コロンビア月例報告(2月分)

 

内政・外交状況

 

2011年3月14日

コロンビア日本大使館

 

Ⅰ.概要

【内政】

●2月,FARCは,昨年12月に解放を約束した5名の人質とともに,新たに1名の人質を解放した。

●14日,ELNは,国内紛争に対する政治的解決策を模索する用意がある旨の提案を改めて政府に表明する書簡を発出した。

●21日,最高裁は,パラミリタリーから支援を受けて当選したとされるウリベ元上院議員(ウリベ前大統領の従兄弟)に対して有罪判決を下した。

●25日に公表されたギャラップ社の世論調査の結果によれば,サントス大統領の支持率は72%で,前回調査と同じ結果であった。

 

【外交】

●1日,ペルーのガルシア・ベラウンデ外相が来訪し,オルギン外相との間で二国間関係,ペルー,チリ及びメキシコ間の経済統合プロセス等について意見交換した。

●4日,ブラジルのパトリオッタ外相が来訪し,サントス大統領及びオルギン外相との間で二国間関係,地域情勢等について意見交換した。

●14日,オバマ米政権は,2012年の米国の対コロンビア援助を大幅に削減する法案を議会に提出した。

●16日,オルギン外相他がベネズエラを訪問し,マドゥーロ外相他との間で両国の貿易関係,安全保障問題等について意見交換を行った。

●17~20日,山花外務大臣政務官が来訪し,18日,オルギン外相,ベスード環境相,家族福祉庁幹部等との会談を行った。

●23日,エルサルバドルのフネス大統領が来訪し,サントス大統領との間でFTAを含む二国間関係,組織犯罪への取組等について意見交換を行った。

 

Ⅱ.内政

1 全国選挙委員会委員長の交代

 1月28日に全国選挙委員会で行われた任期満了に伴う新委員長選出選挙において,オスカル・ヒラルド委員長の後任として,フアン・パブロ・セペロ委員が選出され,1日,セペロ新委員長は正式に就任した。任期は1年。

 

2 各党による地方選挙候補者選出のための党内選挙日の決定

 2日,全国選挙委員会は,各党が本年10月30日に行われる地方選挙の候補者を

選出するための党内選挙を行う場合,各党による党内選挙は5月29日に実施しなければならない旨の決定を行った。

 

3 県知事交代を巡る動き

(1)昨年12月,スアレス・グアビアレ県知事が交通事故で死亡したことを受けて,政府は,暫定的に内務・法務省のロブレド法務担当次官を県知事代行に任命したが,7日,カスティージョ内務・法務省調整官を正式な県知事代行に任命した。

(2)昨年12月,フローレス・カサナレ県知事が,公金不正使用等を理由に行政監察監の決定により失職処分となったのを受けて,14日,政府は,内務・法務省のイラゴリ内務次官を県知事代行に任命した。

 

4 FARC誘拐被害者の解放 

 昨年12月8日,FARCは,左派系通信社ANNCOL上に,行政監察庁の決定により失職したコルドバ前上院議員に連帯の意を表明した上で,人道的措置及びコルドバ前上院議員の名誉回復の措置として,5名の人質(バケロ・グアビアレ県サン・ホセ・デル・グアビアレ市議会議長,アクーニャ・ウイラ県ガルソン市議会議員,ソロルサノ警察官,サンミゲル陸軍伍長及びロペス海軍伍長)を解放する旨のメッセージを発出したが,右を踏まえ,2月に入り,国際赤十字,ブラジル政府,コルドバ前上院議員(自由党)等からなる人道ミッションの支援を得た解放オペレーションが行われ,9日,バケロ・サン・ホセ・デル・グアビアレ市議会議員(2009年6月に誘拐)が,11日,アクーニャ・ガルソン市議会議員(2009年5月に誘拐)及びロペス海軍伍長(2010年5月に誘拐)が,また,16日,ソロルサノ警察官(2007年6月に誘拐)及びサンミゲル陸軍伍長(2008年5月に誘拐)が解放された他,13日,当初解放予定者にはなっていなかったオカンポ警察官(2010年12月に誘拐)も解放された。

