コロンビア月例報告(10月分)

 

内政・外交状況

 

2010年11月16日

Ⅰ.概要

【内政】

●4日,サントス大統領は,警察官の2万人増員等の新たな治安対策を発表。

●4日,行政監察監は,モレーノ前大統領府事務総長等に対して,DASによる違法盗聴疑惑への関与で公職就任禁止措置を決定。

●7日に公表されたギャラップ社の世論調査によれば,サントス大統領の支持率は76%,サントス大統領の業績を評価するとの回答は82%。

●20日,2011年予算案が国会で可決承認。

●20日,サントス大統領は,土地返還計画を発表。

●20日,ボゴタ高等裁判所が,違法盗聴問題でDAS元傍聴局長に有罪判決。

●24日のボリーバル県知事補欠選挙でベルナル元カルタヘナ市議会議員が当選。

●27日,自由党のコルドバ上院議員の罷免が確定。

 

【外交】

●7日,マドゥーロ・ベネズエラ外相が訪「コ」し,オルギン外相と会談。

●12日の国連安保理非常任理事国選挙でコロンビアが当選。

●24~25日,スタインバーグ米国務副長官等が訪「コ」し,政策対話を実施。

●26日,カルタヘナで第12回トゥクストゥラ対話及び協議メカニズムサミット開催。

●27日,「コ」政府は,キルチネル前亜大統領の逝去に関するコミュニケを発出。

●28日,サントス大統領は,キルチネル前大統領の通夜に参列。

●28日,バルガス・ジェラス内務・法務相は,キトで開催された世界の麻薬問題に関する南米諸国連合閣僚会合に出席。

●29日,チリ人のFARC協力者がテロ資金調達等の容疑でサンティアゴで逮捕。

 

Ⅱ.内政

1 FARC情勢(「モノ・ホホイ」のメール)

 9月23日の「モノ・ホホイ」を死亡させた国軍の共同軍事作戦後,「モノ・ホホイ」の隠れ家から押収されたパソコン内の情報の一部が,2日,サントス大統領によって公表された。公表された情報は,「モノ・ホホイ」が8月13日にFARC書記局に送ったメールで,同メールは,8月12日にボゴタ首都区で起きた爆弾テロ事件をサントス政権の基盤を揺るがすものとして称賛していること,キューバ人やチャベス大統領は,FARCが権力を奪取し,自立的な政権運営を行うための路線を目指していることを快く思っておらず,敵(注:米帝国,オリガルキー)のイデオロギー闘争においてFARCと戦うために彼らは団結する可能性があること等を主な内容とするものである。

 

 

2 新たな治安対策の発表

 4日,サントス大統領は,民主的治安対策を補完するものとして,2万人の警察官の増員,非合法武装勢力に属していること等を犯罪とすること等を定めた刑法改正,逮捕令状等の有効期限の廃止等を定めた刑事訴訟法改正,21歳未満の犯罪者でも刑務所に服役すること等を定めた青少年法改正等からなる新たな治安対策を発表した。政府は,5日,警察官の増員等に関する国家警察法改正法案及び刑法改正法案等の一連の法案を国会に提出した。

 

3 行政監察監によるモレーノ前大統領事務総長等の公職就任禁止措置

 4日,行政監察監は,モレーノ前大統領府事務総長(ウリベ前大統領の側近の一人)が,麻薬取引関係者と最高裁判事の関係を調査するために,麻薬取引関係者との関係が取り沙汰されている企業家,レジェス氏が最高裁判事に資金提供を行ったり,チャーター機を提供した事実がないか調査するよう大統領府治安局(DAS)に要請したとして,越権行為でモレーノ前事務総長に対して,今後18年間公職に就くことを禁止する旨の決定を行った。

 また,同日,行政監察監は,最高裁判事,国会議員,マスコミ関係者等の違法盗聴等に関与したとして,ウルタード元DAS長官等に対しても,今後一定期間公職に就くことを禁止する旨の決定を行った。

 

4 世論調査

 7日,当地世論調査会社ギャラップが9月24日~10月2日に全国の18歳以上の男女1,200名を対象に行った世論調査の結果が公表された。同結果によれば,サントス大統領の支持率は76%(前回調査時:64%)で,サントス大統領の業績を評価するとの回答が82%(前回調査時:74%)であった。サントス大統領の支持率及び業績の評価が改善した理由について,ギャラップ社のロンドーニョ社長は,先般国軍が共同軍事作戦でFARCナンバー2の「モノ・ホホイ」を死亡させたこと,ベネズエラ及びエクアドルとの関係が改善していること,コロンビア経済が良くなっていること等を挙げている。

