コロンビア月例報告(3月分)
内政・外交状況
2010年 4月28日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
【内政】
●14日、国会議員選挙、アンデス議会議員選挙、並びに保守党及び緑の党の大統領候補選出国民調査投票が行われた。国会議員選挙では、与党が過半数を維持した。保守党の大統領候補にはサニン前駐英大使が、また、緑の党の大統領候補にはモックス同党共同党首が選出された。
●28日、2009年4月20日以来FARCに拘束されていたホスエ・カルボ国軍兵士が、メタ県サンタ・ルシアで解放された。
●30日、1997年12月21日以来FARCに拘束されていたパブロ・モンカージョ国軍兵士が、メタ県とカケタ県の県境にあるロス・ジャノス・デ・ヤリで解放された。
【外交】
●ウリベ大統領は、2月28日~3月1日、ムヒカ大統領の就任式に出席するためウルグアイを訪問し、また、10~11日、ピニェラ大統領の就任式に出席するためチリを訪問した。
●5~7日、コロンビアとベネズエラの関係修復のための仲介役を担うこととなったフェルナンデス・ドミニカ(共)大統領は、コロンビアを訪問し、ウリベ大統領、ベルムデス外相等と会談した他、ベネズエラとの国境地帯に当たるノルテ・デ・サンタンデール県ククタ市を訪問した。
●15~19日、ベルムデス外相は、ニュージーランド及びオーストラリアを訪問し、両国の外相他と会談した。
●22~23日、コスタリカのアリアス大統領は、コロンビアを訪問し、ウリベ大統領と会談した他、カセレス上院議長、ゴメス下院議長、最高裁判所裁判官、モレーノ・ボゴタ市長とそれぞれ会談を行った。
2.内政
(1)国会議員選挙、アンデス議会議員選挙、並びに保守党及び緑の党の大統領候補選出国民調査投票
14日、国会議員選挙、アンデス議会議員選挙、並びに保守党及び緑の党の大統領候補選出国民調査投票が、全国の10,376の投票所(投票テーブルは76,940)において、午前8時から午後4時まで行われた。有権者数は29,852,099名。国会議員選挙の投票率は約40%。選挙結果は以下のとおり(なお、国会議員選挙は暫定結果)。
(注1)以下(ア)及び(イ)の括弧内の数字は、2006年の国会議員選挙での獲得議席数と今次選挙前の議席数。昨年多くの議員が所属政党を変更したため、両議席数が異なっている。
(注2)下院議員選挙の在外選挙区の議席は未確定。
(ア)上院議員選挙(102議席(全国区100議席、先住民特別区2議席))
①国民統一党(「U」党、与党):28(20→31)
②保守党(与党):22(18→21)
③自由党(野党):17(18→18)
④国家団結党(「PIN」党、与党):9(7→3)
⑤急進改革党(与党):8(15→13)
⑥PDA党(野党):8(10→11)
⑦緑の党(独立系):5(0→0)
⑧MIRA運動(独立系):2(2→2)
⑨コロンビアのための市民運動(独立系):1(0→0)
⑩ASI運動(独立系):1(1→1)
⑪AICO運動(独立系):1(1→1)
(イ)下院議員選挙(166議席。そのうち、黒人系特別区2議席、先住民特別区1議席、政治的マイノリティー1議席、在外選挙区1議席)
①国民統一党(「U」党、与党):48(33→42)
②保守党(与党):37(29→33)
③自由党(野党):35(35→39)
④国家団結党(「PIN」党、与党):13(10→11)
⑤急進改革党(与党):14(20→14)
⑥PDA党(野党):5(8→7)
⑦緑の党(独立系):3(1→1)
⑧自由解放運動(独立系):2(5→1)
⑨自由団結党(独立系):2(0→0)
⑩MIRA運動(独立系):1(1→1)
⑪ALAS党(与党):1(8→3)
⑫ASI運動(独立系):1(1→1)
⑬地方統合党(独立系):1(2→2)
⑭アフリカ系コロンビア人連合(独立系):1(0→0)
⑮国民団結運動(独立系):1(0→0)
(ウ)アンデス議会選挙
コロンビアでは初めてのアンデス議会選挙(5名選出)となったが、同選挙において、以下の5名がアンデス議会議員に当選した。
