の2010年における実施開始に係るフィンランド政府とCAN事務局の間の覚書への署名に同意した。

 

(2)ハイチのAntoine内相のコロンビア訪問

 8日、コロンビアを訪問したハイチのAntoine内相は、大統領府においてウリベ大統領を表敬し、1月12日のハイチ地震災害に対するコロンビアの迅速な援助に謝意を表明した。会談後、Antoine内相は、「ハイチ国民は、ハイチ地震に対して、ウリベ大統領が示した迅速な対応に強い印象を受けている」旨述べるとともに、会談において、ウリベ大統領は、ハイチに対する強い関心を示した旨強調した。

また、同日、Antoine内相は、1999年にキンディオ県アルメニア市で起きた地震からの復興の経験について学ぶために、バレンシア内相とともに同市を訪問し、コーヒー地帯復興基金によって建設された住居等を視察した。視察後、Antoine内相は、地震後の復興は、物理的な復興だけではなく、社会的な復興も重要であるとの認識を新たにした旨述べた。

 

(3)ウリベ大統領の南米諸国連合臨時首脳会合出席

 9日、ウリベ大統領はエクアドルのキトを訪問し、ハイチ地震災害への支援に関する南米諸国連合臨時首脳会合に出席した。同会合において、南米諸国連合は、同会合に出席したプレバル・ハイチ大統領から要請のあったインフラ、農業、医療及びエネルギーの4分野への支援を行い、そのために南米諸国連合加盟国が出資する1億ドルの基金を創設することを決定した。また、南米諸国連合は、ハイチにテントの供与及びシェルターの建設を行うとともに、ハイチの輸出を増加し、経済の振興を図るために、ハイチから南米諸国連合加盟国に輸出される製品にかかる関税を免税とすることを決定した。

 

(4)ホンジュラスのアルバレス治安相のコロンビア訪問

 15日、ホンジュラスのアルバレス治安相は、コロンビアを訪問し、ベルムデス外相と会談した。両大臣は、同会談において、両国における麻薬、テロ及び暴力と戦うための治安強化に関する協定に署名した。

 会談後、ベルムデス外相は、同協定は、インテリジェンス情報の交換、警官の養成及び交流等を目的としたものである旨述べた。

 一方、アルバレス治安相は、今般のベルムデス外相との会談は、両国の緊密な関係の始まりを示すものである旨述べるとともに、「ホンジュラスにおける民主的、かつ歴史的な選挙の後に、コロンビア政府がロボ政権を承認したことに対するロボ大統領の謝意をお伝えする。同承認は、我々がコロンビアと貿易関係を構築するとともに、麻薬取引及びテロ等の国際犯罪との戦いを始めることを促すものである」と述べた。

 なお、アルバレス治安相は、コロンビア滞在中、ベルムデス外相の他に、サントス副大統領、ムニョス大統領府治安庁長官及びナランホ国家警察長官と会談した。

 

(5)ペルーのガルシア外相及びレイ国防相のコロンビア訪問

 19日、ペルーのガルシア外相及びレイ国防相は、コロンビアを訪問し、ベルムデス外相及びシルバ国防相と2+2会合を行った。同会合において、両国間で行われている安全保障面での協力メカニズムのフォローアップ及び今後の方針等について意見交換が行われた。

 会合後、シルバ国防相は、両国が行っている安全保障面での協力は、地域全体にとってモデルとなるものである旨述べるとともに、(両国には)国境地域が麻薬テロリスト及び組織犯罪の稜堡になることを阻止するための政治的意思があることを強調した。また、シルバ国防相は、同会合において、国境地域における脅威に対する共同計画及び効率的な行動を展開するための具体的な情報交換が行われた旨述べた。

 一方、ペルーのレイ国防相は、ペルーも過去にテロによる被害を受け、現在も受け続けているので、ペルーにおけるFARCの潜伏、麻薬取引及び麻薬の不法栽培を阻止するためにコロンビアと協調して戦うとの断固たる意思を有している旨述べた。

 

(6)ウリベ大統領のリオ・グループ首脳会合出席

 22~23日、ウリベ大統領は、リオ・グループ首脳会合に出席するためメキシコのカンクンを訪問した。同首脳会合において、各国首脳は、ラ米・カリブ共同体を創設することで合意した。

 22日に行われたリオ・グループ首脳会合の昼食会において、ウリベ大統領とチャベス・ベネズエラ大統領の間で非難の応酬があったが、両首脳は、両国間の相異の克服を支援する友好国グループによる仲介を受け入れた。この点について、チャベス大統領は、友好国グループが創設され、我々が信頼及び透明性のある関係を取り戻すことに同意している旨述べ、一方、ウリベ大統領も、メキシコ大統領の議長の下で得られたリオ・グループの合意を受け入れる旨述べた。

 同日、ウリベ大統領は、コレア・エクアドル大統領と会談し、会談後、コレア大統領は、両国は、両国関係正常化に向けた決定的な第一歩を歩んだとした上で、「(両国関係正常化に向けた)日程もクロノロジーもないが、行程表はあり、コロンビア政府が同意したエクアドルからの基本的な要望事項もある」と述べるとともに、同要望事項とは、2008年3月のコロンビア軍によるエクアドル領内への爆撃に関する詳細な情報、コロンビア当局が押収したラウル・レジェスFARC幹部のコンピューターに入っていた情報等である旨説明した。

 一方、ウリベ大統領は、コレア大統領との会談は良好なものであったと述べるに留まった。