 

5 国会における2011年予算案の可決・成立

 20日,2011年予算案「マクロ経済の安定化に向けて」が,国会で可決承認された。予算総額は147.3兆ペソであり,政府の当初案と比べ,投資的経費を24.7兆ペソから28.7兆ペソに増加させた他は,ほぼ同じ内容となった。また,これにより,政府の財政赤字は当初案のGDP比3.9%から同4.1%へと拡大した。分野別では,治安対策費が予算の16%を占め,昨年同様最も割当の多い分野となった。

 

6 土地返還計画の発表

 非合法武装勢力等による脅威等で自らの土地を追われた農民にその土地を返還するための土地返還法案は,9月7日政府によって国会に提出され,その後同じく政府によって国会に提出された犠牲者補償法案と統合され,一本化されることになったが,国会における同法案の成立を前に,20日,サントス大統領は,返還すべき土地や土地の所有者等が既に確定しているケースに関する土地返還計画(plan de choque。全体で31.2万ヘクタールの土地が約13万の農家に返還されるもの)を発表し,同計画を来年4月までに実施する旨述べた。同計画の主な概要は以下のとおり。

(1)マグダレナ県,ボリーバル県,ノルテ・デ・サンタンデール県,トリマ県,アンティオキア県及びセサル県において,非合法武装勢力による脅威で自らの土地を追われた農民の土地の所有権を回復する。これにより,220の農家に合計6,000ヘクタール以上の土地を返還する。この土地返還プロセスには,OAS,UNHCHR等の国際機関も関与している。

(2)地方自治体等が所有していた2,631の未使用地及び国家農業基金が所有していた592の未使用地の土地所有権を確定する。これにより,3,223の農家に合計21,000ヘクタール以上の土地の所有権が付与されることになる。

(3)(麻薬取引関係者等から没収したことに伴い,)所有権がなくなった土地を一旦コロンビア地方開発庁に移転し,その土地を農家に供与する。これは国家麻薬局及びコロンビア地方開発庁が共同で行っている計画である。これにより,1,300農家が,約19,500ヘクタールの土地を受け取ることになる。

(4)23の先住民コミュニティーに21の先住民コミュニティーを加え,新たな先住民コミュニティーを創設する。また,チョコ県,バジェ・デル・カウカ県及びボリーバル県における7つの黒人コミュニティーの土地所有権を認め,地券を交付する。これにより,21,600の先住民及び黒人の家族が,252,000ヘクタールの土地を所有することになる。

(5)非合法武装勢力から取り戻したロス・モンテス・デ・マリア地域(ボリーバル県及びスクレ県に所在)を農村開発のためのモデル地域にする。これにより,82,000以上の農家が裨益することになる。

 

7 違法盗聴問題に関与したDAS元防諜局長への有罪判決

 20日,ボゴタ高等裁判所は,大統領府治安庁(DAS)のホルヘ・ラゴス元防諜局長に対して,最高裁判事,コルドバ上院議員(自由党)及びペトロ上院議員(PDA党)に対する違法盗聴等を指揮し,調整した容疑で懲役8年の有罪判決を言い渡した。DASによる違法盗聴問題で有罪判決が下されるのは今回が初めて。

 

8 ボリーバル県知事補欠選挙

 5月に行政監察監が,県知事としての職務不履行等を理由にホアコ・ベリオ・ボリーバル県知事を罷免するとともに,今後12年間公職に就くことを禁止する旨の決定を行ったことに伴い,24日,ボリーバル県知事補欠選挙が行われ,5名の候補の中で,最多票を獲得したアルベルト・ベルナル元カルタヘナ・デ・インディアス市議会議員(国民統一党)が当選した。ベルナル新知事の任期は2011年12月31日まで。

 

9 コルドバ上院議員の罷免

 9月27日,オルドニェス行政監察統括官は,自由党のピエダ・コルドバ上院議員が,上院議員としての立場を利用して,法律の枠外でFARCの活動を促進し,同活動に協力したとして,同上院議員を罷免するとともに,今後18年間公職に就くことを禁止する旨の決定を行ったが,27日,同統括官は,コルドバ上院議員による異議申し立てを退ける決定を行った。この結果,コルドバ上院議員は,失職し,11月3日,後任に同じく自由党のリディオ・ガルシア氏が上院議員に就任した。

 

