(12月分)
内政・外交状況
2011年1月17日
コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
【内政】
●1日,2009年7月以降不在となっていた検事総長が最高裁によって選出された。
●8日,FARCが5名の人質を解放する旨表明したのに対し,9日,政府は人質解放のために要求されている条件を保障する旨明らかにした。
●14日,辞意を表明したアルブラ最高裁長官の後任にムナル長官代行が選出された。
【外交】
●1日,サントス大統領は,エクアドル政府に対し,2008年3月以降不在となっていた駐エクアドル大使を任命した旨明らかにした。
●3日,オルギン外相は,南米諸国連合外相会合において,同事務局長ポストにメヒーア元外相が選出されることへの期待を表明した。
●9日,日本は,洪水被害を受けているコロンビアに対する緊急援助物資の供与を決定し,15日,引渡し式を実施した。
●13~17日,日コロンビア投資協定交渉第7回会合が行われ,主要部分について実質合意に達した。
Ⅱ.内政
1 最高裁による新たな検事総長の選出
(1)イグアラン検事総長が任期満了に伴い退任した2009年7月以降,ウリベ前大統領が2回に亘り最高裁に検事総長の候補者リストを提出したにもかかわらず,最高裁によって新たな検事総長が選出されない状況が続いていたが(注:現行憲法では,検事総長は,大統領が提出する3人の候補者リストの中から最高裁が選出する旨規定されている),1日,最高裁は,11月にサントス大統領によって提出された3名の候補者(ビビアネ・モラレス元上院議員,フアン・エスゲラ憲法裁判所法律顧問及びグスターボ・アリエタ元行政監察監)の中から新たな検事総長を選出するための投票を行い,投票の結果,モラレス元上院議員が,18票のうち14の賛成票を獲得し,新たな検事総長に選出された(注:最高裁は23名の判事から構成され,検事総長選出のためには3分の2の賛成票が必要とされているが,現在5名の判事のポストが空席となっていることから,今回の投票では18票のうち12の賛成票が必要とされていた)。コロンビアにおいて,女性の検事総長が選出されるのは今回が初めて。
(2)モラレス新検事総長は,ロサリオ大学法学部卒業後,下院議員(1991~98年),上院議員(1998~2002年)(国会議員時代は,憲法問題等を扱う第一委員会に所属)等の要職を歴任した他,ロサリオ大学,国立コロンビア大学等でコロンビア憲法を教えていた経験も有する。現在48歳。
2 FARCの人質解放に向けた動き
(1)8日,FARC書記局は,左派系通信社ANNCOL上に,先般行政監察監が,ピエダ・コルドバ上院議員(自由党)を罷免し,今後18年間公職に就くことを禁止する決定を行ったことを批判するとともに,コルドバ前上院議員に連帯の意を表明した上で,人道的措置及びコルドバ前上院議員の名誉回復の措置として,5名の人質(ソロルサノ警察官,サンミゲル陸軍伍長,ロペス海軍伍長,バケロ・サン・ホセ・デ・グアビアレ市議会議長及びアクーニャ・ガルソン・ウイラ市議会議長)を解放する旨のコルドバ前上院議員宛書簡を発出した。なお,同書簡は,人質を解放する決定は既に行っているが,人質の解放日は,政府がコルドバ前上院議員に与える人質受入れのための保障次第であるとしている。
同書簡について,現在国外に滞在しているコルドバ前上院議員は,ツイッター上に,「我々を平和及び自由に導く全てのニュースは,自分の心を幸せにするものである。平和には留保などない。」旨のメッセージを掲載した。
(2)これに対して,9日,政府は,概要以下の内容のコミュニケを発出した。
(ア)政府は,可能な限り早期に人質解放のために要求されているあらゆる条件を保障する用意がある。
(イ)政府は,極めて慎重に行われることを条件に,コルドバ氏が人質解放のために便宜を図ることを認める用意がある。
(ウ)近く社会復帰担当大統領補佐官が,人質解放のための便宜に資する政府の対話者の任命を発表するであろう。
(エ)政府は,FARCが拘束している全ての人質を直ちに解放することを要請する。
3 世論調査結果
17日,当地世論調査会社ギャラップが,2~14日に全国の18歳以上の男女1,200名を対象に行った世論調査の結果が公表されたところ,概要以下のとおり。なお,括弧内の数字は,前回調査時(9月24日~10月2日実施)の数字。
