コロンビア月例報告(4月分)

 

内政・外交状況

 

2010年 5月12日

在コロンビア日本大使館

(担当:菱山 聡)

直通:+57-1-317-4978

E-mailinfo@embjp-colomiba.com

 

Ⅰ.概要

【内政】

●12日までに9組の各党正副大統領候補が全国選挙委員会身上登録庁に登録手続きを行った。

●政府は,3月5日付書簡を通じて,FARCに和平協議に関する提案を行ったが,FARCは,同提案を拒否する書簡を公表した。

●最新の世論調査結果では,大統領選挙第1回投票におけるモックス候補の支持率が38.7%,サントス候補の支持率が26.7%で,決選投票におけるモックス候補の支持率が41.5%,サントス候補の支持率が29%であった。

 

【外交】

●6~7日,バレンズエラ米国務次官補(西半球問題担当)が,また,7~8日,フレイザー米南方司令軍司令官がコロンビアを訪問した他,14~15日,ゲイツ米国防長官がコロンビアを訪問し,ウリベ大統領他とそれぞれ会談した。

●ベルムデス外相は,5~7日,ロシアを訪問し,ラブロフ外相他と会談した他,26日,モロッコを,また,28~29日,イスラエルを訪問し,両国の外相他とそれぞれ会談した。

●18日,与党・国民統一党のサントス大統領候補(前国防相)が,2008年3月に行われたコロンビア空軍によるエクアドル領内のFARCキャンプ攻撃のオペレーションを誇りに思っていると発言したことに対し,25日,チャベス・ベネズエラ大統領は,サントス候補がコロンビアの次期大統領になった場合,地域に戦争を引き起こすであろう旨述べ,これに対し,26日,ウリベ大統領は,チャベス大統領の同発言を批判した。

●22日,ホンジュラスの大西洋側沖合で操業を行っていたコロンビアの大型漁船1隻と小型漁船2隻(23名のコロンビア人が乗船)が,ニカラグア当局によって拿捕されたが,5月5日,上記23名のコロンビア人は,ニカラグア当局によって釈放され,コロンビア空軍機で帰国した。

Ⅱ.内政

(1)各党正副大統領候補の登録

 3月14日に行われた保守党及び緑の党の大統領候補選出国民調査投票で大統領候補に選出されたサニン前駐英大使及びモックス緑の党共同党首が、4月5日までに全国選挙委員会身上登録庁に副大統領候補とともに候補者登録を行ったが、コロンビアのための市民運動のファハルド代表は、支持率低迷のため、同12日、大統領候補としての登録を取り消し、モックス緑の党共同党首の副大統領候補として全国選挙委員会身上登録庁に差し替え登録した。この結果、各党の正副大統領候補は以下の9組に確定した。

 

なお,コロンビアの選挙制度,6名の主要大統領候補の略歴及び主な選挙公約に関する資料を別添送付する。

 

(ア)国民統一党(「U」党)

-大統領候補:フアン・サントス同党党首(前国防相)

-副大統領候補:アンヘリーノ・ガルソン前寿府代大使

 

(イ)保守党

-大統領候補:ノエミ・サニン前駐英大使

-副大統領候補:ルイス・メヒーア元鉱山・エネルギー大臣

 

(ウ)緑の党

-大統領候補:アンタナス・モックス同党共同党首(元ボゴタ市長)

-副大統領候補:セルヒオ・ファハルド元メデジン市長

 

(エ)自由党

-大統領候補:ラファエル・パルド同党党首(元上院議員)

-副大統領候補:アニバル・ガビリア元アンティオキア県知事

 

(オ)急進改革党

-大統領候補:ヘルマン・バルガス・ジェラス同党党首(元上院議員)

-副大統領候補:エルサ・ノゲラ前バランキージャ市財政局長

 

(カ)PDA党

-大統領候補:グスタボ・ペトロ前上院議員

-副大統領候補:クララ・ロペス前ボゴタ市官房長

 