Ⅲ.外交

1 マドゥーロ・ベネズエラ外相のコロンビア訪問

(1)7日,オルギン外相は,ノルテ・デ・サンタンデール県ククタ市を訪問したマドゥーロ・ベネズエラ外相と会談を行い,8月20日の外相会談で合意された5つの作業委員会のアジェンダのフォローアップを行った。同会談には,コロンビア側からリベラ国防相,ディアス・グラナドス商工観光相,ロダド鉱山・エネルギー相等が同席した。

(2)同会談において,麻薬取引に対する二国間の協力を強化するために,1994年の二国間協定に代わる,新たな協定について交渉することが合意された他,ベネズエラのアンデス共同体脱退に伴う,新たな二国間の経済補完協定に関する交渉については,11月8~12日に行うことが合意された。

(3)また,国境地域におけるインフラ事業については,コロンビア側の国境地域にベネズエラの燃料を供給するための戦略が合意された他,ティエンディタス橋建設等,ノルテ・デ・サンタンデール県とベネズエラのタチラ州間の4つのインフラ計画,両国間のガスパイプライン敷設計画,サン・フェルナンド・デ・アタバポ(ベネズエラ・アマソナス州)とプエルト・イニリダ(コロンビア・グアイニア県)間の電力供給網敷設計画等について話し合いが行われた。

(4)ベネズエラのコロンビアに対する貿易債務については,同会談において,マドゥーロ外相が,8月20日の外相会談でベネズエラがコロンビアに支払うとした貿易債務2億ドルのうち,9,800万ドルの支払い手続きを6日に完了した旨述べた。

 

2 国連安保理非常任理事国選挙におけるコロンビアの当選

 12日に行われた国連安保理非常任理事国選挙においてコロンビアが当選したことについて,同日,サントス大統領は,概要以下のコメントを発出した。

 なお,オルギン外相は,11月1日にネストル・オソリオ新国連常駐代表(元国際コーヒー連盟会長)が着任予定である旨述べた。

(1)我々は,安保理においてラ米及びカリブ諸国の声になりたいと言ってきたが,そのようになるであろう。

(2)(関係諸国は,)コロンビアが,(他者の)話しを聞き,(他者と)対話を行い,解決策を模索する用意がある国であると認識するであろう。コロンビアは,国際の平和と安全のテーマにおいては特別の責任を有するであろう。

(3)自分は,国際犯罪及びテロへの戦いにおける我々の経験が,特にここ数年の間にこれらの犯罪の被害を受けてきた地域に大きな貢献を行うことを可能にすると考える。

 

3 バウティスタ新駐ベネズエラ大使の赴任

 7月22日以降断絶されていたベネズエラとの外交関係が8月10日に再開されたことに伴い,19日にサントス大統領に就任宣誓を行ったホセ・フェルナンド・バウティスタ新駐ベネズエラ大使が,23日にベネズエラに赴任した。

 なお,同大使は,これまでに通信大臣,ククタ市長,国民統一党幹事長等を歴任し,最近ではサントス大統領の選挙参謀を務めた。

 

4 スタインバーグ米国務副長官他のコロンビア訪問

(1)24~25日,スタインバーグ国務副長官をはじめとする米政府関係者がコロンビアを訪問し,25日,サントス大統領を表敬した他,コロンビア政府関係者とハイレベルの政策対話を行った。同政策対話では,人権及びグッド・ガバナンス,エネルギー,並びに科学技術の3つの議題が扱われ,コロンビア側からは,ガルソン副大統領(人権セッションのみ),オルギン外相,ロダド鉱山・エネルギー相,ディアス・グラナドス商工観光相,レストレポ農業相他が,米側からは,スタインバーグ国務副長官の他,ポネマン・エネルギー副長官,オテロ国務次官(地球規模問題担当),バレンズエラ国務次官補(西半球問題担当)他が出席した。

(2)政策対話終了後,オルギン外相及びスタインバーグ米国務副長官によって概要以下の共同宣言が発表された。

 「米国及びコロンビアは,第1回ハイレベル政策対話を行った。両国代表団による人権及びグッド・ガバナンス,エネルギー,並びに科学技術に関する意見交換は,すばらしく,生産的なものであった。第2回ハイレベル政策対話は,米国で2011年前半に行う予定である。両国の目的は,本日得られた前進をベースに両国間の同盟を構築し,その同盟を拡大,進化させることである。」

 

5 第12回トゥクストゥラ対話及び協議メカニズム・サミット開催

(1)26日,ボリーバル県カルタヘナ・デ・インディアス市において,第12回トゥクストゥラ対話及び協議メカニズム・サミットが開催され,同サミットには,サントス大統領の他,コスタリカ,グアテマラ,ホンジュラス及びメキシコの大統領,ニカラグア,パナマ及びドミニカ(共)の副大統領,並びにエルサルバドルの外相他が出席した。

