コロンビア月例報告(9月分)

 

内政・外交状況

 

2010年10月12日

在コロンビア日本大使館

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Ⅰ.概要

【内政】

●8月末~9月初にギャラップ社が行った世論調査では,サントス大統領の支持率は64%で,サントス大統領の業績を評価するとの回答が74%であった。

●23日,国軍の共同軍事作戦により,FARCナンバー2で,軍事作戦の最高責任者の「モノ・ホホイ」が死亡。

●28日,FARCは,「モノ・ホホイ」の後任として,「パストール・アラペ」が書記局の新たなメンバーになった旨のコミュニケを発出。

●27日,オルドニェス行政監察官は,自由党のピエダ・コルドバ上院議員が,FARCの活動を促進し,同活動に協力したとして,同上院議員を罷免。

 

【外交】

●1~2日,サントス大統領は,就任後の最初の外国訪問先として,ブラジルを公式訪問し,ルーラ大統領他と会談した。

●6日,中国の梁光烈・国防相は,コロンビアを訪問し,リベラ国防相と会談した他,サントス大統領への表敬訪問を行った。

●15日,米国務省は,コロンビアの人権状況が改善しているとの内容の報告書を発出。

●17日,オルギン外相は,コロンビアを訪問したパティーニョ外相と会談し,南米諸国連合設立条約のコロンビアにおける批准等について協議した。

●22~24日,サントス大統領はニューヨークを訪問し,24日,国連総会において一般討論演説を行い,また,オバマ米大統領と会談を行った。

●23日,国連総会出席のためニューヨークを訪問した前原外相は,オルギン外相と会談を行った。

●30日,サントス大統領は,エクアドル情勢に関する声明を発表し,同情勢に関する南米諸国連合臨時首脳会合に出席した。

 

Ⅱ.内政

1 世論調査結果

 7日,当地世論調査会社ギャラップが8月25日~9月2日に全国の18歳以上の男女1,200名を対象に行った世論調査の結果が公表された。同結果によれば,サントス大統領の支持率は64%で,サントス大統領の業績を評価するとの回答が74%であった。

 

2 国軍軍事作戦によるFARCナンバー2「モノ・ホホイ」の死亡

(1)23日,コロンビア南部のラ・マカレナ市(メタ県)及びサン・ビセンテ・デ・カグアン(カケタ県)間で実施された国軍及び警察情報機関の共同軍事作戦により,FARCナンバー2で,軍事作戦の最高責任者の「モノ・ホホイ」が死亡した。航空機60機及び400名の兵士が投入された同作戦は2日前から行われ,「モノ・ホホイ」の他に,20~30名のFARC構成員が死亡した模様。

(2)国連総会出席のためニューヨークに滞在中のサントス大統領は,「モノ・ホホイ」の死亡について,「コロンビアの恐怖の象徴が死亡した。これにより,FARCは歴史上最も大きな打撃を受けた。「ラウル・レジェス(2008年3月に国軍の攻撃で死亡した当時のFARCのナンバー2。サントス大統領は当時国防大臣として同作戦を指揮)」の死よりも打撃が大きい。「モノ・ホホイ」はFARCの恐怖を代表していた。」と述べた。

 

3 「モノ・ホホイ」の死亡に関するFARCのコミュニケ発出

(1)28日,FARCは,23日に国軍の軍事作戦により死亡した「モノ・ホホイ」の後任として,マグダレーナ川流域を管轄する戦線の司令官の「パストール・アラペ」が書記局の新たなメンバーになった旨のコミュニケを発出した。「パストール・アラペ」の本名は,ホセ・リサンドロ・ラスカロで,2008年3月のマルランダ最高司令官死亡後,書記局のメンバー代行になっていた。書記局内では,「イバン・マルケス」に近いと見られている。

 なお,「パストール・アラペ」は,これまで保守党の政治家ムスタファ氏の殺害,警察施設の攻撃,誘拐等の容疑でコロンビアの司法当局から起訴されている他,インターポールからも国際指名手配されている。

(2)また,同コミュニケは,「モノ・ホホイ」が司令官を務めていた東部師団は,ホルヘ・ブリセーニョ司令官師団に名称を変え,「マウリシオ・ハラミージョ」が同師団の司令官になったとしている。「マウリシオ・ハラミージョ」は,軍事部門の戦略家ではないが,FARCのイデオローグと見られており,書記局のメンバー代行であった人物である。

 

4 コルドバ自由党上院議員の罷免

(1)27日,オルドニェス行政監察官は,自由党のピエダ・コルドバ上院議員が,上院議員としての立場を利用して,法律の枠外でFARCの活動を促進し,同活動に協力したとして,同上院議員を罷免するとともに,今後18年間公職に就くことを禁止する旨の決定を行った。FARCとの緊密な関係を理由に国会議員が罷免されるのは今回が初めてである。

(2)同決定の中で,コルドバ上院議員とFARCの関係について,オルドニェス行政監察官は,同上院議員が,「テオドラ・ボリーバル」との別名を使い,FARCと頻繁にメールのやり取りを行っていたことが,2008年3月に押収されたラウル・レジェス(当時FARCナンバー2)のパソコン内の情報から明らかになっており,同上院議員は,FARCに人質の一方的解放や人道的人質交換を行うよう助言したのではなく,人質の生存証明を上手く利用するよう指示していたとしている。

