コロンビア月例報告(7月分)

 

内政・外交状況

 

2010年 8月25日

在コロンビア日本大使館

Ⅰ.概要

【内政】

●20日,新国会が開会し,新しい上院議長及び下院議長を選出。

●サントス次期大統領が,新閣僚をそれぞれ指名。

●26日,シルバ国防相が,国軍の新首脳部を任命。

●30日,FARCが,和平対話の提案を行うビデオを発出。

 

【外交】

●サントス次期大統領は,1~9日,英国,独,仏及び西を訪問し,また,19~30日,エクアドル,メキシコ,パナマ,コスタリカ,チリ,アルゼンチン,ペルー,ドミニカ(共)及びハイチを訪問。

●8日,Al Husseinヨルダン王女がコロンビアを訪問。

●13~17日,ベルムデス外相が上海万博のコロンビアのナショナル・デー関連行事に出席。

●23日,コロンビア政府は,22日のチャベス大統領の外交関係断絶発言に対する声明を発表。

 

Ⅱ.内政

(1)国会の開会及び両院議長の選出

 20日,新たに選出された国会議員による国会が開会され,ベネデッティ上院議員(国民統一党)が上院議長に,また,スルアガ下院議員(保守党)が下院議長に選出された(いずれも任期は1年)。

 

(2)サントス次期大統領による閣僚の指名

 サントス次期大統領は,6月20日の大統領選挙・決選投票で次期大統領に選出された後,新閣僚をそれぞれ指名したところ,閣僚名簿を別添する。

 

(3)国軍首脳部の交代

 サントス新政権の発足に先立ち,26日,シルバ国防相は,国軍の新首脳部を公表した。国軍司令官にはセリ海軍副司令官が任命されるとともに,陸軍司令官にはナバス陸軍中将が,海軍司令官にはエチャンディア海軍中将が,また,空軍司令官にはゴンサレス空軍中将がそれぞれ任命された。新首脳部は8月6日に就任する。

 なお,ナランホ国家警察長官は留任する。

 

(4)FARCによる和平対話の提案

ア 30日,FARCは,左派系通信社・ANNCOLに対し,コロンビアのサントス次期大統領,コロンビア及び南米諸国連合加盟国に向けたアルフォンソ・カノ司令官のメッセージを含む36分間のビデオを発出し,同メッセージの中でサントス次期大統領に対話を呼びかける発言を行った。

 同ビデオは,7月に撮影されたものであるが,アルフォンソ・カノがANNCOL上で自らの映像を公表するのは昨年11月以来である。

 

イ 同メッセージの中で,アルフォンソ・カノは,ウリベ大統領のネオリベラリズム的な経済政策,民主的治安対策等に対する批判を行うとともに,国軍のFARCに対する攻勢によって,FARCは終焉を迎えているわけではないとした上で,サントス次期大統領に対し,「対話を行おうではないか。我々は,新政権が,(対話を行うことについて)考慮することを希望している。我々の国が,現在直面している酷い状況を克服するための可能性は,間違いなく,対話,政治的提案及び外交を通じて模索されなければならない」と述べ,同対話で行うテーマとして,対米軍事協力取極,農地改革,政治制度,経済モデル及び人権(国際人道法を含む)の5つのテーマに言及した。

 

Ⅲ.外交

(1)サントス次期大統領の欧州・ラ米諸国訪問

 1~9日,サントス次期大統領は,英国,独,仏及び西を訪問し,英国では,キャメロン首相,サッチャー元首相と,独ではメルケル首相と,仏ではサルコジ大統領と会談した他,西ではフアン・カルロス国王,サパテロ首相,野党関係者等と会談を行った。

 また,19~29日,サントス次期大統領は,エクアドル,メキシコ,パナマ,コスタリカ,チリ,アルゼンチン,ペルー及びドミニカ(共)を訪問し,各国の大統領と会談を行った他,30日,ハイチを訪問し,プレバル大統領と会談を行うとともに,本年1月に発生した大地震による被災地の復興状況を視察した。

 