(1)政治家等の支持率
(ア)ウリベ前大統領:73%(78%)
(イ)サントス大統領:72%(76%)
(ウ)バルガス・ジェラス内務・法務大臣:72%(71%)
(エ)ナランホ国家警察長官:70%(74%)
(オ)ファハルド前副大統領候補(緑の党共同党首):57%(64%)
(カ)ガルソン副大統領:52%(61%)
(キ)モックス前大統領候補(緑の党):51%(61%)
(ク)ガルソン元ボゴタ市長(緑の党共同党首):45%(50%)
(ケ)パルド前大統領候補(自由党党首):42%(53%)
(コ)ペトロ前大統領候補(無所属):38%(45%)
(2)サントス大統領の仕事振りの評価
(ア)サントス大統領の仕事振りを評価する:79%(82%)
(イ)サントス大統領の仕事振りを評価しない:17%(10%)
(3)コロンビアの状況に関する見方
(ア)良くなっている:42%(61%)
(イ)悪くなっている:34%(20%)
4 自由党と急進改革党の統合に向けた動き
(1)15日,統合に向けた動きを見せている自由党と急進改革党の国会議員等は,国会議事堂内の憲法の間においてコクテル形式の会合を行った。両党の統合は,連立政権内の勢力関係に変化をもたらすものであるが,2011年10月の地方選挙に向けた両党の連合という意味でも政治的意味を有すると見られている。
(2)こうした両党統合の動きについて,両党統合の推進者の一人である自由党のクリスト上院議員は,「両党が共に働くことに関心を有している意思表示として,両党の統合について検討することができるであろう。」と述べたのに対し,急進改革党のモトア上院議員は,「我々は,保守党や国民統一党を不安定な状態にしようとしているのではない。両党の国会議員は,何年も前から多くのテーマについて一体となって行動しており,こうした動きは,次期国会において正式なものとなるであろう。」と述べた。
5 最高裁人事
(1)最高裁長官の交代
2010年2月以降最高裁長官代行を務めてきたハイメ・アルブラ判事は,2日,最高裁において最高裁長官に選出されたが,14日,1ヶ月余りの任期を残し,健康上の理由で最高裁長官を辞任する旨表明した。アルブア長官の後任には,同日,最高裁においてペドロ・ムナル判事が長官代行として選出された。ムナル長官代行の任期は来年1月下旬まで。
(2)5名の最高裁判事の就任
23名の最高裁判事のうち,任期満了により退任した5名の判事の後任として,2日に最高裁において選出された5名の新たな判事が,16日,大統領官邸において,サントス大統領に対し就任の宣誓を行った。新たに就任した5名の判事は,フェルナンド・ヒラルド判事,ホルヘ・ブルゴス判事,ルイス・ミランダ判事,カルロス・モリーナ判事及びフェルナンド・エスピノサ判事。
(注:現行憲法は,最高裁判事は,最高司法審議会が提出する候補者リストの中から最高裁によって選出される旨規定している。)
6 県知事交代を巡る動き
(1)4日,スアレス・グアビアレ県知事が交通事故で死亡したことを受けて,10日,政府は,内務・法務省のロブレド法務担当次官を県知事代行に任命した。
(2)10日,ディアスグラナドス・マグダレナ県知事が,学用品を市価の3倍の価格で購入し,県の予算に25億ペソの損失をもたらしたとして,会計検査院により失職処分を受けた。同決定を受けて,20日,政府は,元国軍司令官のボネット氏を県知事代行に任命した。
(3)20日,フローレス・カサナレ県知事は,公金不正使用等を理由に行政監察監より失職処分を受けたが,政府による県知事代行の任命手続きが遅れており,フローレス氏は2010年1月第2週まで県知事職を務める予定。
Ⅲ.外交
1 新駐エクアドル大使の任命
(1)2008年3月以来不在となっていた駐エクアドル大使の人事について,1日,サントス大統領は,「フェルナンド・アルボレダ・リポル氏を新駐エクアドル大使に任命した。この公表に先立ち,オルギン外相が,エクアドルのパティーニョ外相に対し,同大使の任命につき通報した。」と述べた。
(2)アルボレダ氏について,サントス大統領は,「アルボレダ氏は,最高裁判事等の要職を歴任し,非常に知名度のある法律家である。また,同氏は,特に学術分野において,エクアドルと非常に重要な関係を有している。」と述べるとともに,エクアドルとのこの新たな段階において,アルボレダ新大使は,全てのコロンビア人を代表する人物である旨述べた。