 

5 ELN発コロンビア司教会議宛書簡

 14日,ELNは,コロンビア司教会議宛の書簡をインターネット上に公開し,同書簡の中で,同司教会議が国内紛争に対する政治的解決策を示すのは非常に興味深いであろうとした上で,コロンビアの政治,経済及び社会的状況の実質的変革に関わる恒久的な合意を達成するために政治的解決策を模索する用意があることを改めて国家及び政府に提案する旨表明した。

 

6 ウリベ元上院議員に対する有罪判決

 21日,最高裁は,2002年の上院議員選挙において,パラミリタリーのリーダー「サルバトーレ・マンクソ」(現在身柄は米国に引き渡されている)からの支援を受けて当選したとされ,昨年2月から仮拘禁されているマリオ・ウリベ元上院議員(ウリベ前大統領の従兄弟。2000年から2001年まで上院議長)に対して,懲役7年6ヶ月の有罪判決を下した。パラポリティカを巡って,元上院議長が有罪判決を受けるのは今回が初めて。

 

7 世論調査結果

 25日付当地エル・ティエンポ紙は,当地世論調査会社ギャラップが,15~21日に全国の18歳以上の男女1,200名を対象に行った世論調査の結果について報じているところ,概要以下のとおり。なお,括弧内の数字は,前回調査時(昨年12月2日~14日実施)の数字。

 

(1)政治家等の支持率

(ア)ナランホ国家警察長官:75%(70%)

(イ)ウリベ前大統領:74%(73%)

(ウ)サントス大統領:72%(72%)

(エ)バルガス・ジェラス内務・法務大臣:71%(72%)

(オ)ガルソン副大統領:68%(52%)

(カ)モックス前大統領候補(緑の党):57%(51%)

(キ)パルド前大統領候補(自由党党首):50%(42%)

 

(2)サントス大統領の仕事振りの評価

(ア)評価する:77%(79%)

(イ)評価しない:18%(17%)

 

(3)コロンビアの状況に関する見方

(ア)改善している:41%(42%)

(イ)悪化している:39%(34%)

 

(4)失業問題に関する見方

(ア)改善している:26%(30%)

(イ)悪化している:57%(47%)

 

(5)治安に関する見方

(ア)改善している:25%(26%)

(イ)悪化している:64%(57%)

 

(6)汚職問題に関する見方

(ア)改善している:22%(26%)

(イ)悪化している:63%(51%)

 

Ⅲ.外交

1 リベラ国防相の米国訪問

(1)1月31日~2月4日,米国を訪問したリベラ国防相は,1月31日,マイアミにおいてフレイザー南方司令軍司令官と会談し,また,2月2日,バレンズレラ国務次官補(西半球問題担当)等と会談した他,同3日,ゲイツ国防長官と会談を行った。ゲイツ国防長官との会談において,両国防相は,二国間の協力関係を深化させるためのメカニズム等について意見交換を行った他,地域の安全保障の脅威に対処するために共に働くことの必要性について一致した。

(2)会談後,ゲイツ国防長官は,「コロンビアは,(国際犯罪への対処における)成功例であり,その経験は,地域の内外の諸国と共有すべきである。」と述べるとともに,オバマ政権は,コロンビアの治安を更に改善するために引き続き協力する意志を有していることを強調した。

 これに対し,リベラ国防相は,「コロンビアは,国際法及び国連の枠組みにおいて,世界のいかなる場所においても,国際犯罪への対処に協力する能力を有している。」と述べた。

 

2 ガルシア・ベラウンデ・ペルー外相のコロンビア訪問

(1)1日,ペルーのガルシア・ベラウンデ外相は当国を訪問し,オルギン外相と約3時間に亘って会談した。同会談において,両外相は,二国間関係,コロンビア,ペルー,チリ及びメキシコ間の経済統合プロセスの進捗状況,5月15日にリマで開催される南米諸国連合会合等について意見交換を行った。