(2)ヨルダン王女のコロンビア訪問

 8日,国際乗馬連盟会長でもあるAl Husseinヨルダン王女は,コロンビア乗馬連盟の招待によりコロンビアを訪問し,サントス副大統領,モレーノ・ボゴタ市長,カマルゴ・コロンビア乗馬連盟会長等とそれぞれ会談を行った。

 

(3)ベルムデス外相の上海万博出席

 13~17日,ベルムデス外相は,上海を訪問し,上海万博のコロンビアのナショナル・デー関連行事に出席した他,呉海龍外交部国際司長等と会談を行った。

 

(4)ベネズエラによる外交関係断絶発言に対するコロンビアの反応

 22日にチャベス・ベネズエラ大統領が,コロンビアとの外交関係を断絶する旨表明したのに対し,23日,コロンビア外務省は,ベルムデス外相名で概要以下の声明を発出した。

 「ベネズエラとの関係で,幾つかの国や組織が,仲介の提案を申し出ていることに関して,コロンビア政府としての立場を以下の通り明らかにしたい。コロンビアは,我々が提起した根本的な問題に対して,ベネズエラから回答を得ていないと考えている。我が国が提起した訴えに対して,ベネズエラの回答は外交関係の断絶であった。対話の仲介の申し出に対して,以下の点を指摘したい。

 

ア コロンビアは常に直接対話の窓口を開いていたし,今でも開いている。

 

イ 必要なときにはベネズエラ政府との対話の窓口を維持してきている。

 

ウ これまで第三国の仲介を依頼し,受け入れてきた。重要な出来事があった時点で,コロンビアはスペインやキューバに仲介を依頼した。カンクンの会合以降も,ベネズエラとコロンビアの大統領が,本件について第三国の仲介を受け入れた。それ故,ドミニカ共和国のフェルナンデス大統領がコロンビアを訪問し,ベネズエラとの国境に滞在した。コロンビアはその仲介を受け入れ,推進した。にもかかわらず,その仲介は,翌日になってベネズエラ政府によって拒否された。

 

エ これら全ての便宜,仲介,直接対話は,成果をもたらすことはなかった。それ故にコロンビアは,本件を関係国際機関に訴えた。我々が必要としているのは,テロリストの正体を明らかにし,テロに対する戦いにおいて有効な協力関係を築き,この問題を根本から解決するための手立て,メカニズムであることを明らかにしておきたい。」

 

(5)ベルムデス外相の南米諸国連合首脳会合出席

ア 29日,エクアドルのキトにおいて,コロンビアとベネズエラの外交関係断絶の問題について議論するために南米諸国連合外相会合が開催された。同会合において,マドゥーロ・ベネズエラ外相が,コロンビアの和平プロセスを求めるとともに,ウリベ大統領は,ベネズエラを攻撃する意図を有していると非難したのに対し,ベルムデス外相は,FARCがベネズエラにおいて同国の政府と共存することを回避するための特定のメカニズムを創設する必要がある旨主張するとともに,コロンビアは,ベネズエラを攻撃することを考えたことはなく,今後もそのようなことを考えることはないであろうと述べ,両外相の主張は平行線を辿った。

 

イ この結果,コロンビアとベネズエラの関係修復に向けた試みは失敗に帰したが,同会合のホストを務めたパティーニョ・エクアドル外相は,会合後,同問題についてより高いレベルでの議論を行うために南米諸国連合首脳会合を開催する予定である旨述べた。

 

ウ なお,両国関係修復の仲介役を買って出ているルーラ伯大統領が,同問題は,チャベス大統領とウリベ大統領の個人的な問題であるという趣旨の発言を行ったことに対し,ウリベ大統領は,コロンビアにおけるFARCの存在が,コロンビアのみならず,大陸にとっての脅威になっていることを無視する形で同発言を行ったことは残念である旨述べたが,これに対し,ルーラ大統領は,ウリベ大統領の同発言に関してコメントを行うことはせず,コロンビアとベネズエラの関係修復に向け,両国政府との対話を行う用意がある旨述べた。

(了)