①ルイサ・デル・リオ(国民統一党)
②ウイリアム・ベレス(国民統一党)
③オスカル・アルボレダ(保守党)
④エクトル・ロハス(自由党)
⑤グロリア・フロレス(PDA党)
(エ)保守党大統領候補選出国民調査投票
同投票には、サニン前駐英大使、アリアス前農業相、ラミレス元上院議員、ガラット元グラン・コロンビア大学学長及びレイバ元鉱山・エネルギー大臣の5名が参加し、サニンとアリアスの間の接戦となったが、19日、全国選挙委員会は、サニン前駐英大使が、第2位のアリアス前農業相に3万7,777票の差をつけて勝利した旨発表した。
(オ)緑の党大統領候補選出国民調査投票
同投票には、モックス、ペニャロサ及びガルソンの3氏(3名とも緑の党共同党首で、元ボゴタ市長)が参加したが、モックスが50%以上の票を獲得し、同党の大統領候補に選出された。
(2)FARC誘拐被害者・カルボ国軍兵士の解放
28日、2009年4月20日以来FARCに拘束されていたホスエ・カルボ国軍兵士が、コルドバ上院議員をはじめとする平和のためのコロンビア人(人質解放等を呼びかけている政治グループ)のメンバー、国際赤十字のメンバー、ゴメス司教(コロンビア司教会議代表)等からなる人道ミッション及びブラジル政府の支援を得て、メタ県サンタ・ルシアで解放された。
カルボ兵士解放後、パール和平担当大統領補佐官は、カルボ兵士の解放オペレーションは完璧であったとした上で、同オペレーションに関わった人道ミッションのメンバー及びブラジル政府に謝意を表明した。
また、ウリベ大統領は、解放されたカルボ兵士と電話で話しをしたとした上で、人道的人質解放については、釈放されるFARCメンバーが、再びFARCに復帰せず、犯罪を犯さないことを条件に、同人質交換を行う用意がある旨述べた。
(3)FARC誘拐被害者・モンカージョ国軍兵士の解放
30日、1997年12月21日以来FARCに拘束されていたパブロ・モンカージョ国軍兵士が、コルドバ上院議員をはじめとする平和のためのコロンビア人(人質解放等を呼びかけている政治グループ)のメンバー、国際赤十字のメンバー、ゴメス司教(コロンビア司教会議代表)等からなる人道ミッション及びブラジル政府の支援を得て、メタ県とカケタ県の県境にあるロス・ジャノス・デ・ヤリで解放された。
モンカージョ兵士解放後、ウリベ大統領は、同兵士が解放されたことへの喜びを表明するとともに、改めてFARCによる誘拐を断固として拒否する旨述べた。
なお、パール和平担当大統領補佐官は、誘拐被害者解放オペレーションのテレビ放映が禁止されているにもかかわらず、左派系の国際テレビ局・テレスール(ベネズエラのTV)が、同オペレーションの場面を撮影し、放映したことを非難した(注:テレスール側は、FARCよりビデオ映像をメールで受け取ったと述べている)。
なお、いまだに20名(22名という報道もある)の軍人及び警察官がFARCによって拘束されているが、FARCは、コミュニケを通じて、これらの誘拐被害者は、人道的人質交換によってのみ解放する旨明らかにしている。
3.外交
(1)ウリベ大統領のムヒカ・ウルグアイ大統領就任式出席
2月28日~3月1日、ウリベ大統領は、ムヒカ大統領の就任式に出席するため、ウルグアイを訪問し、1日の就任式の前に、2月28日、ムヒカ大統領と会談した。
会談後、ウリベ大統領は、同会談が非常にポジティブなものであるとした上で、ここ数年の間にアンデス共同体とメルコスールの統合が進む中で、ウルグアイは重要な役割を果たしていると述べるとともに、今後両国はすばらしい関係を有するであろう旨述べた。
(2)フェルナンデス・ドミニカ(共)大統領のコロンビア訪問
5~7日、コロンビアとベネズエラの関係修復のための仲介役を担うこととなったフェルナンデス・ドミニカ(共)大統領は、当国を訪問し、ウリベ大統領、ベルムデス外相等と会談した他、ベネズエラとの国境地帯に当たるノルテ・デ・サンタンデール県ククタ市を訪問した。
