コロンビア月例報告(3月分)
内政・外交状況
2011年4月19日
コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
【内政】
●7日,ビチャダ県プエルト・プリンシペ市の石油探査サイトで労働中の23名のコロンビア人が,3名の武装グループによって誘拐される事件が起き,22名が解放されたが,残りの1名は人質として拘束されている。
●15日,国会において,内務・法務省,社会保障省及び環境・住居・国土開発省の分割及び6省の創設等に関する省庁再編法案が可決された。
●22日から23日にかけて,土地返還運動のリーダーであった複数の農民が何者かに暗殺される事件等が発生し,25日,当地国連高等人権弁務官事務所は,これらの事件を強く非難するコミュニケを発出した。
【外交】
●2月28日~3月1日,ガルソン副大統領は,ジュネーブで開催された人権理事会ハイレベル・セグメントに出席し,山花外務大臣政務官とも会談を行った。
●11日に開催された南米諸国連合外相会合において,メヒーア元外相が同事務局長に選出された。
●23日,「コ」を訪問したガルシア・ペルー大統領は,サントス大統領と会談し,両大統領は,共同宣言を発出した。
●東日本大震災に関して,17日,サントス大統領は,弔意表明のため当館を訪問し,記帳を行うとともに,改めて日本政府及び国民への連帯の意を表明するとともに,日本への支援を行う用意がある旨表明した。
Ⅱ.内政
1 大規模誘拐事件の発生
(1)7日,ビチャダ県クマリボ市に隣接したプエルト・プリンシペ市の石油探査サイトで労働中の23名のコロンビア人が,3名の武装グループによって誘拐される事件が起きた。同市では,カナダの石油企業Talismanがコロンビア石油公社Ecopetrolと共同で,新たな油層探査のために地質探査を行っており,誘拐された23名は,カナダの石油企業Talismanの下請け会社South Exploration Americaの労働者で,現地の農民,道案内人及び地形測量士であった。
(2)7日夜から8日にかけての陸海空軍及び警察による合同救出オペレーションにより,誘拐された23名のうち22名は解放されたが,地形測量士1名が,現在も(3月31日現在)人質となっている。
(3)国防省は,誘拐の実行犯はFARC第16戦線のメンバーであるとしているが,アビラ・ビチャダ県知事は新興違法武装勢力の犯行である可能性もあると指摘している。
2 国会における省庁再編法案の可決
(1)15日,国会において省庁再編法案が可決された。同法案は,内務・法務省,社会保障省及び環境・住居・国土開発省の3省の分割,並びに内務省,法務省,労働省,保健省,環境省及び住居・国土開発省の6省の創設,大統領府治安庁(DAS)の廃止及び新たなインテリジェンス組織の創設,麻薬対策庁,国家刑務所管理庁,全国公証人監督庁等の再編について規定し,サントス政権は,同法案成立後6ヶ月以内に省庁再編を行わなければならないとしている。
(2)なお,同法案に関して,野党PDA党は,労働者の雇用保障に関する合意に反する等として,憲法裁判所に同法案の違憲性を訴える動きを見せている。
3 土地返還運動リーダー等の暗殺
(1)現在,国会において犠牲者補償・土地返還法案が審議されているが,こうした中,22日から23日にかけて,土地返還運動のリーダーであった複数の農民が何者かに暗殺される事件が,アンティオキア県及びスクレ県において発生した(22日,アンティオキア県アパルタドー市でリオス氏が,23日,アンティオキア県トゥルボ市でゴエス氏が,また,同日,スクレ県サン・オノフレ市でベルベル氏が暗殺された)。また,22日,アラウカ県タメ市で起きたムニョス陸軍中尉によるトーレス兄弟殺害事件等を扱っている同県の地方裁判所のガオナ判事が,何者かに暗殺される事件が起きた。
(2)これを受けて,25日,当地国連高等人権弁務官事務所は,これらの事件を強く非難するとともに,司法当局が,同事件の真相究明を行い,責任者を処罰することを求めるコミュニケを発出した。
4 ペトロ前大統領候補による政治運動団体の創設
昨年11月にPDA党を離党したペトロ前大統領候補は,23日,政治運動団体「Progresistas」の発足式を行った。これまでペトロ氏は,本年10月30日に行われるボゴタ市長選挙には出馬しない意向を示していたが,同日,今後の状況を見極めながら,同選挙に出馬する可能性もあることを示唆する発言を行った。
Ⅲ.外交
1 ガルソン副大統領の人権理事会ハイレベル・セグメント出席
(1)2月28日~3月1日,ガルソン副大統領は,第16回人権理事会ハイレベル・セグメントに出席するためジュネーブを訪問し,2月28日,コロンビアの人権状況に関する演説を行った。
(2)また,3月1日,ガルソン副大統領は,同ハイレベル・セグメントのマージンで,山花外務大臣政務官と会談を行い,二国間関係,人権分野での協力,ハーグ条約等について意見交換を行った。