(キ)良心の声運動

-大統領候補:ロビンソン・デビア同運動代表

-副大統領候補:オルガ・タボルダ臨床心理学医

 

(ク)ASA運動

-大統領候補:ハイメ・アラウホ元憲法裁判所判事

-副大統領候補:アナ・カバル元バジェ・デル・カウカ県知事顧問

 

(ケ)自由解放運動

-大統領候補:ハイロ・カルデロン元ボゴタ市議会議員

-副大統領候補:ジョバニ・ブルバーノ同運動メンバー

 

(2)和平協議提案に関する政府の書簡に対するFARCの公開書簡

 パール和平高等弁務官が,FARC書記局に対して,和平協議を提案する3月5日付書簡を発出したのに対し,4月20日,FARCは,同5日にウリベ大統領が,ゲリラと対話を行うつもりはない旨明言したことを受けて,アンコール通信社(左派系の通信社)を通じて,同提案を拒否する以下の内容の返書を公開した。

(ア)我々は,1964年にマルケタリアで組織を立ち上げて以来,民主的共存について話し合うために常に政府との対話に関心を有している。

(イ)政府の書簡が,政権の任期が残り4ヶ月の時点になって初めて送付されてきたこと,また,我々が善意の証として,片務的に2人の兵士を解放するとともに,亡くなった兵士の遺骨を引き渡したにもかかわらず,同書簡受領後時を置かずして,大統領がゲリラとは対話を行わないと明確に述べたことは,残念である。

(ウ)FARCの扉は常に開かれており,我々は,政府が提案している和平協議はコロンビアにおいて公開で行うべきであるとの主張を改めて表明する。

 

(3)主要大統領候補に関する世論調査の推移

 27~29日に世論調査会社・DATEXCOが行った最新の世論調査の結果では,大統領選挙第1回投票におけるモックス候補の支持率が38.7%,サントス候補の支持率が26.7%で,決選投票におけるモックス候補の支持率が41.5%,サントス候補の支持率が29%であった。

 なお,国会議員選挙が行われた3月14日以降に当地の世論調査各社が行った主要大統領候補の支持率の推移は別紙のとおり。

 

Ⅲ.外交

(1)バレンズエラ米国務次官補のコロンビア訪問

(ア)6~7日、バレンズエラ米国務次官補(西半球問題担当)は、コロンビアを訪問し、6日、シルバ国防相及びバレンシア内務・司法相とそれぞれ会談を行い、7日、ウリベ大統領と会談を行った。また、7日、ロス・アンデス大学で「米・コロンビア関係」に関する講演を行った他、同日、カルタヘナで開催された中南米地域における世界経済フォーラムに出席した。

(イ)シルバ国防相との会談では、麻薬及びテロ対策に関する二国間協力等を中心に意見交換が行われた。会談後、バレンズエラ米国務次官補は、「我々は、コロンビアにおいて多くの成功が収められていることを非常に好意的に見ている。コロンビアの治安は、10年前のそれとは全く違ったものになっており、多くの分野で前進が見られる」と述べるとともに、「米国は、前進が見られる麻薬及びテロ対策の分野で、引き続きコロンビアと協働することにコミットしている。米国の対コロンビア協力の重点分野は若干変更されたが、我々は、民主的治安対策という戦略を強化するために、どのように引き続きコロンビアに協力を行っていくか検討しているところである」と述べた。

(ウ)バレンシア内務・司法相との会談では、両国間の司法協力、コロンビアの犯罪人の米国への引渡し等を中心に意見交換が行われた他、テロ防止センターの創設、コロンビアで人権侵害が深刻な16の村落を保護するための治安対策等についても話し合いが行われた。

(エ)ウリベ大統領との会談では、二国間関係強化に向けた取組み、対米FTAの議会での批准問題、麻薬及びテロ対策等について意見交換が行われた。

 

(2)フレイザー米南方司令軍司令官のコロンビア訪問

 7~8日、フレイザー米南方司令軍司令官は、コロンビアを訪問し、7日、ウリベ大統領と会談を行った他、8日、パディージャ国軍司令官と会談を行った。ウリベ大統領との会談にはシルバ国防相も同席したが、両国の国軍間の協力、両国が共通の関心を有する安全保障問題等について意見交換が行われた。