5日夜、フェルナンデス・ドミニカ(共)大統領は、大統領府においてウリベ大統領と夕食を共にし、対ベネズエラ関係修復に向けた意見交換を行った。同夕食会には、コロンビア側から、ベルムデス外相、プラタ商工観光相等が、ドミニカ(共)側からは、モラレス外相等が同席した。
6日、フェルナンデス大統領は、外務省においてベルムデス外相、プラタ商工観光相、コロンビア・ベネズエラ商工会議所メンバー等と会談した。会談後、フェルナンデス大統領は、記者団に対し、概要以下のとおり述べた。
(ア)本日のベルムデス外相、プラタ商工観光相、コロンビア・ベネズエラ商工会議所メンバーとの会合は、カンクンの首脳会合で合意されたベネズエラとコロンビアの話し合いの仲介の一環として行われたものである。
(イ)本日の会合は、両国間の話し合いに向けた最初の会合であったが、話し合いの詳細について知ることができた。これは、ベネズエラとの話し合いを容易にするであろうし、両国の関係修復に資するであろう。
(ウ)15日にサント・ドミンゴでマドゥーロ・ベネズエラ外相と会合を行う予定である。同会合において、本日、ベネズエラへの輸出を行っているコロンビアの企業家から伺った諸点等について意見交換を行い、その上で、チャベス大統領と会合を持つことになるであろう。
(3)ウリベ大統領のピニェラ・チリ大統領就任式出席
10~11日、ピニェラ大統領の就任式に出席するためチリを訪問したウリベ大統領は、11日の就任式を前に、10日、ピニェラ次期大統領と会談し、二国間関係等について意見交換を行った。
会談後、ウリベ大統領は、記者団に対し、ピニェラ新政権の成功を念願する旨表明するとともに、チリは、その堅固な制度をもってすれば、地震災害を早期に克服するであろう旨述べた。
一方、ピニェラ次期大統領は、テロ及び麻薬取引は、今世紀最大の敵であり、チリは強い意志をもって、テロ及び麻薬取引と戦い続けるとした上で、コロンビアは、引き続きチリからの支援及び連帯を得るであろう旨述べた。
(4)ベルムデス外相のニュージーランド及びオーストラリア訪問
15~19日、ベルムデス外相は、ニュージーランド及びオーストラリアを訪問し、両国の外相他と会談した。
(ア)ニュージーランド訪問
15~16日、ベルムデス外相はニュージーランド訪問し、McMully外相他と会談した。15日に行われた外相会談において、両外相は、二国間関係について意見交換を行った他、ベルムデス外相は、ニュージーランド政府が、FARCをテロリストに認定したことに謝意を表明した。また、両外相は、南太平洋における漁業資源の保存・管理に関する協定に署名した。
(イ)オーストラリア訪問
16~19日、ベルムデス外相は、オーストラリアを訪問し、スミス外相及びウィルソン教育相と会談した他、オーストラリア・ラ米企業家連合の代表等との会合を行った。17日に行われた外相会談において、両外相は、二国間関係について意見交換を行った他、コロンビアのAPEC加盟問題等についても話し合った。
会談後、ベルムデス外相は、「コロンビアのメッセージは非常にシンプルである。すなわち、我々はオーストラリアに接近することを望んでいるということである。そして、コロンビアは、アジア・太平洋地域の国であり、同地域を見ているということである」と述べた。
一方、スミス外相は、「コロンビアは、太平洋地域の経済であり、同地域との関係を緊密化するための重要な一歩として、オーストラリアとの関係を拡大するために働いている」と述べた。
(5)アリアス・コスタリカ大統領のコロンビア訪問
22~23日、コスタリカのアリアス大統領は、コロンビアを訪問し、ウリベ大統領と会談した他、カセレス上院議長、ゴメス下院議長、最高裁判所裁判官、モレーノ・ボゴタ市長とそれぞれ会談を行った。
首脳会談終了後、ウリベ大統領は、これまでの二国間関係緊密化への貢献、ラ米における国際貢献等を評価し、アリアス大統領にサン・カルロス勲章を授与した。
ウリベ大統領は、アリアス大統領に対し、二国間関係緊密化に向けた支援、地域における軍備拡張に対する戦い等に感謝を表明したのに対し、アリアス大統領は、コロンビアとともに世界平和を求めようと述べた。
(了)