2 オルギン外相の南米諸国連合外相会合出席
(1)11日,エクアドルで南米諸国連合外相会合が開催され,オルギン外相が同会合に出席した。同会合では,南米諸国連合設立条約の批准書寄託に関わる式典が行われた他,昨年10月のキルチネル亜前大統領逝去に伴う南米諸国連合事務局長選出選挙が行われた。
(2)同選挙には,コロンビアのメヒーア元外相及びベネズエラのロドリゲス元外相が立候補していたが,事務局長のポストをローテーション制にし,任期を1年にするとのブラジルの提案が採択され,メヒーア元外相がコンセンサスで選出された。メヒーア元外相の後任には,ロドリゲス元外相が就任することとなった。
3 ティメルマン亜外相のコロンビア訪問
(1)14日,アルゼンチンのティメルマン外相は,コロンビアを訪問し,オルギン外相と会談した。アルゼンチンの外相がコロンビアを訪問するのは,2006年6月以来。
(2)会談後,オルギン外相は,「我々は,2ヶ月後に両国の代表を集めた企業フォーラムを開催することに合意した。同フォーラムでは,両国間の貿易のレビューを行う委員会が開催され,右に引き続き,サントス大統領とフェルナンデス大統領の会談が行われる予定である。」と述べた。
(3)一方,ティメルマン外相は,両国の歴史的な関係を深化させ,地域及び世界的なレベルまで持って行きたいとのサントス大統領及びフェルナンデス大統領の希望を強調した上で,「我々は,両国民及び両国政府間の統合,深化及び友好の道を歩み始めた。」と述べた。
4 ガルシア・ペルー大統領のコロンビア訪問
23日,ガルシア・ペルー大統領は,コロンビアを訪問し,サントス大統領と会談した。会談後,両大統領は,概要以下の共同宣言を発出した。
(1)両大統領は,二国間,地域及びグローバルなアジェンダについてレビューを行い,両国が良好な関係を有していることを確認した。
(2)両大統領は,深化した統合地域を創設することへのコミットメントを改めて表明し,そのために5月にリマで開催される会合にチリ及びメキシコの大統領を招待した。
(3)両大統領は,コロンビア,ペルー及びチリの株式市場統合に関する合意を歓迎した。
(4)両大統領は,アジア・太平洋地域との貿易関係を強化するためにラ米太平洋地域フォーラムを推進することへの関心を表明した。
(5)ペルー大統領は,コロンビアのAPEC加盟を支持する旨改めて表明した。
(6)両大統領は,対人地雷に関するオタワ条約へのコミットメントを改めて表明した。
(7)両大統領は,南米諸国連合設立条約の発効に祝意を表するとともに,マリア・エンマ・メヒーア氏(2011~12年)及びアリ・ロドリゲス・アラケ氏(2012~13年)が事務局長にそれぞれ任命されたことを歓迎した。
(8)ペルー大統領は,コロンビアが4月に安保理議長国として提出するハイチ情勢に関するイニシアティブを完全に支持する旨表明した。
(9)両大統領は,東北地方太平洋沖地震で,人命が失われ,壊滅的な物的被害が生じたことに対し,日本国民及び政府にお見舞い及び連帯の意を表明した。
(10)両大統領は,リビア情勢に関する安保理決議への確固たる支持を表明するとともに,民間人を保護するための国際社会による行動を支持した。
5 オルギン外相のドミニカ(共)訪問
(1)29日,オルギン外相は,ドミニカ共和国を訪問し,大統領府において,フェルナンデス大統領と会談した(モラレス外相同席)。
(2)同会談において,オルギン外相は,両国の貿易関係を強化するために,投資及びサービスに関する協定を交渉することへの関心を表明した。
6 オルギン外相のハイチ訪問
(1)30日,オルギン外相は,ドミニカ共和国訪問後,同国のモラレス外相とともに,ハイチを訪問した。同外相は,今般のハイチ訪問の目的の一つは,ハイチ復興に向けた具体的な支援を検討するために,ハイチ及びハイチ国民のニーズについて直接情報を得ることであると述べた。
(2)ハイチ滞在中,オルギン外相は,大統領府において,プレバル大統領及びベルリーブ首相と会談し,同会談において,オルギン外相は,「ハイチの復興は,安保理議長国としてのコロンビアの目標の一つである。」と述べた。
(3)また,オルギン外相は,Manigat及びMartelly両大統領候補とそれぞれ会談した他,ミュレMinustah特別代表とも会談を行った。
7 東日本大震災関連
(1)東日本大震災に関して,17日,サントス大統領は,弔意表明のため当館を訪問し,記帳を行うとともに,鈴木大使に対して,改めて日本政府及び国民への連帯の意を表明するとともに,日本への支援を行う用意がある旨表明した。
(2)22日,139名のコロンビア人及び24名のチリ人を乗せたコロンビア空軍機が日本を出発し,23日午前0時45分,ボゴタの空軍基地に到着した。また,24日夜,ベネズエラの政府専用機で日本を出発した115名のコロンビア人が,ベネズエラ経由でコロンビアの空軍機で帰国した。
(了)