(2)会談後,オルギン外相は,アジア地域への参入を視野に入れた上記4ヵ国の経済統合の短期的なロードマップに言及した他,5月19~20日に行われる二国間委員会において,4ヵ国の経済統合,地域のアジェンダ等についてレビューすることをガルシア・ベラウンデ外相との間で確認した旨述べた。

(3)一方,ガルシア・ベラウンデ外相は,発展,貿易及び国際経済への参集に関する,コロンビア,ペルー及びチリの間のより深化した統合イニシアティブ(注:メキシコへの言及はなし)のフォローアップを行うためにコロンビアを訪問した旨述べた他,2月15~16日にリマで開催される南米・アラブ諸国首脳会合には,全ての南米諸国の大統領が出席することが確認されていると述べた。

 

3 パトリオッタ・ブラジル外相のコロンビア訪問

(1)4日,パトリオッタ・ブラジル外相はコロンビアを訪問し,大統領府において,サントス大統領及びオルギン外相と会談を行った。同会談では,二国間関係,地域情勢,両国共通のアジェンダ等について意見交換が行われた。

(2)会談後,オルギン外相は,「我々は共に,両国関係及び両国共通のアジェンダを推進することができるが,そのためには(両国関係の)再活性化が必要であり,我々は現在そのプロセスにある。」,「我々は,マルチのフォーラムを共有している。我々は,国連安保理のメンバーであり,南米諸国連合にコミットしている。」と述べた他,「今週はパナマ,ペルー及びブラジルの外相がコロンビアを訪問したが,これは,コロンビアが近隣諸国及び地域の諸国との関係を緊密化したいとの姿勢を示している。」と述べた。

(3)一方,パトリオッタ外相は,貿易,投資及びあらゆるアジェンダにおいて二国間関係を緊密化させたいとのルセーフ大統領の希望をコロンビア政府に改めて表明するために今般コロンビアを訪問したとした上で,「サントス大統領が,短期間で南米の近隣諸国との状況を変える能力を示したが,このことは,我々が南米の平和,協力,発展及び社会正義のためにより一層働くために非常に良い状況をもたらすものである。」,「我々は,コロンビアの将来,そして人質の解放のプロセスのみならず,コロンビアが経済的及び人的な潜在力を発展させ,地域の発展に貢献することができる真の和平に達するためのプロセスに信頼を置いている。」と述べた。

 

4 2012年の米国の対コロンビア援助額の削減

(1)14日,オバマ米政権は,2012年の米国の対コロンビア援助(プラン・コロンビア)の額を大幅に削減する法案を議会に提出した。米国の対コロンビア援助額は,ブッシュ政権時に約630百万ドルにまで達したが,4年連続で削減されており,2011年は465.5百万ドルで,2012年は約400百万ドルとなっている。

(2)2012年の対コロンビア援助の内訳は以下のとおり。

ア 社会・開発援助:189百万ドル

イ 麻薬対策:160百万ドル

ウ 対外軍事支援(FMF)(テロ対策等):44百万ドル

エ 地雷除去及び移民対策:5百万ドル

オ 軍事訓練:1.75百万ドル

 

5 オルギン外相他のベネズエラ訪問

(1)16日,オルギン外相は,リベラ国防相及びディアス・グラナドス商工観光相とともに,ベネズエラを訪問し,マドゥーロ外相,エル・アイサミ内相及びベタンクール貿易相と会談を行った。会談後,オルギン外相は,対話,協力,透明性及び相互理解に向けた努力が,両国間の基本的な軸であるとした上で,同会談では,安全保障及び貿易問題に関する意見交換を行い,生産的なものであったと述べた。