(3)これに対して,コルドバ上院議員は,同議員の弁護士が,今般の行政監察官の決定の法的側面について分析を行い,見解を表明するであろうとしつつも,同決定のプロセスは,証拠に基づいたものではなく,法的根拠も有していないと述べるとともに,同決定は同上院議員に対する政治的迫害であると述べた。

 なお,コルドバ上院議員は,今般の決定に対して行政監察官に異議申し立てを行うことが可能であるが,これまで異議申し立てによって行政監察官の決定が覆ったケースはほとんどない。

 

Ⅲ.外交

1 サントス大統領のブラジル訪問

(1)1~2日,サントス大統領は,オルギン外相,リベラ国防相,ディアス-グラナドス商工観光相等を帯同し,就任後の最初の外国訪問先として,ブラジルを公式訪問した。1日,サントス大統領は,ルーラ大統領と会談し,安全保障,両国間の協力,貿易等を中心に意見交換を行った。会談後,両国政府間で8つの合意文書への署名が行われた。また,サントス大統領は,サルネイ上院議長,ペルソ最高裁長官,ジョビン国防相及びジルマ大統領候補とそれぞれ会談を行った。

(2)また,2日,サントス大統領は,サンパウロを訪問し,ゴールドマン・サンパウロ州知事,ブラジルの企業家,セーハ大統領候補及びシルバ大統領候補とそれぞれ会談した他,サンパウロ在住のコロンビア人との会合を行った。

 

2 中国国防相のコロンビア訪問

(1)6日,中国の梁光烈・国防相は,両国の国民及び国防省間の良好な関係を再確認するためにコロンビアを訪問し,リベラ国防相と会談した他,サントス大統領への表敬訪問を行った。中国の国防相がコロンビアを訪問するのは,今回が初めてである。

(2)会談において,両国防相は,国際の平和と安全に資する安全保障及び国防分野において協力していくことを確認した他,梁光烈・国防相は,10人のコロンビアの将校を中国の軍人養成コースに招待したのに対し,リベラ国防相は,狙撃,戦闘時の潜水技術,河川における戦闘技術等の専門家を中国に派遣する旨述べた。

(3)また,同会談において,両国防相間で,中国の対コロンビア無償軍事援助に関する協定への署名が行われた。同援助は,兵站用軍事装備購入のための800万元(約100万ドル)の対コロンビア援助を含むものである。

 

3 米国務省によるコロンビア人権状況報告書の発出

(1)15日,米国務省は,「コロンビアは,米議会によって設けられた人権に関するクライテリアを満たしつつある」として,コロンビアの人権状況が改善しているとの内容の報告書を発出した。なお,同報告書発出の有無は,米国の対コロンビア軍事援助の15%(3,030万ドル)のディスバースとタイドになっているものである。

(2)他方で,同報告書は,大統領府治安庁(DAS)による違法盗聴問題,最高裁による検事総長未選出問題,国軍による戦果の偽装問題等の問題への懸念を表明しており,これらの問題は今後の報告書の内容に影響を与える可能性があるとしている。

(3)同報告書が発出されたことについて,同日,サントス大統領は,「(同報告書は,)これまでのコロンビア政府の努力を認識するものであり,ポジティブで,バランスの取れたものである。」と述べた。また,リベラ国防相は,司法手続きを経ない処罰を巡る問題に関する調査を加速化させるために,検察庁とともに専門家委員会を設置する旨述べた。

 

4 エクアドル外相のコロンビア訪問

(1)17日,オルギン外相は,コロンビアを訪問したパティーニョ外相と外務省において会談した。同会談において,両外相は,南米諸国連合(UNASUR)設立条約のコロンビアにおける批准について協議し,オルギン外相は,政府としては批准に向けてできるだけの努力をしていく旨述べた。

(2)オルギン外相は,「コロンビア政府は,UNASUR設立条約の重要性,南米との地域統合の重要性を理解しており,できるだけ早く国会の批准が得られるように,そしてできるだけ早く憲法裁判所の合憲判断が得られるように,そしてできるだけ早くコロンビアがUNASURの正式メンバーとして活動できるよう努力する。」と約束した。

(3)また,オルギン外相は現在両国の関係が良好であることを強調し、10月キトを訪問すると述べた。

 

5 第65回国連総会におけるサントス大統領の一般討論演説

 24日,ニューヨークを訪問したサントス大統領は,第65回国連総会において一般討論演説を行ったところ,概要以下のとおり。

 

(1)我々は,国連が,その改革プロセスにおいて,創設時の原則を実現し,より効率的な国際協力のシステムを実現するために効率性及び透明性の基準を取り入れることを支持する。こうした観点から,本日,自分は,この国連総会の場において,コロンビアが安保理非常任理事国(任期:2011~2012年)になることを希望する旨表明する。我々は,我々の地域にとって非常に特別なこの時期に,安保理におけるラ米・カリブの声になることを希望している。