 

(3)ベルムデス外相のロシア訪問

(ア)5~7日、ベルムデス外相は、ロシアを訪問し、ラブロフ外相及びコノバロフ司法相と個別に会談した他、議会、商工会議所、モスクワ総主教管区の指導部等とそれぞれ会談を行った。

 なお、本年は両国間の外交関係樹立75周年に当たり、また、コロンビアの外相がロシアを訪問するのは18年振りである。

(イ)外相会談では二国間関係、国際社会における諸問題等について意見交換が行われた他、両政府間で、刑事問題に関する司法共助条約、体育及びスポーツにおける協力に関する覚書、並びに査証免除協定への署名が行われた。

(ウ)外相会談後、ラブロフ外相は、両国間の経済、貿易及び投資における協力を拡大し、共通のプロジェクトを前進させ、更に、両国の企業が必要とする支援を行うことに関心を有しているとした上で、両国における共通の関心分野として、原子力エネルギーの平和利用、エネルギー施設の建設、輸送インフラ及び銀行間の協力を挙げた。また、「我々は、ロシアと中南米の間の協力を深化させることについて意見交換を行った。我々は、実質的な内容を伴った、ロシアと中南米の関係を拡大し、深化させることに関心を有している」と述べた。

(エ)一方、ベルムデス外相は、「コロンビアは、ロシアとの有益な関係を促進させることに大きな関心を有している。我々は、ロシアの投資家を歓迎する」と述べるとともに、モスクワで起きた地下鉄テロ事件の関係で、ロシア政府及び国民に対し、連帯の意を表明した。

 

(4)ゲイツ米国防長官のコロンビア訪問

(ア)14~15日,米国のゲイツ国防長官は,コロンビアを訪問し,15日,ウリベ大統領及びシルバ国防相とそれぞれ会談した。ウリベ大統領との会談後,ウリベ大統領とゲイツ長官は共同記者会見を開いた。

(イ)同記者会見において,ゲイツ長官は,概要以下のとおり述べた。

①ここ数年の間に,コロンビアは,麻薬組織やパラミリタリーによる被害を受けていた国から南米における治安と繁栄の軸になりつつある国に著しい変革を遂げている。

②自分は,コロンビアが非合法武装勢力に対処するための人材育成,司法当局の努力及び誘拐対策に関するノウハウを(他国と)共有する用意がある旨表明していることに対し,コロンビアを祝福したい。我々は,これらの努力が中南米における安定を増していると考えている。

③コロンビアは,アフガニスタンへの軍隊の派遣を通じて,国際場裡において安全を輸出する国となっている。米国は,同派遣の手続きを迅速化するために必要な支援を行うことにコミットしている。

④自分は,ウリベ大統領及びシルバ国防相に対し,コロンビアの次期大統領が誰になろうと,コロンビアと緊密に協働するとの我々のコミットメントを伝えた。

(ウ)これに対し,ウリベ大統領は,概要以下のとおり述べた。

①本日,我々は,コロンビアを苦しめている麻薬テロと戦うとの共通のコミットメントを改めて表明する機会を得た。

②両国国民の支持を得た両国政府の行動は,そう遠くない将来,コロンビアが麻薬テロを克服したと世界に向けて言うことを可能にするであろう。

③我々は,まだ麻薬テロとの戦いに勝利を収めていないが,勝利を収めつつある。米国は,我々がコロンビアの新しい世代のために切望しているこの勝利を収めるための基本的な同盟国である。

(エ)先般,米国とブラジルの間で署名された軍事協力協定について,ゲイツ長官は,テロ,麻薬取引等の両国が直面している安全保障上の共通の脅威に対処するメカニズムに関するものであるとした上で,ブラジルとの協定が広く受け入れられていることに満足の意を表明した。