2 サントス大統領の第20回イベロアメリカ・サミット出席
(1)3~4日,サントス大統領は,アルゼンチンのマル・デル・プラタ市を訪問し,第20回イベロアメリカ・サミットに出席した。同サミットにおいて,サントス大統領は,コロンビアで150万人以上の被災者を出している長雨災害に対する各国からの支援及び連帯の意の表明に感謝した他,テロ及び国際組織犯罪との戦いに関するコミュニケが発出されたことに謝意を表明した。
(2)また,同サミットのマージンで,サントス大統領は,チリのピニェラ大統領,メキシコのカルデロン大統領及びペルーのガルシア大統領と会談し,これら4ヵ国間の統合プロセスの深化を推進するとの決定を行ったとした上で,「我々は,アジア太平洋地域と共同で向き合うために,どのように4ヵ国間の統合を深化させるかについての具体的なアイデアを3ヶ月以内に提出しなければならない。」と述べた。
(3)一方,同サミットに先立つ3日,外相会合が開催されたが,同会合において,キルチネル前亜大統領が逝去して以来懸案となっている南米諸国連合事務局長の選出問題についても議論された。オルギン外相は,コロンビアの同ポストへの関心を示し,マリア・エンマ・メヒーア元外相が新たな事務局長に選出されることへの期待を表明したが,ベネズエラも,アリ・ロドリゲス元外相の新事務局長選出への期待を表明した。南米諸国連合事務局長の選出はコンセンサスで決定されることになっているが,同サミットにベネズエラのチャベス大統領が欠席したことから,新たな事務局長の選出は次回南米諸国連合首脳会合まで持ち越しとなった。
3 サントス大統領の国際刑事裁判所第9回締約国会議における演説
(1)6日,サントス大統領は,国際刑事裁判所(ICC)第9回締約国会議において演説を行い,同演説において,和平を達成するためには正義の実現が必要であるとして,コロンビアは,真相究明,正義の実現及び犠牲者の補償の3つの分野において成果を上げていることを強調した。
(2)また,サントス大統領は,「和平を達成するために民主的治安対策を推進しており,コロンビア全土において法の支配を回復した。」と述べるとともに,不処罰と戦うコロンビアの決意を強調し,ICCの仕事への明確な支持を表明した。
(3)更にサントス大統領は,非合法武装勢力の構成員の武装解除・動員解除・社会復帰を実現するための暫定的な司法プロセスの法的枠組みである正義及び和平法を実施していることを強調するとともに,国軍による法律遵守へのコミットメントを改めて表明した。
(4)最後にサントス大統領は,ICCを残酷な犯罪の不処罰に対する戦いの同盟者であると考えており,同裁判所に積極的な協力を行う用意があるとして,被害者信託基金への拠出を表明した。
4 対日関係(洪水被害に対する緊急援助及び投資協定交渉)
(1)洪水被害に対する緊急援助
9日,日本政府は,長雨の長期化による洪水被害を受けているコロンビアに対し,2,000万円相当の緊急援助物資(テント,スリーピングパッド等)を供与することを決定し,15日,大統領官邸において,鈴木大使から大統領夫人に対する緊急援助物資の引渡し式を行った(なお,同引渡し式に先立ち,同物資は内務省災局に引き渡した)。
(2)投資協定交渉
13~17日,米国ワシントンにおいて,日コロンビア投資協定交渉第7回会合が行われ,その後の確認作業を経て,主要部分について実質合意に至った。今後,日コロンビア双方は,協定の早期署名に向け,所要の作業を継続する予定。
5 コレア・エクアドル大統領のコロンビア訪問
(1)15日,コレア・エクアドル大統領は,コロンビアにおける長雨災害に対し連帯の意を表明するためバジェ・デル・カウカ県ラ・ビクトリア市を訪問し,被災地を視察するとともに,長雨災害に対する追加的な緊急援助として7トンの食糧を引き渡した。これまでエクアドルは,コロンビアに対し,スリーピングパッド,水タンク及び食糧を供与している。
(2)また,同日,サントス大統領は,ラ・ビクトリア市において,コレア大統領と会談し,緊急援助に対し謝意を表明するとともに,両国関係を完全に修復するための大使人事,査証問題等について意見交換を行った。
(了)