(2)ラ米諸国は,経済,環境,安全保障及び発展の分野において,グローバルなリーダーシップを発揮し始めている。我々の地域は,多くの若い人口,多くの労働力,世界の旅行者及び投資家を魅了する都市及び天然資源,並びに豊富な環境資源を有している。

(3)我々は,森林破壊等による二酸化炭素排出を削減するための国際的なイニシアティブを支持する。我々は,先進工業国をはじめとする全ての国が二酸化炭素削減にコミットする,京都議定書に替わる新たな合意を求める。

(4)自分は,安保理に対して,現在ハイチで活動している平和維持のためのオペレーションをハイチ人のニーズに応え,具体的な成果を出す真の発展のためのオペレーションに転換することを検討するよう呼びかける。

(5)我々は,麻薬取引との戦いで多くの成果を収めてきており,また,ゲリラ・グループを含む,麻薬取引を行うマフィアに決定的な打撃を与えてきた。昨日は,国軍の軍事作戦によりFARCの軍事部門の最高責任者が死亡したニュースを世界に発表した。我々は,理性によるか,武力によるかを問わず,和平を実現することを望んでいる。

(6)我々は,コロンビアにおける麻薬取引に対する相対的な成功が,地域の他国における麻薬取引の増加を意味することを懸念している。我々は,我々の協力を必要とする国に対して,今まで以上に協力を行う用意がある。そして既に我々は,中米及びカリブの幾つかの国,メキシコのみならず,アフガニスタンに対しても同協力を行っている。

 

6 ニューヨークにおける日・コロンビア外相会談

 23日,第65回国連総会出席のためニューヨークを訪問した前原外相は,国連内の二国間会談ブースにおいて,オルギン外相と会談を行った。同会談において,両外相は,二国間関係,国際場裡における協力等について意見交換を行った。

 

7 ニューヨークにおける米・コロンビア首脳会談

 24日,第65回国連総会出席のためニューヨークを訪問したサントス大統領は,ウォルドーフ・アストリア・ホテル内の会議室においてオバマ米大統領と会談を行った。同会談において,両大統領は,両国間に真のパートナーシップを構築することに合意するとともに,どのようにしてプラン・コロンビアを地域を支援するイニシアティブに進化させるか,対米FTAの米議会における批准問題等について意見交換を行った他,オバマ大統領はサントス大統領に対し,コロンビアがベネズエラとの外交関係を再開したことを歓迎する旨述べた。

 

8 リベラ国防相の韓国訪問

 25~30日,リベラ国防相は,ナバス陸軍司令官等とともに,朝鮮戦争60周年記念式典に出席するため韓国を訪問し,26日に金国防相と会談した他,コロンビアに協力をオファーしている韓国政府機関等を訪問した。国防相会談において,両国防相は,両国間の科学・技術データの交換,科学者・技術者の交流及び研究・開発分野の協力に関する協定に署名した。

 

9 エクアドル情勢に関するサントス大統領の声明等

(1)30日,サントス大統領は,エクアドル情勢に関して,概要以下の声明を発表した。

(ア)コロンビアは,伝統的に民主主義を尊重しており,国家の民主的及び制度的秩序を変更し,或いは危険に晒すいかなる企ても非難する。我々は,エクアドルで起きているクーデターの企てを強く,明確に,そして決定的に非難する。

(イ)我々は,憲法に基づいて,民主的にエクアドル国民によって選出されたコレア大統領への全面的支持を表明する。

(ウ)本日(30日)午前,自分は,アルゼンチンのフェルナンデス大統領と連絡を取り,我々は,南米諸国連合臨時首脳会合を開催することに合意した。

(エ)自分は,外相とともに同会合に出席するため間もなくブエノスアイレスに向け出発する。

(オ)また,自分は,ペルーのガルシア大統領とも連絡を取り,我々は,コレア大統領及びエクアドルの民主主義に対する連帯の政治的意志として,エクアドルと両国の国境を閉鎖することを決定した。

(カ)自分は,コレア大統領と直接電話で話をし,コロンビア国民,コロンビア政府及び自分の名において,我々からの全面的な支持及び連帯の意を伝えた。

(キ)我々は,この状況が早期に平和的結末を見出すことを期待している。

(2)また,サントス大統領は,10月1日未明にアルゼンチンで開催された南米諸国連合臨時首脳会合に出席し,同会合では,エクアドルにおけるクーデターの企て及びコレア大統領の幽閉を強く非難するとともに,その後の同国における制度的及び民主的秩序の回復を祝福する旨の首脳宣言が発出されたが,同会合終了後,概要以下の発言を行った。

(ア)強調しなければならない重要なことは,南米諸国が民主主義を擁護するために団結したことである。幸いコレア大統領は,新たに権力を行使しており,我々は,今般の事態がポジティブな結末を迎えたことを祝福する。

(イ)カナダからアルゼンチンまでの全ての地域諸国が,早急に,かつ決定的な形で民主的秩序を擁護する反応を示したことは,国家の民主的秩序の変更に対する警告であり,非常に明確,かつポジティブなシグナルである。

(了)