 これに対し,シルバ国防相は,コロンビア政府は同協定をポジティブに評価していると述べるとともに,米国とコロンビアが行っている協力は,地域の諸国にとって魅力的な枠組みになっているとの見方を示した。

(オ)また,懸案となっている対米FTAの米議会における批准問題について,シルバ国防相は,オバマ政権が同問題に高いプライオリティーを置いていることを好意的に見ている旨述べた。

 

(5)ベルムデス外相のモロッコ訪問

(ア)26日,ベルムデス外相は,モロッコを訪問し,Fassi外相,Znagui観光相,Maazouz通商相,Radi下院議長,Chaikh上院議長及びモロッコ企業連盟代表とそれぞれ会談した。

(イ)外相会談後,ベルムデス外相は,「今回のモロッコ訪問は,アフリカ及び地中海地域で最も重要な地域であるマグレブにおいて,関係を多様化し,市場を拡大するための機会であり,また,貿易,投資,技術・科学協力,教育,文化及び環境等の二国間のアジェンダを発展させ,深化させることを可能にするものである」と述べた。

(ウ)一方,モロッコ外務省は,「モロッコは,コロンビアをラ米における重要な同盟国として,コロンビアとの関係を強化することに強い関心を有している。それ故に,Fassi外相は,コロンビアの外相をモロッコに招待した」旨のプレスリリースを発表し,また,Fassi外相は,コロンビアでは治安の改善及び経済の安定が見られるとした上で,バイ及びマルチの文脈における両国関係をポジティブに評価した。

 

(6)ベルムデス外相のイスラエル訪問

(ア)28~29日,ベルムデス外相は,ビジェガス全国企業家連盟総裁等とともに,イスラエルを訪問し,28日,ペレス大統領及びベン・エリエゼル産業貿易相との会談,29日,リーベルマン外相及びイスラエルの企業家との会談をそれぞれ行った。

(イ)ペレス大統領との会談では,イノベーション及び起業プロジェクトを含む,二国間関係全般について意見交換が行われた。会談後,ベルムデス外相は,「イスラエルは,起業及びイノベーションの大国であり,コロンビアも(そうなるための)大きな可能性を有している」と述べた。

(ウ)リーベルマン外相との会談では,主に投資保護協定交渉開始に向けた意見交換が行われた。なお,リーベルマン外相は,昨年7月コロンビアを訪問した際に,ベルムデス外相との間で両国の貿易関係強化のための合意議事録に署名している。

 

(7)チャベス大統領のサントス大統領候補批判

 18日,与党・国民統一党のサントス大統領候補(前国防相)が,2008年3月に行われたコロンビア空軍によるエクアドル領内のFARCキャンプ攻撃のオペレーションを誇りに思っていると発言したことに対し,25日,チャベス・ベネズエラ大統領は,サントス候補がコロンビアの次期大統領になった場合,米国の指示に従って,地域に戦争を引き起こすであろう旨述べた。

 これに対し,26日,ウリベ大統領は,外国政府が,戦争が勃発するとの脅迫の下で,コロンビア人に次期大統領を選出するための政治的自由意思を強要しようとするのは侮辱行為であるとして,チャベス大統領の同発言を批判した。

 なお,サントス候補は,次期大統領になった場合,ベネズエラとの関係を正常化したい旨発言している。

 

(8)ニカラグア当局によるコロンビア漁船の拿捕

 22日,ホンジュラスの大西洋側沖合で操業を行っていたコロンビアの大型漁船1隻と小型漁船2隻(23名のコロンビア人が乗船)が,ニカラグア当局によって拿捕され,ブルーフィールズに連行された。

 これに対し,26日,コロンビア外務省は,ニカラグア政府に抗議文を提出し,ニカラグア当局によるコロンビア漁船の拿捕は国際法違反であるとした上で,拿捕されたコロンビア人の即時釈放と漁船の返還を要請したが,同拿捕がコロンビアの領域内で行われたか否かについては調査するとしている。

 なお,5月5日,ニカラグア当局によって拿捕された23名のコロンビア人は,釈放され,コロンビア空軍機で帰国した。

(了)