(2)貿易問題について,オルギン外相は,貿易分野における前進は,コロンビアにとって重要なものであるとした上で,ベネズエラ政府より(貿易債務の)支払いを許可されたコロンビア企業のリストを提出されたことに謝意を表明するとともに,ベネズエラにおけるコロンビア製品に対する差別的扱いが撤廃されることとなったと述べた(注:17日付当地各紙は,オルギン外相及びマドゥーロ外相が,ベネズエラが貿易債務と認めている約700億ドルのうち,既に365億がコロンビア企業に支払われていると述べた旨報じている)。

(3)また,安全保障について,オルギン外相は,3月第2週に開催予定の次回首脳会談において,サントス大統領とチャベス大統領は,麻薬対策に関する協定及び同対策のオペレーションに関する計画に署名する予定であると述べた。

 

6 山花外務大臣政務官のコロンビア訪問

(1)17~20日,山花外務大臣政務官は,コロンビアを訪問し,18日,オルギン外相,ベスード環境相,家族福祉庁幹部とそれぞれ会談した他,コロンビアに進出している日本企業関係者と意見交換を行った。また,当地の青年海外協力隊員の活動現場を訪問するとともに,ボランティア関係者と意見交換を行った。

(2)オルギン外相との会談では,二国間の経済関係の強化,国際場裡における関係強化等について意見交換を行い,また,ベスード環境相との会談では,COP17に向けた取組み等について意見交換を行った。また,家族福祉庁幹部との会談では,ハーグ条約について意見交換を行った。

 

7 フネス・エルサルバドル大統領のコロンビア訪問

(1)23日,フネス・エルサルバドル大統領はコロンビアを訪問し,サントス大統領と会談した。同会談において,両大統領は,FTAを含む二国間関係,組織犯罪への取組等について意見交換を行った。

(2)会談後,サントス大統領は,「我々にとって,フネス大統領を我が国にお迎えできたことは,大きな喜びである。コロンビアは,エルサルバドルにとって,共通の目的を有している友邦である。」とした上で,1年以上前に発効した両国間のFTAに言及するとともに,両国が麻薬取引等の組織犯罪と戦うことの重要性を強調した。

(3)一方,フネス大統領は,「犯罪組織との戦いに関する我々の経験をコロンビアに教えるというよりも,我々は,犯罪組織の構成員の社会復帰やその扱い等において得た成功例をお互いに共有しなければならない。」と述べた。

 

8 パティーニョ・エクアドル外相のコロンビア訪問

(1)24日,パティーニョ・エクアドル外相はコロンビアを訪問し,オルギン外相と会談した。同会談において,両外相は,両国間の貿易・観光促進を含む二国間関係等について意見交換を行った。

(2)会談後,オルギン外相は,パティーニョ外相から要請のあったエクアドル米のコロンビアへの輸入について,アンデス共同体のエクアドル及びペルーとの間で,米を4万トン輸入することに合意したと述べた他,エクアドル,ペルー及びチリとの間で,観光ツアーのPRに関する国際観光展を開催する可能性につき言及した。

(3)また,同会談後,オルギン外相とパティーニョ外相は,トラベルソ・アンデス開発公社(CAF)コロンビア事務所長との間で,コロンビア・エクアドル間のルミチャカ橋建設計画の事前調査に対する融資(30万ドル)に関する協定に署名した。

 

9 オルギン外相のペルー訪問

(1)25日,オルギン外相はペルーを訪問し,ペルーのガルシア・ベラウンデ外相,エクアドルのパティーニョ外相及びチリのモレーノ外相との間で,4ヵ国間の電力網敷設計画に関する意見交換を行った。

(2)会談後,ガルシア・ベラウンデ外相は,電力網敷設計画のインフラ及び国際取引の法的保障等について合意に達したと述べるとともに,同合意は,アンデス共同体の現行の規則に基づくものであると述べた。また,同外相は,各国への電力網敷設に必要なインフラを特定化するために共に働くことについても合意したと述べた。

(3)また,4ヵ国の外相は,上記の話し合いを始めるために,電力を所管する省庁の責任者等とともに,30日以内にエクアドルにおいて会合を開催する予定であると表明した上で,同計画は地域の他の国にも開かれたものであると述べた。

 

(了)