(2)同サミットでは,地域における民主主義制度の強化,移民問題,地域の安全保障,エネルギー・環境問題,経済・貿易・金融問題,開発協力,地域・マルチのテーマ,自然災害への対応,地域の統合・発展,輸送インフラ,エネルギー統合,バイオエネルギー等のテーマについて合意に達し,カルタヘナ宣言が採択された。

 

6 キルチネル前アルゼンチン大統領の逝去関連

(1)コロンビア外務省コミュニケ

 27日,コロンビア外務省は,キルチネル前アルゼンチン大統領の逝去に関し,概要以下のコミュニケを発出した。

(ア)コロンビア国民及び政府は,南米諸国連合事務局長であったキルチネル前アルゼンチン大統領の逝去に心からのお悔やみを申し上げる。

(イ)キルチネル前大統領は,南米諸国連合事務局長として,南米統合,並びに民主的な原則及び価値の強化のために働き,また,地域の諸国民の間の理解,協力及び尊重に留意された。

(ウ)コロンビア国民及び政府は,クリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領,ご家族及び協力者に弔意及び連帯の意を表明する。

(エ)オルギン外相は,コロンビアとベネズエラの関係再開に多大な貢献をされたことに示されるように,南米諸国を接近させようとしたキルチネル前大統領の協力の姿勢に感謝する。

(2)サントス大統領のキルチネル前亜大統領の通夜参列

(ア)28日,サントス大統領は,大統領夫人,オルギン外相等とともに,キルチネル前アルゼンチン大統領の通夜に参列するためアルゼンチンを訪問した。通夜参列後,サントス大統領は,「我々は,妻,オルギン外相,そして全てのコロンビア人の心とともに,最近個人的な友人になった偉大な人に別れを告げに来た。」,「キルチネル前大統領は,近隣諸国との関係修復のために多大な支援を行い,常に支援することを気にかけていた。だからこそ,彼の早すぎる死の知らせに我々の心はこれだけ痛んでいる。しかし,我々は,キルチネル前大統領に別れを告げ,キルチネル前大統領夫人であるクリスティーナ・フェルナンデス大統領及びアルゼンチン国民に弔意を表明するためにここに来た。」と述べた。

 また,フェルナンデス大統領に対しては,「気を強く持ってほしいとお伝えしたい。困難な時ではあるが,我々は,彼女が,逆境を克服できる性格を持っていることを知っている。」とのメッセージを送った。

(イ)また,27日,コロンビア政府は,同日から3日間を国喪期間とし,同期間中は全ての公共の建物及び在外のコロンビア大使館に半旗を掲げる旨規定した大統領令を発出した。

 

7 バルガス・ジェラス内務・法務相の南米諸国連合・麻薬関連閣僚会合出席

 28日,バルガス・ジェラス内務・法務相は,エクアドルのキトで開催された世界の麻薬問題に関する南米諸国連合閣僚会合に出席した。同会合において,各国は,地域における麻薬の流入,生産,商業化及び消費をコントロールすることに合意し,コロンビアを含む10ヵ国の内相及びその代理が,麻薬撲滅に向けたアクション・プランに署名した。これは,米国カリフォルニア州においてマリファナが合法化される可能性がある中で,米国に向けたメッセージであると受け止められている。

 

8 チリにおけるFARC協力者の逮捕

(1)29日,コロンビア国家警察によるインターポールを通じた逮捕要請及び同要請を受けたチリの最高裁による逮捕令状の発出に基づき,チリの国家警察は,FARCの協力者と見られているチリ人のマルエル・オラテ,通称「ロケ」をテロ資金調達等の容疑でサンティアゴで逮捕した。「ロケ」がFARCの協力者と見られている証拠の一つは,同氏の名前及び写真が,2008年3月のエクアドル領内のFARCキャンプ攻撃の際にコロンビア国軍が押収した「ラウル・レジェス」(当時FARCナンバー2)のパソコン内のデータの中から発見されたことであり,「ロケ」は南米南部におけるFARCの国際委員会(Comision Internacionalʌ9;の責任者と見られている。

(2)チリの国家警察による「ロケ」逮捕を受けて,30日,サントス大統領は,「この人物(「ロケ」)は,コロンビアの国家警察及び当局による情報提供に基づき,チリの当局及び最高裁によって逮捕されたが,今後2ヶ月以内にチリ政府に対してコロンビアへの引渡しを要請するであろう」と述べた。

(了)